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調和振動子

ドキュメント内 【PDF】J.J.サクライ『現代の量子力学(上)』 (ページ 40-46)

第 2 章 量子ダイナミクス

2.3 調和振動子

■式(2.2.39) 式(2.2.39)について

A(S)|a=a|a⟩ ⇒ A(H)(0)|a=a|a⟩ ⇒ UA(H)(0)U U| {z }

1

|a=aU|a

とせずとも,つまり「2つの表示が一致するt= 0で(2.2.37)を用いれば」(p.117)と断らなくても,式(2.2.10) を用いて次のようにできるだろう.すなわちA(S)|a=a|aの両辺に左からUをかけて

UA(S)(U U)|a=aU|a⟩,A(H)U)|a=aU)|a⟩.

■ 符号の異なるSchr¨oinger方程式 (2.2.42) 式(2.2.42):

i

∂t|a, t⟩H=−H|a, t⟩H

は,時間的発展の演算子に対するSchr¨oinger方程式(2.1.25)の両辺Hermite共役をとった式

−i∂U

∂t =UH =HU の両辺に右から|aをかけると得られる.

■状態ケットと基底ケットのなす角の コサイン 「模式図的にいうならば状態ケットと基底ケットのなす 角の コサイン は状態ケットを反時計廻りに回しても,基底ケットを時計廻りに回しても同じなのである」

(p.118)について,ケットベクトルは矢印のような幾何学的意味を持たないのを承知で敢えてこの「模式図」

を描くと図12のようになる.

イメージ図

|𝛼, 𝑡0; 𝑡 >

|𝛼, 𝑡0>

|𝑎′ >

|𝛼, 𝑡0>

|𝑎′ >

|𝑎, 𝑡 >𝐻 𝒰

𝒰

Schr odinger表示 Heisenberg表示

図12 状態ケットと基底ケットのなす角の コサイン

なのでNHの同時固有ケット|n⟩がある(nはNの固有値).

正準交換関係 [a, a] = 1 [N, a] =−a,[N, a] =a を用いると

{

N a|n⟩=· · ·= (n+ 1)a|n⟩(=N c|n+ 1) N a|n⟩=· · ·= (n1)a|n⟩(=N c|n−1)

{

a|n⟩=

n+ 1|n+ 1: aは生成演算子 a|n⟩=

n|n−1: aは消滅演算子 となる*6

固有関数⟨x|n⟩に対する微分方程式 0 =⟨x|a|0=

2ℏ

x

x+ ip

0

=

2ℏ

(

x+x02 d dx

)

⟨x|0⟩, x0

√ ℏ mω,

⟨x|n⟩= 1

2nn!x0n (

x−x02 d dx

)n

⟨x|0 を作ると*7,固有関数

⟨x|n⟩= 1 π1/4

2nn!x0n+1/2 (

x−x02 d dx

)n

exp [

1 2

(x x0

)2]

が得られる.

(∆x)2⟩ ⟨(∆p)2=

{ℏ2/4 (基底状態,波動関数はGauss型) (n+12)2

2 (励起状態(n̸= 0)) .

振動子の時間的発展(pp.127–131)

Heisenberg方程式: dp

dt =−mω2x, dx dt = p

m

a(t) =a(0)eiωt, a(t) =a(0)eiωt

x(t), p(t)は 振動している : x(t) =x(0) cosωt+p(0)

sinωt, p(t) =−mωx(0) sinωt+p(0) cosωt.

同じ結論は

x(t) =eiHt/x(0)eiHt/=x(0) + it

ℏ[H, x(0)] +· · · としても得られる.

エネルギー固有状態|n⟩に対して期待値

⟨x(t)⟩=⟨n|x(t)|n⟩= 0, ⟨p(t)⟩=⟨n|p(t)|n⟩= 0

であり,期待値⟨x(t)⟩,⟨p(t)⟩が振動するのはエネルギー固有状態を重ね合せた状態に対してである.

