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法人税法 における債務の株式化の概念 と課税関係 ‑26

ドキュメント内 企業再生税制 の研究 (ページ 34-56)

1.債 務者側の法務

平成

13年

度税 制改正 では、合併、分割 、現物 出資または事後設立について組織再編成税 制が適用 され るこ ととな った。これ は、「実態 に見合 つた課税 を行 うとい う税制 の基本 を踏 ま え、原則 と して、組織再編成 に よる移転資産等 についてその譲渡損益 の計上 を求めつつ、

企業会計基準委員会 「実務対応報告第

6号  

デ ッ ト・エ クイテ ィ 。ス ワップの実行 時 にお ける債権者側 の会計処理 に関す る実務 上の取扱 い」(2002年 10月 )

https.1ヽw̲asb.Or.jp/asb/asb̲iノdocuments/dOcs/des/des̲s.pdf(2016年 10月

)2

頁。

「一体 と考 え られ る場合 とは、債権の弁済を受 けることを 目的 として第二者割 当増資 に応 じるな ど実質的 に金銭 出資 と債権 の回収が一体性 を有 し、現物 出資 に よる

DES

と同様 の効果 を もた らす場合 が該 当す るもの と考 え られ る。 なお、金銭 出資 と債権回 収 の実質的 な一体性 について は、当該金銭出資又は債権 の回収 の 目的 の他 、金銭 出資 に よる払込 と債権 の回収 の間の期 間な どを考慮 して判断す る必要がある。金銭 出資 に よる払込 の直前直後 に債権回収 を行 つた場合 には、一体ではない ことが明 らかに示 さ れ ない限 り、金銭 出資 と債権 回収 は一体 とみな され る。 ただ し、債務者 が第二者割 当 増 資 を行 い、債権者 が これ を引き受 け、払い込 んだ現金 に よ り債権 を回収す ることに よつて も同 じ効果が得 られ るため、金銭 出資 (第二者割 当増資の引受 け

)と

債権 の回 収 が一体 と考 え られ る場合 も、現物 出資 による場合 と同 じ会計処理 をすべ きもの と考 え られ る。」(企業会計基 準委員会 「実務対応報告第

6号  

デ ッ ト・ エ クイテ ィ・ ス ワ

ップの実行 時 にお け る債権者側 の会計処理 に関す る実務上の取扱 い」(2002年 10)https:′′www.asb.or.jp/asb/asb̲iノ documents/docsノdes/des s.pdf(2016年 10月 )

2頁

26‐

特例 として、移転資産等 に対す る支配 が継続 している場合 には、従前の課税 関係 を継続 さ せ る とい う観 点か ら、その譲渡損益 の計上 を繰 り延べ る、 とい う基本的な考 え方」68に基 づいて改正 され た ものである。 これ によ り、現物 出資 として取 り扱われ る

DESに

関 して も、組織再編成税制 の適用対象 となった。

したが つて、 当該金銭債権 による現物 出資が適格現物出資か非適格現物 出資かによ り課 税 関係 が大 き く変 わ って くることとな る。以下、適格現物 出資 による場合 と、非適格現物 出資 による場合 とに分 けて説 明す る。

(1)適

格 現 物 出 資 の 場 合

適格現物出資 とは、①

100%グ

ループ内の現物出資、②

50%超

グループ内の現物出資、

③共同事業を行 うための現物出資 と定義 されている。 しか し、②お よび③においては事業 の主要な資産等や従業員が被現物出資法人に引き継がれ ることその他一定の要件を満たす ことが必要であることか ら、

DESの

場合 には②および③ではな く、①の

100%グ

ループ内 の現物出資の場合のみが適格現物出資に該当す る69。

DESが

、適格現物出資に該 当す る場 合は、資産の移転について帳簿価額によつて処理 され る(法人税法施行令第

8条

1項

8号

)。

このことか ら、債務の額面額がそのまま資本金等の額 となるので被現物出資法人である債 務者 において債務消滅益は発生 しない。つま り、帳簿価額での取引を認 めることによる課 税の繰延である。ただ し、

