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企業再生税制適用事例の分析・検討 .…

ドキュメント内 企業再生税制 の研究 (ページ 87-91)

第 7章   企業再生方法に対する税法的分析・検討 .…

第 2節   企業再生税制適用事例の分析・検討 .…

会社 更生法 。民事再生法 。私的整理 に よる再生手続 においては、税法上様 々な特例 が設 け られ てい る。 まず、財産評定による資産 の評価損の損金算入お よび期 限切れ欠損金 の損 金算入 である。 これ らは、再生手続 の手法 によ り適用 関係 が異なって くるが、再生時 に多 額 の債務免 除益等 が計上 され るこ とが多 く、青色欠損金 のみでは相殺 しきれ ない場合 もあ るこ とか ら会社更生法や民事再生法、私的整理手続か らの要請お よび再生す る といつた 目 的 を達成す るた めに講 じられ た規定である。

しか し、租税公平主義 の観 点か らは、当該企業再生税制 の適用 のあった企業が、再生後 に他 の企業 よ りも有利 になること等か ら問題点がある と考 える。特 に、税 は中立であるこ とが前提 で ある。以下で検討す る事案 は、企業再生税制の問題 点が浮 き彫 りになった事例 で ある。特 に、租税 の公平性・ 中立性 の観点や税 が市場競争 に歪み を与 える結果 となった こ とな ど多 くの問題 を含 んでいる と考 える。以下、事例 を通 して、企業再生税制 について 租税公 平主義 の観 点お よび税 が与 える市場競争環境への影響等 の観点 について検討 してい

く。

1.事

例 の 概 要

日本航 空株式会社 (以下、「JAL」 とい う。

)が

企業再生支援機構 に支援 の 申込み を行 う とともに、東京地方裁判所 に会社 更生法適用 を申請 し、同 日更生手続 開始 の決定 を受 けた 事例 について概 要 を述べ てい く158。

JALは

、更生手続 開始決定直前 の平成

22年

3月 第

2四

半期 末 において、純資産 を1,593 億 円 としプ ラスの数字 を示 してい るが、実際 には清算 を前提 に査定 した もの と考 え られ る。

b7 

岸 田雅雄 「法人税 の課税ベー ス」『 租税 法研 究』第

17号

(1989年 10月

)27頁

b8 

当該事例 は、株式会社 日本航空、株式会社 日本航空イ ンターナ シ ョナルお よび株式 会社 ジャル キャ ピタル の 日本航空 グループ

3社

が更生会社 とされ てお り、更生計画認 可決 定の翌 日に株式会社 日本航空イ ンターナ シ ョナル を存続会社 とす る吸収合併 を行 つてい る。

79‐

しか し、航空機 リースの価値減少 に よる含み損等 を加 味す る と、実際 には約 7〜

8,000億

円の債務超過 に至 っていた159。 また、 リーマ ンシ ョックに端 を発 した国際線 の需要の大幅 な減少や 、燃 油高騰 による経費の増加 、デ リバデ ィブ取引の失敗 による損失拡大、ホテル 事業等 その他事業 の失敗等 に よ り、資金繰 りの悪化が顕著 になった とい える160。

この よ うな経営状態であった

JALは

、平成

22年

1月 19日 に会社更生法適用 を申請 し、

更生手続 開始 の決 定 を受 けた。 当該更生手続 は、公的資金 の注入お よびプ レパ ッケー ジ型 を併せ て採用 してお り特殊 な手法が用い られ た161。 会社 更生法 の更生手続 開始決 定後 、企 業再生支援機構 (管財人)が 、

JALの

再生計画案 を東京 地方裁判所 に提 出 し認 可を受 けた。

同計画案 については、人員削減 、事業規模 の縮小、企業年金削減等の再生のための取組 を 行 うとともに、企業再生支援機構 による3,500億円の出資、金融機 関等 の更生債権者 に対 し総額5,215億円 (一般 更生債権 の

