⑴ 制度の趣旨及び概要
離脱時の資産の評価の必要性については、報 告書に、次の記載があります。
「現行制度では、連結グループを離脱する法 人はその資産を帳簿価額のままで持ち出すこと ができるが、組織再編税制では、例えば、事業 継続の見込みがないなどの理由により非適格と なる組織再編成を行った場合には、移転させる 資産・負債について時価譲渡として取り扱われ ている。
例えば、新制度適用後の企業グループから、
含み損のある資産を有する法人が離脱する場合、
その企業グループ内に残る法人においては、離 脱する法人の株式を売却することによる譲渡損 を計上することができ、また、離脱した法人は 離脱後にその資産の含み損(譲渡損)を実現さ せ、自己の所得から控除することができる。
株式や資産等を利用した損失の 2 回控除につ いて、アメリカにおいては、これを租税回避と し、これを防止するための累次の規則改訂が行 われてきた。
組織再編税制においては、法人が含み損益の ある資産を現物出資して株式を取得する場合に、
事業の継続の見込み等の要件を満たさなければ、
その現物出資を非適格とすることによって、資 産の含み損益をそのままにして同額の含み損益 をもった株式が作出されることが防がれている。
そこで、組織再編税制との整合性を図りつつ、
損失の 2 回控除を防ぐため、新制度適用後の企 業グループから離脱する法人が、その行う事業 について継続の見込みがないなどの場合には、
離脱時にその法人の資産を時価評価させること
とし、その評価損益を投資簿価修正の対象とす るなどの方法により対処することが適当と考え られる。」
以上の考え方を踏まえ、通算グループからの 離脱等により通算承認の効力を失うものが次の 要件に該当する場合には、通算終了直前事業年 度において、その有する一定の資産について時 価評価により評価損益の計上を行うこととされ ました。
① 通算終了直前事業年度終了の時前に行う主 要な事業が引き続き行われることが見込まれ ていないこと(純資産の含み益がある場合を 除きます。)
② その通算法人の株式又は出資を有する他の 通算法人において通算終了直前事業年度終了 の時後にその株式又は出資の譲渡等による損 失が生ずることが見込まれていること なお、上記②については、対象資産が、帳簿 価額が10億円を超える一定の資産のうち譲渡等 による損失が生ずることが見込まれているもの に限定されています。
離脱時の資産の時価評価は、上記の報告書に あるように、損失の 2 回控除を防ぐことが主眼 です。組織再編税制の適格要件は、移転資産に 対する支配の継続を要件化したものであり、損 失の 2 回控除の防止が目的ではありませんが、
事業の継続見込みを適格要件とすることによっ て、結果的に損失の 2 回控除が起きる蓋然性が 低くなっていると考えられます。このような状 況を踏まえ、組織再編税制の事業の継続見込み 要件と同様の要件に該当しない場合に離脱直前 に資産の時価評価課税を行うこととされ、組織 再編税制における他の適格要件については触れ ないこととされています。また、事業を継続す る見込みがある場合においても、離脱後に個々 の資産について譲渡損を計上することは考えら れます。したがって、事業の継続見込みがある 場合においても、離脱の際又は離脱後に離脱法 人の株式の譲渡損が計上される見込みがあり、
かつ、離脱法人が個別の資産について多額の譲
渡損を実現することが見込まれている場合には、
離脱直前にその資産の評価損を計上することと されています。
また、下記7の通算子法人の離脱の際の通算
子法人株式の帳簿価額は、この離脱時の時価評 価後のその通算子法人の簿価純資産価額を基礎 とすることとされ、損失の 2 回控除の問題につ いて一定の解決が図られています。
⑵ 通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価
① 概要
通算法人(下記②の対象法人に限ります。)
が下記③の適用要件に該当する場合には、そ の通算法人の通算終了直前事業年度(通算承 認の効力を失う日の前日の属する事業年度を いいます。以下同じです。)終了の時に有す る時価評価資産の評価益の額又は評価損の額 は、その通算終了直前事業年度の所得の金額 の計算上、益金の額又は損金の額に算入する こととされています(法法64の13①)。
評価益の額とは、その時の価額がその時の 帳簿価額を超える場合のその超える部分の金 額をいい、評価損の額とは、その時の帳簿価 額がその時の価額を超える場合のその超える 部分の金額をいいます。
② 対象法人
対象法人は、通算承認の効力を失う通算法 人とされています(法法64の13①)。ただし、
その通算法人が通算子法人である場合には、
次の法人を除くこととされています。
イ 損益通算の適用を受けない法人
具体的には、初年度離脱通算子法人(下 記7 ⑶①参照)とされています(法令131 の17①)。
