第 2節 企業再生税制における債務者側の法務・税務 .… .‑48‑
① 資産の評価換えを行 う場合 (別 表添付方式 )‑62‑
資産 の評価換 えを行 う場合 とは、上述 した別表添付方式の場合 が該 当す る。 また、同一 事業年度 に民事再生手続 開始 の決定 と民事再生計画認 可の決定があった場合 においては、
損金経理方式 を採用 したか否 かにかかわ らず、別表添付方式 の適用がある とみな され る(た
だ し、評価換 えを行 う資産 に該 当す るものがある場合 に限 る。
)(法
人税法施行令第68条
2 項)。 この こ とか ら、同一事業年度 に民事再生手続 開始 の決定 と民事再生計画認 可の決定が ない場合 においては、当事業年度 において帳簿価額 を減額 し、評価損 を計上す るこ ととなり、税法上資産 の評価換 えをす る場合 には該 当 しない。
資産 の評価換 えを行 う場合 にお ける設 立当初 か らの欠損金 の損金算入金額 については、
(イ)「債務免 除益等」 と「私的提供益」 と「評価益か ら評価損 を減算 した金額」、(口
)適
用年度終 了時 にお ける前事業年度以前の事業年度 か ら繰 り越 され た欠損金額 の合計額 か ら 青色欠損金 お よび災害損失金 を控除 した差額、(ハ
)適
用年度 の所得金額 (青色欠損金お よ び災害損失金 を損金算入す る前の額)の
うち最 も少 ない金額 が計上 され る。つ ま り、損金 算入額 は当事業年度 の所得金額 を超 えることはできない とい うことである。 また、 この場 合 、資産 の評価換 えに よ り評価損益 を計上 した資産 につ き、評価益 に よる益金 の額 よ りも 評価損 に よる損金 の額 の方が大 きい場合 においては、評価損益 はマイナス となる。これ は、益金算入 の額か ら損金算入 され る金額 を「減算」した金額 と規定 されてい ることによる(法 人税 法第
59条 2項 3号
)。 この ことか ら、評価損 が評価益 よ り大 きい場合、当該マイナス 部分 が債務免 除益お よび私的提供益相 当額 の部分 を圧縮す ることとな り、その分損金算入 額 も少 な くな る。24
稲 見誠 一・ 佐 藤 信 祐『 企 業 再生 の税務 (第2版
)』 (中央 経 済社 、2010年 )77頁
。‐62‐
また、資産 の評価換 えを行 った場合 は、期 限切れ欠損金 の部分か ら先 に利用 された もの とされ 、次 に青色欠損金 の部分が利用 され た もの とされ る。 当該処理 は複雑 であるため、
例 を用 いて以下確認す る。
例
)大
法人 の場合 を前提 とす る (なお、中小法人 の場合 は繰越欠損金 の80%控
除限度額 の 適用 はない。)。1.債
務免 除益60、 私的提供益30、 資産 の評価益 10、 評価 損30、 その他 の所得30(総
所 得100)(欠
損金控 除前)2.設
立 当初か らの欠損金160(青
色欠損金100+期
限切れ欠損金60)(i)債
務免 除益等 の額 は、「60+30+(10‑30)=70」
とな る。この ことか ら、設立 当初 か らの欠損金の損金算入額 は70とな る (法人税 法第
59条 2項
、法人税 法施行令 117の 2)。(五
)青
色欠損金 の損金算入額 は、大法人 の場合80%の
控 除制 限 を受 けることか ら「その 他 の所得30×80%=24」
とな る (法人税法第57条 1項
)。(面
)切
り捨 て られ る青色欠損金 の額 は、「70(債
務免 除益等 の額)‑60(期
限切れ欠損 金)=10」
とな る (法人税法第57条 5項
)。(市
)青
色欠損金 の翌期繰越額 は、「100(青
色欠損金)‑24((五 )の
金額)‑10((面
)の金額
)=66」
とな る。(v)課
税所得 は、「100‑70((i)の
金額)‑24((五 )の
金額))=6」
とな る。つま り、民事再生法適用年度 において、債務免 除益お よび私的提供益以外 に所得が 計上 され た場合 は、課税 され る可能性 がある。
‐63‐
その他 の所得
1債
務免 除益+私
的提供益 ±評価損益30 1 (i)70
設立 当初 か らの欠損金額 160
青色欠損金
loo
期 限切れ欠損金60
(市
)66(翌
期繰越) (五)24
10 損金算入額60
Ψ
(五
)切
り捨て られ る青色欠損金平成
27年
度税制改正前 においては、上述 の よ うに債務免除益以外 の所得がある場合 に は、当該所得 に青色欠損金 の控除限度額 である80%部
分 のみ損金算入 がな され 、20%部
分 には課税 がな され る とい つた計算式 となっていた。 しか し、平成27年
度税制 改正後 にお いては、平成27年
4月 1日 以後 の開始事業年度 の法人 につ き再生手続 開始 の決定が あっ た こ とを要件 に、その手続開始の決 定の 日か らその再生手続 開始 の決定 にかか る再生計画 認 可決 定 の 日以後7年
を経過す る 日までの期 間については、原則青色欠損金 の控除限度額 の適用 はな く、控除前所得金額 の100%相
当額 とされ た (法人税 法第57条 11項 2号
)。そのため、上記設例 において平成
27年
度税制改正 を反 映 させ る と、(面)の
青色欠損金 の 損金算入額 は30(そ
の他 の所得 30×100%)と
な り、(v)の
課税所得 は生 じない こ とと な る。 また、青色欠損金 の翌期繰越額 は60と な る。② 資産の評価換えを行わない場合
(損金経理方式
)資産 の評価換 えを行 わ ない場合 とは、上述 した損金経理方式 を適用 した場合 、または資 産 の評定 を行 つた際 に評価損益 の計上がなかった場合 が該 当す る。
