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第 4 章 周期振動 64

4.2 周期係数を持つ線形同次方程式

4.2.2 フロケ・リヤプーノフ (Floquet-Lyapounov) の表現定理

更に,上で述べた特性乗数が1 となる乗数をµ1= 1 とすれば,

µ2· · ·µn=eR0LtraceA(τ)dτ >0 (4.71) これはまた,ポアンカレ写像が向きを保つ写像となることを意味している.

【例 4.52 次元自律系の周期解の安定性 2 次元自律系:

˙

x = f(x, y)

˙

y = g(x, y) (4.72)

が周期 Lの周期解:

x(t) =φ(t), y(t) =ψ(t) (4.73)

を持っていたとして,この周期解の安定性を調べてみよう.

変分方程式は次式となる.

ξ˙ = a(t)ξ+b(t)η

˙

η = c(t)ξ+d(t)η (4.74)

ここに

a(t) = ∂f

∂x(φ(t), ψ(t)), b(t) = ∂f

∂y(φ(t), ψ(t)) c(t) = ∂g

∂x(φ(t), ψ(t)), d(t) = ∂g

∂y(φ(t), ψ(t))

(4.75)

とおいた.式(4.74)の特性乗数の1つは 1となるので,もう1つの特性乗数をµとすれば,式(4.71) より次式を得る.

µ= exp ÃZ L

0

(a(τ) +d(τ))

!

(4.76) したがって,安定性の条件µ <1は次式となる.

Z L

0

(a(τ) +d(τ)) = Z L

0

n∂f

∂x(φ(τ), ψ(τ)) +∂g

∂y(φ(τ), ψ(τ)) o

dτ <0 (4.77)

とおくと,

F(t+L) = Φ(t+L)e−K(t+L)= Φ(t)Φ(L)e−KLe−Kt= Φ(t)e−Kt=F(t) の関係を得る.このことからΦ(t) は周期行列F(t) と指数行列eKt の積となる:

Φ(t) =F(t)eKt (4.80)

これが複素数で表したフロケ・リヤプーノフの定理である.

実フロケ・リヤプーノフの表現定理

¶ ³

式 (4.47)の主基本行列解 Φ(t)は,実行列 F0(t), K0 を用いて,

Φ(t) =F0(t)eK0t (4.81)

と表わすことができる.ここに,K0 は実定数行列,F0(t) F0(t+ 2L) =F0(t) となる周期 2L の行列である.

µ ´

これは,実n×n正則行列K0 で,

Φ(L)2=e2LK0 (4.82)

となる K0 が存在することを使って

F0(t) = Φ(t)e−K0t (4.83)

とおくと

F0(t+ 2L) = Φ(t)©

Φ(L)ª2

e−K0(t+2L)= Φ(t)e2K0Le−2K0Le−K0t = Φ(t)e−K0t=F0(t) (4.84) したがって,式(4.81) を得る.これより負の特性乗数の場合は周期が2倍になる.

リヤプーノフの定理

¶ ³

 式 (4.80)で定義した周期行列 F(t) を用いて座標変換:

x=F(t)y (4.85)

を行うと,式 (4.45)は定数行列K を係数とする同次方程式

˙

y=Ky (4.86)

に変換される.

µ ´

これは,式(4.80) , (4.85) を微分して整理すると容易に導くことができる.

【例 4.6】マシュー(Mathieu) の方程式 2 階の方程式:

¨

x+ (a+bcos 2t)x= 0 (4.87)

はマシューの方程式と呼ばれている.式 (4.87)を書き直して

˙

x = y

˙

y = −(a+bcos 2t)x (4.88)

を考えよう.t= 0 で初期値u0= (x0, y0)∈R2 を持つ解を

x(t) =ϕ(t, u0), y(t) =ψ(t, u0) (4.89) と書くことにしよう.係数の周期はπ なので,時間π 毎のストロボ写像をポアンカレ写像とみなして,

T : R2→R2; u0= (x0, y0)7→u1= (ϕ(π, u0), ψ(π, u0)) (4.90) を定義する.他方,主基本行列解を

Φ(t) =

ϕ1(t) ϕ2(t) ψ1(t) ψ2(t)

, Φ(0) =I2 (4.91)

とすれば,

u1= Φ(π)u0 (4.92)

であるから

T = Φ(π) (4.93)

となっていることが分かる.

