5.7.1 利用者からみた輸送手段選定の要因
西アフリカへの現地調査では、利用港湾・陸上輸送手段(鉄道か道路か)について、多 くの荷主や輸送業者の意見を聴取した。この結果、利用する港湾や陸運の手段を選定する に当たり、実に様々な要因を考慮していることが判明した。
(1) 利用港湾の選択要因
表 5-17 には、西アフリカへの現地調査から明らかになった利用港湾の選択要因を示す。
表 5-17 港湾選択に影響を与える要因 項目 港湾特性
時間 • 港湾キャパシティ(需要に対して十分なキャパシティがあれば待ち時間 が少なくなる)
• コンテナ母船が寄航する港湾か否か(港湾水深・荷役機械設備などが影 響、フィーダー船で再輸送すると費用がかかる)
• 航路ネットワーク上で貨物の発着地に近いか(海運時間に影響)
• 各種港湾手続きの効率
• コンテナターミナル運営効率(コンテナの港湾通過時間に影響)
• 荷揚げまでに要する時間
• 通関・トランジット手続きに要する時間
• 港湾周辺の道路状況(渋滞がある場合、総輸送時間に影響)
• 取引の頻度などから優遇措置が受けられる
64 現地フォワーダーへの聞き取りによる(2010年4月)。
項目 港湾特性
費用 • コンテナ母船が寄航する港湾か否か(フィーダー船で再輸送すると費用 がかかる。港湾水深・荷役機械設備などが影響する)
• 航路ネットワーク上で貨物の発着地に近いか(海運コストに影響)
• 港湾使用料(接岸料・荷揚げ料金、保管費用)
• 無料保管期間と超過保管料金
• 通関費用
• その他税関費用(トランジット貨物のBond等)
• 港湾所属国税関によるトランジット貨物への課税(例:ガーナの港湾を 利用した輸出貨物の場合)
信頼性 • 貨物のセキュリティ(紛失、損傷リスク)
• 政治リスク(港湾閉鎖・国境閉鎖のリスク)
• 倉庫の有無・キャパシティ・機能(冷凍・冷蔵施設)
• 鉄道引き込み線の有無(一般貨物、コンテナ貨物別)
その他 • 特定港湾のバース割り当てを確保している
• 特定港湾での取引の頻度などから優遇措置が受けられる
• 特定港湾を荷主が指定する場合が多い
広域的役割を持つ港湾の改善は、上記の点を考慮して整備を進めることが重要である。
(2) 陸上輸送手段の選択要因
表 5-18 には、鉄道と道路の選択要因を示す。ここで重要な点は、港湾は、港湾同士の 競争のみであり、特定の回廊内での競争はない。ところが、鉄道と道路は、常に競合関係 にある点である。現在は、鉄道の老朽化が進み、道路輸送が優位という状況にある。
表 5-18 鉄道と道路選択に影響を与える要因
項目 鉄道選択要因 道路選択要因
時間 • 運行頻度(キャパシティに影響)
• 輸送キャパシティ(待ち時間に影 響)
• 貨 車 待 ち 時 間 ( 総 輸 送 時 間 に 影 響)
• 鉄道インフラ・車両の状態(運行 速度に影響)
• 出発地・到着地のトラック輸送へ の接続環境65
• 道 路 の 状 態 ( 走 行 速 度 に 影 響 す る)
• チェックポイントの数(停止回数 が多いと輸送時間が多くかかる)
• トラック待ち時間
• 国境付近の税関検査にかかる時間66
• 国境付近の渋滞
• 国境付近の駐車場の有無
費用 • 鉄道運賃(料金体系で総合的に判 断)
• 出発地・到着地での保管料金体系
• 貨車積み順位決定の透明性67
• 道路の状態(走行速度により燃料 費が変化する)
• 税関エスコートの有無と料金レベ ル
• GPS追跡システムの有無68
65 例:十分なスペースはあるか、機材はそろっているか等。
66 鉄道では国境通過時間はあまり問題とならない。
67 インフォーマルな支払を要求される場合は輸送コストに影響
項目 鉄道選択要因 道路選択要因
• 国境通過手続きにかかる費用
• 軸重規制の有無(輸送コストに影 響)
• チェックポイントの数69
• 企業連合によるトラックの配分の 有無70
信頼性 • 通常の運用では貨物の紛失・損傷 リスクは道路経由よりも低い
• スケジュールとおりに運行される か ( 道 路 経 由 よ り は 信 頼 性 が 高 い)
• 鉄道インフラ・車両の状態(脱線 の危険性がある場合は損傷リスク に影響)
• 道路の状態(積荷の損傷リスクに 影響)
• 車両の状態(積荷の損傷リスクに 影響)
• 運転手の信頼性(責任感、時間の 厳守、積荷の保全、安全運転)
• 休 憩 施 設 の 充 実 ( 安 全 運 転 に 影 響)
その他 • 時間よりも費用(低コスト)を優 先する場合
• 一般的に500 km以上の陸上輸送の
場合鉄道が費用面で有利になる
• バルク貨物(鉱物資源・塩・セメ ント・コメ)などは鉄道輸送が有 利
• 輸出貨物の場合は鉄道を利用する 場合が多い71
• 鉄道インフラがない
• 費用よりも時間(早い)を優先す る場合
• 生鮮食料品・その他農産物の輸送 など
また、利用者は、費用や時間要因に加えて荷物の損傷・紛失リスク、スケジュールなど の信頼性も重要な要因と判断している。
① 貨物の紛失・損傷リスクの高い施設は利用を避ける
② 複数の回廊を同時に使用し、リスクを分散させる場合もある
広域回廊整備における陸上輸送インフラの整備は、回廊地域の物流特性を十分考慮し、
モード間のバランスのとれた整備を推進する必要がある。
5.7.2 広域物流回廊整備の視点
(1) 複数回廊オプション確保の重要性
