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オープンイノベーションの進展

ドキュメント内 Ⅰ-1 (ページ 126-136)

III. イノベーション促進のためのインフラ整備

1.  オープンイノベーションの進展

イノベーション環境の変化を背景とする オープンイノベーションの進展

A. イノベーションを取り巻く環境の変化

○技術の高度化・複雑化や技術の融合を背景として、製品に関する全ての研究開発を 一企業内で行うことは、負担が大きく、かえって非効率となってしまう、あるいは、製品 を作るにあたって、従来は自社の技術と全く別分野に属すると考えられていた技術を 利用することが不可欠となるといった状況が生まれてきている。

○顧客層や顧客ニーズの多様化とともに、製品のライフサイクルも短縮化しており、こう した市場ニーズの変化に的確に対応していくために、外部のリソースを活用することも 重要になっている。

○インターネット等のIT技術の進歩により、有益な情報に世界中の研究者等がアクセス し共有できる環境が整ってきている。

B. クローズドイノベーションからオープンイノベーションへ

○イノベーションを取り巻く環境の変化を受けて、従来の垂直統合型のイノベーション戦 略に代わり、自社の技術を他社に利用させることで利益を追求したり、他社の技術を 活用しつつ自社の研究開発や製品化を進めていくオープンイノベーションが広がりつ つある。

○一方では、技術の種類や産業構造によっては、従来の垂直統合型のイノベーション 戦略の方が適している場合もあり、企業においては、技術の種類や競合他社の状況 等の要素を総合的に勘案し、イノベーション戦略を選択していく必要がある。

C. オープンイノベーションが知財システムに与える影響

○オープンイノベーションの下での知財は、クローズドイノベーションの下での自社技術 の模倣を防止するための役割に加え、他社にライセンスする等して利益を得ることや 他社から技術を導入し、効率的な研究開発を図ること等、知識・技術の流通の円滑化 を推進するためのインフラとして機能している。このため、知財はオープンイノベーショ ン下での「通貨」のような役割を果たしているとの見方もある。

○オープンイノベーションの進展とともに知財の流動性が高まっており、それを担うビジ ネスも広がりを見せている。米国においては、知財の活用・流通を支援するという従来 のビジネスモデルをさらに発展させたビジネスモデルを有する機関が現れている。

○多様な主体によるイノベーションをつなぐ標準化の重要性が高まる中で、標準化され た技術に特許等の知財が含まれる場合その取扱が重要になっている。特に、標準化 された技術についての知財を有する者がその特許について不当に高額のライセンス 料を要求する等して、標準化が阻害される問題(ホールドアップ問題)の防止のために も、知財の円滑な利用を促進する必要がある。

○知財ビジネスが拡大する一方で、標準化におけるアウトサイダー問題や米国を中心と したパテントトロール問題がイノベーションを阻害する要因になっているとして、その対 応が求められている。

イノベーション環境の変化を背景とする

オープンイノベーションの進展

<イノベーション環境の変化>

<オープンイノベーションの進展>

<オープンイノベーションのエコシステムを支える知財システムの構築>

海外のオープンイノベーションの事例

オープンイノベーションの下での知的財産権は、知識・技術の 流動化を促進するためのいわば「通貨」のような役割を果たす との見方もあるなど、クローズドイノベーションの下での技術を 独占的に利用する手段としての役割に加え、知識・技術の流通 を円滑化するためのインフラとしての役割が求められる。

こうしたイノベーション活動を取り巻く環境の変化を背景として、従来からの垂直統合型のイノベーション形態に代 わり、

○オープンイノベーションにおいては、外部の優れた技術を積極的に導入して自社の研究開発を効率的に推進 したり、自社内に眠っている技術を外部のプレーヤーにライセンスする等して利益を得る等、

る。

○企業においては、それぞれが直面する市場・競争環境や技術の種類に応じて、クローズ型やオープン型のそ れぞれの特長を活かした最適な研究開発体制の選択が重要。

○海外企業は、クローズ型とオープン型それぞれの強みを活かした事業活動を世界的に行っている。

自己の技術を外部の者に利用させることで利益を得たり、外部の技術力を活用しつつ迅速に研究開発や製 品化を進めていくオープンイノベーションが広がりつつある。

外部のプレー ヤーとの知識・技術の流通をいかに円滑に行うかが重要なファクターとな

ITの進歩と世界的な知識共有

ITの進歩等によって、技術に関する知識に世 界中の技術者が容易にアクセスし共有できる環 境が整ってきている。それに伴い、多様な主体 により地理的にも広がりを持って研究開発が行 われるようになり、有用な知識・情報等が世界中 に豊富に存在する状況が生じつつある。

技術の高度化・複雑化と製品のライフサ イクルの短縮化

近年、技術の高度化・複雑化に伴い、産業構 造が水平分業型へと変化し、製品のモジュール 化等が進んでいる分野もある。

また、顧客ニーズの多様化が進み、製品のライ フサイクルが短縮化傾向にある。

オープンイノベーション環境に対応したイノベーション促進のための知財システムの構築という観点から、

¾ 知財ビジネスの活発化を促す環境整備、

¾ 標準技術に関する知財のライセンスの円滑化を促す環境整備、

¾ 論文情報と特許情報をシームレスに検索できる技術情報検索環境整備、

等を推進していくことも必要である。

<知的財産権の役割の変化>

(1) 自社のR&D体制をオープンにしている企業

IBMはオープンイノベーションを明確な方針として打ち出しており、社内と社外の両方のソースを自社の研究開発機能と捉えて、社 外の技術を活用した研究開発を進めている。特に、オープンソースの開発に力を入れており、オープンソースの開発を支援するため に、500件におよぶ特許をオープンソースコミニュティに提供する決定を行うなど、オープンソースソフトウェアの開発を支援している。