DESを

行った債権者が原債権者か ら券面額 と異なる対価 により 債権 を譲 り受ける等、債権の帳簿価額が券面額 と異なる場合には、その差額は益金 (また は損金

)と

なる。

(2)非

適 格 現 物 出 資 の 場 合

一方、非適格現物出資 とは、上記の適格現物出資の要件に該 当しないケースである。一 般的に

DESは

、金融機関な どのグループ会社間以外で行われ ることが多いことか らも、

68 

武 田昌輔編『 会社税務釈義 (Digital版 )』 (第一法規、

2012年 )資

本 取 引

/第 5章

「課税標準」 〔Ⅱ〕(資本取 引等

)/第

1節

組織 再編成税制

/第 1款  

総説

/2

制度 の概 要

/(1)組

織 再編成 に係 る税制 の基本的な考 え方。

69 

神 足勝彦 。見瀬 賢悟『 最新

 

純資産 の部 の会計 。税務』(ぎょ うせ い、

2011年 )338

頁。

27‐

非適格現物 出資 に該 当す る事例が多い といえる。 この場合 は、平成

18年

度税制改正 に よ り現物 出資 によって受 け入れ た債権 の時価 で処理 され ることとな る (法人税 法施行令第 8 条

1項 9号

)。

もつ とも、平成

18年

度税制 改正前 は、

DESを

行 った場合 、券面額説 を採用 し、債権 の 券面額 に よ り債務者企業 の資本金お よび資本準備金 の額 を増加 させ た場合 、税務上で もこ れ を資本金等 の額 とす る取扱 がな されていた。 つ ま り、会計処理 で券面額説 を採用 した場 合 、課税所得 の計算上で も債務者 には債務消滅益 による益金 が生 じない仕組みになってい たので ある。 これ は、仮 に債権者側 で譲渡損 が生 じる場合 において も影響 され ない とされ ていた。券面額説 を採用 した場合 、債務消滅益が生 じな く益金 に算入 され ない としていた のは、商法で、資本金お よび資本準備金 を 「株式 の発行価額 の総額」 としていた (旧商法 第284ノ

2)こ

とに合わせ 、法人税法 において も 「株式の発行価額 の うち資本 に組み入れ なか った金額」を資本積 立金 と定義 していたためである(1日法人税法第

2条 1項 17号

) 70。

しか し、平成

18年

5月 に施行 され た会社法では、株式 について発行価額 とい う概念が な くな り、資本金お よび資本準備金 を 「株式の発行 に際 して払込み又は給付 を した財産 の 額」(会社 法第

445条 1項 )と

した こ とに対応 し、平成

18年

度税制改正 において、法人税 法 で も資本金 等 の額 について、「株式 の発行 を した場合 に払い込 まれ た金銭 の額及 び給付 を受 けた金銭以外 の資産 の価額その他の対価 の額 に相 当す る金額 の うち、資本金又 は出資 金 と して計上 しなかった もの」 とされた (旧法人税法第

2条 1項 16号

、法人税法施行令

8条 1項 1号

)71。

この こ とによ り、

DESに

伴 う当該金銭債権 の時価 が券面額 を下回 る場合 (適格現物 出資 を除 く。

)に

は、時価 によ り法人税法上の資本金等 の額 が増加す るため、消滅す る債務 の額 との差額 は、債務 消滅益 として認識 され益金 に算入 され ることとなった72。 それ ゆえに、

70「

DES(デ

ット・エクイティ・スワップ

)に

おける課税関係について (特

 

昨年度

[平

18年

]改正点の再検討 (第 1回))」『税務QA』 第

63号

(2007年 6月

)16

71 

頁。奥島孝康・落合誠一 。浜田道代『新基本法コンメンタール

 

会社法2』 (日本評論 社、

2010年 )366頁

。財務省大臣官房文書課『 平成

18年

度税制改正の解説』(大蔵財

務 協 会 、

 2006年 )287頁

72「

DES(デ

ッ ト・ エ クイ テ ィ・ ス ワ ップ

)に

お け る課 税 関係 につ い て (特

 

