III. イノベーション促進のためのインフラ整備
2. 知的財産の活用・流通を円滑化するためのインフラ
複数の大学や企業における研究開発の架け橋となる 新たな知的財産ビジネス
A. 知的財産ビジネスの広がり
○オープンイノベーションが進展する中で、知財の役割や目的は多様化している。企業 は、従来の自社技術の模倣防止に加え、他社にライセンスして利益を得ること、他社 から技術を導入し効率的な研究開発を図ること、知財を開放することでイノベーション を促進し製品市場の活性化を図ること等、知的財産を戦略的に活用している。
○知的財産の役割が多様化する中、知的財産の活用や流通を支えるインフラとしての 知的財産ビジネスの重要性が高まっており、知的財産の管理や活用を支援するビジ ネスが広がりを見せている。
B. 発展が予想される新たな知的財産ビジネス
○知的財産ビジネスが拡大する中で、研究開発を支えるビジネスや研究開発の成果で ある知的財産の流通を促進するビジネスが注目されている。
○米国においては、一定の技術分野において研究開発の方向性からその成果の事業 化に至るまでのシナリオを描き、そのシナリオに合致する研究開発に投資する代わり に、その研究成果である知財を取得して、価値の高い特許ポートフォリオを戦略的に 構築する機能を備えた、研究開発・知財を総合的にプロデュースするビジネスが現れ ている。
○こうしたビジネスを担う企業の中には、技術に係るシナリオを、ノーベル賞級のサイエ ンティストをはじめとする多数のサイエンティストの参加のもとに描く企業もある。
○近年、こうした海外企業が日本に進出し、日本の大学等との連携を深めようとしている 動きもあるが、日本においてこのようなビジネスは立ち後れている状況にある。
C. 総合プロデュース型知的財産ビジネスの育成
○研究開発・知財を総合的にプロデュースするビジネスは、大学や企業とを結びつける 研究開発の架け橋として機能し、知財の流通の円滑化を促進すると考えられることか ら、その必要性は高まっている。
○こうした機能・人材を有するビジネスは、民間の叡智を結集して事業主体を組成し、
民間ベースで資本を構成することで、競争的に運営されることが必要である。しかし、
日本において、こうしたビジネスが立ち遅れている状況を鑑み、このようなビジネスが 活発化するための環境整備やその育成等の施策について検討することが必要と考え られる。
<民間と政府との役割分担>
○研究開発から知財プロデュースまでを一体的 に行うには、民間の叡智を結集して事業
民間ベースで資本を構成する
ある程度まとまった資金によって総合的に管理・運用する
主体
を組成し、 こと
で、競争的に運営されることが必要。
これらの機能を、 ことで、知財・
研究開発を総合的にプロデュースすることができる。
機能2 : 将来の研究開発ロードマップを共 有する
幅広い分野の事業者・研究者・技術者 との活発な議論を通じて、
ことができる。
将来のロード マップを共有する
■米国インテレクチュアル・ベンチャーズが主催する発明会議(invention session)
先端分野における技術者と 、特定の技術的課題について議論することで、そ の技術の将来の方向性を見定める。この会議には特許弁護士も同席しており、議論の結果を踏まえて特許 出願の戦略を立案する。
そして、インテレクチュアル・ベンチャーズは、この「発明会議」を通じて、総額2,000億円の資金を用いて
米国やアジアにおける る。
<総合プロデュース型知財ビジネスに必要な4つの機能>
複数の大学や企業における研究開発の架け橋となる
民間ベースで運営される総合プロデュース型知財ビジネス
オープンイノベーションへの動きが進むなか、複数の大学や企業の架け橋として、研究開発 と知財のプロデュースを行う事業の重要性が増している。
米国を中心として、もはや特許権だけをビジネスの対象とするのではなく、オープンイノベー ション環境の下で
日本においても、民間ベースで、複数の大学や企業の研究開発段階まで広くカバーする、
境整備が必要ではないか。
<概要>
「知財を産み出すメカニズム自体」をビジネスモデルとする、プラットフォーム としての事業が生まれつつあり、アジアなどに進出しはじめている。
新しい知財ビジネスを生み出すための環
ノーベル賞級の科学者が
研究開発を支援し、生み出された知財を戦略的に運用してい
■民間の叡智を結集したチームの構成メンバー案