87.5%)の

債権放棄 の要請 、商取 引債権 の全額保護お よび産活法 の適用 によ り日本政策投資銀行が事業再生

ADR手

続 き中に実行 したプ レ

DIP

ファイナ ンスの全額保護や既存株 主の

100%減

資等 の再生 のための措置 を講ず る との内容 であった162。 また、当該再生計画策定前 には、企業再生支援機構 に よるつ なぎ融資

800億

円、 日本政策投資銀行 に よるつ なぎ融資2,800億円が実施 され ていた。

JALが

、私的整理 ではな く会社更生法 による手続 きを行 うこととなつたのは、 この よ うな多額 の公的資金 の 注入 があつたた め、手続 きの透 明性確保や抜本的な経営再建 の実現が必要 との判断がな さ れ たか らで あ る163。

平成

23年

においては、更生債権約2,550億円について、合 計 11の金融機 関か ら資金調 達 を行 い、その後一括弁済 を実施 した。 そのため、更生手続 の要件 を満 た し、東京地方裁 159 井 端 和 男 「日本 航 空 の会社 更生 法適 用 と黒 字倒 産 」『NBL』 第

924号

(2010年 3

)46頁

160 コ ンプ ライ ア ンス調 査 委員 会 「調 査報告 書 (要)」

https、11、ww.jaloco.jpノother/100831̲04.pdf(2016年 10月

)7頁

161  プ レパ ッケージ型 (事前調整型

)と

は、申立前にあらか じめスポンサーを決めた上で 再生計画案に対す る主要債権者の同意を取 り付 けてお く再生手法である。 当該手法は、

スポンサーの経営力、信用力や、利害調整機能等を法的整理 申立て時点か ら最大限活用 す ることができること、事業価値の毀損を抑制す ることができること、 さらには法的整 理係属期間を大幅 に短縮できるため手続 きや計画案の決定 も迅速化す る等の効果があ る。知野雅彦監修『企業 。事業再生ハ ン ドブ ック』(日本経済出版社、

2015年 )346頁

。 田頭章一 「事前調整型事業再生手続の意義 と限界」『 ジュ リス ト』第

1401号

(2010年 6 月

)21頁

162  藤原総一郎監修『企業再生の法務 (改訂版)一 実践的 リーガルプロセスのすべて

 

(一般社団法人金融財政事情研究会、

2012年 )656頁

163  畠山肇 「

JALの

再生問題」『 立法 と調査』第

301号

(2010年 2月

)175頁

80‐

判所 が更生手続終結 を決 定 した (会社 更生法第

239条

)。 平成

24年

度 において、

JALは

航 空機 を

45機

購入 し、さらに、新規路線 の開設 を発表 し、東京証券取引所第一部へ再上場 を 果 た したのであ る。 再上場 とともに、企業再生支援機構 が保有す る全株式 を売却 し、 当機 構 に よる支援 も完了 した。

上述 の よ うに更生手続 が行 われ、

JALは

わずか

2年

8ヶ月 で再上場 を果 た し、さらに平 成

24年

度決算 においては、 1,866億 円 もの利益 が計上 され てお り

JALは

急激 な業績回復 を遂 げたのであ る164。 一方 で、公的資金 の注入 、会社更生法 による多額 の債務免 除の実行 等お よび税制優遇措置 に よ り、同業他社 か らは

JALへ

の過剰 な支援 があったのではない か、公正な競争環境 が維持 されていないのではないか との意見等 も多 くあ り、課題 を多 く 残す結果 となった165。

2.事

例 の 税 法 的 検 討

当該事例 は会社 更生法 に よる更生手続 であることか ら、法人税法第

59条 1項

の適用 が

認 め られ ていた。そのため、財 産評 定が行 われ た際 の資産 の評価損 が約 3,588億円計上 (主 に継続使用予定機材 に係 る簿価 と時価 の差額

)さ

れ 、 さらに財務 資料か ら正確 な期 限切れ 欠損金 お よび青色欠損金 は確認す ることはできないが、債務免除益等 にかか る益金 に対 し て仮 に期 限切れ欠損金 があれ ば優先控除が可能であった166。 そ して、当該更生手続 きに よ り、