*6係数がn

n+ 1かはa|1=|0, a|0=|1から思い出せる.

*7この手法は式(1.7.27),(1.7.28)においてx|p|pを計算してx|pについての微分方程式を作ったのに似ている.

2.3 について

■調和振動子に対する次元解析 演算子の関係式についても,両辺の(固有値の)次元が等しくなっていなけ ればならない.a, aの定義式(2.3.2),およびこれをx, pについて解いた式(2.3.24)を 次元解析 すると,

図13のように次元の正しい式になっていることが分かる.

𝑎 =

𝑚𝜔2ℏ

(𝑥 + 𝑖

𝑚𝜔𝑝

)

𝑥 =

2𝑚𝜔

(𝑎 + 𝑎

)

𝑝 = 𝑖

𝑚ℏ𝜔2

(−𝑎 + 𝑎

) 1

運動量/長さ 運動量長さ=長さ−2

長さ

長さ2

𝑚𝜔 ℏ = 運動量

長さ ∙ 運動量∙長さ

=運動量2

𝑚 エネルギー = [𝑚2𝑚𝑝2]

=運動量2 = [ 2𝑚𝐸]

図13 調和振動子に対する次元解析

■「NHと同時に対角化できる」(式(2.3.6)1行下) H =ℏω( N+12)

N の1次式なので[H, N] = 0 だから,NHの同時固有ケット|n⟩p.124のように構成できると分かる.そしてp.39の定理より「NH と同時に対角化できる」(式(2.3.6)1行下).

■「xpは,N と交換しないのであるからこれは当然である」(p.125,l.1,2) 命題の裏は真とは限らない ものの,p.39の定理により,一般に[A, B]̸= 0のとき⟨a′′|B|aが対角型になることは期待できない.これ を踏まえると,a, an表示が対角型でないこと

⟨n|a|n⟩=

n,n1, ⟨n|a|n⟩=

n+ 1δn,n+1: (2.3.23) は,a, aNと交換しないこと

[N, a] =−a: (2.3.10), [N, a] =a: (2.3.11) と関係していることが分かる.

さらに「ここで用いているN表示では,xpも対角型になっていないことに注意しよう.aaと同じ ようにxpは,Nと交換しないのであるからこれは当然である」(pp.124–125)について,x, pN 表示が 対角型でないこと(2.3.25a,b)は,x, pN と交換しないこと

[N, x] =

√ ℏ

2mω([N, a]

| {z }

a

+ [N, a]

| {z }

a

)̸= 0, [N, p] =i

mω

2 ([N, a]

| {z }

a

+ [N, a]

| {z }

a

)̸= 0 と関係している.

■式(2.3.13),(2.3.17) における規格化定数の決定 式(2.3.14) は a|n⟩ = c|n−1:(2.3.13) に ⟨n|a = c⟨n−1|を左から辺々かけて得る.同様にa|n⟩=c|n+ 1に左から⟨n|a=⟨n+ 1|c′∗を辺々かけ,

⟨n|aa|n⟩=⟨n|aa+ [a, a]|n⟩=⟨n|N+ 1|n⟩=n+ 1 を用いて式(2.3.17):a|n⟩=

n+ 1|n+ 1を得る.

■固有関数⟨x|n⟩の式(2.3.32) 式(2.3.32):

⟨x|n⟩= 1

2nn!x0n (

x−x02 d dx

)n

⟨x|0

を数学的帰納法にて証明する.まず,これはn= 0に対して成立する(式(2.3.30)).次にこれがあるnに対 して成り立つと仮定すると,

⟨x|n+ 1= 1

√n+ 1⟨x|a|n⟩= 1

√n+ 1

x

1

2x0

(

x−ix02p)

n

= 1

√2(n+ 1)x0

{

x⟨x|n⟩ −ix02

d dx⟨x|n⟩

}

= 1

√2(n+ 1)x0 (

x−x02 d dx

)

⟨x|n⟩

=(上式右辺でn→n+ 1としたもの) (数学的帰納法の仮定) となるから示された.

