4.2 Pre-heat 時間の影響
4.2.2 評価結果
1) 通電特性結果
図 4.2-1に 1 hr、4 hr、10 hrで Pre-heatした粉末を用いたテープ状の MgB2線材のJc-H 特性、図4.2-2にPre-heat時間と4.2 K、10 TのJcの相関を示す。なお、図4.2-1のnon-pre heat、図4.2-2の0 hrは、Pre-heatプロセスを施さない基本粉末のJc-H特性を示す。、Pre-he at時間の長時間化に伴いJcが向上し、10 hrの Pre-heatプロセスで、4.2 K、10 T のJcが本 評価で最も高い94.8 A/mm2となった。
図4.2-1 Pre-heat処理した粉末を用いたMgB2線材のJc-H特性
1 10 100 1000
7 8 9 10 11 12
Magnetic Field (T) Jc (A/mm2 )
■ non-preheat
◇ 500 ℃×1 hr
○ 500 ℃×4 hr
△ 500 ℃×10 hr
4.2 K
図4.2-2 Pre-heat時間とMgB2線のJcの相関(Pre-heat温度500 ℃)
2) 結晶構造回折結果
図4.2-3に10 hrでPre-heatした粉末のXRDパターンを示す。比較のために、基本粉末(下 図でnon-preheatと示す)、1 hrでPre-heatした粉末も示す。1 hrと同様に、10 hrでPre-h eatした粉末では、2θ=43 °、62 °付近にMgOの回折ピークが確認され、MgO の回折ピー ク強度が長時間化に伴い大きくなった。
図4.2-4に10 hrで Pre-heatした粉末で作製したMgB2線材から採取した粉末のXRDパタ ーンを示す。比較のために、基本粉末(下図でnon-preheatと示す)、1 hrでPre-heatした粉末 を示す。10 hrのPre-heatプロセスでも、1 hrのPre-heatプロセスと同様に、MgB2を主相と して、MgO、Mgの回折ピークが確認されたが、Pre-heatの長時間化に伴い、62 °付近のMg Oの回折ピークが大きくなった。
一方、MgB2のa軸、c軸の格子定数を算出した結果、すべての粉末で、a軸 = 0.309 nm、c 軸 = 0.353 nmであった。従って、Pre-heatプロセスを長時間化した粉末では、高Jc化したに も関わらず、SiC 添加等の元素置換時の特徴である(100)面の高角度側シフトや a軸の格子定数 の減少がないことがわかった。
以上のことから、Pre-heatプロセスの長時間化に伴い、MgO粒子の生成量増加が生じること がわかった。
1 10 100 1000
0 2 4 6 8 10
Temperature of pre-heating (℃) Jc (A/mm2 )
4.2K、10T
図4.2-3 各種粉末のXRDパターン 図4.2-4 各種粉末で作製したMgB2線材 から採取した粉末のXRDパターン
3) 熱分析結果
図4.2-5に基本粉末、1 hrおよび10 hr ℃でPre-heatした粉末のDTA測定結果を示す。10 hr でPre-heatした粉末は、1 hrで Pre-heatした粉末のDTAの結果と同様で、646 ℃にMg B2生成の発熱ピークが確認され、MgB2生成温度のさらなる低下が示唆された。また、基本粉末 で確認された500~550 ℃付近のピークは、10 hrでPre-heatした粉末では、大きく減少した。
図4.2-5 各種粉末のDTA測定結果
non-prehea t
●
30 40 50 60 70
2θ (degree)
Intensity (a.u.)
500℃×10h
500℃×1h
non-prehea t
● (100)
◆Mg、●MgO
(101)
(002) (110)
(102)
100 200 300 400 500 600 700
Temperature (℃)
Heat Flow (relative)
基本粉末
500 ℃×1 hr 500 ℃×10 hr
30 40 50 60 70
2θ (degree)
Intensity (a.u.)
non-prehea t 500℃×1h 500℃×10h
● ●
◆
◆Mg、●MgO
◆
◆
◆ ◆ ◆ ◆
(基本粉末)
(基本粉末)
4)
T
c測定結果10 hrでPre-heatした粉末で作製したMgB2線材から採取したサンプルの抵抗率の温度依存 性を評価したが、Pre-heatの時間に関係なく、Tcが約36 Kであったことから、Pre-heatプロ セスの長時間化が及ぼすTcへの影響がほとんどないことが示唆された。
5) SEM観察結果
図4.2-6に基本粉末、1 hr、10 hrでPre-heatした粉末、およびそれらで作製したMgB2線材 から採取した粉末のSEM観察結果を示す。Pre-heatプロセスの時間で大差なく、また、MgB2
生成熱処理後も明確な差異は確認できず、その結晶粒径はB粉末より小さい0.5 μm以下であ った。
図4.2-6 各種粉末およびそれらで作製したMgB2線材から採取した粉末のSEM観察結果
条件 粉 末 線材から採取した粉末
基本 粉末
500℃
× 1h
500℃
× 10h
6) Pre-heat粉末のTEM-EDX解析結果
図4.2-7に10 hrでPre-heatした粉末のTEM解析結果を示す。また、各図中の1)に示した 明視野像中の拡大やHAADF像を 2)3)に示す。図中の 2)3)のコントラスト差から分析すると、
図4.1-8の3)と同様に、3)中の黒い粒子状の観察物がB、それを囲む観察物がMgである。また MgOがMg中に観察され、1 hrでPre-heatした粉末と比較して明らかに多くの粒子が観察さ れた。これより、Pre-heat時間がMgO粒子の生成量に影響することがわかった。
図4.2-8に10 hrでPre-heatした粉末のEDX分析結果を示す。HAADF像、EDX分析結果 を比較すると、分析箇所のMgパターン、Bパターン、Oパターンより、明らかにMg中にMgO が存在し、1 hrでPre-heatした粉末より生成量が増加することが確認された。また、基本粉末 で顕著に観察された、MgとBの界面に存在したB2O3は確認されなかった。
以上の結果から、Pre-heatプロセスの長時間化に伴い、1 hrでPre-heatした粉末で確認され
た約10 nmの粒子状のMgOの生成量が増加傾向を示すことがわかった。
図4.2-7 10 hrでPre-heatした粉末のTEM解析結果
a) W保護膜
C保護膜
1) 明視野像 2) a)部の拡大
MgO MgO MgO
MgO
MgO
C保護膜
MgO MgO
MgO MgO
MgO
B
B
3) 2)部のHAADF像
B
MgO MgO
MgO
MgO
MgO
MgO MgO
B B
図4.2-8 10 hrでPre-heatした粉末のEDX分析結果
7) Pre-heatした粉末を用いたテープ状のMgB2コア部のTEM-EDX解析結果
図4.2-9に 10 hrで Pre-heatした粉末を用いたテープ状のMgB2線材のコアのTEM解析結 果を示す。また、各図中の1)に示した明視野像中のHAADF像を2)に示す。
図中の2)のコントラスト差から分析すると、Pre-heat 時間に関係なく、図4.1-12と同様に、
MgB2以外に、空隙、B、MgOが存在したが、Pre-heat時間の長時間化に伴い、MgO粒子の生 成量に差異が生じ、1 hrのPre-heat時のMgO粒子の生成量より増加する傾向となった。
以上の結果から、Pre-heat 時間は、MgB2のコアに存在する MgO 粒子の生成量に影響し、
Pre-heat時間の長時間化に伴い、その生成量が増加傾向を示すことがわかった。
図4.2-9 10 hrでPre-heatした粉末を用いたMgB2線材のTEM解析結果