第 7 章 局所的な分岐 134
7.3 分岐集合の計算
7.3.3 計算例:自励系の強制振動(同期化現象)
接線分岐の条件: 式(7.67)より次式となる.
χA(1) =a2+ 2a1+ 3 = 0 (7.73)
周期倍分岐の条件: 式(7.68) より次式となる.
χA(−1) =a2+ 1 = 0 (7.74)
ネイマルク・サッカー分岐の条件: 式(7.70)より実部と虚部をとると cos 2θ+ (a1+ 1) cosθ+a2+a1+ 1 = 0
sin 2θ+ (a1+ 1) sinθ= 0 (7.75)
となる.両式からθ を消去すると,次式の条件を得る.
a1+a2= 0, −3< a1<1 (7.76)
■
で表される正弦波的な強制項とする.
式 (7.77)を標準形に変換しよう.まず,
x=√
Li, y=√
Cv (7.80)
と変換する.式(7.77) は次式となる.
dx
dt = 1
√LCy dy
dt = − 1
√LCx+ g1 C
µ
1− g3 g1Cy2
¶ y+ J
√Ccosωt
(7.81)
そこで,時間軸を
τ = 1
√LCt=ω0t, ω0= 1
√LC (7.82)
と変換すると,式 (7.81)は次式となる.
dx
dτ = y dy
dτ = −x+ g1 ω0C
µ
1− g3 g1Cy2
¶
y+ J ω0√
C cos ω ω0τ
(7.83)
いま,諸パラメータを次式で定義しよう.
²= g1 ω0C =g1
rL
C, γ = g3
g1C, B = J√ C
g1 , ν= ω
ω0 (7.84)
式 (7.83)は次の標準形となる.ただし,時刻τ は改めてtと書き直しておいた.
dx
dt = y dy
dt = −x+²¡
1−γy2¢
y+²Bcosνt
(7.85)
(2)基本調波周期解に対する平均化方程式 式 (7.85)の解を
x(t) = u(t) cosνt+v(t) sinνt
y(t) = −u(t) sinνt+v(t) cosνt (7.86) とおいて,平均化方程式を求めると次式を得る.
˙
u = ²
2
"µ 1−3
4γr2
¶ u−σv
#
˙
v = ² 2
"
σu+ µ
1− 3 4γr2
¶ v+B
# (7.87)
ここに
r2=u2+v2, σ= 2(ν−1)
² (7.88)
とおいた.式(7.88) は両式に²/2が掛けられているので,例 6.1 と同様に時間軸をスケール変換して 次式を考えることにしよう.
˙ u =
µ 1− 3
4γr2
¶
u−σv=f(u, v)
˙
v = σu+ µ
1−3 4γr2
¶
v+B =g(u, v)
(7.89)
(3)式 (7.89)の平衡点とその安定性 式 (7.89)の右辺を零とおいて,
µ 1−3
4γr2
¶
u−σv = 0 σu+
µ 1−3
4γr2
¶
v = −B
(7.90)
両辺を 2乗して加えると ·µ 1− 3
4γr2
¶2 +σ2
¸
r2=B2 (7.91)
を得る.この振幅が満たす式は式(6.13) と同じである.平衡点でのヤコビ行列は
∂f
∂u
∂f
∂v
∂g
∂u
∂g
∂v
=
1−3
4γ(3u2+v2) −3
2γuv−σ
−3
2γuv+σ 1− 3
4γ(u2+ 3v2)
(7.92)
ただし,(u, v) は平衡点の座標とする.したがって,この平衡点の特性方程式は次式となる.
χ(µ) =
¯¯
¯¯
¯¯
¯¯
∂f
∂u
∂f
∂v
∂g
∂u
∂g
∂v
¯¯
¯¯
¯¯
¯¯
=µ2+a1µ+a2= 0 (7.93)
ここに
a1 = 3γr2−2
a2 = σ2+ 1−3γr2+27
16γ2r4=σ2+ µ
1− 3 4γr2
¶ µ 1−9
4γr2
¶ (7.94)
とおいた.したがって,第2 章2.3.2の表 2.1より平衡点のタイプを決定できる.
