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質の重視と、透明で予見性の高いメカニズムの構築

ドキュメント内 Ⅰ-1 (ページ 76-117)

審査基準を恒常的に見直し、特許制度の安定性を高めるために 透明で予見性の高い特許審査メカニズムを構築する

A. 特許を巡る企業間競争の熾烈化による不確実性とビジネスリスクの増大

○グローバル化や技術の高度化を背景とした特許紛争の増加により、知財訴訟のコストが高額になって きており、米国では、化学・製薬以外の産業では、特許権から得られる収入を訴訟コストが上回ってし まっているとの研究もある。

○特許紛争増の結果、競合他社の牽制を目的として、特に情報、電子分野の各社が特許権を争うように 取得し、特許取得のためのコスト増を招いているほか、半導体、電子機器、ソフトウェアなどの関連技術 が錯綜する分野では、権利範囲の解釈を巡る紛争も生じており、さらなるコスト増に繋がっている。

○特許への需要増加に起因する質の低い特許権の増加は、「特許の藪」及び「パテントトロール」を引き 起こす一因となり、一層ビジネスリスクを高めている。

○そこで、 特許権を取得する段階や、保護の段階における不確実性を極力抑え、特許にまつわるビジネ スリスクを低減させるためにも、「特許の質」の向上と、「透明性・予見性の高い特許メカニズム」が必要と なる。

B. 透明で予見性の高い特許審査メカニズムの必要性

○我が国では、これまでも、特許制度・運用について、①技術、産業、社会の動向を踏まえた制度・運用 の検討、②国際的動向を踏まえた調和、③審査、審判、裁判における判断の調和、といった観点から見 直しを行ってきたが、技術の動向、産業の実態、国際的な動向は常に変化しており、上述のような不確 実な特許によるビジネスリスクをこれまで以上に低減させるためには、これらの変化に迅速に対応して、

審査・審判に関する運用を適正化していくことにより、権利取得についての予見性をより高めるとともに、

権利の安定性を確保することが重要である

○ そのためにも、審査基準の策定・見直しプロセスを透明化し、議論を積極的に発信することにより、審 査基準を核とした特許制度のコミュニケーション・チャネル(意思疎通経路)を整備し、特許制度の運用 の安定性と特許の質の確保を図る必要がある。

D. 「審査基準」を核とした、特許制度のコミュニケーション・チャネル(意思疎通経路)

の確保

○審査基準は、出願から審査、審判、裁判の一連のプロセスにおいては、知財システムの安定性と特許 の質を確保する柱として、法律の適用と運用についての基本的な考え方を示すとともに、各レベルにお ける判断や指摘を反映すべきものである。また、審査基準は、技術、産業、社会の動向を制度・運用に 反映させ、その適用を明確化していく際の手段でもある。加えて、国際調和への取組において各国制 度・運用を比較・調和させていく際にも、審査基準がその手段の一つとなるものである。

○様々なレベルでの特許判断の調和を進める際や、様々な国内外の動向を特許制度・運用に反映させ る際に、コミュニケーション・チャネル(意思疎通経路)の核としての役割を担っている審査基準を柱とし て、知財システムの安定性と特許の質を確保する。

○また、審査基準等について視覚化・構造化を進める。すなわち、審査基準等について、発明者・出願 人・代理人・法曹関係者等にとって一層理解しやすいものとするため、例えば具体的には、審査基準の ハイパーテキスト化等により、審査基準の各項目間及びそれらと関係の深い事項への参照を容易にし、

公表する。

C. 産業構造審議会に「審査基準専門委員会(仮称)」を新設

○審査基準を含む特許審査に関する運用の在り方の検討に際しては、出願・審査・審判・裁判における 関係者、法律や経済そして技術の専門家等を含む幅広いメンバーの参画を得る。

○具体的な検討の場としては、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の下部に新たな 組織を設け、今後、審査基準を含む特許審査に関する運用の在り方については、この検討組織に諮る。

○年数回程度、定期的に開催し、検討結果や措置の情報を国内・海外に発信し、また、英語でもパブリッ クコメントを実施し内外の意見を求めることで、より透明性の高い検討の枠組みとする。

審査基準を恒常的に見直し、特許制度の安定性を高めるために

透明で予見性の高い特許審査メカニズムを構築する

特許権を取得する段階や、保護の段階における不確実性を極力抑え、特許にまつわるビジ ネスリスクを低減させるためにも、「特許の質」の向上と、「透明性・予見性の高い特許メカニズ ム」が必要となる。

そのためにも、審査基準の策定・見直しプロセスを透明化し、議論を積極的に発信すること により、審査基準を核とした特許制度のコミュニケーション・チャネル(意思疎通経路)を整備し、

特許制度の運用の安定性と特許の質の確保を図る。

<概要>

<産業構造審議会に新しい委員会を設置(審査基準専門委員会(仮称))>

„審査基準

„構成メンバーのイメージ:

„年数回程

„議論を

„審査基準

の策定も含め、特許審査に関する運用の在り方を検討する。

度、定期的に開催する。

国内・海外に発信することで、透明性を確保する。

については、日本語に加えて原則英語でもパブリックコメントを実施する。

1.

