第6章 港湾・鉄道を主体とした広域物流回廊インフラ整備支援の 方向性
6.4 港湾インフラ整備の支援の方向性
6.4.1 港湾インフラ整備の支援方策の検討
上記の課題整理にもとづいた、港湾インフラ整備の支援方策と、西アフリカ訪問国の港 湾を事例とした適用可能性を以下に示す。
(1) 港湾整備計画の策定と優先プロジェクトの形成支援
コンテナ貨物の急増、PPP 事業化促進のながれから、ともすればコンテナターミナルの 開発が短期的な視点で行われ、ターミナルの乱立や近傍港湾間での過当競争等、地域全体 として非効率な投資となりかねない。特に西部アフリカでは、数多くの広域回廊があり、
かつ港湾の数も多いことから、競合する港湾を包含する地域全体を見た港湾開発戦略を策 定することは、支援の優先度を判断する意味からも重要である。
また、コンテナターミナルの開発が短期的な視点で行われた場合、個々の港湾において は、コンテナ以外の貨物取扱機能に対するしわ寄せが生じる等、港湾全体として整合性の とれた調和ある発展を阻害してしまう恐れもある。従って、効率的・効果的な施設配置計 画と計画的な施設整備を進めるためのマスタープランの策定と、これに基づく優先プロジ ェクトの抽出が必要である。
例えば、セネガルDakar港はDP Worldがコンセッション契約の中で北防波堤外側にコン テナターミナルを建設する予定である。しかし、鉄道コンテナターミナルの計画や石油バ ースの改修あるいは移設などについての議論がなされていない。こうした港湾では、新コ ンテナターミナル計画に合わせた総合的な港湾整備計画に関する技術支援が必要である。
また、Takoradi 港のように既存の施設配置計画などに妥当性を欠く港湾についても、同様 である3。なお、ナイジェリアのように自国資金で新港建設計画を実施することができる国 や、ガーナ Tema 港4のように、既に港湾整備計画を策定した港湾については技術支援の必 要性は低い。
3 2010年現在、マスタープラン策定と海上油田の支援基地建設を目的とした緊急整備プロジェクトが計画 されている。
4既に2002年にJICA支援によりコンテナターミナルの拡張を主体とした港湾整備計画を策定している。
(2) コンテナ取り扱いを目的とする既存施設のリハビリテーション
コンテナ貨物の取扱能力、サービス水準向上のため、既存施設のリハビリテーションに 対する支援は、比較的小規模で即効性があり、大きな費用対効果が期待できる。例えば、
現行ヤードの拡張やガントリークレーン・ヤード内荷役機械の増強、ターミナルレイアウ トの改善やコンテナオペレーションのIT化、港内交通の改善といったターミナルオペレー ションシステムの改善に対する支援は、外資系のオペレーターが本格的に展開している港 湾を除き、西部アフリカでも有効である。また、鉄道が接続している場合は、その接続性 の向上も考慮した施設のリハビリテーションを考える必要がある。
一方、若干規模は大きくなるが、老朽化した在来貨物ターミナルをコンテナ対応とする ための岸壁・ヤード改修、船舶の大型化に対応した航路・泊地、岸壁の増深なども、緊急 的な整備として有効な場合がある。また、港湾に至るアクセス道路の容量が不足し、港外 での交通渋滞がボトルネックとなる場合もあり、こうしたケースについてはアクセス道路 の改善もしくは新規道路の整備に対する支援も有効である。
また、上記と併せ、PPP が導入されていない場合では、適切なPPP 導入のための技術的 支援を併せて行うことも有効である。
(3) インランドコンテナデポ(ICD)の整備
コンテナターミナルの混雑は、荷役機械の不足やヤードの狭隘さなど物理的な要因によ って生じる混雑と、煩雑な貨物検査や税関検査など制度的な要因によって生じる混雑があ る。前者による混雑は、施設整備や荷役機械の導入で改善できる。後者については、こう した検査や手続き等をコンテナターミナル外に設けたインランドデポ(ICD)で行うこと により、港内の混雑を緩和することが可能であるため、上記既存施設のリハビリテーショ ンと併せてICD の整備を支援することが考えられる。なお、ICDは単体として計画・整備 すれば済むものではなく、ターミナルあるいは港湾全体のシステムの中で計画し、整備し ていく必要があり、マスタープランの策定等の中で検討されることが望ましい。
