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ドイツの企業再生の現状 Ⅲ

ドキュメント内 企業再生税制 の研究 (ページ 104-107)

第 9章   ドイツにおける企業再生 と税制 .…

第 1節   ドイツの企業再生の現状 Ⅲ

ヨー ロッパ にお ける企業再生手続 は、

2000年

5月 29日 に公布 され、

2002年

5月 31日 に施行 された「

EU倒

産規貝J(Europaische lnsolvenzverordonung:EulnsVO)」 (Council Regulation (EC)No.1346/2000 of29 May 2000 on lnsolvency Proceedings)に よ リラkき な変化が もた らされ た。 それ までは、企業再生手続 においては、債務者 に とって利便性 が 低 く、債権者 寄 りの手続 とい つた指摘がな され ていた。そのため、企業再生手続 の 申立て が遅れ 、企業再生が困難 にな ることがほ とん どであった といわれ てきた。特 に、

EU倒

産 規貝J第

3条 1項

では、

EU域

内での倒産処理手続 に関す る国際管轄 は債務者企業の 「主要 利 益 の 中心 地 」(center Of main interests:COMI.Mittelpunkt der hauptsachlichen lnteressen)によつて定ま り、会社お よび法人 の場合 には反対 の証 明がな され るまで、定 款 上 の所在地 がその主要利益 の中心地である との推定規定が設 け られ るに至った198。 これ に よ り、債務者企業 は、 よ り柔軟 な法制 をもつ国を倒産手続 の申立地 として選ぶ ことが多 くなつた。そのため、

 EU加

盟各 国ではよ り利便性 の高い企業再生法制 の整備 が求 め られ るこ ととなつたので ある199。

 

ドイ ツにおいて も、債務者企業 は厳格 で倒産手続 が使 いに く い ドイ ツの倒産法の適用 を避 けて、 よ り柔軟 な法制 を もつ国 を倒産手続 の申立地 として選 ぶ こ とが多 くなった。

さらに、

 2007年

のサブプ ライム ロー ン問題 に端 を発 した米 国バブル崩壊 によ り、2008 年 9月 15日 にアメ リカの投資銀行 リーマ ン・ ブ ラザースが破綻 し、世界的金融危機 が発 生 した。

 

ドイ ツの多 くの企業 も資産価格 の暴落 に よる財務状況が急激 に悪化 し、その改善 のためのスキー ムが論議 され てきた。 なかで もその一手法がデ ッ ト・エ クイテ ィ・ ス ワッ プ 「他 人 資 本 の 自己資 本 転 換 」(Schuldumwandlung Fremd‐ in Eigenkapital.Debt‐

Equety‐

Swap:DES)200、

っ ま り日本 の 「債務 の株式化」である。これ が企業再生 に とっ 198  cMs Hasche Sigle(Hrsg。 ): SteuerOptillnierte Gestaltungen in Restrurierung,

Sanierung und lnsolvenz,Stuttgart 2013,S.467.  久保寛展

 

「ドイツ企業再建法におけ る企業再建手法 としてのデ ッ ト・エクイティ・ スワップ」『福岡大学法学論叢』第

58巻 1号

(2013年 6月

)259頁

199  鵜川和 「事業再生手続の利便性向上を目指す欧州各国」野村資本市場研究所『資本市 場クォータ リー』第15‐

1号

(2011年夏号

)40頁

200 scheunemann,L[./HOffmann,G。 :Debt‐Equity‐Swap,in Der Betrieb 19‐2009。 S.

