中国の電子情報通信産業は、1978 年から 1980 年代中期 にかけて、軍事産業から軍事・民生産業への転換を果た した。また、80 年代中期から 90 年代初期には消費電子製 品の生産が開始され、90 年代末期にかけてはハードの製 造やソフトウェアの制作・応用と情報サービス業の共同 発展を実現した。
この分野において、中国は多方面で日米欧をキャッ チアップしつつあり、研究者数、発表論文ともに着実に 増加してきている。とくにレベルアップが顕著なのは、
VLSI、 ディスプレイ、データベース、並列コンピュー ティング、光通信などである。
珠江デルタや長江デルタ、環渤海地域では、電子情報 産業ベルトが形成され、携帯電話、マイクロコンピュー タ、デジタル電話交換機、カラーテレビ、デジタルカメ ラなどの電子製品の生産高が世界 1 位になった。
こうしたなかで、工業・情報化部の李毅中・部長(当 時)は 2008 年 12 月、技術の飛躍的進歩をめざす重点分野 の 1 つとして電子情報分野をあげ、ソフトウェア、IC、新 型フラットパネル ・ ディスプレイ、半導体照明、次世代 ネットワークなどの中心となる技術の研究開発、産業化 を重点的にサポートし、ソフトウェアと IC 産業の新しい 政策を打ち出す意向を明らかにした。
また、温家宝首相(当時)が 2009 年 2 月 18 日に召集し た国務院常務会議では、「電子情報産業調整振興計画」が 審議され原則可決された。会議では、米国の金融危機を 発端とした世界的な景気後退を受け、国際市場での需要 が急減し、世界の電子情報産業が大きな調整局面を迎え ているとの認識で一致した。
このため、電子情報産業の振興にあたっては、自主的 イノベーションの強化や産業の発展環境の改善に加え、
情報化・工業化の融合の加速、重要プロジェクトによる 技術面での飛躍的な進歩、新規応用による産業発展の推 進に努力を払うことが重要との方針が確認された。ま た、常務会議では、電子情報産業における今後 3 年間の 重要任務が以下のように決められた。
① 産業体系を健全化し、基幹産業の安定的な成長を確保 する。コンピュータ産業の競争力を引き上げ、電子部 品と関連製品の改良を加速し、AV(音響・映像)産業 のデジタル化を重点的に進める。
② 自主的イノベーションをベースとして、中核技術を飛 躍的に進歩させ、自主独立した IC 産業体系を構築する とともに、新型ディスプレイ産業の障害をクリアーし、
ソフトウェア産業の自主的発展能力を強化する。
第4章 電子情報通信分野
第4-7表 業種別に見た中国の電子情報通信製造業の2008年実績(一定規模以上の企業)
業 種 企業数
(社)
主要業務収入 工業増加値
2008年合計
(万元)
増減
(%)
2008年合計
(万元)
増減
(%)
合計 16515 512530538.0 12.8 114078575.1 14.7
通信設備製造業 1396 84601418.3 6.6 19178904.7 12.3
レーダ製造業 47 1697059.8 30.3 475176.7 30.3
放送設備製造業 402 3284068.7 10.0 942052.1 9.9
コンピュータ製造業 1460 171343075.6 7.3 26907131.0 7.9 家庭用AV製品製造業 1001 38077595.6 9.3 7143986.7 10.8 電子デバイス製造業 2464 65746474.9 22.0 18697535.7 21.8 電子部品製造業 6079 93981874.1 16.9 25609025.8 17.1 電子測量計器製造業 683 5730938.2 20.4 1924103.8 20.5 電子専用設備製造業 1359 13105274.5 35.1 4017437.4 35.1 電子情報電機設備製造業 1062 13347033.2 15.7 3680616.9 16.2 その他電子情報工業 562 21615725.1 17.4 5502604.3 20.6 (外国・香港・マカオ・台湾投資企業) 7546 396183038.5 9.6 84131811.1 11.6 (国有持株会社) 964 34345134.5 15.2 7722289.1 13.3
出典:工業・情報化部(http://www.miit.gov.cn/n11293472/n11295057/n11298508/11979560.html)
③ 応用を進めることによって発展を促し、サービス及び サービスモデルの革新を推進する。各種分野での情報 技術の応用を拡大する。
また、以下の具体的措置が打ち出された。
① 内需拡大に加え、電子情報製品の応用、産業の発展領 域の開拓に力を入れる。
② 資金投入を拡大し、IC 回路の改良、新型ディスプレイ やカラーテレビのモデルチェンジ、第 3 世代移動通信 産業における飛躍的な発展、デジタルテレビの普及、
