第7章 港湾・鉄道を主体とした広域物流回廊整備のモデル支援 プログラム
7.2 モデル回廊の選定
本節では、5.2節で抽出した回廊から、モデル支援プログラム対象路線を選定する。選定 にあたって、モデル支援プログラムの趣旨を反映した評価指標を、以下のように設定した。
表 7-1 モデル支援プログラム対象回廊選定と評価指標
番号 評価指標 内容
1 物流コストの低減 西アフリカ地域の広域的物流コスト低減に大きく貢献する。
2 関連諸国の関心 回廊整備に向けて、関連諸国の関心が高い。
3 ドナーの協調 他のドナー支援も開始されており、ドナー間の協調効果を期 待できる。
4 回廊の関連情報 現実的な支援プログラムを作成するだけの情報が存在する。
5 多様な支援方策の 組合せ
様々な手法を組み合わせたドナー支援の組合せが可能であ る。
6 鉄道路線と計画 回廊沿いに既存の鉄道路線があるか、F/Sの実施された計画路 線がある。
7 プログラム実現の 可能性
支援プログラム実現の可能性が高く、受皿となる実施機関の キャパシティの問題が比較的小さい。
表 7-2には、上記評価指標にもとづいた、各広域物流回廊の評価結果を示す。
表 7-2 広域物流回廊の評価 回廊名
評価基準
1 2 3 4 5 6 7 得点
S1 Dakar – Bamako回廊
(道路、鉄道) ○ ○ ○ ○ ○ ○ △ 13 S2 Dakar – Nouakchott回廊
(道路、鉄道計画) △ △ △ △ △ △ × 6 S3 Dakar – Conakry回廊
(道路) △ △ △ × △ × × 4 S4 セネガル-ガンビア-ギニアビサウ
回廊(海路・道路構想) △ × × × △ × △ 3 M1 Bamako – Dakar回廊
(道路、鉄道) ○ ○ ○ ○ ○ ○ △ 13 M2 Bamako – Abidjan回廊
(道路、鉄道計画) ○ ○ ○ △ △ ○ △ 11 M3 Bamako – Ouagadougou回廊
(道路、鉄道計画) △ ○ △ △ ○ △ △ 9 M4 Bamako – Gao – Niamey回廊
(道路) × △ △ × △ × × 3 M5 Bamako – Nouakchott回廊
(道路) × △ △ × × × × 2 M6 Bamako – Conakry回廊
(道路) △ ○ △ × × × × 4 M7 Kayes – Saint-Louis回廊
(河川) × △ × × △ × × 2 B1 Ouagadougou – Abidjan– Niamey 回廊
(道路、鉄道) ○ ○ ○ △ △ ○ ○ 12 B2 Ouagadougou – Niamey – Cotonou回廊
(道路、鉄道計画) ○ △ ○ △ △ ○ △ 9 B3 Ouagadougou – Kaya – Dori – Tambao
回廊 × △ △ △ △ △ ○ 7
B4 Ouagadougou – Bobo-Dioulasso –
Bamako回廊(道路、鉄道計画) △ ○ △ △ ○ △ △ 9
B5 Ouagadougou – Kumasi – Tema
(Takoradi) 回廊(道路、鉄道計画) ○ △ ○ ○ ○ △ × 10
B6 Ouagadougou – Lome回廊
(道路) ○ ○ ○ × △ △ × 8 G1 Tema (Takoradi) – Ouagadougou
回廊(道路、鉄道計画) ○ △ ○ ○ ○ △ × 10 G2 Tema – Yendi – Ouagadougou/ Niamey
回廊(道路) △ △ ○ △ △ × × 6 G3 Abidjan – Accra – Lome – Cotonou –
Lagosの回廊(道路、鉄道計画) ○ △ △ × ○ △ △ 8
注:○ そのとおりである(2 ポイント);△ 部分的にそのように言える(1 ポイント);× そうではな いか該当しない(0ポイント)
以上の評価から、得点の高い、下記の 2 つの回廊をモデル支援プログラム対象として選 定した1。
1 本研究におけるモデル策定のための評価であり、JICAによる支援の優先度を表すものではない。
