4.3 Pre-heat 温度の影響
4.3.2 評価結果
1) 通電特性結果
図4.3-1に550 ℃~650 ℃でPre-heatした粉末を用いたテープ状のMgB2線材のJc-H特性、
図 4.3-2に Pre-heat温度と 4.2 K、10 TのJcの相関を示す。なお、図4.3-1の non-preheat、 図4.3-2の0 hrは、Pre-heatプロセスを施さない基本粉末のJc-H特性を示す。Pre-heat温度 の高温化に伴い Jcが向上し、550 ℃の Pre-heatプロセスで、4.2 K、10 T中のJcが 68.0 A/
mm2を示したが、それよりPre-heat温度を高温化させることでJcが低下し、650 ℃のPre-he atプロセスで、Jcが9.1 A/mm2まで低下し、基本粉末より低くなることがわかった。
図4.3-1 Pre-heat処理した粉末を用いたMgB2線材のJc-H特性
図4.3-2 Pre-heat温度とMgB2線材のJcの相関(Pre-heat時間1 hr)
1 10 100 1000
7 8 9 10 11 12
Magnetic Field (T) Jc (A/mm2 )
■ non-preheat
◇ 500 ℃×1 hr
○ 550 ℃×1 hr
□ 600 ℃×1 hr
△ 650 ℃×1 hr
1 10 100 1000
0 100 200 300 400 500 600 700 Temperature of pre-heating (℃) Jc (A/mm2 )
4.2 K、10 T
4.2 K
2) 結晶構造回折結果
図4.3-3に550 ℃、650 ℃でPre-heatした粉末のXRDパターンを示す。比較のために、基 本粉末(下図でnon-preheatと示す)、500 ℃でPre-heatした粉末も示す。500 ℃と同様に、55 0 ℃でPre-heat した粉末では、2θ=43 °、62 °付近に MgOの回折ピークが確認され、Mg Oの回折ピーク強度が高温化に伴い大きくなった。一方、650 ℃でPre-heatした粉末では、M gOの回折ピーク強度の増加だけでなく、2θ=34°、42 °付近に MgB2の回折ピークが確認さ れた。
図4.3-4に550 ℃、650 ℃でPre-heatした粉末で作製したMgB2線材から採取した粉末のX RDパターンを示す。比較のために、基本粉末(下図でnon-preheatと示す)、500 ℃でPre-hea t した粉末も示す。550 ℃、650 ℃のPre-heatプロセスでも、500 ℃のPre-heatプロセスと 同様に、MgB2を主相として、MgO、Mgの回折ピークが確認されたが、Pre-heatの高温化に伴 い、62 °付近のMgOの回折ピークが大きくなった。
一方、500 ℃以上でPre-heatした粉末で作製したMgB2の a軸、c軸の格子定数を算出した 結果、a軸 = 0.309 nm、c 軸 = 0.353 nm となった。従って、Pre-heat プロセスを高温化し た粉末でも、Pre-heatプロセスの長時間化と同様に、高Jc化したにも関わらず、SiC添加等の 元素置換時の特徴である(100)面の高角度側シフトやa軸の格子定数の減少がないことがわかっ た。
以上のことから、Pre-heatプロセスの高温化に伴い、MgO粒子の生成量が増加することがわ かった。また、650 ℃のPre-heatプロセスではMgB2が生成されることがわかった。
図4.3-3 各種粉末のXRDパターン 図4.3-4 各種粉末で作製したMgB2線材 から採取した粉末のXRDパターン
30 40 50 60 70
2θ (degree)
Intensity (a.u.)
non-prehea t 500℃×1h 650℃×1h
◆
550℃×1h
● (100)
◆Mg、●MgO
(101)
(002) (110)
(102)
30 40 50 60 70
2θ (degree)
Intensity (a.u.)