コンピュータの性能向上や次世代インターネットの応 用、ソフトウェアと情報サービス関連のプロジェクト を実施し、社会資金の投入が電子情報産業に向かうよ う奨励する。
③ 自主的イノベーション能力の構築を強化する。関連す る国家科学技術重大専門プロジェクトの実施を早め、
企業による M&A(合併・買収)を支援し、公共技術 サービス環境の健全化をはかる。
④ サービスのアウトソーシングを促進し、企業が海外で 研究開発を行い、生産基地やマーケティング ・ ネット ワークを構築するよう支援する。
⑤ 政策面での支援を強化し、ソフトウェアと IC 産業発展 に向け関連奨励政策の一層の充実をはかり、デジタル テレビ産業の政策を実施する。また、ハイテク企業の 認定目録と基準の調整を行い、これまで通り電子情報 製品の輸出税還付に力を入れる。さらに、輸出貸付と 信用保険による支援を一層拡大し、中小企業における 債券発行の試行対象範囲を拡大する。
なお、工業・情報化部が2010年2月3日に公表した「2009 年電子情報産業経済運行公報」によると、同分野におけ
る一定規模以上の製造業の 2009 年の主要業務収入は、前 年に比べて0.1%多い5兆1305億元に達した。ソフトウェ ア産業は前年の 7573 億元から 25.6 %増の 9513 億元を記 録した。
第 4-7 表に電子情報通信分野における製造業の業種別 実績、第 4-8 表に主要製品の生産量を示す。また、第 4-9 表に 2009 年の主要電子情報製品の生産状況を、第 4-10 表 に 2009 年の主要電子情報製品の普及率を示す。こうした 表からも明らかなように、一部機器では減少傾向が見ら れるものの、携帯電話、パソコン、カラーテレビに対す る需要は依然として堅調である。
工業・情報化部が 2010 年 2 月 3 日に公表した「2009 年 電子情報産業固定資産投資状況」によると、2009 年の電 子情報分野での固定資産投資額(1件500万元以上に限定)
は、完成分を合計すると前年比 17.5 %増の 4146 億 6000 万元となった。2009 年の新規投資額は対前年比 34.9 %増 の 2621 億元に達した。
2009 年に電子情報産業分野で新規に着工したプロジェ クト件数は 4443 件となり、前年から 1300 件増加した。内 訳を見ると、電子部品関係が一番多く全体の 42 %を占め た。また、電子素子(16 %)や情報機電(同)、専用設備
(13 %)の割合も高くなっている。
工業・情報化部が 2014 年 3 月 4 日に公表した「2013 年 電子情報産業統計公報」(「2013 年電子信息産業統計公 報」)20によると、2013 年における中国の電子情報産業の 販売収入は前年から 12.7 %以上の伸びを示し 12 兆 4000 億元を記録した。このうち一定規模以上の製造業の収入 は 9 兆 3000 億元となり前年比 10.4 %増、またソフトウェ ア産業の収入は 3 兆 1000 億元(速報値)となり前年比 24.6 %増を達成した。
第4-8表 2008年の主要電子情報製品の生産量(一定規模以上の企業)
製 品 単 位 2008年合計 2007年合計 増 減
携帯電話(GSM CDMA) 万 55964.0 54857.9 2.0
デジタル交換機 万(回線) 4583.9 5387.0 −14.9
FAX 万 769.9 888.5 −13.3
カラーテレビ 万 9033.1 8478.0 6.5
パソコン 万 13666.6 12073.4 13.2
(内ノートパソコン) 万 (10858.7) (8671.4) (25.2)
ディスプレイ 万 13364.6 14438.1 −7.4
プリンタ 万 4334.0 4234.7 2.3
ディスクリート半導体 万 24611353.3 25045769.0 −1.7
IC 万 4171490.6 4116232.0 1.3
デジカメ 万 8188.3 7493.5 9.3
出典:工業・情報化部(http://www.miit.gov.cn/n11293472/n11295057/n11298508/11979560.html)
第4-9表 2009年の主要電子情報製品の生産状況
製 品 単 位 生 産 量 対前年比(%)
携帯電話 万 61925 10.7%
携帯電話基地 万 3022 102.2%
カラーテレビ 万 9899 9.6
パソコン 万 18215 33.3
プリンタ 万 3641 −13.6
デジタルカメラ 万 8026 −1.7
IC 億 414 −0.7
出典:「2009年電子信息産業経済運行公報」(工業・情報化部、2010年2月3日)
第4-10表 2009年の主要電子情報製品の普及率
2009年 2008年
電話加入者 総数(万戸) 10億6107 9億8203
普及率(%) 79.9 73.9
携帯電話加入者 総数(万戸) 7億4740 6億4123
普及率(%) 56.3 48.5
