第 9 章 剛体の運動 129
11.3 エントロピー
である.
一般的なサイクルの熱効率 一般的なカルノーサイクルの効率はW /Qf で与えられる.これは
η= Q−Q0
Q = 1− Q0
Q (11.11)
となる.可逆サイクルの場合,クラウジウスの不等式は等式になるから Q
T = Q0
T0 (11.12)
である.よって
ηカルノー= 1− T0
T (11.13)
となる.特殊な例だと思っていた前章でのカルノーサイクルは実は一般的 な性質をもっているのである.
一方,不可逆なサイクルの場合,クラウジウスの不等式は Q
T + −Q0 T0 <0 T0
T − Q0 Q <0
∴ T0 T < Q0
Q (11.14)
なので,効率は η= Wf
Q = Q−Q0
Q = 1− Q0
Q <1− T0
T =ηカルノー (11.15) となる.
このようにどのようなサイクルもカルノーサイクルの効率(=可逆なサイ クルの効率)は超えられないのである.
11.3 エントロピー 167 とすればよい.ただし,ここでいうTは系の温度である.熱源の温度とは
一般に異なる.こうしておけば,熱源に接していないときもエントロピー を定義できる.
この積分より,エントロピーを
SA→B=S(B)−S(A) =
∫ B A
dQ
T (11.20)
と定義する.温度が一定の場合,
SA→B=S(B)−S(A) = QA→B
T (11.21)
となる.微小変化の場合,
∆S= ∆Q
T (11.22)
となる.
エントロピーの計算を例で見てみよう.
温度を一定として,体積を増やす場合 まず等温過程において気体が膨 張したときのエントロピーの変化を計算しよう.
モル数n,体積V1,温度Tの理想気体を,温度Tを一定に保ちながら体 積V2に変化させる.
体積がV からV + ∆V にわずかに変化する場合を考えよう.等温過程な ので,内部エネルギーは変化しない.よって系に加えた熱量Qは
Q= ∆U+Wf=p∆V = nRT∆V
V (11.23)
である.よってエントロピーの変化は
∆S= nR∆V
V (11.24)
である.体積V1から体積V2へと変化させた場合はこれを積分して,
S2−S1=
∫ V2 V1
nRdV
V =nRlog (V2
V1
)
(11.25) となる.
体積を一定として,温度を上げる場合 熱容量C,温度Tの固体を温度 T0に上昇させたとする.ここで固体を考え,体積はほとんど変化しないと
し,外部に行う仕事は無視する.dQ=CdT なので, +液体もほとんど体積は変 わらないので,ここでの議論 が使える.また気体でも定積 過程ならここで求めた結果と なる.
S=
∫ T0 T
dQ
T =
∫ T0 T
CdT
T =Clog(T0/T) (11.26)
となる.温度が高い方がエントロピーが大きい.これは温度が高いほど「散 らかっている」という印象と一致している.
例題11.1 定積変化の理想気体
nモルの単原子分子理想気体を考える.体積を一定として温度をT1か らT2にすると,エントロピーはどれだけ変化するか.
nモルの単原子理想気体の熱容量は,
CV = 3n 2 R である.式(11.26)に代入して,
S2−S1= 3nR 2 log
„T2
T1
«
(11.27) である.
カルノーサイクルでのエントロピーの変化 カルノーサイクルでのエン トロピーの変化を追うのは簡単である.表10.3を見ながら追ってみよう.
過程I) 系に加えられた熱量はnRTlog(V1/V0)である.等温過程なので,
エントロピーの変化はこれをTで割り算した,
SI =nRlog(V1/V0) (11.28) となる.
過程II) 断熱過程なのでQ= 0.よってエントロピーの変化は0である.
過程III) 熱量はnRT0log(V3/V2),これをT0で割り算したものがエン トロピーの変化なので,
SIII=−nRlog(V2/V3) (11.29) となる.
この式は,温度が一定で体積を増やすとエントロピーは増大するこ とを表している.これも直感的な印象とあっている.
過程IV) 断熱過程なので,エントロピーは変化しない.
以上から,カルノーサイクルでのエントロピーの変化は
Sカルノー=nR(log(V1/V0) + 0−log(V2/V3) + 0) (11.30) である.式(10.69)より,V1/V0=V2/V3なので,
Sカルノー= 0 (11.31)
となる.