なお,式(2.3.32)は

⟨x|n⟩=

x

1

2x0

(

x−ix02p)

0

= 1

2nn!x0n {

x−ix02

(

−iℏ d dx

)}

⟨x|0

に書き換えられる.ただしこちらの書き換えられた表式を数学的帰納法にて証明するのは,かえって煩雑に なる.

ここでエネルギー固有関数(2.3.32)が波動方程式を解いて得られる解(A.4.3)(p.346)に一致していること を確かめる.それには次式が有用である.

x02nex′2/2x02 (

d dx

)n

ex′2/2x02 = (

x−x02 d dx

)n

. (21)

これは演算子の関係であり,左辺の(

dxd

)n

ex2/2x02の右隣に来る関数にも作用する.この点に注意し つつ,上式(21)を数学的帰納法にて確かめる.まず式(21)はn= 0に対して成立している.次に式(21)が あるnに対して成り立つと仮定すると,

x02(n+1)ex2/2x02 (

d dx

)n+1

ex2/2x02

=x02(n+1)ex2/2x02 (

d dx

)n( x

x02ex2/2x02−ex2/2x02 d dx

)

=x02 ( x

x02 d dx

) (

x−x02 d dx

)n

(数学的帰納法の仮定)

= (

x−x02 d dx

)n+1

より式(21)でn→n+ 1と置き換えてた式が成り立つ.以上で式(21)が示された.

さて,式(21)を用いると ((2.3.32)右辺) =

( 1 π1/4

2nn!

)( 1 x0n+1/2

)

x02nex2/2x02 (

d dx

)n

ex2/2x02ex2/2x02 (∵(21))

= ( 1

π1/4 2nn!

)

x0n1/2eξ2eξ2/2(1)n 1 x0n

(d dξ

)n

eξ2≡x/x0)

=

( 1 π1/4

2nn!

)

x01/2eξ2/2 {

(1)neξ2 ( d

dξ )n

eξ2 }

=(式(A.4.3)右辺) : ロドリグ公式.

■基底状態に関する期待値(2.3.36) 式(2.3.36)第2式の最後の等号では

⟨H⟩=ℏω

⟨ 0

aa+1 2

0

= 1 2ℏω を用いる.

「ビリアル定理から期待される通りである」(p.126下から4行目)について補足する.非相対論的力学にお いて,以下の条件

系が空間の限られた領域のなかで,有限の速さで運動する.

ポテンシャル・エネルギーUがすべての位置ベクトルrak次の同次関数である: U({λra}) =λkU({ra}).

が満たされるとき,運動エネルギーTとポテンシャル・エネルギーUそれぞれの時間平均T ,¯ U¯ のあいだに 2 ¯T =kU¯

の関係が成り立つ(ビリアル定理) [4, pp.27–28].調和振動子に対してk= 2である.

■励起状態= 0での不確定性関係(2.3.40) まず,

⟨n|a|n⟩=

n⟨n|n−1= 0, ⟨n|a|n⟩=

n+ 1⟨n|n+ 1= 0

より⟨x⟩=⟨p⟩= 0が「励起状態に対しても成り立つ」(p.126の1番下の行).調和振動子は原点x= 0に関 する対称性を持つことを考えると,これは自然な結果と言える.次に

⟨n|a2|n⟩ ∝ ⟨n+ 2|n⟩= 0,

⟨n|a2|n⟩ ∝ ⟨n|n+ 2= 0,

⟨n|aa|n⟩=(

n+ 1⟨n+ 1|)·(|n+ 1⟩√

n+ 1) =n+ 1,

⟨n|aa|n⟩=⟨n|N|n⟩=n を用いて

⟨x2= ℏ

2mω(2n+1), ⟨p2= mω

2 (2n+1), ∴(∆x)2⟩ ⟨(∆p)2=⟨x2⟩ ⟨p2= (

n+1 2

)2

2: (2.3.40) を得る.

x(t), p(t)の式(2.3.45) 式(2.3.44) の2 式を順に(A),(B) とする.(A)+(B)2 を作ると式(2.3.45a) が,

(A)(B)

2i/mω を作ると式(2.3.45b)が得られる.

