• 検索結果がありません。

1) 通電特性結果

図4.1-1に 450 ℃×1 hr、500 ℃×1 hrで Pre-heatした粉末を用いたテープ状のMgB2線 材のJc-H特性を示す。また、比較のために、基本粉末(下図でnon-preheatと示す)のJc-H特性 を示す。450 ℃×1 hrのPre-heatプロセスでは、基本粉末のJc-H特性とほとんど差異がなか ったのに対し、500 ℃×1 hrのPre-heatプロセスで、全体的にJcが向上し、4.2 K、10 T中 で41.4 A/mm2に向上することがわかった。

図4.1-1 Pre-heat処理した粉末を用いたMgB2線材のJc-H特性

2) 結晶構造回折結果

図4.1-2に基本粉末、450 ℃および500 ℃でPre-heatした粉末を用いたXRDパターンを示 す。450 ℃で Pre-heatした粉末は、基本粉末のXRD パターンと同様で、Mgが主相であった が、500 ℃でPre-heatした粉末では、2θ=43 °((200)面)、62 °((220)面)付近にMgOの回折 ピークが確認された。

図4.1-3に基本粉末(下図でnon-preheatと示す)、450 ℃および500 ℃でPre-heatした粉末 で作製したMgB2線材から採取した粉末のXRDパターンを示す。450 ℃のPre-heatプロセス では、基本粉末のXRDパターンと同様で、MgB2を主相として、MgOとMgの回折ピークが確 認されたが、500 ℃の Pre-heat プロセスでは、62 °((220)面)付近の MgO の回折ピークがや や大きくなった。

一方、MgB2のa軸、c軸の格子定数を算出した結果、すべての粉末で、a軸 = 0.309 nm、c 軸 = 0.353 nmとなった。従って、500 ℃で Pre-heatした粉末では、高Jc化したにも関わら ず、SiC添加等の元素置換時の特徴である(100)面の高角度側シフトや a軸の格子定数の減少が ないことから、元素置換以外の別の要因で高Jc化したことがわかった。

1 10 100 1000

7 8 9 10 11 12

Magnetic Field (T) Jc (A/mm2 )

■ non-preheat

○ 450 ℃×1 hr

◇ 500 ℃×1 hr

4.2 K

図4.1-2 各種粉末のXRDパターン 図4.1-3 各種粉末で作製したMgB2線材 から採取した粉末のXRDパターン 3) 熱分析結果

図4.1-4に基本粉末、450 ℃および500 ℃でPre-heatした粉末のDTA測定結果を示す。45 0 ℃でPre-heatした粉末は、基本粉末のDTAの結果と同様で、649 ℃にMgB2生成の発熱ピ ーク、さらに 523 ℃にピークをもつ発熱反応を確認した。一方、500 ℃で Pre-heat した粉末 では、647 ℃にMgB2生成の発熱ピークがあったことから、MgB2生成温度の低下が示唆された ものの、もう1つの発熱ピークはほとんど確認されなかった。

図4.1-4 各種粉末のDTA測定結果

30 40 50 60 70

2θ (degree)

Intensity (a.u.)

non-prehea t 450℃×1h 500℃×1h

(100)

◆Mg、●MgO

(101)

(002) (110)

(102)

100 200 300 400 500 600 700

Temperature (℃)

Heat Flow (relative)

基本粉末

500 ℃×1 hr 450 ℃×1 hr

30 40 50 60 70

2θ (degree)

Intensity (a.u.)

non-prehea t 450℃×1h

500℃×1h

●Mg、▲MgO

(基本粉末) (基本粉末)

4)

T

c測定結果

図4.1-5に基本粉末、450 ℃、500 ℃でPre-heatした粉末で作製したMgB2線材から採取し たサンプルの抵抗率の温度依存性を示す。Pre-heatプロセスの有無に関係なく、そのTcは、約 36 Kであったことから、Pre-heatプロセスによるTcの低下がほとんどないことがわかった。

図4.1-5 各種粉末で作製したMgB2線材から採取したサンプルの抵抗率の温度依存性

5) SEM観察結果

図4.1-6に基本粉末、450 ℃、500 ℃でPre-heatした粉末、およびそれらで作製したMgB2

線材から採取した粉末のSEM観察結果を示す。Pre-heatプロセスの有無で大差はなく、MgB2

線材においても明確な差異は確認できず、その結晶粒径はB粉末より小さい0.5 μm以下であ った。

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

0 50 100 150 200 250 300

Temperature (K)

Resistivity (μΩcm)

基本粉末 500 ℃×1 hr 450 ℃×1 hr

図4.1-6 粉末およびそれらで作製したMgB2線材から採取した粉末のSEM観察結果

6) 粉末のTEM-EDX解析結果 a) 基本粉末の解析結果

図 4.1-7 に基本粉末の TEM 解析結果を示す。図中の1)に示した明視野像中の a)部の拡大が 2)、その付近の HAADF 像が3)である。図中の 2)3)のコントラスト差から分析すると、3)中の 黒い粒子状の観察物がB、それを囲む観察物がMgであり、Mg中にはその結晶粒界が観察され、

そこに存在する白い層状のMgOが確認された。図2.1-4に使用した Mg粉末のXRDパターン を示したが、Mgの原料粉末に存在するMgOはXRDでは、微量のため検出されない。従って、

基本粉末、Mgの原料粉末ともに、存在する MgO がXRD の検出感度以下の微量であったこと が示唆される。基本粉末中にMgOが存在する要因としては、(1) Mg粉末、B粉末に最初から付 着していたMgOがボールミリングで、基本粉末中に分散したため、(2)ボールミリングで微細化 されたMgがポット中に含まれた、または粉末に付着していた微量のO2、H2Oで酸化したため、