96‐

て有力 な手段 とみな され てい る。

 

ドイ ツ商法

(Handelsgesetzbuch:HGB)で

は、企業再 生 の範 囲において も現在 の出資者 の意向を無視 した形 で

DESを

実施す る こ とはで きない 仕組 み とな ってい る201。 っ ま り、債権者 による企業再生 に対 して、現在 の出資者 の権利 の 侵 害 を現行会社法お よび倒産法

(InsOlvenzordnung:InsO)は

、あ らゆ るケー スで放棄 し てい る。

 

ドイ ツ商法上

DESに

関 して は、商法上簡易 の減 資 と債権 の現物 出資 とい う

2段

階 の手続 を経 なけれ ばな らず 、 さらに株 主の

4分

3以

上 の同意 が必要であ り、法的手続 が

DESの

実施 に困難 を来す 可能性 が多分 にある とされ てい る

(Aktiengesetz:AktG:株

式法第

222条 1項

、第

229条 3項

)。

ドイ ツの現行倒産法 は、

1994年

10月 5日 に成 立 し

1991年

1月 1日 か ら施行 され た。

同法 の倒産 手続202は、清算 目的 か再建 目的か を区別 しないで開始 され る統一倒産手続 であ り、債務者 または債権者 の申立て (Antrag)に基 づいてのみ 開始 され る。倒産手続 の開始 は、倒産原因 (Ins01venzgrund)の存在 が前提 とな る。 自然人お よび法人 に共通す る倒産 原 因 は 、 支 払 不 能 (ZahlungSunね higkeit)。 支 払 不 能 の お そ れ

(DrOhende

Zahlungsuntthigkeit)・ 債務超過 (ウberschuldung)の

3つ

で ある。 これ らの債務者 (会

社 の取締役 を含 む。

)は

、支払不能 または債務超過 に陥 った場合 には、

3週

間以 内に倒 産手 続 を申 し立てな けれ ばな らず 、 この義務 を怠 った ことで債権者 が損害 を被 った場合 、取締 役個 人が民事責任 (賠償 責任

)を

負 うこ ともある し、刑 事罰 (3年以 下の懲役 または罰金)

の対象 にもなる。 申立てがある と裁判所 は、個別 の財産処分や債権回収 を禁止 し、管財人 を選任す る。管財人 は、債権者集会 を開催 し、清算手続 きを行 うか、倒産計画 に基づ く再 建 手続 を行 うか を決定す る。 この倒産計画 の決 定 に際 しては、債権 の種類 に応 じて組み分 けがな され 、各組 において、議決権 を有す る総債権者 の うち投票者 の頭数 と債権総額 の過 半数 の賛成 が必要 とな る。 また、管財 人 が裁判所 の一存で選任 され ることが多 く、事前協 議 を進 め るこ とが難 しい こ とに加 え、株 主総会決議 がな けれ ば株 主の権利 変更ができない ため、

DESな

どの財務再構築 を行 うことが困難 であった。そのため、実務上、債務者企業 が、定款 の所在地がある加盟国の倒産法 (ドイ ツ倒産法)と は別 の

EU加

盟 国の緩和 され た 倒 産法 (イギ リス倒産法

)の

適用 を受 けるため、倒 産手続 きが開始 され る以前 に、 このよ

983.

201 

五十嵐邦正『 ドイツ会計制度論』

(森

山書店、2012年 )252頁 。

202 

吉野正三郎『 ドイツ倒産法入門』

(成

文堂、2007年

)15‐

16頁 。経済産業省経済産業 政策局産業再生課編『各国の事業再生関連手続について―米。英・仏・独の比較分析一』

(金

融財政事情研究会、 2011年

)25‐

26頁 。

‐97‐

うな 「主要利 益 の中心地」 を移転 させ よ うと企画す る事案 が存在す るこ ととなつた。

た とえば、 ドイ ツのシェフェナ ッカー社

(SchefenackerAG)の

事例203でぁる 。シェフ ェナ ッカー社 は、

2007年

2月 11日 に会社任意整理 のために

DESの

実施 を企 図 したが、

当時 、 ドイ ツ法 においては、その実施 には債権者 の

95%の

同意 が必要 とされ ていた。それ に対 して、イ ギ リス法 では、会社任意整理 (Company Voluntary Arrangements)204も し くは債務整理計画 (Schemes OfArrangement)に 際 して債権者 の

