• 検索結果がありません。

医療器具産業(遼寧省大連)

ドキュメント内 % 55 8% 1,600 1, (ページ 30-39)

はじめに 

筆者は、大連技術開発区に 1990 年創設されたディスポーザブル医療器具メーカーで 1996年9月より2005年2月までの9年半、副総経理(総務・人事・労務・国内販売を 担当)及び総経理(全部門統括)を勤めた。製品の20%〜25%を中国国内に販売、その他 は日本などに輸出。在職時職員数700~800名、日本人派遣員数5~6名。医療器具の生産 現場では、クリーンエリアの設置、防塵服の着用、適温維持、作業者の衛生管理などさま ざまな厳しい法規制があり、日夜、顧客に安全・安心な製品を届けるため奮闘した。ここ は、 よい製品をつくるためによい人をつくる という実践の場でもある。本報告書では、

1.人づくりの成否は企業トップの心構えが決める、2.日本人派遣員に対する教育、3.

現地スタッフに対する教育、の3項目を中心に記述する。

1.人づくりの成否は企業トップの心構えが決める 

(1)トップの率先垂範

トップ自らが相当の覚悟で相当の時間を注ぎ込まないと人づくり⇒職場づくりはうま くいかない。 いい商品 をつくるには、需要家を大事にする、他者を思いやることのでき る、隅っこや端っこの見えないところに心を配る いい人 をつくる必要がある。トップ の一挙手一投足は全職員に注目されており、何かにつけ職場に大きな影響を与える。トッ プが金や時間にルーズだと皆同じくルーズになりし、人づくりに熱心なら部下もそれを真 似る。トップが自ら人づくりに率先垂範まい進しないことには人づくりは前進しない。

(2)心を通わし、会社理念の徹底

心の門が開かれてないのに、どんなにいいことを言っても馬の耳に念仏、人づくりなど できるものではない。中国人スタッフと心を通わそうとする時、生活習慣・環境、生活・

文化レベル、民族・国家、人生観、道徳観、幸福感などのさまざまな障壁がある。

この障壁を乗り越えるには、まず相互理解が不可欠である。中国の国家社会、歴史、文 化、制度、生活環境・レベルなどへの総合的な理解が必要になる。同時に、彼らの心の門 を開くため、まず重要なのは、彼らが会社を信頼し誇りを持てるよう、会社を魅力あるも のにすることである。ある時、社内に海賊版ソフトが氾濫したことがあった。この時、膨 大な費用を惜しまず断固許さぬとの姿勢を貫くことで多くの職員の信を得ることができた。

誠実にやるべきことを実行する中で得た 信 こそが、相互理解に大きな役割を果たし、

「われわれは市場と顧客のおかげで生活できている」という市場本位・顧客本位の理念を 企業の隅々に浸透させることが可能になる。

(3)社内腐敗を傍観しない

赴任直後、直面した難題は「外部との不適正な金銭授受」問題であった。部門を問わず 幅広い分野にその現実があった。意図的な高値買い付け、裏リベートや心づくし(好処費)、

内外・相呼応した偽領収証処理、各種不正費用の支払いなど、適切でない出費が数え上げ

ればきりがないほど存在した。こういった「社内問題」をなくすことは、業績アップや社 内透明性のアップに直結するだけに、避けることのできない道である。ただ功をあせると 現地スタッフの多くと対立し複雑な労務問題に発展しかねない。時間をかけ周囲の共感を 得ながら進めることが肝要であり、一歩一歩着実にやる以外にない。ここでも部下の一人 一人と人生の生き方・あり方や会社のあり方を話し合い、彼らの良心に問いかけた。一人 また一人と共感する仲間をひろげ前進するしかない。

2008年 6月、北京にあるカルフールで、肉・精肉の買い付け担当者 8名が、業者から 多額の賄賂を受け取っていたとして逮捕された。民間企業間での賄賂が摘発されたのは極 めてまれで、今後同様の事件が明るみに出てくる可能性がある。最近、当地外資企業でも 中間管理職層の腐敗が顕著になっており、金額も一人何万元といった単位ではなく、単位 が一つも二つも上がったと聞く。スタッフを腐敗から守るため 心のバリアー を植え込 んで、正道に進ませることができれば、その経営の未来は明るい。

(4)透明性と公平感を高め職場の活性化を

企業で公表できない情報は限定される。情報の共有や経営の透明化は、職場の活性化や 仕事への意欲に影響を与える。会社方針決定過程において、役職者会議などでまず十分議 論し、結論を全社に公表し会社方針を職員全体で共有する意識を育てた。定例社内会議、

ISO認可取得・品質向上運動、昇格決定会議、提案活動、年3回の労使交渉の場などあら ゆる機会をとらえ、会社方針・考え方を周知徹底させ共有化を図った。一方、高学歴化を 図り夜学通学支援、日本語国際検定やジェトロ日本語検定試験への動員とその結果に基づ く関連手当のアップ、新規学卒者の思い切った採用増などによる職場空気の高揚・活性化 を図った。人材の流出は、単に給与レベルが原因ではない。職場環境や上司との関係が影 響するので、時に配置転換が有効である。職場を変えることで人が生き返る。部門別にス タッフ全員の人事計画を作成、将来の人事異動や昇格昇進の参考にする。人事評価会議は、

