第 2 章 平衡点とその安定性 24
2.4 平衡点の安定性
このことを少し詳しく言い換えてみよう.いま,x0 を自律系(2.2)の平衡点とする.平衡点 x0 がリ ヤプーノフの意味で安定であるとは,任意の正の実数 ² > 0 を与えたとき,これに対応して正の実数 δ >0 がとれて,ku−x0k< δ を満足するどのような初期値u ∈Rn から出発する解 x(t) = ϕ(t, u) についても,すべての t≥0 に対してkϕ(t, u)−x0k< ²とできる場合をいう.すなわち,
∀² >0, ∃δ >0, k∀u−x0k< δ, ∀t≥0, kϕ(t, u)−x0k< ² (2.80) が言える場合,リヤプーノフの意味で安定であるという.以後平衡点が安定といえば,それはリヤプー ノフの意味で安定であることとしよう.
時間が経過したとき,平衡点の近傍の解が平衡点に近づく性質は漸近安定性と呼ばれている.
漸近安定性 (asymptotic stability)
¶ ³
平衡点 x0が漸近安定(asymptotically stable) であるとは (1) x0 はリヤプーノフの意味で安定である.
(2) ∃² >0, k∀u−x0k< ², lim
t→∞x(t) =x0
の 2 つの条件が満たされる場合をいう.2番目の条件を吸引的性質(attractivity)という.
µ ´
散逸系では大抵の場合,安定な平衡点は漸近安定となっている.
また,平衡点がリヤプーノフの意味で安定でないとき,その平衡点を不安定という.すなわち,論理 式 (2.80)を否定して
∃² >0, ∀δ >0, k∃u−x0k< δ, ∃τ ≥0, kϕ(τ, u)−x0k> ² (2.81) の場合平衡点 x0 は不安定である.否定の命題は否定辞を文頭からどこまで後ろに置くかによって言い 回しが色々あるので注意してほしい.
前節で考えた双曲型の平衡点は,0O タイプの平衡点が漸近安定,他のタイプはすべて不安定である.
平衡点の安定性の吟味:手順
これまでの話を整理して,自律系 (2.2)の平衡点の安定性を検討する手順を考えてみよう.
1. 平衡点を見いだす.すなわち,方程式 (2.3)の解を見つける.
2. 各平衡点について線形化方程式を求める.つまりヤコビ行列(2.8)を計算する.
3. ヤコビ行列 (2.8)の固有値を計算する.双曲型平衡点の条件を満たしておれば固有値から直ちに 平衡点の位相的タイプが定まり,安定性が吟味できる.
4. 双曲型平衡点でなければ,線形化方程式からは吟味できない.この場合は元の方程式 (2.2) に 還って,非線形項も考慮した別の方法を検討する.たとえば後に述べるリヤプーノフ関数による 方法などを使用する.
-3 -2 -1 1 2 3
-3 -2 -1 1 2 3
0
0
O
0
O
0
O
0
O
1
O
1
O
1
O
1
O
2
O
図2.8 式(2.83)の平衡点:α= 4, δ= 1の場合.
【例 2.8】 例1.10 の RC回路の平衡点
例 1.10 であげた方程式(1.89)の平衡点とその安定性を調べてみよう.いま抵抗の非線形特性は,次 の 3次関数と仮定しよう.
g(v) =−av+bv3 (2.82)
ここに,a, b >0とする.式(2.82) を式(1.89) に代入して整理すると
˙
x = αx−x3−δ(x−y)
˙
y = αy−y3−δ(y−x) (2.83)
を得る.ここに
α= a
C, δ= G
C, v1= rC
bx, v2= rC
by (2.84)
とおいた.したがって平衡点は,次の 2つの曲線の交点として求められる.
αx−x3−δ(x−y) = 0
αy−y3−δ(y−x) = 0 (2.85)
具体的な例として,α = 4, δ = 1 の場合を取りあげてみると,図 2.8 となる.いま平衡点の座標を (x0, y0) とすると,この点におけるヤコビ行列は
A=
α−δ−3x20 δ δ α−δ−3x20
(2.86)
x y F(x, y)
図2.9 関数(2.87)の曲面.状態は最急勾配の方向へ動く・
となるので,この平衡点の特性方程式から容易に安定性を判定できる.この例では平衡点はすべて双曲 型となり,それらのタイプは図2.8 に示したものとなる.
なお,関数
F(x, y) =−1
2α(x2+y2) + 1
4(x4+y4) +1
2(x−y)2 (2.87)
を定義すると,式 (2.83)は次式で表される勾配系となっている.図 2.9参照.
˙
x=−∂F
∂x, y˙=−∂F
∂y (2.88)
このことから,行列(2.86) が対称行列となること,したがってその特性根は実数となることも分かる.
平衡点のタイプは安定結節点,不安定結節点,あるいはサドルに限られる.数値計算による相平面図を 図 2.10に示した. ■