①技術に精通した者(製造業技術者、若手研究者・
ポスドク等)
②事業化ニーズなどを収集できる者(商社等)
③金融技術に精通した者(投資銀行、証券等)、
④知財戦略に精通した者(弁理士等) 機能1 : ブレークスルーで知財を産み出す
学際的・先進的な技術課題について、
様々な分野の研究者・技術者が一同に 会して
研究開発のブレークスルーを図る。
また、ここで同時に、将来の事業化段 階を見据えて、広くカバーするための知 的財産戦略を決定する。
集中的にアイデアを出し合うことで、
機能3 :
機能4 : 複数のポートフォリオを保有するこ とで、研究開発リスクを管理する
リスクが高い研究開発について、ポート フォリオを複数保有することで、
つつ、積極果敢な研究開発を 行うことができる。
リスクを適 正に管理し
知財をポートフォリオ管理する ブレークスルーにより産み出された知 的財産をまとめて管理し、
これにより知財の価 値も高まり、将来の研究開発の自由度も 高まる。
このポートフォリオは、他者から特許権 を譲り受けたり、ライセンスを受けたりする ことで、大きくできる。
○また、政府の役割として、このような事業主体が民間主導で設立され、新たなビジネスモデル が創造されていくためにも、「イノベーション創造機構」(仮称)の創設など、人材・長期資金の 集中を促す公的な後押しが必要ではないか。
戦略的なポート フォリオを構築する。
(1) オープンイノベーションを支えるエコシステムと知的財産ビジネス
○オープンイノベーションの環境の下で、研究開発形態も多様化。
○今後は研究開発において重要な役割を担う大学等にも対象を広げた知財インフラを構築していくことが 必要。
○また、従来型の知財ビジネスが広がりを見せるとともに、新たな知財ビジネスが現れてきた。
○こうした知的財産の活用・流通等を円滑化するための環境を整備することも重要。
(a) 研究開発コンソーシアムと知財戦略
オープンイノベーションの広がりに伴い、大学 や研究機関等における研究開発の形態も多様化 しており、複数の大学・研究機関等が「研究開発 コンソーシアム」を形成して、連携して研究開発を 行うケースが増えてきている。こうした形態での研 究開発を活性化させていくことは、今後我が国が イノベーションを促進していく上で重要になってく ると考えられる。
一方、こうしたコンソーシアムが、円滑に研究開 発を行い、その研究成果をイノベーションの促進 につなげていくためには、関係者間の知財に関 する権利関係を明確化したり、研究成果について 戦略的な知財ポートフォリオを構築する等、適切 な知財戦略を策定することが必要不可欠である。
このため、例えば、複数の大学・研究機関が連 携して取り組んでいる研究開発コンソーシアムを 対象にして、知財プロデューサーをリーダーとす る知財戦略構築の専門家チームを派遣すること により、当該コンソーシアムにおける戦略的な知 財ポートフォリオの構築や知財活用戦略の策定 等を支援し、さらなる研究開発の促進を図るとい った取組を検討することも重要と考えられる。
なお、この派遣チームによる支援内容としては、
以下のようなものが考えられる。
○「特許マップ」や「特許出願技術動向調査」等 の特許情報を活用することによる、研究開発戦 略策定の支援
○研究開発成果についての戦略的な知財ポー トフォリオの構築の支援
知財ポートフォリオの構築に際しては、研究 開発のコアの部分だけでなく周辺部分も特許と しておさえることが重要である。
○ライセンス戦略等、知財活用戦略の策定の支 援
ライセンス戦略としては、例えば、リサーチツ ール特許ポートフォリオについては、研究開発 の自由度を高めるためにも、合理的な対価で のライセンスを行い、事業につながる可能性の 高い特許ポートフォリオについては、利益を上 げることを念頭においたライセンス戦略をとると いった使い分けも必要と考えられる。
(b) 従来型知財ビジネスの広がり
オープンイノベーションの動きが大企業におい ても広がりを見せ、またこれに伴い、知的財産権 の性質にも変化が見られる中、知的財産権の活 用や流通を支えるインフラとしての知財ビジネスの 重要性が高まっている。そして、その重要性が高 まるにつれ、知的財産担保投融資、知的財産信 託等の従来からの知財ビジネスが広がりを見せて いる。
(i) 知財管理支援ビジネス i) 知的財産情報提供会社
特許情報を分析して各企業の知財力を評価