1虐 待 罪 〈虐 待 罪 〉
虐待 罪 とは,共 同生 活 を営 む 家 族構 成 員 に ,罵 倒 ・逮 捕 ・凍 飢 ・病 気 不 治療 ・体 力 を超 え る労 働 強 制 ・自由 制 約 等 の方 法 を用 い て
,日 常 的 に 肉体 的 また は精 神 的 な苦 痛 を加 え ,そ の情 状 が 重 大 な行 為 をい う。
1犯 罪構 成
(1)本 罪 の 主体 は,共 同 生 活 を営 む家 族構 成 員 で あ りs相 互 扶 養 の 義 務 を有 す る者 で なけ れ ば な らな い。 例 え ば ,夫 婦,父 母,子,兄 弟,姉 妹 の ほ かr扶 養 義 務 を負 い 共 同 生 活 す る親戚 ・友 人 も含 まれ る。 家 族 構 成 員 間 の虐 待 で な け れ ば ,本 罪 は 成 立 しな い 。
(2)本 罪 の 客体 は,家 族構 成 員 の家庭 生 活 にお け る合法 な権益 と同 時 に,被 害 者 の 人 身 の権 利 も侵 害 さ れ る。
(3)本 罪 の 主観 面 は,故 意す な わ ち犯 罪者 が 被 害 者 に肉 体的 また は 精神 的 な苦 痛 を加 える故 意 を必 要 とす る。虐 待 の動 機 は,多 種 多様 で あ る が,本 罪 の 成立 に影 響 しな い。
(4)本 罪 の客 観 面 は,家 族構成 員 の心 身 に 日常 的 また は連 続 的 な苦 痛 を加 え る行 為 で あ る。 心 身 に苦痛 を加 え る行 為 は,各 種 の形態 の もの が 長期 間行 われ ・複 数 の者 が 同 時 に行 う こ と も交代 で行 うこ と もあ る。 虐待 行 為 は,日 常 的 ・連続 的 に行 わ れ ね ば な らず ,偶 発 的 に罵 倒 した り凍 飢 の状 態 に放 置 した だけ で は ,本 罪 は成 立 しな い。 虐 待 は,行 為 の 態様 と し て 不 作 為 もあ るが,積 極 的 な作 為 が 多 い。
(898) 何 兼 松 編 著 ・ 刑 法 教 科1書}(各 論 編24章 〜29「;宝) 293
者 の あ る二 人 の現 役軍 人が 重婚 して も,こ の現 役 軍 人双 方 の 配偶 者 が 現役 軍 人で な けれ ば,本 罪 で な く重 婚 罪 と して処 罰 す べ きで あ る。 なぜ な ら,
この よ うな行 為 に よっ て現 役 軍 人 の合 法 な婚 姻 関係 は侵 害 され ない の で, 本 罪 に該 当す る の は妥 当 で ない か らで あ る。
(2)本 罪 の客 体 は,現 役 軍 人の婚 姻 関係 で あ る。 現 役 軍 人 とはs軍 籍 を有 す る 中国 人民 解 放 軍 ま た は 武 装 警 察 部 隊 に服 務 す る軍 人 をい う・
これ には,国 境 警 備 武 装 警察 お よび消 防警 察,さ らに軍 籍 を有 す る幹部' 兵 士 ・そ の他 の 専 門技 術 員 も含 まれ る。復 員 退 役 軍 人,転 業 軍 人,人 民 警 察 お よび軍 籍 の な い軍 事 部 門 ・人 民 武 装 警 察 部 隊 の 隊 員 の ほ か ・受 刑 服 役 中 の軍 人 は,現 役 軍 人 に含 まれ な い 。
(3)本 罪 の 主観 面 は,直 接 故 意 で あ る。 す なわ ち,相 手 方 が 現役 軍 人 の配 偶 者 で あ る と知 りなが ら同 人 と結 婚 また は 同居 す る故 意 で あ る 。 行 為 者が 相 手 を現 役 軍 人の配 偶 者 と知 らな か っ た場 合,ま た は相 手 方 に騙
