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電気・電子機器産業(遼寧省大連)

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はじめに

私は、2002年5月から2007年7月までの5年2カ月間、中国遼寧省大連経済技術開発 区にある、東芝大連有限公司(以下、当社)の責任者として赴任したが、その時に経験し たり取り組んだりした人材の育成について紹介する。とは言っても中国は大きな国であり 大連市という地方都市の一企業の取り組み事例が、読者にとって意味のある内容になるか どうかは甚だ心許ないが、参考になれば幸甚である。

(東芝大連本社)

1.中国遼寧省大連市の概要

大連は、中国東北部の遼寧省に属し、北緯38度(仙台市に相当)、東経121度に位置し た遼東半島にある。大連の総面積は12,573㎢(ほぼ新潟県に相当)、人口は約580万人で、

行政区画は、大連市(6区)、1県、3市(普蘭店、瓦房店、庄河)から構成される。

大連の中心である大連市の人口は280万人である。

大連と日本とは歴史的にも大変関係が深い。大連市のある遼東半島は、日清・日露戦争 の戦跡である203 高地や旅順港、水師営会見所などがあり、1905 年に日本が租借して以 降、第二次世界大戦の終戦までの間に日本人が約20万人住んでいた時代もある。

1978中国政府は経済体制の改革を決定すると同時に、1980年から順次、対外開放政策 として広東省の深圳、珠海、汕頭、福建省のアモイ及び海南省の5カ所の経済特区を設置 した。1984年には、さらに大連を含む14カ所の沿海都市を開放した。

2001年11月にWTO加盟承認を受けて、中国は法体系の整備を含めて大きな変化と新 たな発展の道を歩み始めた。その中で大連は「北の香港」を標榜して、経済技術開発区を 中心に高進技術開発区、保税区、保税物流園区、ソフトウエアパーク等を有し、2001年以 降、年率15%以上の高度経済成長を続けており、中国東北地域の中核的発展都市としての 地位を築いている。現在、約3,700社の日系企業が進出し長期滞在の日本人は約6,000人 である。

また、海あり山あり緑ありの大変恵まれた自然があり、新鮮な魚介類、果物、野菜が豊 富に出回り、大連市民は大変親日的でホテルやレストランでは日本語が通じるなど、日本 人が暮らしやすいインフラ環境が整っている。一度、大連で暮らしたことがある日本人は、

「第二の故郷、大連」と言って懐かしむ人が大変多い。

2.東芝大連有限公司の概要

当社は、東芝本社が独資で中国進出を決定した第1号で、1991 年9月に大連経済技術 開発区内に設立された。操業開始は1993年4月で、操業当初は、テレビ用の部品・コン ポーネント、産業用小型モータ、電磁遅延線を生産して全量、日本へ輸出することから始 まった。その後、中国市場の発展に合わせて、医用画像診断装置類の開発・設計・製造、

各種映像機器用電子チューナの設計・製造、産業用小型モータ・ポンプの設計・製造など へ、労働集約型企業からハイテク・高付加価値企業へと業容を変えると共に、日本向けの みならず、中国国内、アジア、米国へ出荷をするようになった。

会社の組織は、3 工場(医用機器、映像部品、モータ)と共通スタッフ(総務、財務、

生産、IS(情報管理))で構成され、従業員数は約 1,600 人(うち、日本人駐在者 8名)

である。

複数の事業を受け持つ会社であることから、それぞれの事業が親会社と連結決算できる ように、事業別区分経理を行っている。

この会社の特徴は、そのミッションに表れている。すなわち、①東芝独自の製品・部品 の生産拠点として品質・コストメリットの追求 ②東芝及び東芝グループが担当する事業 の中国進出の先導的な役割を発揮し、生産リソースの共用、立ち上げ時の負担軽減 ③複 数事業製品相乗りの共同管理メリットを発揮 ④東芝グループの部品調達拠点 ⑤大連地 区の東芝グループ立ち上げ支援・援助等にある。

したがって、当社の従業員は、「東芝グループのために」という意識と誇りを持って中 国国内の東芝現地法人への協力や、大連地区に進出してきた現地法人の立ち上げ支援を積 極的に行ってきた。

先導的役割の例としては、1998年ISO9002 認証取得、1999年ISO14001 認証取得、

2002年ISO9001とISO14001の統合システム認証取得、2007年OHSAS18001(労働安 全衛生マネジメントシステム)認証取得等、中国内の東芝現地法人に先がけて各種認証を 取得してきた。