75%の

同意 に よる多数 決 に基づ いて債権放棄お よび

DESが

認 可 され ていたので ある。そのため、同社 は、自己の

「主要利益の中心地」をイギ リスに移転す ると同時に、

 

ドイ ツで登記 され た所在地 につい て もイ ギ リスに移転 させ 、実際 に倒産手続 に対す る裁判管轄 がイ ギ リスにあることを証明 した とい うものである。 その結果、シェフェナ ッカー社 は、会社任意整理 の利用のために 債権者 の 75。

9%の

多数決 を得 るこ とにな り、企 業再生手続 を進 めることになったのであ

る。

この よ うに ドイ ツの倒産手続 は、債務者企業や債権者 に とつて利用 しづ らい手続 であ り、

「主要利益の中心地」移転 によつて海外で企業再生手続 を進 める企業が現れた こともあ り、

203  経済産業省経済産業政策局産業再生課編『 各国の事業再生関連手続 について一米・

英 。仏 。独 の比較分析 ―』(金融財 政事情研 究会 、

2011年 )41頁

。 久保 寛展 「ドイ ツ 企業再建法 にお ける企業再建手法 としてのデ ッ ト。エ クイテ ィ・ ス ワップ」『 福 岡大学 法学論叢』第

58巻 1号

(2013年 6月

)260頁

。鵜川 和之 「事業再生手続 の利便性 向 上 を 目指す欧州各国」野村資本市場研究所『 資本 市場 クォー タ リー』15‐

1号

(2011年 夏号

)47頁

204  会社任意整理 とは、

1986年

倒 産法 で、会社 に債務免 除 または会社 業務 の整理 を簡易 かつ迅速 に成 立 させ 、会社 の清算 を回避 させ る方法 として新 たに導入 され た制度である。

これ は、裁判所 がほ とん ど関与 しない手続であ り、裁判所 の命令 な しに もつぱ ら会社 と 債権者お よび株 主 との間で任意整理 を成立 させ るための手続 き として進 め られ る。 しか し裁判所外 で進 め られ る手続 きであるに もかかわ らず、会社 と一般債権者 お よび株 主の 間で成 立 した整 理計画 が会社等一般債権者お よび株 主 を拘束す ることになる。債権者等 か ら異議 がある と、その限 りで裁判所が 当該事件 に介入 して くる とい うシステムである。

いわば私的整理 と法的整理手続 の中間の よ うな制度である。債権者等 か ら異議 がある と、

その限 りで裁判所 が当該事件 に介入す る とい うシステムである。会社任意整理 は、債権 者集 会 と株 主総会 で承認 され て初 めて効力が生 じる。会社任意整理の提案 が二つの集会 で承認 され るためには、債権者集会の場合 には

75%以

上 の同意があ り、かつ、招集通知 を受 けた債権者 の

50%以

上 が反対投票 を していない ことが必要である。また株 主総会の 場合 には、過 半数以上 の同意 が必要 であ る。 二つの集会が開催 され るこ とになるが、株 主総会が否決 して も、債権者集会が承認 した場合 には、会社任意整理 は成 立す ることに な る。これ に対 し不服 のある株主は異議 申立ができる。(中島弘雅 「イ ギ リスの企業倒産 手続 の構 造 と会社法 との接点」『 企業 と法創 造 ―知 的財 産法研 究 Ⅱ

 

』第

7号

(2006年 6月 )5‐

25頁

)

98

倒産法制 の改革が促 され ることとなった。 当時の清算型 の倒産 を、再建型 の倒産法 に改善 す るこ とで、特 に企 業のための特別 な再建手続 の可能性 が探求 され た。その結果、

2010年

7月 16日に ドイ ツ連邦政府 が 「企業再生簡易化法 (Gesetz zur weiteren Erleichterung der Saierung vOn Unternehmen:ESUG)」 の草案 を公表 し、

2011年

2月 23日 に公 式 に 政府 草案 として決議 、

2011年

10月

27日

に当該政府 草案 が連邦議会 に よって承認 され 、

2012年

3月 1日 に施行 され た。

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