さ れて 真 実 を知 らず に結 婚 ・同 居 した場 合 に は,軍 人婚 姻 破壊 罪 は 成 立 しえ な い。
(4)本 罪 の客 観 面 は,現 役 軍 人の 配偶 者 と同居 また は結 婚 す る行 為 で あ る。 現役 軍 人 の配偶 者 とは,既 に法 に基づ い て現 役 軍 人 と結 婚 して い る者,ま た は結 婚登 記 手 続 は済 ませ て い な いが既 に事 実 婚 の状 態 にあ る者 をい う。 わが 国の 刑法 が軍 婚 を保 護 す る範 囲 は,軍 人の 配偶 者 に限定 され るの で,現 役 軍 人 との婚 約者 は,現 役 軍 人 の配 偶 者 と解 しえ ない ・現 役 軍 人 の配偶 者 との結 婚 とは,現 役 軍 人の 配偶 者 との結婚 を登 記 す る場 合 の ほ か,夫 婦 名義 で公 然 と共 同生 活 す る こ とをい う。現 役 軍 人 の配偶 者 との 同 居 とは,現 役 軍 人 の配 偶 者 と一 定期 間 同棲 す る こ との ほか ・比 較 的 長期 間 に公然 また は秘密 裏 に共 同 生活 す る こ とを含 む。 この 関係 は・不 当 な両性 関係 を基礎 と した経 済 的 に特 殊 な生 活 関係 で あ る こ とが 多 い ので ・現 役 軍
人の 配 偶 者 との姦 通 行 為 とは異 な る。
軍 婚 破壊 罪 を処罰 す る 目的 は,軍 人の 婚 姻 関係 の保 護 にあ り・軍 人 の 婚 姻 の破 壊 行 為 が な され て も軍 人本 人 が 口外 して追 及 す る こ とを望 まな い ため に,犯 罪 と して処 罰 しえ な い こ とに あ る。 しか し,こ の よ う な違 法 行
292 神 奈 川 法 学 第34巻 第3号2001年
(s99) 済 ませ た場 合 の ほか,結 婚 登 記 は済 ませ てい ないが 正 式 に夫 婦 名義 で共 同 生 活 を行 っ た場 合 が 含 まれ る。 新 た な 婚姻 登 記 条 例(1994年2月1日
民 生 部 公 布)の 公 布 ・施 行 後,配 偶 者 あ る者 が 他 人 と夫 婦 名義 で 同居 生 活 を始 め た と き・また は配偶 者 の あ る相 手 と知 りなが ら夫 婦 名 義 で 同居 生 活 を行 っ た と きは,重 婚 罪 に よ り定 罪 ・処 罰 され て い る151。
H定 罪
1・ 本 罪 と姦 通 行 為 との 区 別 重 婚 と姦 通 とは
,性 質 が 異 な る。 姦 通 は,双 方 ない し一 方 に配偶 者 の あ る男 女 が 自発 的 に不 当 な性 的 関係 を もつ 場 合 で あ り・反道 徳 的 な行 為 で は あ る 。 しか し,わ が 国 の刑 法 は,こ の行 為 を犯 罪 と定 め て い な い の で ,重 婚 罪 との 区別 が 必 要 に な る。
2.自 然 災 害 に よ って流 民 化 した 者 の 重婚,結 婚後 に虐待 を受 け て逃 げ 出 した 者 の再 婚f拐 取 売 却 され た 者 の 再 婚 につ い て も
,注 意 が 必 要 で あ る。 いず れ の場 合 もr重 婚 罪 と して処 断 す べ きで な い。
3.不 法 な婚 姻 関係 を積 極 的 に また は 説 得 ・戒 告 ・教 育 され て 取 消 し た者 に つ い て も,重 婚 罪 の成 立 は 認 め られ な い。
