長井 圓 共訳 藤井 学
財 産侵 害 罪 とは,公 私 の 財 物 を不 法 占有 〔不 法 領 得 〕の 目的 で取 得 す る 行 為 ま た は故 意 に殿損 す る行 為 をい う。
財 産 侵 害 罪 の 構成 要 件 は,次 の通 りで あ る。
(1)本 罪 の 主体 は,一 般 主 体 で あ る。 た だ し,職 務 上横 領 罪 ・資 金 流 用 罪 ・特 定 資 金物 資 流 用 罪 の み は,特 殊 主体 で あ る 。 これ は,刑 法 の 各規 定 に よれ ば,会 社 ・企 業 ・そ の他 の 単 位 の非 国家 職 員,特 定 の 金 銭 財 物 を管 理 す る経 理 職 員,ま た は流 用 を許可 した関連 責 任 者 で あ る。 刑 法17条 は,16歳 以 上で刑 事 責任 能 力 あ る者 は,す べ て 財 産侵 害 罪 の主 体 に な りうるが,強 盗 罪 に 関 して は,14歳 以上16歳 未 満 の 者 で も,犯 罪 主 体 に な りうる,と 定 め る。
(2)本 罪 の 客 体 〔法 益 〕は,公 私 の 財物 の所 有 権 で あ る。 所 有権 と は,社 会 現 象 か つ 経 済 的 範 疇 で あ りs所 有 者 の 財 物 に 対 す る 占 有 ・使 用 ・収 益 ・処 分 の 合法 的統 一 体 をい う。 この 利 益 は,法 律規 範 に よ り調 整 され る と,所 有 者 の法 律 形 式 を備 え た動 産 ・不 動 産 へ の 合 法 な 占有 ・ 使 用 ・収 益 ・処 分 権 と して規 定 され る。
い か なる財物 侵 害行 為 で あ れ,財 物 の み な らず そ の社 会的 内容 た る財 産 利益 と所 有権 形 式 の 「法 律 的 保 護 」 とを侵 害 す る。 所 有 権 は,物 権 で あ る。 社 会経 済 的範 疇 で あ る所 有権 は,物 と関連 し物 と して 具 体化 され る。
そ れ ゆ え,財 産 侵 害 罪 は,現 象 的 には,物 質 世 界 の 物 に対 す る行 為 者 の不 法 な影 響 で あ るが,実 質的 には,所 有 者 の 合法 財 産利 益 の侵 害 つ ま り公 私 の 財 物 の所 有 権 侵 害 で あ る。
(3)本 罪 の 主観 面 は,故 意 に よ っての み 構成 され る。 さ らに,強 盗 罪 ・窃 盗 罪 ・詐 欺 罪 な ど大 多 数 の犯 罪 は,公 私 の 財 物 の不 法 占有 〔不 法
298 率申づ?ミllI〜去'1を第34巻 第3号200ユ イ1こ
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す るが,特 に次 の点 で 区別 され る。① 侵 害客 体 が異 な る。後 罪 の法益 は児 童 の心 身 の 自由 とそ の健康 で あ るが ,本 罪 の法益 は主 に他 人の 家庭 お よび 児 童 の心 身 の健 康 で あ る 。② 侵 害 手 段 が 異 な る。 後 罪 は暴 力 ・脅 迫 また は麻 酔 を手段 とす るが ,本 罪 は欺 岡 ・利 益 誘 導 また は そ の他 の 方 法 を手 段 とす る・③ 犯 罪 目的 が 異 な る。 後 罪 は児 童 売 却 を 目的 とす るが
,本 罪 は 児 童 の使 役 や 養 育 を 目的 とす る。
皿 刑 事 責任
刑法262条;本 罪 を犯 した 者 は,5年 以 下の 有期 懲 役 また は拘 留 に処 す る。 児童 を誘 拐 して,保 護 者 また は監 護 者 に児童 の 健康 を憂 慮 させ た と
き,そ の他 の 重 大 な結 果 を生 じさせ た と き,児 童 の心 身 の健 康 に重 大 な損 害 を与 え た と き,ま た は多 数 回 にわ た り児 童 を誘 拐 した と きは ,重 く処 罰 す る。
(1)最 高 人 民 法 院 ・最 高 人 民 検 察 院 「強 姦 事 件 の 処 理 に お け る 法 律 の 具 体 的 適 用 に 関 す る 若 干 の 問 題 の 解 釈 」(1984年4月26日)参 照
。
(2)1999年12月23日 最 高 人民 法 院 「婦 女 誘 拐 売 買 事 件 の 審 理 に お け る 法 律 の 具 体 的 適 用 に 関 す る 若 干 の 問 題 の 解 釈 」。
(3)・(4)最 高 人 民 法 院 ・最 高 人 民 検 察 院 「金 国 人 民 代 表 大 会 常 務 委 員 会 『婦 女 児 童 誘 拐 売 買 ・略 取 の 犯 罪 者 に 関 す る 決 定 』 の 執 行 に 関 す る 若 干 の 解 釈 」の 解 答 。
(5)最 高 人 民 法 院 研 究 室 編 「司 法 文 件 選 」1995年(第3巻)39頁
。
(894) 何 飛 松 編 著 ・ 刑 法 教 科1署}(各 論 編241;ト29'勧 29?
