第 5 章 霊石県方言の内部差異と言語伝播の可能性
5.1 霊石県における内部差異の段階的地理分布
103
104
表
5-1-5-2
12項目の内部差異の調査地点別分類結果(続)地点 咸山摂 宕江摂 梗摂開口二等 梗摂三四等 入声韻母 歯茎音+i 桑平峪 一二等・知系三等=三四等 円唇 低母音 高母音 1系列 無(→ei) 崔家溝 一二等・知系三等=三四等 円唇 低母音 高母音 2系列 有 静昇 一二等≠三四等 円唇 低母音 高母音 2系列 有 軍営坊 一二等≠三四等 円唇 低母音 高母音 2系列 有
段純 一二等≠三四等 円唇 混合 高母音 2系列 有
東許 一二等≠三四等 円唇 低母音 高母音 2系列 有 城関 一二等≠三四等 円唇 低母音 高母音 2系列 有 馬家庄 一二等≠三四等 円唇 低母音 高母音 2系列 有 業楽 一二等≠三四等 円唇 低母音 高母音 2系列 有 仁義 一二等≠三四等 円唇 低母音 高母音 2系列 有
岩村 一二等≠三四等 円唇 混合 高母音 2系列 有
秋牧 一二等≠三四等 介音のみ円唇 低母音 高母音 2系列 有 木瓜曲 一二等・知系合口三等
=三四等 円唇 混合 高母音 2系列 有
閣老窊 一二等≠三四等 円唇 低母音 高母音 2系列 有 欒崖底 一二等=三四等 非円唇 低母音 非高母音 2系列 有 前壇 一二等≠三四等 円唇 低母音 高母音 2系列 有 王禹 一二等≠三四等 円唇 低母音 高母音 2系列 有 道美 一二等≠三四等 非円唇 混合 非高母音 2系列 有 后背掌 一二等≠三四等 非円唇 混合 非高母音 2系列 有 南関 一二等≠三四等 非円唇 混合 非高母音 2系列 有 石柜 一二等≠三四等 非円唇 非低母音 非高母音 2系列 有
この表から分かるように、
21
の調査地点のうち最も対照的なのは、霊石県北東部に位置す る桑平峪と、霊石県南端に位置する石柜である。この2
地点の方言は、霊石県に内部差異が 見られる12
項目の全てについて対立している。12
項目の内部差異について、桑平峪と同じ 類型を「霊石県北東部タイプ」、石柜と同じ類型を「霊石県南部タイプ」、両者が混合してい る類型を「混合タイプ」とし、霊石県西部に独自の特徴が見られる項目については、上記の3
類型に「西部タイプ」を加え、12
項目の分類の内訳を地点ごとに集計すると、下表のよう になった。105
表
5-2
12項目の内部差異のタイプ別集計結果地点 北東部タイプの 特徴の数
混合タイプの 特徴の数
南部タイプの 特徴の数
西部タイプの 特徴の数
桑平峪 12 0 0 0
崔家溝 7 3 2 0
静昇 6 3 3 0
軍営坊 6 2 4 0
段純 4 4 4 0
東許 6 2 4 0
城関 6 2 4 0
馬家庄 6 2 4 0
業楽 6 2 4 0
仁義 6 2 4 0
岩村 4 4 4 0
秋牧 5 3 4 0
木瓜曲 3 4 5 0
閣老窊 5 3 4 0
欒崖底 2 3 6 1
前壇 6 2 4 0
王禹 4 2 6 0
道美 0 4 8 0
后背掌 0 4 8 0
南関 0 4 8 0
石柜 0 0 12 0
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集計結果を円グラフ化し、地図上の調査地点の位置に示したものが図
5-1
である。円グラ フの中で、桑平峪と同じ類型「霊石県北東部タイプ」は青色、石柜と同じ類型「霊石県南部 タイプ」は黄色、両者が混合している類型「混合タイプ」を緑色、霊石県中部に独自の類型「中部タイプ」を白色で示している。この図から、霊石県北東部の桑平峪に近いほど、桑平 峪と同じ「北東部タイプ」の特徴の割合が増えていることが分かる。逆に、霊石県南部の石 柜に近いほど、「北東部タイプ」の特徴は減少し、石柜と同じ「南部タイプ」の特徴が増加し ている。また、霊石県の東西でも違いが見られ、東部と西部を比べると、東部の方が西部よ りも「北東部タイプ」の特徴が多いことが分かる。
このように、霊石県における音韻的特徴の内部差異は、全体として北東部
―
南西部間の約39km
の間で段階的な地理分布を形成しており、音韻的特徴の類似性と地理的な近接性に平行 性がある。これは、霊石県における音韻的特徴の地理分布形成に言語伝播が関わっているこ とを示唆していると考えられる。図
5-1
霊石県における12項目の内部差異の段階的地理分布一方、
12
項目の内部差異について、各項目からの地点で21
地点の状況を見ると、声調の 陰陽分化に関する現象、声母に関する現象、韻母に関する現象の間に違いが出ているように 見える。まず、声調と中古音全濁声母の有気化は、全く同じ地理分布を示しており、「北端の桑平峪