4.配 偶 者 が 長期 の行 方不 明 とな り家庭 生 活 に多 大 な困難 が 生 じた ため に他 の 異性 と結 婚 した 者 は ,本 罪 と して処 断 しな い 。
m刑 事 責任
刑 法258条;本 罪 を犯 した者 は,2年 以 下 の有 期 懲 役 また は拘 留 に処 す る。
重婚 罪 を犯 した者 は,重 婚 に よる不法 な婚 姻 関係 の取 消 を宣告 しな け れ ば な らな い 。
3軍 婚 破 壊 罪 〈破 圷 畢 婚 罪 〉
軍婚 破壊 罪 とは,現 役 軍 人 の配 偶 者 と知 りなが ら同 居 また は結 婚 す る行 為 をい う。
1犯 罪 構 成
(1)本 罪 の 主 体 は,自 然 人一般 で あ る。 現役 軍 人が 他 の現役 軍 人 の 配偶 者 と結 婚 また は 同居 した場 合 に も,軍 人婚 姻 破壊 罪 が 成立 す る。 配偶
(900) fμ∫兼 舷、編 著 ・ 刑It、孝文孝斗 巳重ギ(各 口命編24〜;r〜29'諺) 291
した場 合 にの み裁 判所 が 処罰 し うる こ とをい いr告 訴 が な され な けれ ば処 罰 しえ ない 。 この よ うな犯 罪 は 「親告 罪」 と呼 ばれ る。 わが 国 の刑 法 が 本 罪 を親告 罪 と定 め た の は,本 罪 が 親族 間で 行 わ れ る ため,被 害 者 が 最 も
望 む こ とは干 渉 者が 再 び婚 姻 の 自 由 を干渉 しない こ とで あ り・必 ず し も法 律 に訴 えて 親 族 に法 的 制 裁 を負 わ せ る こ とで は な い との理 由 に基 づ く・
そ れ ゆ え,司 法 機 関 は,こ の種 の犯 罪 で は積 極 的 な追 及 を行 わ ない の で あ る。 しか し,被 害者 の死 亡が 惹 起 され た場 合 は,そ の例 外 とな る。 刑 法98 条 は,親 告 罪 の 事 件 につ き被 害 者 が 強制 ・威 嚇 され て 告 訴 で きない と き は,人 民 検 察 院 お よび被 害 者 の 近 親 者 が 告 訴 を な しう る,と 定 め る・
2重 婚 罪 〈重 婚 罪 〉
重 婚 罪 とは,配 偶 者 の あ る者 が 重 婚 し,ま たは他 人 に配偶 者 の あ る こ と を知 りなが ら この者 と結 婚 す る行 為 をい う。
1犯 罪 構 成
(1)本 罪 の 主体 は,既 に配 偶 者 のあ る者,ま た は 自己 に配偶 者 が な く と も相 手 方 が 配 偶 者 の あ る者 と知 りなが ら同 人 と結 婚 した者 で あ る 。
(2)本 罪 の客 体 は,一 夫 一 婦 の婚 姻 制 度 で あ る。 重 婚 は,一 夫0婦 制 に違 反 し,幸 福 な家 庭 生 活 を破 壊 し,そ の子 供 た ち の心 を傷 つ け,社 会
の安 定 に危 害 を及 ぼす の で,刑 罰 を もって 臨 む必 要が あ る 。
(3)本 罪 の 主観 面 は,故 意 に 限 られ,過 失 で は本 罪 を構 成 しない 。 例 え ば,一一方 が騙 され て相 手 方 に配 偶 者 の あ る こ とを知 らず に結婚 した場 合,そ の騙 され た者 に本 罪 は成立 せ ず,真 実 を隠 して騙 した 相手 方 の み が 刑 事 責 任 を追 及 され る。 重婚 の動 機 は,浮 気 心,女 性 を弄 ぶ 目的,結 納 金 品 の取 得,子 供 の 産 育,子 孫 を残 し家 を継 が せ る 目的等,非 常 に複 雑 で あ る。 そ の動 機 は,本 罪 の 成 立 に影 響 しない 。