とす る故 意犯 で あ り,客 観 的 行 為 と して交錯 す る部 分 もあ るが,特 に次 の 点 で 区別 され る。① 本 罪 は,消 極 的不 作 為 の形 態 で行 わ れ る扶 養 義 務 の履 行 拒 絶 で あ るが,後 罪 は,積 極 的 作 為 の形 態 で被 害 者 に 肉体 的 ・精 神 的 な苦 痛 を加 え る犯 罪 で あ る。② 犯 罪 対 象が 部 分 的 に異 な る。 本 罪 の対 象 は老 人 ・年 少 者 ・病 者 ・そ の他 の独 立 生 活 能 力 の な い 者 で あ る が,後 罪 の対 象 は 家 族構 成 員 の誰 で も よい 。③ 犯 罪 目的 が 部 分 的 に異 な る。 本 罪 の行 為 者 は扶 養 義 務 の 履 行 逃 避 を 目 的 とす る の に対 し,後 罪 の 行 為 者 は・
主 観 的 に被 害 者 に 肉体 的 ・精神 的 な苦 痛 を加 え る こ とを 目的 とす る。
皿 刑 事 責任
刑 法261条;本 罪 を犯 した者 は,5年 以 下 の有 期 懲 役,拘 留 また は 管 制 に処 す る。
中華 人民 共和 国 縁 組 法30条3項;自 己の 出 産 した子 を売 却 した と き は,遺 棄 罪 と して処 罰 す る。
3児 童 誘 拐 罪 〈拐JL童 罪 〉
児 童 誘 拐 罪 とは,欺 岡 ・利 益 誘 導 ・また は そ の他 の方 法 を用 い て ・14 歳 未 満 の 男 女 児 童 を家 庭 ま た は監 護 権 者 か ら離 脱 させ る行 為 をい う。
1犯 罪 構 成
(1)本 罪 の 主 体 は,自 然 人 一 般 で あ る。
(2)本 罪 の客 体 は,他 人 の 家 庭 お よび 児童 の心 身 の健 康 で あ る。
(3)本 罪 の主 観 面 は,故 意 を必 要 とす る。 本 罪 はs一 般 に は 自己 が 引 き取 っ て養 育 す る 目的,ま た は奴 隷 と して使 用す る 目的で 行 わ れ るが ・ 売 却 お よび営 利 を 目的 とす る場 合 は本 罪 に含 まな い ・
(4)本 罪 の客 観 面 は,欺 岡 ・利 益 誘 導 ・そ の他 の方 法 を用 い て, 14歳 未 満 の 児 童 を そ の 父 母 また は 監 護 権 者 か ら離 脱 させ る行 為 で あ る。
誘拐 行 為 には,児 童 本 人 に直接 な され る行 為 の ほか,児 童 の保 護 者 ま たは 監 護 者 を欺 岡 して 児 童 を連 れ 去 る行 為 も含 む。
皿 定 罪
本 罪 と児 童 誘 拐 売 買 罪 との 区 別 が 問題 とな る・ 両 罪 の犯 罪 対 象 は 共 通
296神 奈川法学第34巻 第3号2001年
(895) 家 騰 頗 間 の扶 難 務 につ い て具 体 白勺碇 め る
.行 為 者 が扶 簸 務 を 履 行 しな い場 合 には・被 扶 養 者 の1去定 の扶 養 を受 け る権 利 が侵 害 され る
。 (3)本 罪 の主 観 面 は,臆 に限 る.T7 ,.,.は 泊 己 の義 務 不履 行 に よ り被扶 鵡 咽 難 や鰭 が 及 び うる と知 って し・な けれ ば な らず 慮 識 的 に法 議 務 の不 履 行 が な され ね ば な ら な い。行 賭 がAX.に 扶 簸 務 を 履 行 しなか っ たの で は な く,そ れ が生 活 上の 困難 そ の他 の 合理 的 な理 由 に よ る こ とが確 実 で あ れ ば ,遺 棄 罪 は成 立 しな い 。
(4)本 罪 の 客 観 面 は 遺 棄 行 為 で あ る.遺 棄 行 為 の橡 はr老 人 , 年 賭 緒 また はそ の 独立 生 活 能 力 の ない者 で あ る
。 す なわ ち,① 労 働 能 力'生 活 基 盤 を欠 くた め,他 人 の経 済 的 供 給 を必 要 とす る者
,② 経 済 的 収 入 は あ るが 単 独 生 活 が 不 能 なた め ,他 人 の 世話 を必 要 とす る者,③ 幼 年 の ため,独 立 生 活 能力 の な い者 が,こ れ に あ た る。 これ に該 当 す る家 族 構 頗 に 自己 の 果 たす べ 議 務 を履 行 しな し・こ とが 遺 棄 で あ る
。 刑 法 に よれ ば 遺 棄 行 為 の 情 状,.劣 悪 な船 に のみ
,犯 罪 が 成 立 す る 。 司法 実 務 で は ・特 に被 遺 棄 者 に重{募 ・死 亡 の 結 果 が 生 じた場 合
