第 4 章 重力下の複雑な運動 43
4.3 終端速度
4.3 終端速度 49
質量mの物体がhだけ落下したと想定すると,3.3節でのべたように,
v=√
2gh (4.23)
の速度となる.いま,高度1万メートルの高さの積乱雲から,ひょう(あ られ)が地上に落下したとすると
v=√
2gh≒440 [m/s]≒1600km/h (4.24) となり音速を超え,マッハ1.3という速さとなってしまう.これは新幹線の +マッハとは音速を基準に
測った速度である.音速は約 340 m/s =約1200 km/h.
5倍以上,ジェット旅客機の2倍ということになる.こんなひょうにあたっ たらたいへんである.農作物,山や森の植物は全滅,民家の屋根や窓も莫 大な被害を受け,多くの死傷者がでてしまう.
もちろんこんな高速のひょうは降らない.それは大気の空気抵抗が有効 に働き,速度を減速するからである.重力の影響で落下速度が大きくなる とCvが増え,やがてこれが重力と等しくなる.
mg=Cv (4.25)
こうなると物体には力が働かず,等速運動となる.そのときの速さはmg/C である.これを終端速度とよび,v∞と表す.
v∞= mg
C (4.26)
∞の意味は,時間が無限大になった場合の速さを意味する.
+ひょうの場合には先に述 べた慣性抵抗を考慮しなけれ ばいけない.例題参照.
速度-時間グラフ これまでにわかったように,空気抵抗がある場合の速 度の変化はなかなか複雑である.tが小さいとtと速度vの関係はv=gtで あるが,tが大きいときはv=v∞である(図4.5).したがって,一般的な v−t曲線はこれらの極限を図4.5のようになめらかに結んだものである.
図4.5 空気抵抗がある場合のv-t曲線
そこでこの曲線を表現する式を推測してみる.こころみに
v=v∞−Ae−Bt (4.27)
4.3 終端速度 51 を考える.tが大きいと,これは確かにv=v∞ となる.
tが小さいとき,e−Bt≒1−Btとなることを使うと
v≒v∞−A(1−Bt) =v∞−A+ABt (4.28) となる.これがgtに等しくなるためには
A=v∞, B=g/v∞ (4.29) となっていればよい.v∞=mg/Cを代入するとB=C/mとなるので,
v=v∞(1−e−(C/m)t) (4.30)
をうる.
このvの表式が式(4.21)を満たしていることを代入して確かめてみよう.
dv
dt = 0−v∞ d
dte−(C/m)t (4.31)
=−v∞ (
−C m
)
e−(C/m)t (4.32)
よって式(4.21)の左辺は mv∞
(C m
)
e−(C/m)t=mge−(C/m)t ここで終端速度の表式,v∞=mg/C (式(4.26))を用いた.
一方,式(4.21)の右辺は
mg−Cv=mg−Cv∞(1−e−(C/m)t) =mg−Cv∞+Cv∞e−(C/m)t= 0+mge−(C/m)t である.よって式(4.30)は解となっている.初期条件を決めれば解は1つ
しかない.よって式(4.30)が唯一の解である.物理ではこのように物理的 な直感から解の形を仮定して,実際に運動方程式を満たしていることを示 すことが,強力な方法となる.
例題4.1 空気抵抗がある場合のボールの運動
初速度v0で上方に投げられた質量mのボールが最高点に達して,落 下し始めた.
1. 終端速度はどうなるか.
2. 空気抵抗があるときとないときで,最高点の高さに達する時間 はどう違うか.
ただし空気抵抗は速度vのボールに対してFv =−Cvとする.
終端速度v∞はmg+Fv=mg−Cv= 0となる速度なので,v∞=mg/Cのま まである.
この場合の速度を式(4.30)を参考に
v(t) =A−Be−mCt (4.33) と仮定してみる.この表式が運動方程式,
mdv
dt =mg−Cv
を満たすには,BCe−Cmt=mg−C(A−Be−mCt),つまりA=mg/Cである必 要がある.
v(t) = mg
C −Be−Cmt=v∞−Be−mCt (4.34) またt= 0でv(t) =−v0(鉛直下向きを正としていることに注意)より,−v0 = mg/C−B,つまりB =mg/C+v0 =v∞+v0となっていなければならない.
よって
v(t) =v∞−(v∞+v0)e−mCt= (v∞+v0)(1−e−mCt)−v0 (4.35) を得る.最高点ではv= 0となっているので
0 = v∞−(v∞+v0)e−mCt
∴e−mCt = v∞ v∞+v0
(4.36) よって最高点に達する時間は
−C
mt = log v∞ v∞+v0
∴t = m
C log v∞+v0
v∞
(4.37)
さて,v∞v0の場合,log v∞+v0
v∞ = log(1 +v0/v∞)≒v0/v∞− 1
2(v0/v∞)2 である.これを代入して
+|x| 1の場合,
log(1 +x)≒x−x2/2 t≒m C
v0
v∞
„ 1− v0
2v∞
«
= v0
g
„ 1− v0
2v∞
«
(4.38) 空気抵抗がない場合はt=v0/gであるから,空気抵抗があるときは最高点に早め に達する.