また、東芝希望小学校(東芝グループの援助により建設された学校)の設立や大学研究 室への寄付などを始めとして、会社と従業員が一体となった各種地域貢献活動や会社業績 に対して、大連市政府や開発区管理委員会から多くの認定称号を授与され、行政府から大 変信頼されている企業となっている(例:外商企業双優奨(中国)、顕著貢献外資企業(遼 寧省)、税関管理AA類企業(大連市)、先進技術企業(大連市)、大連市50大手納税企業、

他多数)。

3.大連で業務を進めるための人づくりの留意点

当社は、東芝が中国に独資進出した第1号であることもあり、会社設立準備段階から総 務、経理、情報システム、生産などの各分野の高い専門性を有するメンバーにより周到な 準備をして立ち上げられた。すなわち、会社の骨格を形成する業務分掌規定をはじめとし て総務、経理、生産等の業務規定類が高い完成度をもって事前に策定された。

人材採用についても大連市政府の全面的なバックアップの下に優秀な人材が採用され、

入社後は社内教育計画に基づいて多くの時間が従業員教育に当てられ、継続して現在に至 っている。

私は三代目の責任者として2002年5月に着任してまず感じたことは、操業開始後10年 を経過し、優秀な従業員が育ってきていること、また、グローバル化が進んで東芝の事業 変化の波が中国の拠点にも波及してきており、ただ単に与えられた製品を製造し日本に輸 出していることだけでは先行きの継続発展は望めない段階にあるのではないかということ である。

すなわち、付加価値の低い生産品種の入れ替えや事業そのものの入れ替えが急務である 一方で、優秀な従業員を更に育成して日本人主体の経営から経営の現地化、現地人化を一 段と進めていく時期にきており、それらを通して、製造主体の会社から設計・製造・販売・

サービスを取り込んだ事業会社への取り組みが必要であると感じた。そして、そのための 施策展開が重要であるが、その中でも特にスピードある組織風土に変えること、そして更 に高い専門性を持つ人材育成が重要であると感じた。

普段の仕事の取り組みを観察していると、「指示されたこと以外はやらない」、「連携して 仕事をすることが不得手」、「責任を回避する」などの傾向が見受けられた。私見ではある が、中国人は、個人主義、合理主義、ハングリー、スピードある行動、家族優先、特に子 供最優先などの特徴があり、また、中国社会は労働市場が流動化しているためか共産党体 制からか、欧米型のトップダウンが馴染むようである。

私は、会社組織はヒエラルキー構造ではあるが、それぞれの仕事は役割(機能)であっ て、担当する人はその仕事への向き不向き、すなわち適材適所が重要だと考えている。各 部門でそれぞれのメンバーが担当分野の専門性を高くして少数精鋭化した組織、そして、

自分の役割に対して思う存分、能力を発揮できるようなフラットな組織と風土を作りあげ ることが重要になってきていると考えた。

そこで、優秀な社員と一緒に仕事をするために、こんな組織風土の会社を作りたいとい う思いで、「明るさ、感度、スピード、実行」という標語を作った。「明るさ」とは、オー プンマインド、公明、公正であること。「感度」とは、些細な問題や小さな状況変化が今後 どのように仕事に影響するかを推測し早めに対応準備ができること。特に行政やお客様か らのクレーム、業務上で解決が遅れている問題の状況等、いわゆる悪い情報を迅速に組織 内で共有できるようにして、問題が小さな段階のうちに解決ができること。「スピード」と は、意思決定、業務処理、情報伝達等のスピードを上げること。「実行」とは、一度決めた ら結果が出るまで取り組むことである。このような価値観を共有するため、色々な機会を 通じて従業員に伝え、対話会等も行った。

話は、ちょっと脇道にそれるが、2007 年 8 月、久しぶりに日本に戻ってきて、色々な セミナーに参加してみると、「グローバル、モノづくり、人づくり」というキーワードが目 についた。その背景には、東芝をはじめ日本の企業は、海外生産比率が高まるにつれて海 外の生産関連要員は増加してきているが、知識・経験の豊富な日本の会社と、そのノウハ ウを十分に持たない海外の会社の実態など、グローバル企業として地域毎のバランスが悪 い状態が現実にあり、もっとダイナミックに人材交流を盛んにして、人材の偏在化を是正 することが必要だとの時代の要請があるように思える。

どの現地法人でも、歴史を重ねていくと従業員の業務経験を通して専門性が高くなり、

管理の仕組みが充実して組織活動の水準が上がってくる。それに伴って、進出当初の単純 な最終組立検査機能だけの生産形態から、部品製造機能や、設計開発機能や、商品開発機

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