,鵬 者 が生 活 のあ て が な 倣 浪 し窮地 に陥 っ て 自殺 し場 合 遺 棄 す る際 に被 害 都 翻 虐待 した船 遺 棄行 賭1こ 改 心 の余 地 が な い場 合 遺 棄 の動 機 が 極 め て卑 劣 な場 合 が 情 状 の 悪 質 な遺 棄 行 為 にあ た る と され て い る
。 H定 罪
1・ 本 罪 と故意 殺 人罪 との 限 界 本 罪 と後 罪 とは
,そ の性 質が 歴 然 と異 な る の で 通 常 は混 同 され な い・ しか し*青 神 ・知 能 に欠 陥 が あ り行 動 の 困難 な老 人 や嬰 児 を遠 隔 地 に遺 棄 す る場 合 には
s事 情 が 複 雑 な ので,具 体 的 事 案 に基 づ い て処 罰 を区 別 しな けれ ば な ら ない。 発 見 の容 易 な適 宜 の救 助 の 可能 な場所 に被害 者 を遺 棄 した と きに は
,本 罪 が 成 立 す る。 これ に対 し,生 命 の危 険 が発 生 しや す い場 所,人 跡 未 踏 の 山野,凍 飢 や 野 生 動 物 の 攻 撃 に よ り極 め て傷 害 を受 け や す い場 所 に被 害 者 を遺 棄 した場 合 に は ・後 罪 が成 立 す る。 この よ うな場 合 に は
,遺 棄 に よ り被 害 者 の生 命 を不 法 に剥 奪 し よ う とす る 故 意 の 存 在 が 明 らか で あ る。
2・ 遺棄 罪 と虐 待 罪 との 限界 本 罪 と後 罪 とは
t家 族 構成 員 を犯罪 対 象
(896)脈 松繍 ・刑法孝文科・1}(各繍24'詮 〜29';至)295
刑 法260条 はr家 購 頗 の 虐手寺の情 状 が 劣 悪 な場 合 に の み本 罪 を季韓成 す る,と 定 め るの で,情 状 劣 悪 の 成 否 が 本 罪 と非犯 罪 との 限 界 とな る。
劣 悪 な情 状 とは,一 般 に,特 に卑 劣 な虐待 動 機,特 に残 忍 な手段,虐 待 に よる 身体 障 害 ま た は死 亡,老 人 ・幼 年 者 ・病 者 また は 身体 障 害 者 な ど 独 立 生 活 能力 な き者 の 虐待,長 期 の 虐 待 に よる改 心 の 余 地 の 欠如 をい う。
被 害 者 に重 傷 また は死 亡 の糸課 を生 じ させ た と きは・故 意 鵬 罪 また は故 意殺 人罪 が 成立 す る。 父母 の不 適切 な躾 な ど,単 に粗 暴 なだ けで 舗 を加
え る意 思 が ない と きには,本 罪 は 成 立 しない 。 H刑 事 責 任
刑 法260条1項 ・2項;本 罪 を犯 した者 は,2年 以 下 の 有期 懲 役,拘 留 また は管 制 に処 す る。 被 害 者 を重傷 また は死 亡 させ た ときは ・2年 以 上
7年 以 下 の有 期 懲 役 に処 す る。
被 害 者 の 重 傷 ま た は死 亡 の 惹起 に はs虐 待 行 為 よ り直接 に重傷'死 亡 の結 果が 生 じ腸 合,お よび甚 だ しい 虐待 を受 け た被 緒 の 自殺 に よr 傷 ・死 亡 の 結 果 が 生 じた場 合 も含 む。
刑 法260条3項;1項 の 罪 を犯 した者 は,告 訴 を待 って 処 断 す る。
虐 待 行 為 が2項 の 規 定 に該 当 して被 害 者 に重 傷 また は死 亡 を惹 起 した と きは,自 訴 事 件 〔親 告 罪 〕に該 当 しな い の で,公 安検 察 機 関 は積 極 的 に 訴 追 を しなけ れ ば な らな い。
2遺 棄 罪 〈遺 奔 罪 〉
遺棄 罪 とは,老 人,年 少 者,病 者,ま た は そ の他 の独 立 生 活 能 力 の な い 者 を,そ の扶 簸 儲 が扶 養 を拒 絶 し,そ の情 状 が劣 悪 な行 為 をい う・
1犯 罪構 成
(1)本 罪 の 主体 は遺 棄 され る者 に女寸して法 定 の扶 醸 務 を負 う者 で あ る。 刑 法 で は,法 定 の 義務 を負 わ な い者 が扶 養 を拒 絶 して も・遺 棄 と は認 め られ ない。 行 為 者 が法 定 の義 務 を負 うか否 か は ・わが 国 の婚姻 法 に 依 拠 して,遺 棄 罪 の 主 体 要 件 の存 否 を確 定 しな け れ ば な ら ない 。
(2)本 罪 の客 体 は,家 族構成 員 間 の 合法 な権 益 で あ る。 婚 姻 法 は,