審査基準の策定・見直しプロセスを透明化/産業構造審議会における新組織の設置

<具体的取組>

審査基準 審 査 審 判 裁 判

出 願 日 本 特 許 制 度 技術、産業、社会の動向

を制度・運用に反映させ、

その適用を明確化してい く際の手段として

新技術が生み出された場 合などにおける、特許性の 審査基準の見直し

オープンイノベーションに 伴う産業・社会の変化や、企 業の競争環境の変化に伴う 審査基準の見直し

国際調和への取組みにお いて各国制度・運用を比 較・調和させていく際の手 段の一つとして

出願から審査、審判、裁判の一連の プロセスにおいて知財システムの安 定性と特許の質を確保する柱として 法律の適用と運用についての基本的な 考え方を示すとともに、各レベルにおける 判断や指摘を反映

法学者

経済学者 科学者 産業界

法曹 弁理士

審査基準等について視覚化・構造化を進める。すなわち、審査基準等について、発明者・出願人・代理 人・法曹関係者等にとって一層理解しやすいものとするため、例えば具体的には、審査基準のハイパー テキスト化等により、審査基準の各項目間及びそれらと関係の深い事項への参照を容易にし、公表する。

特許制度の運用の安定性と特許の質の確保を図るため、審査基準の策定・見直しプロセスを透明化し、議 論を積極的に発信し、英語でもパブリックコメントを実施する等を通じて、審査基準を核とした特許制度のコ ミュニケーション・チャネル(意思疎通経路)を整える。

このために、産業構造審議会・知的財産政策部会・特許制度小委員会の下部組織として、以下の組織を新 設する。

2. 審査基準等の視覚化・構造化(ハイパーテキスト化等)

<「審査基準」を核とした、特許制度のコミュニケーション・チャネル(意思疎通経路)>

(1) 特許の「軍拡競争」 

特許を巡る企業間競争の熾烈化による不確実性とビジネスリスクの増大が懸念されている。例えば、グロ ーバル化や技術の高度化を背景とした特許紛争の増加により、知財訴訟のコストが高額になってきており、

米国では、化学・製薬以外の産業では、特許権から得られる収入を訴訟コストが上回ってしまっているとの 研究もある。また、特許紛争増の結果、競合他社の牽制を目的として、特に情報、電子分野の各社が特許 権を争うように取得し、特許取得のためのコスト増を招いているほか、半導体、電子機器、ソフトウェアなど 他の技術が錯綜する分野では、権利範囲の解釈を巡る紛争も生じており、更なるコスト増に繋がっている。

加えて、特許への需要増加に起因する質の低い特許権の増加は、「特許の藪」及び「パテントトロール」を 引き起こす一因となり、一層ビジネスリスクも高まる。 

そこで、特許権を取得する段階や、保護の段階における不確実性を極力抑え、ビジネスリスクをこれまで 以上に低減するためにも、特許の質の維持・向上が求められている。このため、特許制度・運用について、

審査基準の策定プロセスの透明性を高めつつその検討内容を充実させる等、透明性・予見可能性のより 高い特許審査メカニズムが必要となる。パテントトロール問題については、知財制度のみならず標準化や独 占禁止法の観点をも踏まえた、多様な観点からの検討を行うことが必要である。 

ゲームの変化  〜牽制目的の特許出願〜 

知的財産を製品とさほど変わらぬビジネスの 資産として扱う企業も増えてきている。すなわち、

研究開発に投資し、開発した技術を特許出願し、

取得した特許権をもとに事業やライセンスを行い、

必要があれば侵害訴訟を提起する、というように である。米国では、特許紛争増を背景に競合他 社の牽制を目的として、特に情報、電子分野の 各社が特許権を争うように取得している。その最 大の理由は、他社が同じことをしているからであ り、特許をより多くそして広く押さえること、それが ゲームのルールとなり、一種の「軍拡競争(The  arms race)」を招いているとの見方もある16。 

 

特許のコストとリスクの増加 

グローバル化や技術の高度化を背景とした特 許紛争の増加により、知財訴訟のコストが高額に なってきている。例えば、米国では、特許の有効 性に疑義を唱える場合、コストと時間がかかり、

16 “SURVEYS: PATENTS AND TECHNOLOGY. The arms race.”

The Economist, Oct. 20, 2005.

損害賠償額が 2,500 万ドル(約 25 億円)以上の 特許訴訟においては、原告と被告のそれぞれが 平均 400 万ドル(約 4 億円)を法廷費用として負 担しているとの概算もある17。また、訴訟において 特許の有効性に疑義を唱えるには約 3.5 年かか り、特許が認可されてから約 8.5 年目に訴訟が行 われるという調査結果がある18。すなわち、そもそ も特許性がないものについても、特許期間 20 年 のうち 12 年にも及んで、特許として権利が付与さ れていることになる。 

一方、米国では、1990 年代から、R&D 投資の 推移に比して、特許出願の件数が急増しており、

それ以前にあった両者の相関関係が崩れている。

参考 II-1  その原因として、上述のように、特許紛 争増の結果、競合他社の牽制を目的として、特 に情報、電子分野の各社が特許権を争うように 取得していることが挙げられる。また他にも、1990 年代に起こった電気機器、電子機器、コンピュー タ、通信機器等の各産業の出願増加が挙げられ、

17 Annual Report of the Council of Economic Advisers, 2006.

18 同書

ドキュメント内 Ⅰ-1 (ページ 76-117)