(4)特性の概要
図 7.5 は式 (7.91) の関係を (σ, B, r) 空間の曲面として描いた図である.なお,γ は簡単のため
γ = 4/3と選んだ.B を固定し,(σ, r)平面に射影すると,振幅の周波数特性が得られる.また,a2= 0 で決まる接線分岐曲線と a1 = 0 で決まるホップ分岐曲線を (σ, B) 平面に射影すると分岐図が得ら れる.
-1 -0.5 0 0.5 1 1
0 1
r
B
σ
2
O
0
O
1
O
a
1= 0 a
2= 0
Q P
-1 -0.5 0 0.5 1
0 0.5 1 1.5
B σ
Q P
図7.5 式(7.91)の振幅を表す曲面とその射影の分岐図.
-0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 0.1
0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
0
σ
B
P
Q 0O
2O
2O 0O+1O+2O
0O+1O+2O
P 2
O
0O
0O+2×1O
(a) (b)
図7.6 平衡点の分岐図 (a)と点P の近傍の拡大図 (b).
0.9 0.95 1.0 1.05 1.1 0.1
0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7
0
ν
B
H
1H
2C
2C
1Q P
T
2T
1T
30
D
2
D
0 2D
D+
1D+
2D
図7.7 式(7.85)の固定点の分岐図²= 0.2.
(5)平衡点の分岐図
図 7.6は平衡点の分岐図である.図7.5の平衡点の曲面と見比べることにより,各分岐曲線を横切っ てパラメータを変化させるとどのような平衡点の分岐が起こるかが理解できよう.太い実線は,a2= 0 で定まる接線分岐曲線を表し,図ではt1, t2, t3 で示してある.点c1, c2はカスプ点となっている.細 い実線はa1= 0, a2>0の条件を満たすホップ分岐の曲線を表し h1, h2 で示した.この分岐は
0O ⇒ 2O+LC(0D)
となるスーパー・クリティカルな分岐となっている.細い点線は条件 a1 = 0, a2 < 0 を満たすので 平衡点の分岐には関係しない.a1 = 0 を満たす曲線を追跡するとどうなるかを見るために示してお いた.ホップ分岐曲線より下の領域では,この分岐によって生じたリミットサイクルが存在する.点 P とQ は,接線分岐とホップ分岐の2つの条件を満たす点であり,余次元 2 の分岐となっている.こ れらの点の近傍では,リミットサイクルと平衡点の分岐が関係した大域的な分岐が生じる.このこと については次の章で取りあげる.また,B = 0, σ= 0 は接線分岐曲線が σ 軸と 1 点で交差しており,
1−3γr2/4 = 0 を満たす円上の点はすべて平衡点となっている.
(6)同期化現象
点 P とQ の近傍を除いて,大ざっぱにみると接線分岐曲線で囲まれた ∇領域とその上部の領域で 安定な平衡点が存在する.この平衡点が外力の周波数ν に引き込まれた,すなわち同期した周期状態に 対応する.∇ 領域の両側面の外では安定なリミットサイクルがあり,これは式(7.85) の同期していな い解に対応する.この場合,式(7.86) の係数はリミットサイクルの周波数で周期的に変化する.この
周波数は一般に外力の周波数 ν とは無関係なので,式(7.86) は2 つの基本周波数を持つ非周期振動と なる.このような振動は準周期振動と呼ばれている.パラメータが ∇領域の両側面を横切って外に出 ると同期が外れることとなる.逆に中に入ると同期する.したがって両側面上で起こる接線分岐:
0O+ 1O ⇔ ∅
はリミットサイクル上で起っている.なお,∇領域の上部P Q間では
2O+ 1O ⇔ ∅ の接線分岐となっている.
(7)式 (7.85)の周期解の分岐曲線
7.3.2(A)で述べた数値的方法で,式(7.85)の周期解の分岐曲線を直接追跡してみよう.図7.7は計 算した結果の例である.太い実線は,固定点の接線分岐曲線を表し,図では T1, T2, T3 で示してある.
点C1, C2 はカスプ点となっている.細い実線はネイマルク・サッカー分岐の曲線を表しH1, H2で示 した.この曲線を上の領域から下の領域へと横切ってパラメータを変化させると
0D ⇒ 2D+ICC
の分岐がみられる.図 7.6と比較して,平衡点を固定点,リミットサイクルを不変閉曲線(ICC) を置 き換えれば,両者に相似な分岐現象がみられることが分かる.