第6章 港湾・鉄道を主体とした広域物流回廊インフラ整備支援の 方向性
6.5 鉄道インフラ整備の支援の方向性
6.5.1 鉄道インフラ整備の支援方策の検討
鉄道インフラ整備の支援方策と、西アフリカ訪問国の鉄道を事例とした適用可能性を以 下に示す。
(1) 老朽施設のリハビリ支援
軌道・路盤・橋梁等鉄道輸送の安全・安定輸送の基盤となる施設について、そのリハビ リを行うものである。サブサハラアフリカの鉄道は、一般にこれらの基盤施設が老朽化し、
速度制限による列車の運転速度の低下、脱線事故の多発等による輸送力が低下しており、
需要への対応ができていない鉄道が多い。
これらの基盤施設をリハビリすることにより、鉄道の安全性と安定輸送を担保し、顧客 の信頼を得る必要がある。具体的な効果としては、脱線事故件数の減少、徐行運転の解除 による列車速度向上と輸送時間の短縮、脱線復旧作業の減少による運転休止時間の短縮
(結果的に運転・輸送時間の短縮)、脱線復旧作業費の減少、脱線車両の修理費の減少、車
両の稼働率の向上、き損貨物補償費の減少等が見込まれる。輸送時間の短縮および車両の 稼働率の向上は輸送効率の向上に直結し、より多くの需要に答えることができる。さらに、
単位輸送量当たりの輸送コストが節減できるため、経営の改善につながる。
なお、上記基盤施設のリハビリに際しては、まず軌道、信号・通信、車両、運転の各分 野を総合して事故原因の徹底的な検証・分析を行うことも重要である。これら検証・分析 を通じて効果的な対策を立案し、老朽施設のリハビリも含め、次項以降に示す各分野の支 援を計画的かつ総合的に実施していく必要がある。
(2) 車両不足の解消支援
新製・再生車両の調達を行うと同時に、故障して稼働できない車両の整備支援が求めら れている。西アフリカでも、多くの鉄道が稼働車両の不足により輸送力が低下し、需要に 対応できていない。そのためには、新製・再生車両の調達による車両増備が必要である。
また、故障して稼働していない車両の整備を行うための補修パーツの補充が必要である。
さらに、車両の保守効率を向上して車両の稼動率を向上させることが急務である。車両増 備により、より多くの需要に答えることができ、単位輸送量当たりの輸送コストも節減で きる。
(3) 車両工場の近代化支援
車両の検査・修繕のための工場を近代化し、効率的な車両保守を実現するための支援で ある。西アフリカでは各鉄道とも、車両の検査・修繕のための工場は、機関車・貨車・客 車のオーバーホールまで行う設備を保有しているが、旧式であり、効率的な車両の保守が 困難となっている。車両工場における課題としては、①補修パーツの充足、②車両の検 査・修繕のための工場の近代化、効率的な車両保守の実現、③車両稼動率の向上、④車両 保守能力向上のための教育・訓練などがあげられる。補修パーツの不足は、多くの場合、
他の故障車両からの部品取りによる共食い整備の温床となり易く、稼働車両数の更なる減 少への悪循環となるケースが多い。
(4) 軌道の強化支援
レールの重軌条化・バラスト厚の増加・マクラギの敷設本数の増・PCマクラギ化等によ り線路基盤施設の強化を行うものである。西アフリカの多くの鉄道で敷設されているレー ルは、40 kg/m に満たない軽量で耐用年数を過ぎた老朽レールが使用されている事例が多 い。バラスト厚の不足、マクラギ本数の不足等による軌道耐力不十分も目立つ。レールの 重軌条化、適切なバラスト厚の確保、良質のマクラギと十分な敷設本数等が必要であり、
これにより保守費用を減少させることができる。
(5) 信号設備の改良支援
信号システムの近代化・再導入を図ることにより、安全性の向上、運営の効率化を図る 支援が求められている。西アフリカでは、信号システムが旧式であることや、保守の欠如 から実質的に無信号運転となっている事例も多い。信号システムは、列車運転の安全を確 保するための基幹システムであることから信頼性の向上が必須である。
(6) コンテナ輸送への対応支援
コンテナ専用車両の増備を行い、また、コンテナ取扱駅の整備、専用線・荷役設備等の 設置・改良等を行う支援が必要である。近年、サブサハラアフリカの鉄道貨物におけるコ ンテナの割合が急増しており、今後、さらにコンテナ輸送の重要性が増すものと考えられ る。一方で、サブサハラアフリカでは、専用列車も運用されてはいるが、一般の貨車と混 合で輸送されている事例もみられ、運搬用車両の増備や、荷役設備の充実、取扱基地の設 置・拡充により、コンテナ輸送力の向上が必要である。