(3)ボールミリングの大きなエネルギーでB2O3が Mgと還元反応を示し、MgOが生成したため

条件 粉 末 線材から採取した粉末

基本 粉末

450℃

× 1h

500℃

× 1h

20 μm

20 μm

20 μm 2 μm

2 μm 2 μm

の3点が考えられる。

図4.1-8に基本粉末のEDX分析結果を示す。分析箇所のMgパターン、Bパターン、Oパタ ーンより、○で示したMgとBの界面に多くの酸化物が存在することがわかる。Mgの結晶粒界 は上記したHAADF像の結果から、MgOである。一方、原料粉末のB粉末の外周部には、B2O3、 H2Oが存在することから、MgとBの界面の酸化物はB2O3であると考えられる。

図4.1-7 基本粉末のTEM解析結果

図4.1-8 基本粉末のEDX分析結果 a)

W保護膜

C保護膜

C保護膜

1) 明視野像 2) a)部の拡大

MgO MgO

C保護膜

MgO

B

3) 2)部のHAADF像

MgO MgO

B

MgO MgO

条件 HAADF像 Mgパターン Bパターン Oパターン

基本粉末

b) Pre-heat粉末の解析結果

図4.1-9に500 ℃でPre-heatした粉末のTEM解析結果を示す。各図中の1)に示した明視野 像中のa)部の拡大が2)、その付近のHAADF像が3)である。

図4.1-9の2)3)のコントラスト差から分析すると、図4.1-8の3)と同様に、3)中の黒い粒子状 の観察物がB、それを囲う観察物がMgである。またMgOがMgの結晶粒界だけでなく、3)中 の矢印で印したように約10 nmの粒子として観察された。この粒子状のMgOは、基本粉末で は観察されなかった。

図4.1-10にPre-heatした粉末のEDX分析結果を示す。HAADF像、EDX分析結果を比較す ると、分析箇所のMgパターン、Bパターン、Oパターンより、明らかにMg中にMgOが点在 することが確認された。また、基本粉末で顕著に観察された Mg と B の界面に存在した B2O3

は確認されなかった。

以上の結果から、Pre-heatプロセスを施すことで、約10 nmの粒子状のMgOが生成される ことがわかった。

図4.1-9 500 ℃でPre-heatした粉末のTEM解析結果 a)

W保護膜

C保護膜

C保護膜

C保護膜

1) 明視野像 2) a)部の拡大

MgO

B

MgO

MgO

MgO MgO

MgO

MgO

MgO

MgO(粒界)

B MgO(粒界)

3) 2)部のHAADF像

B

図4.1-10 500 ℃でPre-heatした粉末のEDX分析結果

7) テープ状のMgB2コアのTEM解析結果

a) 基本粉末を使用したMgB2線材

図 4.1-11に基本粉末を用いたテープ状の MgB2線材のコアのTEM 解析結果を示す。図中の 1)に示した明視野像中のa)部の拡大が2)、その付近のHAADF像が3)である。図中の2)3)のコ ントラスト差から分析すると、MgB2をベースに、2)中の白色及び3)中の黒色に観察される空隙、

2)中の灰色及び3)中の黒色に観察されるB、2)中の黒色及び3)中の白色に観察される10~30 nm の粒子状のMgOの存在が確認された。このMgOは、基本粉末に存在したMgO、または、MgB2

生成熱処理中に粉末表面に付着していた O2、B2O3や熱処理雰囲気中のO2成分と反応して生成 されたと考えられる。一方で、未反応のMgやBも存在することがわかった。

以上の結果から、基本粉末を用いたテープ状の MgB2線材のコアには、10~30 nmの粒子状 のMgOが存在すること、さらに未反応のMg、Bが存在することがわかった。

条件 HAADF像 Mgパターン Bパターン Oパターン

Pre-heat 500℃

× 1h

図4.1-11 基本粉末を用いたMgB2線材のコアのTEM解析結果

b) Pre-heatした粉末を使用したMgB2線材

図 4.1-12に 500 ℃でPre-heatした粉末を用いたテープ状のMgB2線材のコアの TEM解析 結果を示す。図中1)に示した明視野像中のa)部の拡大が2)、その付近のHAADF像が3)である。

図中の2)3)のコントラスト差から分析すると、図4.1-11と同様に、MgB2をベースに、空隙、B、 MgOが存在したが、特に、10~30 nmの粒子状のMgOが多く存在することが確認された。こ の MgO は、Pre-heatした粉末に存在したMgO、MgB2生成熱処理中に粉末表面に付着してい た O2、B2O3や熱処理雰囲気中の O2成分と反応して生成されたと考えられる。また、基本粉末 と同様に、未反応のBも存在することがわかったものの、その残存量は、後述するDTAの結果 から示唆されたPre-heatプロセスによるB表面の活性化に伴い、MgB2の反応性が向上されて いるため、基本粉末より少ないと考えられる。

以上の結果から、Pre-heatした粉末を用いたMgB2線材のコアには、約10~30 nmの粒子状 のMgOが多く存在すること、また未反応のBが存在することがわかった。

a) W保護膜

C 保護膜

C保護膜

C保護膜

1) 明視野像 2) a)部の拡大

3) 2)部のHAADF像

空隙

空隙 MgO

B

空隙

空隙 MgO

B B

B

B B

MgO

MgO B

B

MgO

MgO 空隙

空隙

Mg

Mg

図4.1-12 500 ℃でPre-heatした粉末を用いたMgB2線材のコアのTEM解析結果

ドキュメント内 MgB2超電導体の臨界電流向上プロセスの研究 (ページ 106-115)