さて,一般に主基本行列解を解析的に求めることは非常に難しい問題である.数値積分をすれば,実 用上は精度よく求めることができる.そこで,式(4.93) の各要素が求められたとして特性乗数がどう なるかをみてみよう.特性方程式は

χ(µ) = det (µI2Φ(π)) =

µ−ϕ1(π) −ϕ2(π)

−ψ1(π) µ−ψ2(π)

= µ2©

ϕ1(π) +ψ2(π)ª

µ+ det Φ(π) = 0

(4.94)

となる.一方リュービルの公式から

det Φ(π) = det Φ(0)eR0πtraceA(τ)dτ = 1 (4.95) ここで,行列A(t) は式(4.88) の係数行列を表す.したがって,式(4.94)

χ(µ) =µ2©

ϕ1(π) +ψ2(π)ª

µ+ 1 = 0 (4.96)

となる.式(4.96)より,

m=ϕ1(π) +ψ2(π) (4.97)

とおくと,特性乗数は次の3 つの場合が考えられる.

(1)m >2の場合

特性乗数は 0 < µ1 < 1 < µ2 となる.すなわち,原点は,正不安定固定点である.この場合のフ ロケ・リヤプーノフの表現を考えてみよう.µ1, µ2 に対する固有ベクトルをそれぞれ h1, h2 とし,

H= [h1 h2]とおく.正規解は主基本行列解から次式として求められる.

Θ(t) = Φ(t)H, Θ(t+π) = Θ(t)

µ1 0 0 µ2

 (4.98)

そこで

ν1= 1

π logµ1, ν2= 1

πlogµ2 (4.99)

とおいて,解(4.98) に表現定理を適用して Θ(t) =F(t)

eν1t 0 0 eν2t

 (4.100)

となる.ここに,F(t+π) =F(t) であり,これは主基本行列解から F(t) = Θ(t)

e−ν1t 0 0 e−ν2t

= Φ(t)H

e−ν1t 0 0 e−ν2t

 (4.101)

と計算できる.

(2)m <−2 の場合

特性乗数はµ1<−1< µ2<0 となる.すなわち原点は逆不安定固定点である.この場合は Θ(t) = Φ(t)H, Θ(t+ 2π) = Θ(t)

µ21 0 0 µ22

 (4.102)

であるから,

ν1= 1

2π logµ21, ν2= 1

2π logµ22 (4.103)

を定義すれば,前述と同様な表現

Θ(t) =F(t)

eν1t 0 0 eν2t

 (4.104)

を得る.ただし,この場合の周期行列の周期は2π である.

F(t+ 2π) =F(t) (4.105)

このことは,原点が逆不安定固定点であることから直感的に理解できることでもある.なお,式 (4.87) は復元項の係数が周期的に変化することに対応して,パラメータが周期的に変化する系の振動現象のモ

-5 0 5 10 15 0

5 10 15 20

a

b

m=-15

m=50

m=-10

-5

-3

-2 -2

20 10

5 2

2 -10

-5

-2 -2 1 0 -1

-1 0 1 -1 0 1

2

10100

400

4.6 マシュー方程式(4.87)の等係数 m図.着色した領域で原点が不安定となる.

デルとしても知られている.ここで考えた条件を満たすようにパラメータを定めると原点は不安定とな り,励振周波数の 1/2 の振動が励起する.これをパラメータ励振(parametric excitation)という.ブ ランコの小振動モデルはよく引用される例である.

図 4.6は,パラメータa, b 平面内で式(4.97) m の値が同じとなる,等m 曲線を描いたものであ る.うすく色づけした領域で原点は不安定となる.この領域はa=k2, k= 1,2, . . .で横軸と交わって いる.a= 1より上に広がる領域が上述のパラメータ励振の起こる領域に対応している.

(3)|m|<2の場合

特性乗数はµ1, µ¯2=e−jθ となる.ただし

θ= tan−1

( q4©

ϕ1(π) +ψ2(π)ª2 ϕ1(π) +ψ2(π)

)

(4.106) とおいた.この場合は原点は双曲型固定点ではない.これは写像 (4.93) が面積を保存する写像である ことから,当然のことと言える.式 (4.95)参照. ■