また、ICD は港湾側のターミナルと一体的に運用されることが望ましく、ターミナルと ICDとの間を円滑に接続する交通路(道路)・運用システムの整備が不可欠であり、PPPの 導入も含め、これらに対するハード、ソフト両面に亘る総合的な支援も有効である。さら に、ICD が鉄道ターミナルとして機能する場合には、後述するように、鉄道側の輸送能力 の増強も必要であり、こうした支援を総合的に実施することが必要である。
一方、訪問国では、インランドデポが整備済か整備中の港湾が多く、インランドデポ建 設支援の必要性は低い。セネガルDakar港では、港から20 kmの地点にICD 建設を既に計 画している。ICD が既に建設され利用されているガーナ Tema 港や、ICD が既に複数建設 されているナイジェリア Lagos 港のように、多くの港湾でコンテナターミナル混雑の解消 が既に進んでおり、新たな支援の必要性は低いものと考えられる。
(4) 新たなコンテナターミナル施設の整備
既存施設のリハビリテーションや ICD の整備のみでは将来の需要増に対応が困難と想定 される場合は、将来のコンテナ貨物需要を地域全体の観点から的確に見通した上で、新た なコンテナターミナルについて施設計画・段階整備計画を立案するとともに、当該計画に 基づく新たなコンテナターミナルの整備を資金面で支援することが有効である。その際、
既に PPP の導入が進み、既存ターミナルのコンセッショネア(特に外資系のオペレータ ー)が存在する場合には、コンセッション条件を注意深くレビューし、競争性の確保され た健全かつ適切なコンセッションフレームワークの下に当該新規コンテナターミナルが運 営されるよう技術的支援を併せて行う必要がある。また、PPP が導入されていない場合に あっては、適切なPPP導入のための技術的支援を併せて行うことも有効である。
(5) 通関・港湾諸手続の電子化・シングルウィンドウシステムの整備
PPP が導入された港湾の中にも、コンテナ貨物の滞留が著しい港湾が多数あるが、その 大きな原因の一つは、非効率的で煩雑な通関及び港湾関連諸手続きである。このため、こ れら手続きの電子化や両者を統合したシングルウィンドウシステムの整備を推進して行く 必要があり、機材やシステム整備に対する資金面での支援とともに、システムの運営や組 織体制を確立していくための技術的支援を行うことが有効である。また、これら手続きの 電子化や両者を統合したシングルウィンドウシステムの確立は、手続きの透明性の確保、
不透明な料金の排除にも繋がり、輸送コストの低減にも寄与するものである。
なお、セネガル Dakar 港やガーナの Tema 港のように既に通関手続きが電子化されてい るケースもあるが、実際には紙による手続きが混在していたり、他の港湾関連手続きとの 連携・統合が進んでおらず煩雑さが解消されていない等、その効果が必ずしも現れていな い実態がある。また、ナイジェリア Lagos 港のように、そもそも輸入禁止物資が多く、コ ンテナ貨物のクリアランスに要する時間が3~4週間かかっているケースもある。このため、
通関・港湾諸手続の電子化・シングルウィンドウシステム整備の支援に当たっては、各港 湾の実状や電子化等の進展状況を踏まえ、支援内容を見極める必要がある。
(6) 適切なPPP導入・改革
官営型の非効率で硬直的なターミナル運営が、ターミナルの生産性を下げ、港湾でのリ ードタイム、コストの面で競争性を失っていくケースがある。一方、PPP 導入を急ぐあま り、世界的なメガオペレーターを相手に、ともすれば民間側に有利な片務的な契約になり かねない。例えば、ターミナルのオペレーションが港湾当局にとってブラックボックス化 し、サービス水準や生産性等に関する適切なモニタリングが行われず、特に競争性を確保 できない場合には、いわば独占状態となって、ターミナルの公共性・公益性を追求できな いといった事態や、適切なタイミングで新たなターミナルの開発を開始できないといった 事態も想定される。
つまり、適切な官民の責任・リスク分担の下、健全な形での PPP 事業化を指向していく ことが重要である。PPP が導入されていない港湾においては、詳細な需要及び財務分析・