より多くの関係者の参加を得て行い、公平な評価を目指す。激烈な会議になっても我慢強 く納得するまで議論した。また、いい人材をキープできる給与待遇体制をつくりあげた。

人事は企業のかなめ、企業トップは人事に相当の時間と力を割いて、すべての職員が適 材適所で活躍し生きがいを感じることのできる企業を目指した。

(5)経営者を育てて現地化を推進する

着実に業績を上げるため、経営のコスト・効率を考慮すると現地化を推進する以外に道 がない。経営・管理を任せることのできる中国人スタッフを育成することが企業としての 急務であり、トップ自らが現地化に心をこめてしっかり取り組まなければならない。ここ でも心の門をたたき、ひたむきな話し込みが必要になる。「わが社の生きる道」「企業の社 会的責務」「人づくりは製品づくり」「人生の夢と希望」「謙虚造福」「寛容造和」「忍耐造人」

「食苦造楽」などが、筆者にとって話し込みのキーワードだった。

2.日本人派遣員に対する教育 

(1)派遣員間の意思疎通とまとまり 

派遣員の間でいざこざがあると職場に波紋が広がる。地位や立場の如何を問わず、派遣 員は組織の核的存在、彼らがまずしっかりとまとまることが全職場をまとめる基盤となる。 

定例的な内部息抜き会も必要である。そんな場で、「日本では一歯車かもしれないが、

こちらではあなたの給与は中国人の何十人分。経営者になったつもりで物を見、物を聞き、

物を言ってほしい。それなりの仕事をしないと顰蹙ひんしゅくを買うことになる」と語らい続けた。 

(2)日夜、部下を育てることに注力すること 

派遣員は日本に帰る時がすぐに来るので、それまでに部門の核になる5人を育てる。会 社への思いのほどが、部下教育に表れる。部下教育の成果が、派遣員の考課で大きな比重 を置くことを派遣員に周知徹底した。部下には何度も同じことを言い続ける。部下教育の 仕事は「うまず、たゆまず、あきらめず」である。

(3)日本人だからえらいわけではない

派遣員の中には、日本人は現地スタッフより一等立派でえらいと勘違いしている人がい る。こういった派遣員は、現地スタッフとトラブルを起こしやすい。中国人スタッフに仕 事を担当させながら、肝心な情報を日本人だけで独占して、現地スタッフを説明不足の断 片的な指示で動かそうとする。指示を出す時は、部下の共感を得ながら、系統性のある指 示を出す。仕事の本質をつかみ、その全体像や将来性、仕事の組み立てやスケジュールを 部下に話す。情報の共有は、彼らを信じるというメッセージとなり、彼らの自発性と積極 性、責任感を引き出すことにつながる。情報支配でスタッフを自分の好きなように動かそ うという考えでは、部下は育たず、ひいては会社はよくならない。経験知識が組織に蓄積 されるよう、個人プレーでなく組織を大切にしながら周囲の共感を得つつ仕事をする。

日本人課長が現地スタッフ部長に命令・指示などやるべきでない。筋を通し組織を通し てやることが、組織を強くすることになる。

(4)自分でやるな、部下にやらせろ

部下は暇だが自分は忙しい。これでは職場は何時までも変わらない。縁の下の力持ちに なり、裏方に回った形での部下教育が必要なのである。ルーティンの仕事は部下に任せ、

自分は部下教育に徹し部下を使うことに習熟する。頭にあるものを部下の手足を使って実 現させる。判断材料となる多くの事実・情報を提供し、結論をあせらず最終判断は部下に 任せその責任をとらせる。

日本人の給与は秘密ではない。それに見合う仕事をしないと現地スタッフは納得しない。

派遣員は人の嫌がる裏方の仕事を率先してやるべきである。縁の下の力持ちになって、

失敗は自分のせい、成功は部下の手柄にする。

(5)部下の名前をすぐに覚えよ

名前を呼んでコミュニケーションすること。会社内に親族がいたり、学生時代の同級生 がいたり、いろんな形の人間関係が存在するので、これをしっかり抑えること。グループ や派閥も存在する。各人の個性や友人関係もしっかり把握すること。派遣員の私的生活も 現地スタッフはよく知っている。特に派遣員は私的生活での乱れに注意する。靖国問題で ゆれた時期は、特に神経を使った。各種レクリエーションの開催(山登り、海水浴、ウオ ーキング、観桜会、サッカー大会など)社内融和を図る。工場敷地内に小型だがサッカー 場をつくり職場対抗戦を定期的に開催した。人づくりは仲間作りからである。

(6)派遣員は日本語講座の講師に

宿舎の若い人を対象に週2回日本語口座を開催。派遣員全員に日本語口座の講師になっ てもらった。中国人の生活観や生き方を学ぶよいチャンスとなる。2005年秋、開発区に発 生したストは各社の宿舎が拠点になったが、わが宿舎内では何のトラブルも起きなかった。

ドキュメント内 % 55 8% 1,600 1, (ページ 30-39)