また、設立 当初か らの欠損金 の損金算入 限度額 は、(イ
)債
務免 除益等 と私的提供益 の合 計額 、(口)適
用年度終了時 にお ける前事業年度以前の事業年度か ら繰 り越 され た欠損金額 の合計額か ら青色欠損金お よび災害損失金 を控 除 した差額、(ハ)適
用年度 の所得金額 (青色欠損金お よび災害損失金 を損金算入 した後 の額
)の
うち最 も少 ない金額 が計上 され るこ ととな る。実際 には、期 限切れ欠損金 よ り先 に青色欠損金 が充 当 され ることとなる。 当該・64
処理 は複雑 であるため、例 を用いて以下確認す る。
例
)大
法人 の場合 を前提 とす る (なお、中小法人 の場合 は繰越欠損金 の80%控
除限度額 の 適用 はない。)。1.債
務免 除益60、 私的提供益30、 その他 の所得30 (総
所得 120)2.設
立 当初か らの欠損金160(青
色欠損金loo+期
限切れ欠損金60)(i)青
色欠損金 の損金算入額 は、大法人 の場合80%の
控 除制 限 を受 けることか ら「総所 得 120×80%=96」
とな る (法人税法第57条 1項
)。(五 )設 立 当初 か らの欠損金額 の損金算入額 は、「
24(120‑96(青
色欠損金控除後 の所得))‑6(30× 20%(そ
の他 の所得金額))=18」
とな る (法人税法第59条 2項
、法人 税法施行令 第 117の 2)。(面
)(五 )の
うち切 り捨 て られ る青色欠損金額 は、「100‑96((i)の
金額)=4」
とな る。(市
)期
限切れ欠損金 の残額 は、「60‑(18((五 )の
金額)‑4((五 )の
金額))=46」
とな る。
(i)〜
(五)の
過程 をま とめる と、債務免 除益お よび私的提供益の合計90、 設 立 当初 か らの欠損金160か
ら青色欠損金 の当期損金算入額96を
差 し引いた64、 青色欠損金控 除後 の所得金額 18の うち、最 も少 ない金額 である18が設 立 当初 か らの欠損金 の損金算入額 と な る。 なお、設 立当初か らの欠損金 の うち、青色欠損金 の損金算入額 に利用 されていない 青色欠損金4が
先 に利用 され た もの とされ 、残 りの14に
つ いては、期 限切れ欠損金 が利 用 され た もの とな り、期 限切れ欠損金 の残額 は46と なる。(v)課
税所得 は、「120‑(96((i)の
金額)+18((五 )の
金額))=6」
とな る。つ ま り、民事再生法適用年度 において、債務免 除益お よび私的提供益以外 に所得が計上 され た場合 は、課税 され る可能性 がある。
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その他 の所得
1
債務免 除益+私
的提供 益30 1 9o
設 立 当初 か らの欠損金額 160
青色欠損金
loo
期限切れ欠損金60 (i)損
金算入額96
4 14 (市)残
額 46早
(五
)損
金算入額18
当該ケースについても、平成
27年
度税制改正 を反映 させ ると、(i)の
青色欠損金の損 金算入額は100と
な り、全額損金算入 され る。 また、期限切れ欠損金の損金算入額は 20(期限切れ欠損金翌期繰越額は
40)と
な り、課税所得は生 じないこととなる。(4)私
的 整 理 手 続私的整理の場合 には、再生計画認可の決定に準ず る事実が生 じ、債務者 の有す る資産の 価額につき一定の評定を行 つているときは、評価損益の金額 を損金お よび益金に算入する ことができる (法人税法第
25条 3項
、第33条 4項
、法人税法施行令第24条
の2)。 この 再生計画認可の決定に準ず る事実 とは、①一般 に公表 された債務処理を行 うための手続に ついての準則に従って策定 されていること、②資産負債につき①に従つて資産評定が行わ れ、それに基づいた貸借対照表が作成 されていること、③その貸借対照表の資産負債の価 額や、計画における損益の見込み等に基づいて債務免除額が定め られていること。④2以
上の金融機 関等125が債務免除をす ることが定め られていること、⑤政府 関係金融機 関等
(株式会社地域経済活性化支援機構または協定銀行
)が
有す る債権等につき債務免除をす ることが定められていること、 といった①か ら③ まで、お よび④または⑤に該当する場合 のことをい う。 当該要件に該 当 した場合 においては、別表添付方式により資産の評価損益125 預金保険法の各号に掲げる金融機 関(協定銀行 を除 く)、 農 水産業協 同組合貯金保 険法 に規定す る農水産業協定組合 、保険業法第
2条 2項
に規定す る保険会社お よび同条第7 項 に規定す る外 国保険会社等、株式会社 日本政策投資銀行 、信用保証協会 、地方公共団 体。‐66‐
の計上が可能 となる。
基本 的に、私的整理 ガイ ドライ ンによる手続 き、整理回収機構 に よる企業再生スキーム に よる手続 き、 中小企業再生支援協議会 による手続 き、事業再生
ADRに
よる手続 き、地 域経 済活性 化支援機構 (旧企業再生支援機構)に
よる再生手続 きについては、一定の要件 を満 た してお り、当該別表添付方式 による資産の評価損益の計上の特例 が認 め られ てい る。別表 添付方式 に よる取 り扱 いについては、前述 した民事再生法 にお ける別表添付方式 と同 様 とな ってい る。
一方で、 当該一定の要件 を満 た していない私的整理 については、期限切れ欠損金の損金 算入や資産 の評価替 えによる評価損益 の計上はできない。
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