(2) R&Dの観点から他社の買収・投資を積極的に行っている企業

インテルは外部のリソースを積極的に活用することで技術力強化を図っている。特に、大学との研究協力に力を入れており、インテ ル研究委員会(Intel Research Council)という組織を設け、インテルの戦略的技術分野に寄与すると判断した大学プロジェクトに対して 研究開発への金銭的支援を行っている。また、社内ベンチャーキャピタル(インテルキャピタル)を立ち上げ、ベンチャー企業の成果を インテルの戦略に取り入れることを容易にしている。

(3) 他社の研究開発や知財取得等のプロデュース機能に特化するファンド

インテレクチュアル・ベンチャーズは、先端分野における技術者とノーベル賞級の科学者が、特定の技術的課題について議論し、そ の技術の将来の方向性を見定める。この会議には特許弁護士も同席しており、議論の結果を踏まえて知財戦略を立案している。

日本経済団体連合会から研究会へのコメント

イノベーションを推進し、経済や社会の課題を解決していくには、さまざまな関係者が連携するオープンイノベーションも重要な選 択肢である。一方、知的財産権制度は、権利を独占することを中心に組み立てられているが、個々の権利の主張を強めた場合には、

イノベーションが効果的に機能しない恐れもある。

Microsoft社から研究会へのコメント

オープンイノベーションは今後重要な役割を果た す。オープンイノベーションの促進においては、知財 を強く保護することが必要不可欠。特に、特許は オープンイノベーションの通貨として機能する。

(a)  伝統的な垂直統合型のイノベーション形態  従来、研究開発型の企業の多くは、社内に大き な研究所を設立し、優秀な研究開発人材を集め ることで、優れた新技術の創造からその製品化ま での全てを自社内で行うという極めて効率性の高 い垂直統合型のイノベーションサイクルを構築し、

それによって競争力を高め価値を創造してきた。 

 

(b)  イノベーション環境の変化 

しかし、近年、技術の高度化・複雑化や経済の グローバル化の進展等を背景に、イノベーション 活動を取り巻く環境が急速に変化してきている。 

 

(i)  技術の高度化・複雑化と技術融合の進展  近年、技術の高度化・複雑化や技術の融合が 進みつつある。このような変化を背景に、製品に 関する全ての研究開発を一企業内で行うと、あま りに負担が大きく、かえって非効率となってしまう、

あるいは、製品を作るにあたって、従来は自社の 技術と全く別分野に属すると考えられていた技術 を利用することが不可欠となるといった状況が生じ ている技術分野もある。 

こうした製品に関する全ての技術を自社内で開 発することが困難な分野を中心に、産業構造が水 平分業型へと変化し、また、技術や製品のモジュ ール化等が進んでいる。 

企業等が高度な新技術を迅速に生み出して自 社の競争力を強化していくためには、自社の力に 頼るだけでなく、外部の知識・技術等、様々なリソ ースを適切に組み合わせることにより、研究開発 の効率性を向上させることも重要になってきてい る。 

 

(ii)  製品サイクルの短縮 

また、顧客層の多様化や顧客ニーズの多様化 が進んでおり、製品のライフサイクルが短縮化傾

向にある等、製品市場をとりまく環境も大きく変化 してきている。 

企業が、こうした市場ニーズの変化に的確に対 応していくためには、外部のリソースを効果的に 活用するなどして、製品をマーケットに出すまでの スピードを速めることも重要となってきている。 

 

(iii)  情報通信技術(IT)  の進歩と世界的な情報共 有 

さらに、インターネット等の情報技術(IT)  の進 歩により、かつては大企業内の研究所にのみ独 占されていたようなテクノロジーに関する知識が 世の中に広がり、そうした知識に世界中の技術 者が容易にアクセスし共有できる環境が整ってき ている。そして、多様な主体により地理的にも広 がりをもって研究開発が行われるようになり、大企 業の外部にも有用な知識・情報等が豊富に存在 する状況が生じつつある。換言すれば、ITの進 歩が、様々な主体の関与の下にイノベーションが 生みだされる環境を支える基盤となっている。こう した中、企業等においては、外部において生ま れる知識・技術等を有効に取り込めるようなネット ワークや社内体制の構築が課題となっている。 

 

(c)  クローズドイノベーションからオープンイノベ ーションへ 

このようなイノベーションを取り巻く環境の変化 を受けて、従来の垂直統合型のイノベーション形 態に代わり、自己の技術を外部の者に利用させる ことで利益を追求したり、外部の技術力を活用し つつ研究開発や製品化を進めていくオープンイノ ベーションが広がりつつある。参考III-1 

例えば、IBMは、技術の複雑化によって研究開 発の在り方が変わってきており、今後は、自社内 のみで研究開発を進めるのではなく、有用な知識 を有する外部機関との連携をさらに深めつつ研究

ドキュメント内 Ⅰ-1 (ページ 126-136)