JALは

8,994億円もの多額 の青色欠損金 を計上す るこ ととな り、再生後 において利益 が計上 され て もなお課税所得 は生 じない こととなった167。 また、法人税減免 お よび債務免 除 に よる金利負担 の軽減等 に よ り、年間約

500億

円のキャ ッシュフロー の押 し上 げ効果 が あ り、破綻せず に利益 を上げてきてい る同業他社 よ りも投資余力 が強化 された とい うこと

164 

JALグ

ループ

 

平成

24年

3月 期連結業績の概況」第

12027号

httpソゎress.jal.co.jptta/bW̲uploads/JGN12027.pdf(2016年 9月 )

165  特に、特定の企業に対する公的支援については、公正な競争環境を歪めるものとして

EUの

国家補助 (State aid)規 制のよ うな調整手段 を検討す る必要性があったのではな いか との意見 もあつた。小野展克 「日本航空再上場の課題」『 嘉悦大学研究論集』第 55 巻

2号

(2013年 3月

)11頁

166  コンプライアンス調査委員会 「調査報告書 (要)」

httpsWwww.jal.co.jp/other/100831̲04.pdf(2016年 10月

)6頁

。 167  国土交通省、航空局 「日本航空の再生について」

httpWwww.mlit.gojp/common/000229684.pdf(2016年

10月

)12頁

‐81‐

がで きる168。 今 回の

JALの

更生手続 きにおいて、同業他社 である全 日本空輸株式会社 は、

「当該税制優遇措置によって蓄積 された資本や キャッシュによつて、日本航空の企業体力、

投 資余力 が よ り強化 され、実際 に航空機や機 内設備等への投資が行 われれ ば、 日本航 空の 競争力 が さ らに高ま る とい う好循環が実現す ることは明 白です。 一 もともと会社更生法適 用 に伴 う税制優遇措置 は、本来 は破綻直後 において、担税力の無 い企業の税負担 を軽減 し、

企業再生 を進 めやす くす る とい う意図に基づいて設定 され た特例措置であることを踏 まえ れ ば、 日本航空の よ うな莫大な利益 を計上 し、担税力 を充分 に有 してい る企業が当該税制 優遇 を享受 し続 けてい ることは、当該企業 と同一市場 で競争 してい る競争社 に とつては、

極 めて不公 平 かつ過剰 な支援 が継続 してい るもの と言 わ ざるをえませ ん。」 との意見 を述 べ てい る。

上述 した よ うに、当該事案 は企業体質等 の内的要因 も含 め、特 に リーマ ンシ ョック等 の 外的要 因の影響 が大 き く経営破綻 に陥 った もの と思われ るが、 この市場環境 はその他 の同 業他社 も同 じ状況 で ある。 同様 の環境 下 において利益 を計上 してい る企業 と比べて、法人 税法第

59条

の適用会社 の競争力が高ま り経営上有利 な状態 とな ることについては、企業 再生 を阻害 させ ないために制定 され た法人税法第

59条

の 目的 を逸脱 してい るよ うに も思 える。つま り、企業再生 を阻害 させ ないための措置が、当該再生企業 と同一市場で競争 し てい る企業 に とつて、不公平な措置 とな り競争環境 の歪み に繋 が る1つの要因 ともいえる。

この よ うな、過度 な優遇措置 は、市場競争 に歪み を与 えるこ ととな り、また、税 が積極的 に法人の経済的活動 に影響 を与 えることとな り、租税公平等主義 の視点か らも妥 当である

とはい えない。

168  国土交通省 「日本航空株式会社及び全 日本空輸株式会社への追加質問に対する両社 の回答」

http://www.jttc.gojp/soshiki/kyOtsukoukai/kenkyukai/kyousouseisaku/dai7kai.flles/s

iryo7‐4.pdf(20164巨 10月)

‐82‐

ドキュメント内 企業再生税制 の研究 (ページ 87-91)