昨年 度 [平

18年

]改正点の再検討 (第 1回))」『税務QA』

63号

(2007年 6月

)16

28‐

税務 上 は時価評価 が強制 され るため、会計上、券面額説 に基づ く処理 を した場合 には税務 調整 が必要 となった。

上述 のよ うに、会計処理 においては、券面額説 あるいは評価額説 を採用す るかは、結果 的 に 当事者 に よ り自由に決定す ることができる。 そのため、債務者 は、債権 を時価 で受 け 入れ るか券 面額 で受 け入れ るか、つま り債務消滅益 を計上す るか どうか を選択す ることが で き、一定の場合 においては租税負担 の操作や課税 の公平 を阻害す ることにつなが る可能 性 が あ り、適 当ではない との意見 もあつた73。 そ こで、税法 においては、上述 の よ うに評価 額説 が強制適用 とな り、債務消滅益 が発生す るこ ととなったのである。

一方で、擬似

DESの

場合 において は、先 に述べた よ うに金銭 出資に よ り増資が行 われ るこ とか ら当該行為 は資本等取引に該 当 し、また、債務 の弁済 といった行為 は、当該債務 を金銭で返済 した といった行為 に該 当す ることか らも、租税回避 とみな され る場合 を除き 原則 は債務 消滅 益 が発 生 し課税 関係 が生 じるこ とはない と考 え られ る。

以上の よ うに、

DESが

適用 され る場合 、会社法 においては一定の場合 は券面額説 に よ り 処理 がな され る こ ととなるが、弁済期が未到来 の債権 の場合 は券面額説 または評価額説 の

どち らが妥 当であるか とい う議論 が今後必要 にな ると思われ る。一方で、法人税法 におい ては、評価額説つま り時価 で評価す ることとなった。 これ によ り、非適格現物 出資の場合 には、一律的 に債務 消滅益が生 じるため、会計上で券面額説 を前提 とし資本金等 の額 を増 加 させ た場合 は、申告調整 が必要 になる と考 え られ るのである。

2.債

権 者 側 の 法 務

債権者側 において も、適格現物 出資か非適格現物 出資に該 当す るか否 かによ り処理 が異 な る。

適格現物 出資 に該 当す る

DESを

行 った場合 、現物 出資 された金銭債権 は、現物 出資法 人 か ら被 現物 出資法人へ現物 出資直前の帳簿価額 によ り譲渡 した もの として、移転 した金 銭債権 に係 る含み損益 は繰 り延べ られ る (法人税 法第

62条

4第 1項

)。 したがって、債 権者 は現物 出資 を税務 上簿価 取引 として認識す ることとな り、譲渡損益 は発生 しない74。

73 

岡村忠生『 法人税法講義 (第

3版

)』 (成文堂、

2007年 )363頁

74 

債権者が債務者会社か ら受 け取 る株式の取得価額は

,現

物出資直前における金銭債権 の帳簿価額 となる (法人税法施行令第119条

1項 7号

)。

29

一方、適格現物 出資 に該 当 しない場合 においては、現物 出資法人が交付 を受 ける株式の 取得価額 は、現物出資に よ り給付 を した金銭以外 の資産の価額 の合計額 (取得 に要す る費 用 が あ る場合 には、その費用 の額 を加算 した金額

)と

され てい る (法人税 法施行令第 119 条

1項 2号

)。 す なわ ち、株 式 を債権 の時価 で受 け入れ るこ とが必要 とされ る。 この点に おいては、合理的な再建計画 による

DESに

限 り、債権譲渡損 の計上が認 め られ るこ とに 注意が必要である (法人税法基本通達9‐4‐ 1、 9‐ 4‐2)。 再建計画の合理性 については、①損 失負担額の合理性、②支援者 による適切な再建管理、③支援者の範囲の相 当性、④支援割 合の合理性等を総合的に勘案 して判断 され る。

また、擬似

DESの

場合 においては、金銭出資により取得す る有価証券の取得価額は、そ の払込を した額 と取得に要 した費用の合計額 とされている (法人税法施行令第119条

1項 2号

)。 さらに、合理的な再建計画に基づいているか否かに関わ らず、当該債権 は法形式的 には返済を受けていることか ら、擬似

DES実

行時においては、債権譲渡損等の課税関係 は生 じないこととされている。

30‐

ドキュメント内 企業再生税制 の研究 (ページ 34-56)