non-prehea t 500℃×1h
550℃×1h
◆ ●
650℃×1h
◆Mg、●MgO
◆ ◆
◆
●
●
◆ ◆ ◆
(100)
(101)●
(002) (110)
(基本粉末)
(基本粉末)
3) 熱分析結果
図4.3-5に基本粉末、500 ℃および550 ℃でPre-heatした粉末のDTA測定結果を示す。55 0 ℃でPre-heat した粉末は、500 ℃でPre-heat した粉末の DTAの結果と同様で、646 ℃に MgB2生成の発熱ピークが確認され、MgB2生成温度のさらなる低下が示唆された。また、基本 粉末で確認された500~550 ℃付近のピークは、550 ℃でPre-heatした粉末では、確認されな かった。
図4.3-5 各種粉末のDTA測定結果
4)
T
c測定結果550 ℃、650 ℃でPre-heatした粉末で作製したMgB2線材から採取したサンプルの抵抗率の 温度依存性を評価したが、Pre-heatの温度に関係なく、Tcが約 36 K であったことから、 Pre-heatプロセスの高温化が及ぼすTcへの影響がほとんどないことがわかった。
5) SEM観察結果
図4.3-6に基本粉末、500 ℃、550 ℃、650 ℃でPre-heatした粉末、およびそれらで作製し たMgB2線材から採取した粉末のSEM観察結果を示す。Pre-heatプロセスの温度で大差なく、
また、MgB2生成熱処理後も明確な差異は確認できず、その結晶粒径はB粉末より小さい0.5 μ m以下であった。
100 200 300 400 500 600 700 Temperature (℃)
Heat Flow (relative)
基本粉末
500 ℃×1 hr 550 ℃×1 hr
図4.3-6 各種粉末およびそれらで作製したMgB2線材から採取した粉末のSEM観察結果
6) Pre-heat粉末のTEM解析結果
図4.3-7に550 ℃でPre-heatした粉末のTEM解析結果、図4.3-8に650 ℃でPre-heatし た粉末の TEM解析結果を示す。また、各図中の1)に示した明視野像中の拡大や HAADF像を 2)3)に示す。
図中の2)3)のコントラスト差から分析すると、図4.1-8の3)と同様に、3)中の黒い粒子状の観 察物が B、それを囲む観察物が Mg である。また MgO が Mg 中に観察されたが、500 ℃で Pre-heat した粉末と比較して、明らかに大きい粒子が多く存在し、550 ℃では 10~20 nm、 650 ℃では、100 nmのMgO粒子が確認された。これより、Pre-heat温度がMgO粒子の粒径 や生成量に影響することがわかった。
以上の結果から、Pre-heatプロセスの高温化に伴い、500 ℃でPre-heatした粉末で確認され
た約10 nmの MgO粒子の粒径が粗大化傾向を、また、その生成量が増加傾向を示すことがわ
かった。
条件 粉 末 線材から採取した粉末
500℃
× 1h
550℃
× 1h
650℃
× 1h
2μm 2μm
2μm 2μm
2μm 2μm
図4.3-7 550 ℃でPre-heatした粉末のTEM解析結果
a) W保護膜
C保護膜
1) 明視野像 2) a)部の拡大
MgO MgO
MgO
MgO
MgO
MgO MgO
MgO
MgO
MgO B
B
3) 2)部のHAADF像
B
B
B
B B
B
MgO
MgO
MgO MgO
図4.3-8 650 ℃でPre-heatした粉末のTEM解析結果
7) Pre-heatした粉末を用いたテープ状のMgB2コアのTEM解析結果
図4.3-9に550 ℃でPre-heatした粉末を用いたテープ状のMgB2線材のコアのTEM解析結 果、図4.3-10に 650 ℃で Pre-heatした粉末を用いたテープ状のMgB2線材のコアのTEM解 析結果を示す。また、各図中の1)に示した明視野像中のHAADF像を2)に示す。
図中の2)のコントラスト差から分析すると、Pre-heat 温度に関係なく、図4.1-12と同様に、
MgB2以外に、空隙、B、MgOが存在したが500 ℃でPre-heatした粉末と比較して、Pre-heat 温度の高温化に伴い、明らかにMgO粒子の粒径に差異が生じ、550 ℃で10~50 nm、650 ℃ で10~100 nmとなり、500 ℃のPre-heat時のMgO粒子より大きい傾向を示した。
以上の結果から、Pre-heat温度は、MgB2のコアに存在するMgO粒子の粒径や生成量に影響
し、Pre-heat温度の高温化に伴い、MgO粒子の粒径が粗大化傾向、その生成量が増加傾向を示
すことがわかった。
a) W保護膜
C保護膜
1) 明視野像 2) 1)部の拡大
MgO MgO
MgO
MgO
MgO MgO
MgO MgO B
3) 2)部のHAADF像
B
B B
B B
MgO
MgO
図4.3-9 550 ℃でPre-heatした粉末を用いたMgB2線材のTEM解析結果
図4.3-10 650 ℃でPre-heatした粉末を用いたMgB2線材のTEM解析結果