簡単なサイクルでのエントロピーの変化 クラウジウスの不等式に現れ る
∫
dQ/Tとエントロピーの違いを明確にするため,前章で学んだ図10.6, 表10.3のような等温,定圧,定積過程からなるサイクルを考えよう.
11.3 エントロピー 169 初めにエントロピーの変化を追う.
A0からA1 この過程は等温過程であり,温度T の熱源に接している.
よって,
S(A1)−S(A0) = QA0→A1
T = P0V0
T log(V1/V0)
= nRlog(V1/V0) =nRlog(T /T2)
(11.32)
となる.最後の式では,T2=T×(V0/V1)を用いた.
A1からA2 機関の内部の温度は連続的に変わっている.熱量と温度の関 係はdQ= 5nR
2 dT である.よってエントロピーの変化は S(A2)−S(A1) = 5nR
2
∫ T2 T
dT
T = 5nR
2 log(T2/T) (11.33) となる.
A2からA0 定積変化なので,dQ= 3nR
2 dT である.エントロピーの変 化は
S(A2)−S(A1) = 3nR 2
∫ T T2
dT
T = 3nR
2 log(T /T2) (11.34) エントロピーの変化を合計すると,
nRlog(T /T2) + 5nR
2 log(T2/T) + 3nR
2 log(T /T2) = 0 (11.35) となり,エントロピーはサイクルを1周すると0になることがわかる.
一方,クラウジウスの不等式を計算してみよう.この場合,Q/T に現れ る温度は熱源の温度であることに注意しよう.
A0からA1 この過程は等温過程であり,温度T の熱源に接している.
よって,
QA0→A1
T = QA0→A1
T =nRlog(V1/V0) =nRlog(T /T2) (11.36) となる.エントロピーの変化と同じである.
A1からA2 この場合,熱源T2に接しているので,
QA1→A2 T2
=
5P0V0
2
(V0−V1
V1
) T2
= 5nR 2
V0−V1 V0
= 5nR 2
T2−T T2
(11.37) となる.
A2からA0 この場合,温度Tの熱源に接触しているので,
QA2→A0
T = P0V03(V1−V0) 2V1
T = 3nR
2
V1−V0
V1 = 3nR 2
T−T2
T (11.38)
よって,
QA0→A1
T + QA1→A2
T2 + QA2→A0
T
=nRlog(T /T2) + 5nR 2
T2−T T2
+ 3nR 2
T−T2 T
(11.39)
である.定数nRで規格化し,x=T /T2とすると,この値は f(x) = logx+ 5
2(1−x) + 3(x−1)
2x (11.40)
となる.f(1) = 0,およびx >1に対して,
df(x)/dx= 1 x − 5
2 + 3 2x2 =
(1 x −1
) + 3
2 ( 1
x2 −1 )
<0 から,f(x)<0(x >1)である.よって確かにクラウジウスの不等式を満た しいる.(等号は成り立っていない.)
状態量 前章で圧力や体積,温度,内部エネルギーを定義した.簡単の ため,粒子数が一定の系をこれからは考える.このとき,系の熱力学的な 状態は,体積と温度を決めれば変わる.たとえば,
P =FP(V, T) (11.41)
であり,
U =FU(V, T) (11.42)
となる.最初の式をV について解くと
V =FV(P, T) (11.43)
となる.これを使うと,
U =FU(V(P, T), T) =GU(P, T) (11.44) となる.あまり実用的でないが,温度をU とV であらわすことも可能であ る.このように,2つの熱力学的な変数を指定すると状態が決まる量を,状 態量とよぶ.
このように書くと熱力学で出てくる量はすべて状態量のように思えてし まうが,たとえば熱とか仕事は状態量ではない.ある体積と温度を指定し ても,その体積や温度にどのようにしてもって行ったかに依存してしまう からである.
例で見たように,サイクルを一周すると,エントロピーは元に戻る.エ ントロピーは状態量である.
孤立系におけるエントロピー増大の法則 クラウジウスの不等式の応用 として,以下のサイクルを考える.
1. 状態Aから状態Bへと適当に変化させる.
11.4 熱力学関数 171