(7) 従業員の能力向上支援
サブサハラアフリカでは、一般的に鉄道職員のスキルは不足しており、マネジメントや、
軌道保守、路盤、橋梁等鉄道施設保守、車両保守、信号保守、コンテナ取り扱いなどの分 野での運営効率が十分でないと考えられる。職員の技術力で手に負えない車両の修理は、
ヨーロッパの技術者の出張修理を依頼しているなどの現実があり、車両保守能力の向上が 求められている。支援策としては、短期的には、専門家の派遣、研修制度の活用などによ り、鉄道員の能力向上を図るものである。長期的には、現地に鉄道職員技術研修施設など を建設し、技術能力向上を図ることが考えられる。
(8) コンセッションの改善支援
本報告書第4章での、鉄道PPP 事業の事例研究では、法制度の不備、契約条項の不備、
政府の責任回避、投資資金の不足、補償費の不払い等、問題のある事例が多い。コンセッ ショネアの自助努力のみで対応できない場合、コンセッション改善の可能性を検討する必 要がある。しかし、サブサハラアフリカでの鉄道 PPP の導入は、世銀が 1990 年代より取 り組んできている課題であり、この分野での支援は世銀との連携が必要である。
(9) 車両工場の近代化支援
車両の検査・修繕のための工場を近代化し、効率的な車両保守を実現するための支援で ある。西アフリカでは各鉄道とも、車両の検査・修繕のための工場は、機関車・貨車・客 車のオーバーホールまで行う設備を保有しているが、旧式であり、効率的な車両の保守は 困難となっている。車両工場における課題としては、①補修パーツの充足、②車両の検 査・修繕のための工場の近代化、効率的な車両保守の実現、③車両稼動率の向上、④車両 保守能力向上のための教育・訓練などがあげられる。補修パーツの不足は、多くの場合、
他の故障車両からの部品取りによる共食い整備の温床となり易く、稼働車両数の更なる減 少への悪循環となるケースが多い。
6.5.2 鉄道インフラ整備の支援メニュー
上記の検討を踏まえた、鉄道インフラ整備における一般的な支援プログラムメニューを 表 6-7に示す。
表 6-7 鉄道インフラ整備の支援メニュー
支援方策 支援内容 支援の種類
老朽施設のリハビリ • 事故原因の検証と分析を行い、総合的な対策 を立案する。
• 軌道・路盤・橋梁等鉄道輸送の安全・安定輸 送の基盤となる施設について、そのリハビリ を行う。
技術協力 資金協力
車両不足の解消 • 新製・再生車両の調達、故障して不稼働とな っている車両の整備を行う。
技術協力 資金協力 車両工場の近代化 • 車両の検査・修繕のための工場を近代化し、
効率的な車両の保守が出来るものとする。
技術協力 資金協力 軌道の強化 • レールの重量化・バラスト厚の増・マクラギ
敷設本数の増・PC マクラギ化等により線路 基盤施設の強化を行う。
技術協力 資金協力 信号設備の改良 • 信号システムの近代化・再導入を図ることに
より、安全性の向上、運営の効率化を図る。
技術協力 資金協力 コンテナ輸送への
対応
• コンテナ専用車両の増備を行う。
• コンテナ取扱駅の整備、専用線・荷役設備等 の設置・改良等を行う。
技術協力 資金協力 従業員の能力向上 • JICA 専門家の派遣、鉄道員の JICA による
国・課題別研修制度の活用により、相手国鉄 道員の能力向上を図る。
• 現地に鉄道職員技術研修施設を無償資金で建 設し、JICA専門家を講師として一定期間相手 国鉄道員を教育し、技術能力向上を図る。
技術協力 資金協力
コンセッションの 改善
• コンセッションの問題点を把握してその問題 点の解消を図るほか、港湾のコンセッション との連携を図る。
技術協力
6.5.3 サブサハラアフリカにおける鉄道インフラの類型
サブサハラの鉄道は、運営形態(国営、民営、PPP 化の段階)、貨物・旅客輸送のタイプ、
サービスエリア(国内完結、広域回廊、長距離回廊)などの点で、その特性が異なるため、
整備課題や優先支援策は異なる。本節では、各鉄道の特性に基づいた適切な支援プログラ ムを検討するため、表3-9(第3章)に示された 48の鉄道を類型化する。まず、広域回廊