インターネット加入者 総数(万戸) 3億8400 2億9800
普及率(%) 28.9 22.6
パソコン 総数(万台) 2億2000 1億8056
100人あたりの保有台数 16.7 13.6
家庭用テレビ 総数(万台) 5億6000 5億1840
100軒あたりの保有台数 132 128.4
出典:「2009年電子信息産業経済運行公報」(工業・情報化部、2010年2月3日)
第4-8図 2009年に新規に着工したプロジェクトの分野別内訳
出典:「2009年電子信息産業固定資産投資状況」(工業・情報化部、2010年2月3日)
第4-9図 2009年の電子情報産業分野の投資資金の出所
出典:「2009年電子信息産業固定資産投資状況」(工業・情報化部、2010年2月3日)
第4章 電子情報通信分野
第4-11表 中国の2013年の電子情報産業の主要指標
単 位 絶対量 伸び率(%)
1.一定規模以上の電子情報製造業
主要業務収入 億元 93202 10.4
利潤総額 億元 4152 21.1
税金総額 億元 1845 19.1
従業者 万人 93891 11.0
固定資産投資 億元 10828 12.9
電子情報製品輸出入総額 億米ドル 13302 12.1
輸出額 億米ドル 7807 11.9
輸入額 億米ドル 5495 12.4
2.ソフトウェア産業
ソフトウェア産業収入(速報値) 億元 3.1 24.6
3.主要製品生産量
携帯電話 万台 145561 23.2
マイクロコンピュータ 万台 33661 -4.9
カラーテレビ 万台 12776 -0.4
集積回路 億個 867 5.3
出典:「2013年電子信息産業統計公報」(工業・情報化部、2014年3月)
第4-12表 2013年の電子情報産業固定資産投資状況
投資完成分 新規増加分の固定資産
累計 前年同期 増減(%) 累計 前年同期 増減(%)
合計 10827.8 9591.5 12.9 6749.4 6664.4 1.3
通信設備製造 897 654.4 37.1 502 398.2 26.1
テレビ放送設備製造 218.1 259.5 -16 154.7 207.5 -25.5 コンピュータ製造 823.9 809.5 1.8 492.1 587.4 -16.2 家庭用視聴覚設備製造 210 170.1 23.5 147.6 124.8 18.3 電子デバイス製造 2470.6 2027 21.9 1455.1 1457.4 -0.2 電子素子製造 2239.3 1926.6 16.2 1493.1 1353.3 10.3
測定機器産業 513 375.5 36.6 333.7 265.5 25.7
電子工業専用設備 1343.3 1014.4 32.4 798.5 672.1 18.8 電子情報機械・電気産業 1779.2 1804.4 -1.4 1152.1 1196.6 -3.7 その他電子情報産業 333.6 550.1 -39.4 220.5 401.7 -45.1
国内資本企業 8772.3 7556.1 16.1 5486.8 5018.5 9.3 外資企業、合資企業、合作企業 2055.6 2035.4 1 1262.6 1645.9 -23.3
出典:「2013年1−12月電子信息産業固定資産投資完成情況」
(http://www.miit.gov.cn/n11293472/n11293832/n11294132/n12858462/15861705.html)
2
.エレクトロニクス(
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)マルチコアプロセッサ中国は、高周波・アナログの集積回路、集積回路のイン テグレーション、ディスプレイ技術の産業技術力で世界 最先端にあるが、全体では日米欧韓とはまだ開きがある。
そうしたなかで、次世代スーパーコンピュータにも採用 が予定されている、中国が独自に開発中の中央演算処理 装置(CPU)「龍芯 3 号」の大量生産が視野に入ってきた。
中国科学院は 2008 年 8 月、米カリフォルニア州で開催 された「Hot Chips 展」で「龍芯 3 号」を公開したことを 明らかにした。これを受け、中国科学院・計算技術研究
所の徐志偉・副所長は同 11 月 30 日、2008 年内に 4 コア、
2009 年には 8 コアバージョンを完成させ、大量生産を開 始する考えを表明した。
中国科学院・計算技術研究所の李国傑所長は 2006 年 9 月 13 日、中国が独自に開発した中央演算処理装置(CPU)
「龍芯 2 号」の検証状況報告会で、「龍芯 2 号高性能汎用 CPU の回路設計」(龍芯 2E)が「863 計画」の検証作業を クリアーしたことを明らかにするとともに、「第11次5ヵ年」
期間(2006 〜 2010 年)内に、8 〜 16 コアのマルチコアプロ セッサ「龍芯 3 号」を開発する計画を明らかにしていた。
計算技術研究所は2001年3月、1000万元を投入して「龍