モデル回廊 1:Dakar – Bamako 回廊 (S1, M1)
モデル回廊 2:Abidjan – Ouagadougou – Niamey 回廊 (B1)
次節以降に、上記回廊整備にともなうモデル支援プログラムを示す。
7.3 Dakar – Bamako 回廊整備支援プログラム(セネガル・マリ回廊)
7.3.1 回廊開発とインフラ整備の視点
(1) 回廊沿線地域の概要
セネガルは約1千2百万人の人口、約130億USドルのGDPを備える大西洋岸の国であ る(2008 年)。同国では比較的安定した政治状況と経済成長が見られる。西アフリカの中 心国の 1 つであり、域内および AU内でも重要な地位を占めている。主要産品には落花生 や綿花、水産物、リン鉱石などがあり、鉄鉱石、金、原油などの資源も埋蔵されている。
貿易、通信などのサービスセクターが発達し GDP の 65%を占めており、都市化も進行し
国民の 42%が都市域に居住している(2007 年)。セネガル政府は 80 年代以降、自由化や
民営化等の改革を推進してきた。
一方のマリは内陸国であり、人口は約 1 千 2 百万人、GDP は約 87 億 US ドルである
(2008 年)。主要産業は就業人口の約 80%が従事し、GDP の約 50%を占める農牧業であ り、綿花が主力産品となっている。また、金の産出はサブサハラアフリカで 3 番目の規模 である。このようなモノカルチャー型の経済は天候や一次産品の国債価格の影響を受けや すいが、2005年以降は成長傾向にある。
セネガルにとってマリは輸出の約 20%を占める最大の輸出相手であり、逆にマリにとっ てはセネガルが EU に次ぐ第 2 の輸入相手となっている。セネガルからマリへの輸出の大 部分は再輸出である。人の移動の観点からは、セネガルにおけるマリ人の出稼ぎが見られ る。
(2) 回廊の概要
回廊の概要は5.2.2節で述べた。起点となるDakar港は古くからアフリカの西の玄関港と して栄え、特にヨーロッパ方面の輸出入貨物は Dakar 港を経由する場合が多い。セネガル では北部・東部での資源開発が進展しており、特に同国の内陸部を経由する鉄道網整備は セネガルにとっても大きなメリットがある。また、セネガルはマリへセメント、塩、海産 物なども輸出している。マリからセネガルへは家畜などが輸出されている。
セネガルとマリにまたがる鉄道は総延長1,236 km (Dakar – Bamako) であり、Transrailに より運営(貨物と旅客)されている(図 7-1 参照)。セネガルには Dakar – Thies – Tambacounda – Kidira 間の約 643 km の幹線と Thies – Saint-Louis、Diourbel – Touba、
Guinguineo – Lydianceの3支線約263 km 2を合わせた合計906 kmの鉄道路線がある。マリ 側の鉄道はBamako – Kayes – Kidira間の約593 kmの幹線とBamako – Koulikoro間の支線約 60 kmがある3。Transrailのインフラ施設の現況と運営状況の詳細は5.3.2節に示す。
図 7-1 Dakar – Bamako回廊位置図
回廊沿線の主要都市の概要は表 7-3に示す。
表 7-3 Dakar – Bamako回廊沿線の主要都市と概要
国名 都市名 概要
セネガル Dakar セネガルの首都であり、首都圏全体での人口は 2百万人を
上回る。Dakar 港を擁しており、西アフリカの貿易におい
て重要な位置を占めている。また、Dakar に拠点を置く広 域金融機関もあり、金融・商業の面でも西アフリカで中心 的な機能を果たしている。
Thies Dakar から東に約 70 km に位置し、約24 万人(2002 年)
の人口を持つ。Dakar との間で通勤鉄道路線が運行されて いる。繊維産業が主要な産業となっている。
Tambacounda Dakarの南東約400 kmの地点に位置し、約8万の人口を有
する(2007 年)。綿花や落花生の集散地である。Dakar 方 面、マリ方面、ギニア方面の主要道路が合流する結節点で ある。