内陸国の荷主にとっては複数の物流回廊を確保することが重要である点は2003年からの コートジボワール紛争の影響からも明らかである。紛争の影響で、Abidjan港の機能はマヒ し、コートジボワールとブルキナファソ国境も長期にわたり閉鎖された。現在でもAbidjan 港から内陸への貨物は紛争地域を通過しなければならない。図5-4、図5-5(共に第5章)
68 税関エスコートが必要ないため経費節減となる。
69 インフォーマルな支払総額が大きくなる。
70 自由競争が無い場合は輸送経費が高くなる。
71 トラック輸送は到着日時を指定しても信頼できない(ブルキナファソの輸送業者の意見)
には、1998 年から 2006 年のブルキナファソとマリ向け貨物の利用港湾の推移を示した。
紛争の勃発した2003年を境として、ブルキナファソ向けの多くの貨物は Abidjan港から、
Tema港、Lome港へ移動した。近年では Cotonou 港利用の貨物も増加傾向にある。同様に マリ向け貨物はAbidjan港からTema港、Takoradi港、Conakry港、Lome港へ移動したこと を示している。興味深い点は、マリ向け貨物に限定した場合、Dakar 港経由の貨物が、一 般に考えられているほど増加していない点である。これには、セネガル・マリ間の道路整 備などの進展はあるものの、鉄道施設では需要に見合った輸送容量が確保できていないこ とが考えられる。
(2) 内陸国と沿岸国の期待への配慮
広域物流回廊整備の意義は、内陸国と沿岸国で異なる。サブサハラアフリカの主要港湾 における内陸国貨物の取扱高は、自国関連貨物と比較すると少ない。このため、広域回廊 整備に対する期待は内陸国にとっては、港湾へのアクセス確保の観点から整備優先度は高 いものと考えられるが、沿岸国にとっては、回廊整備による自国の内陸地域の開発、およ び資源開発促進の意義が大きい。結果として、沿岸国の広域輸送回廊の整備優先度は内陸 国ほど高くないことが考えられる。
広域輸送回廊整備には沿岸国の地域整備・資源開発などの利益があることを示し、沿岸 国での整備優先度を高めてゆく必要がある。
(3) 輸入・輸出貨物量の格差の是正
マリ、ブルキナファソなど、西アフリカの内陸国関連の貨物は、輸入関連貨物が圧倒的 に多い(図 5-46 参照)。このため、輸送車両やコンテナは内陸方向での利用が多く、港湾 方向は少ない。結果として、鉄道やトラック車両、コンテナは、多くの場合、一方向のみ に利用され、復路は空荷の場合が多い。効果的な輸送インフラ投資には、バランスのとれ た物流需要を喚起することが望まれる。
輸入
輸出
その他 石油製品
マ リ
ブルキナファソ
(トン)
出典:ECOWAS, West African Road Transport and Transit Facilitation Strategy, 2008 図 5-46 西アフリカ内陸国では輸出より輸入が多い
(4) 輸送内容の把握
アフリカの鉄道による旅客輸送量と貨物輸送量の地域別比較は表 3-10(第 3 章)に示し た。この表により、アフリカの鉄道は主に貨物を輸送していることを示した。ただし、北 アフリカと南アフリカの鉄道は他のアフリカ地域よりも、比較的多くの旅客輸送を行って おり、北アフリカの鉄道では、貨物輸送よりも旅客輸送がメインとなっている。
鉄道による輸送物資は路線により大きく異なる。例えば、GRC、Gabon、Zambia、
CFM/CDN/CFBB、Madrail、BR などの鉄道では鉱物資源輸送の割合が大きい。他の鉄道で
は、農産品、木材、セメント、肥料、燃料などが比較的、大きな割合を占めている。鉄道 整備を検討する場合、沿線地域における産業構造と輸送物資の関連、および将来的なポテ ンシャルを把握することが重要となる。
(5) 過積載問題と軸重規制への対応
西アフリカでは過積載による舗装の損傷が大きな問題となっている。過積載により、道 路寿命が半減している場合も多いとされ、道路整備費用の増大、車両速度低下による輸送 費用の増大を引き起こしている。これまで、過積載への対応は国別・地域別に行われ、異 なった軸重基準が適用されてきた。しかし、異なった軸重基準では、国境で荷物を積み替 える必要が生じる他、広域的な規制が困難となる。このため、ECOWAS や UEMOA の主 導により、加盟国では以下の協定が結ばれている。
• 決議C/RES.1/12/88:11.5トン規制実施
• 決定書D/DEC.7/7/91:道路規則および軸重規制の決定
• 決議C/RES.5/5/90:ウェイブリッジの設置
• 決定書C/DEC.7/7/91:各国における道路規則は11.5トン軸重規制に準拠すること
• 規則 14/2005/CM/UEMOA:車体寸法、12 トン軸重規制決定、規制のコントロー
ル・実施方法
表 5-19にはECOWASによる軸重規制値を示す。
表 5-19 ECOWASによる軸重規制
車両種 軸重規制(トン)
1. 前1軸重 6トンまで
2. 中間・後部の一軸重 12トンまで
3. 中間・後部の二軸重 タイプ2車両:21トンまで タイプ4車両:20トンまで 4. 3軸(タンデムを含む) 25
5. コンテナ台車(タイプ4):後部の2軸も しくは3軸のタンデム
24
出典:Decision C/DEC.7/7/91 Relating to the Road Traffic Regulations Based on the 11.5 Tons Axle Load to Protect Road Infrastructures and Road Transport Vehicles