一方(A)(B)に注意して例えば(A)を考えると ((A)右辺) =x(0) cosωt+p(0)

sinωt

| {z }

Hermite的部分

+i (

−x(0) sinωt+p(0) cosωt

)

| {z }

Hermite交代的部分

,

((A)右辺) = x(t)

|{z}

Hermite的部分

+ ip(t)

| {z }

Hermite交代的部分

となるから「両辺のエルミート的部分,エルミート交代的部分をそれぞれ等しいと」(式(2.3.44)1行下)して も式(2.3.45b)を得る.式(2.3.45)のようにa(0), a(0)ではなくx(0), p(0)を用いてx(t), p(t)を表すには,

この方が容易である.

古典力学において調和振動子の時間発展が式(2.3.45a):

x(t) =x(0) cosωt+p(0) sinωt

で与えられることはよく知られており,ここからp(t) =mx(t)˙ として運動量の式(2.3.45b)を得る.

■ベーカー・ハウスドルフの補助定理 「ベーカー・ハウスドルフの補助定理として知られるこの公式の証明 は,演習問題に残しておく」(p.129,l.9,10)について,eiλG= 1 +iλG+· · · AeiλG=A−iλAG− · · · に左からかけたときに現れる項を以下に書き出す.

1 iλG . . . (iλ)(NN−kk)!GNk . . . . . . (iλ)N!NGN . . .

A

−iλAG

...

(iλ)k

k! AGk (iλ)(NN−kk)!k!(iλ)kGNkAGk

...

...

(iλ)N

N! AGN ...

上の図式において青い項 (iλ)N!NN

k=0NCk(1)kGNkAGk(iλ)N!N[G,[G,· · ·,[G

| {z }

N 個のG

, A]· · ·]]に一致すれば良 い*8.これを数学的帰納法にて示す.まずこれはN = 1に対して成り立つ.つぎにこれがあるN に対して成

*8[G,[G,· · ·,[G, A]· · ·]]の右端の· · ·は括弧の連なりを表し,Aの右側にGは来ない.

り立つとすると

[G,[G,[G,· · ·,[G

| {z }

N 個のG

, A]· · ·]]]

= (

GN+1A+

N k=1

NCk(1)kGN+1kAGk )

(N1

k=0

NCk(1)kGNkAGk+1+ (1)NAGN+1 )

=GN+1A+

N k=1

( NCk+NCk1

| {z }

N+1Ck(Pascalの三角形)

)(1)kGN+1kAGk+ (1)N+1GN+1

よりN N+ 1と置き換えても成り立つ.以上よりベーカー・ハウスドルフの補助定理(2.3.47)が示さ れた.

■式(2.3.50) 式(2.3.50)は,帰納的に [H,[H,· · ·,[H

| {z }

N個のH

, x0]· · ·]] =(1)n/2(iℏ)nωnx(0) (n: even),

[H,[H,· · ·,[H

| {z }

N個のH

, x0]· · ·]] =(1)(n+1)/2(iℏ)nωn1p(0)

m (n: odd) となることから分かる.

■重ね合せ状態(2.3.51)に対する期待値⟨x(t)⟩ (2.3.51)に関してとったx(t)の期待値が振動することを,

読者は容易に確かめられよう」(式(2.3.51)の下2行)について,

⟨α|x(t)|α⟩=

√ ℏ

2mω(c00|+c11|)·(a(0)eiωt+a(0)eiωt)·(c0|0+c1|1)

(c00|+c11|)·(c1eiωt|0+c0eiωt|1+

2c1eiωt|2)

=c0c1eiωt+c0c1eiωt.

ドキュメント内 【PDF】J.J.サクライ『現代の量子力学(上)』 (ページ 40-46)