(4)本 罪 の客 観 面 は,重 婚 の行 為 で あ る。 これ に は,二 形 態 が あ る。 第 一は配 偶 者 あ る者 に よる重婚 で あ り,第 二 は 自 己 に配偶 者 の ない者 が配 偶 者 の あ る相 手 と知 りなが ら結 婚 す る行 為 で あ る。 い ず れ の形 態 で も本 罪 が成立 す る。 他 人 との結 婚 に は,欺 岡 に よ り合法 な結 婚 登 記手 続 を
290 神 奈 川 法学 第34巻 第3写2001年
(901) 己 に従 属 させ,そ の婚 姻 の 自由権 を行 使 不 能 にす る手段 をい う
。 H定 罪
ユ・本 罪 と非 暴 力 的 な婚姻 自由干 渉 行為 との限 界 婚 姻 の 自由へ の干 渉 が暴 力 行 為 を伴 わ なけ れ ば ,一 般 的 な婚 姻 法 違 反 行 為 で あ り,本 罪 は 成立
しな い。
2・ 本罪 と殺 人罪 ・故 意 傷 害罪 との限界 何 らかの 事情 で婚 姻 自由 の 干 湘 的が 実 現 され なか った た め散 意 に被 害者 を傷 害 また は殺 害 した場 合
にはt故 意 傷 害 罪 また は 故 意 殺 人罪 に よ り処 断 され る
。 3.本 罪 と略 奪 婚 行 為 との限 界 略 奪婚 行 為 につ い て は
r具 体 的 に分 析 して事 情 に応 じた処 理 区別 が必 要 で あ る。 略 奪 婚 が 少 数民 族 の 地 域 に根 づ いた 民族 的 習俗 で あ る と きは
,啓 蒙教 育 を行 うべ きで あ って,犯 罪 行 為 と な しえ な い。 女性 が 交 際 ・結 婚 に 同意 しな か った た め
,略 奪 婚 の暴 力 的 手段 に訴 えて結 婚 の 目的 を達 成 した ときは,本 罪 に よ り処 断 すべ きで あ る。 合 法 な婚 姻 関係 が な く女性 が 結 婚 に同 意 しなか った た め
,暴 力 的 手段 に訴 え て その 女性 を略 奪 して性 行 為 を強行 した と きは
,そ の 女性 の 告訴 が あ れ ばs強 姦 罪 と して処 断 すべ きで あ る。
皿 刑 事 責 任
刑 法257条;婚 姻 の 自 由 に暴 力 的 な干 渉 を行 っ た 者 は
,2年 以 下 の 有 期 懲 役 また は拘 留 に処 す る・ 被 害 者 を死亡 させ た と きは
,2年 以 上7年 以 下 の有期 懲 役 に処 す る。 被 害 者 を死亡 させ てい な い と きは
,告 訴 を待 っ て処 断 す る。
「被 害 者 を死 亡 させ」とは ,婚 姻 の 自由 を干 渉 され た ため に被 害 者 が 自 殺 した場 合,ま た は行 為 者 の暴 力 的 干渉 過程 で被 害 者 が 死亡 した場 合 をい う。 婚姻 自由 の暴 力 的 干渉 に故 意 が あ り,そ の行 為 に よる死 亡惹 起 に過失 が あ る が,結 果 発 生 を行 為 者 が 希 望 して い な い場 合 が
,こ れ に あ た る。
この事 案処 理 の 際 に は,被 害 者 の 死 亡が 婚 姻 自由 の暴 力 的 干 渉 の結 果 で あ っ た か否 か を調査 解 明 しな け れ ば な らな い。 両 者 に 因 果 関 係 が あ る場 合 にの み,本 条2項 が 適 用 され る。
「告 訴 を待 って処 断 す る」 とは 該 害 者 力i裁判 所 に告 訴 〈‑1fr.〉を提 出