ロ 他の通算法人を合併法人とする合併が行 われたこと又はその通算法人の残余財産が 確定したことに基因してその通算承認の効 力を失うもの
③ 適用要件
次のいずれかに該当する場合に時価評価の 対象となります。
イ 上記①の通算法人の通算終了直前事業年 度終了の時前に行う主要な事業がその通算 法人であった内国法人において引き続き行 われることが見込まれていないこと(法法 64の13①一)。
「通算法人であった内国法人」には、そ
P
S1 S2
P S1
S2
S2株 Ⅱ譲渡
譲渡損❶
譲渡損❷
≪離脱直前≫ ≪離脱後≫
含み損資産
含み損資産
Ⅰ譲渡
【改正後】
投資簿価修正の対象とし、
譲渡損が生じないこととする
【改正後】
(離脱時時価評価)評価損❶
含み損株式
【改正後】
時価評価済のため生じない ああああ
○ 改正前の制度では、以下の場合は、譲渡損失の 2 回計上が可能
・ 含み損資産を有する子会社の株式をグループ外に譲渡して譲渡損を計上【譲渡損❶】
・ (子会社離脱後)子会社において含み損資産を譲渡することにより譲渡損を計上【譲渡損❷】
※ 含み損資産の譲渡を先に行うと、子会社の株式の簿価が修正され下がるため、子会社株式の譲渡による 譲渡損は生じない。
通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価
の内国法人との間に完全支配関係がある法 人並びに通算終了直前事業年度終了の時後 に行われる次のイ又はロの適格合併、適格 分割又は適格現物出資(以下「適格合併 等」といいます。)によりその主要な事業 がその適格合併等に係る合併法人、分割承 継法人又は被現物出資法人(以下「合併法 人等」といいます。)に移転することが見 込まれている場合におけるその合併法人等 及びその合併法人等との間に完全支配関係 がある法人を含むこととされています。
イ 適格合併
ロ その内国法人を分割法人又は現物出資 法人とする適格分割又は適格現物出資
(注) 適格組織再編成(特に株式交換等及び 株式移転)における事業継続要件と同様 です。
ただし、その通算終了直前事業年度終了 の時に有する資産の価額がその時に有する 資産の帳簿価額を超える場合には、要件に 該当しない(時価評価の対象とならない)
こととされています。
この「超える場合」は、具体的には、通 算終了直前事業年度終了の時に有する下記
④イの資産の評価益の額の合計額が評価損 の額の合計額以上である場合とされていま す(法令131の17②)。この場合の評価益の 額は、資産を上記5 ⑵④ニの単位に区分し た後のそれぞれの資産のその時における価 額がその時における帳簿価額を超える場合 のその超える部分の金額をいうこととされ、
その合計額には、次のイからハまでの金額 を加算することとされています(法令131 の17②、法規27の16の12、法規27の15①)。
また、評価損の額は、資産を上記5 ⑵④ニ の単位に区分した後のそれぞれの資産のそ の時における帳簿価額がその時における価 額を超える場合のその超える部分の金額を いうこととされ、その合計額には、次のニ 及びホの金額を加算することとされていま
す(法令131の17②、法規27の16の12、法 規27の15①)。
イ 法人税法第61条の11第 4 項(完全支配 関係がある法人の間の取引の損益)に規 定する譲渡損益調整額(以下「譲渡損益 調整額」といいます。)のうち1,000万円 以上のもので譲渡利益額に係るもの ロ 法人税法第63条第 1 項(リース譲渡に
係る収益及び費用の帰属事業年度)に規 定するリース譲渡に係る契約のうち繰延 長期割賦損益額(上記4 ⑴⑤ロ(注)ハ 参照)が1,000万円以上のものに係る収 益の額(当該事業年度前の各事業年度の 所得の金額の計算上益金の額に算入され るもの及び法人税法第63条第 1 項又は第 2 項の規定により当該事業年度の所得の 金額の計算上益金の額に算入されるもの を除きます。)
ハ 租税特別措置法第64条の 2 第 4 項第 1 号(収用等に伴い特別勘定を設けた場合 の課税の特例)(同法第65条第 3 項(換 地処分等に伴い資産を取得した場合の課 税の特例)において準用する場合を含み ます。)、第65条の 8 第 4 項第 1 号(特定 の資産の譲渡に伴い特別勘定を設けた場 合の課税の特例)若しくは第66条の13第 2 項第 1 号(特別新事業開拓事業者に対 し特定事業活動として出資をした場合の 課税の特例)又は震災税特法第20条第 4 項第 1 号(特定の資産の譲渡に伴い特別 勘定を設けた場合の課税の特例)に規定 する特別勘定の金額
ニ 譲渡損益調整額のうち譲渡損失額に係 るもの
ホ 法人税法第63条第 1 項(リース譲渡に 係る収益及び費用の帰属事業年度)に規 定するリース譲渡に係る契約のうち繰延 長期割賦損益額(上記4 ⑴⑤ロ(注)ハ 参照)が1,000万円以上のものに係る費 用の額(当該事業年度前の各事業年度の