Kidira マリとの国境に位置する(マリ側はDiboli)。
マリ Kayes Bamako から 510 km、セネガル川沿いに位置する都市であ
る。およそ十万人が居住する。
Bamako ニジェール川の河岸にあり、約 170万人の人口を持つマリ
の首都である。周辺諸国へ向かうルートが集中する商業交 易上の結節点であり、Bamako からは主に繊維、食肉製 品、金属加工品、水産物が取引される。
2 Diourbel – Toubaを除いて、現在は運行停止中。
3 現在は運行停止中。
(3) 回廊特性と優先支援分野
6.3 節で示した回廊特性の分類によると、Dakar – Bamako 回廊は、域内貿易と域外貿易 の両方の役割を果たしている。域内貿易としては、セネガルからマリ方面へのセメントや、
肥料、海産物の輸出、マリからセネガル方面への家畜や野菜などの輸出がある。域外貿易 としては欧州やアジアからの穀物や、食料品、軽工業品(家電製品)の輸入が多く、また 限定的ではあるが大型発電機や建設機械などの重工業品の輸入も増加の傾向にあるものと 考えられる。さらに回廊沿いの鉱物資源の域外輸出も増加の傾向にある他、新規の資源開 発(Matam のリン鉱石や国境付近の鉄鉱石など)計画も進展している。マリの域外貿易の
距離は500 kmを越えること、セネガルからマリへの域内貿易輸出品はDakar周辺の産品が
多く域内貿易においても 500 km を越える物流が多いことから、内陸輸送モードとしては 鉄道輸送整備が重要となる。また、域内貿易同様、域外貿易需要の高い回廊であることか ら、港湾、ドライポート整備や、Single Windowの導入、トランジット貨物のトラッキング システムの導入などの港湾に関連する貿易円滑化施策が優先施策となる。
(4) 港湾インフラ整備の課題
港湾セクターの優先施策としては、Dakar港が港湾類型Bの「広域回廊上に位置するラン ドロード型の非近代的コンテナターミナルを有するトランジット港」であることから、後背 地の開発や陸上輸送網との接続等も考慮したマスタープランの策定や、優先プロジェクト に関するフィージビリティ調査が重要となる。さらに、内陸国への輸送コスト削減のため 通関や越境手続きの効率化が求められる。
現在、西アフリカでも貨物のコンテナ化が進んでおり、トランジット貨物の大多数はコ ンテナ化されるものと推測され、Dakar – Bamako回廊の港湾セクターの課題はコンテナ貨 物の円滑な輸送の促進を図ることにある。したがって、Dakar – Bamako回廊の起点となる
Dakar 港では、トランジット貨物の荷役および貨物取扱手続きや、税関手続きの改善が主
要課題となる。これには、ドライポートなどトランジット貨物取り扱いに関連した施設に おける同様な取り扱いあるいは手続きの改善への対応も含まれる。
Dakar 港では 2008年にDP World がコンテナターミナルのコンセッション契約を取得し
た。この契約には既存のコンテナターミナルを近代的なコンテナターミナルに改造し運営 するばかりではなく、北防波堤沖側に新たなコンテナターミナルを建設し運営することが 含まれ、現在、DP Worldは進入航路、埋め立て、陸上アクセスを含む施設配置計画を検討 している。新コンテナターミナルの計画は、石油バースの補修あるいは移転、バルクター ミナルの運営との整合性の確保など、Dakar 港全体の拡張計画と運営に大きな影響を及ぼ すものと思われ、DP Worldの新コンテナターミナル計画策定とともに、公共側の利益を守 るために、Dakar 港当局が Dakar 港開発マスタープランの策定にあたり、必要に応じて、
DP Worldがコンセッション契約にもとづき建設・運営する新コンテナターミナル配置計画
との整合性を図る必要がある。
また、トランジットコンテナの回廊輸送にあたっては、港湾周辺市街地の道路混雑解消 とともに将来的に燃料が高騰する可能性をも考慮し、Dakar 港の全体計画の中に鉄道コン テナターミナルの建設計画を組み込み、少なくとも用地を確保しておく必要がある。