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第 4 章 周期振動 64

4.2 周期係数を持つ線形同次方程式

4.2.1 周期係数を持つ線形同次方程式の正規解

4.1.1において周期解からの変分方程式が周期係数を持つ線形同次方程式

˙

x=A(t)x (4.45)

となることをみた.この節では式(4.45) の解の性質を考えよう.ここで,x∈Rn とし,行列 A(t)tに関して周期 Lの周期関数とする:

A(t+L) =A(t) (4.46)

また,式(4.45)に対応する行列微分方程式を

X˙ =A(t)X (4.47)

とする.式(4.47)の主基本行列解(principal matrix solution)をΦ(t)としよう.すなわち,Φ(0) =In となる式(4.47)の解を Φ(t) で表わすことにする.

このとき,式(4.45) および式(4.47)の一般解は,それぞれ x(t) = Φ(t)c

X(t) = Φ(t)C (4.48)

で表わされる.ここに,x(0) =c, X(0) =C である.

関係式

X(t˙ +L) =A(t+L)X(t+L) =A(t)X(t+L) (4.49) より,X(t+L) はまた式 (4.47)の解となっている.そこで,解 X(t+L) はΦ(t) の線形結合で表さ れる.これを

X(t+L) = Φ(t)D (4.50)

とおこう.すると

X(t+L) = Φ(t)D=X(t)C−1D=X(t)F (4.51) となる.ただし,式 (4.48)で X(t) の初期値 C が正則行列の場合を考えた.このことから,DF も正則行列となる.この FX(t) の基本行列(fundamental matrix)という.

主基本行列解Φ(t) に関する基本行列 E

Φ(t+L) = Φ(t)E, E = Φ(L) (4.52)

すなわち

Φ(t+L) = Φ(t)Φ(L) (4.53)

となる.このことから,一般解X(t) の基本行列F

X(t+L) = Φ(t+L)C= Φ(t)Φ(L)C =X(t)C−1EC (4.54)

より

F =C−1EC (4.55)

となる.式(4.55)よりただちに基本行列の固有値は,一般解(detX(t)6= 0 )の選び方によらないこと がわかる.

そこでこの基本行列に対する特性方程式:

χ(µ) = det(µInΦ(L)) = 0 (4.56)

の根µを特性乗数(characteristic multiplier),ν= 1

Llogeµを特性指数(characteristic exponent)と いう.ここでν は2πj/Lの整数倍を除いて一意的に決まる.

さて,基本行列がジョルダン標準形となる解をΘ(t) としよう:

Θ(t+L) = Θ(t)J (4.57)

Θ(t) は式(4.47)の正規解 (normal solution)と呼ばれている.簡単のため,特性方程式 (4.56)が相異 なる根を持つ場合を考える. J は対角行列J = diag(µ1, µ2, . . . , µn) となるのでΘ(t) を列ベクトル に分解して書くと

Θ(t) = h

x(1)(t) x(2)(t) · · · x(n)(t) i

このことから,式 (4.45)の正規解は

x(i)(t+L) =µix(i)(t), i= 1,2, . . . , n (4.58) と表わすことができる.この結果はフロケ(Floquet) の定理と呼ばれている.このことから正規解は,

時間が 1周期経過する毎に特性乗数倍される解といえる.

なお,正規解は,特性乗数に対する固有ベクトルを使って次のように主基本行列解から構成できる.

いま,特性乗数µi に対する固有ベクトルを hi とする.

Ehi=µihi, i= 1,2, . . . , n (4.59) これらをまとめて書いて

EH=HJ (4.60)

ここに

H = h

h1 h2 · · · hn i

, J = diag(µ1, µ2, . . . , µn) とおいた.そこで,解

Θ(t) = Φ(t)H (4.61)

を考えると,

Θ(t+L) = Φ(t+L)H= Φ(t)Φ(L)H = Θ(t)H−1EH = Θ(t)J より,これが正規解となっている.

自律系の周期解の特性乗数

自律系(4.1) の周期解に関する変分方程式を考える.このとき,基本行列の特性乗数のうち少なくと

も 1 つが 1となる.このことをみておこう.いま,式 (4.1)が周期L の周期解 (4.3)を持っていたと しよう.式 (4.1)の解 (4.3)に関する変分方程式を式(4.24) とする.また式 (4.24) の主基本行列解を Φ(t) とする.いま,周期解 (4.3)を式(4.1) に代入すると恒等式

˙

ϕ(t, x0) =f(ϕ(t, x0)) (4.62)

が成り立っている.これをもう一度時間で微分すると次式を得る.

¨

ϕ(t, x0) = ∂f(ϕ(t, x0))

∂x ϕ(t, x˙ 0) =A(t) ˙ϕ(t, x0) (4.63) すなわち,ϕ(t, x˙ 0) は変分方程式(4.24)の解となっている.したがって主基本行列解Φ(t)により

˙

ϕ(t, x0) = Φ(t) ˙ϕ(t0, x0) (4.64) と表すことができる.これより

˙

ϕ(t0+L, x0) = Φ(t0+L) ˙ϕ(t0, x0) = Φ(L) ˙ϕ(t0, x0) (4.65) ここで Φ(t0) =In の関係を用いた.他方 ϕ(t, x0) は周期解なので

˙

ϕ(t0+L, x0) = ˙ϕ(t0, x0) (4.66) 式 (4.65)(4.66) より

Φ(L) ˙ϕ(t0, x0) = ˙ϕ(t0, x0) (4.67) これは基本行列 Φ(L) の特性乗数の 1 つが 1 となり,それに対する固有ベクトルが周期軌道上の速度 ベクトルであることを表している.この結果は,例 4.1 でみた軌道安定性を一般的にみたものといえ る.また,前節で定義したポアンカレ写像は,周期軌道に横断的な局所断面を考えることによって,上 述の特性乗数1 を除いた他のn−1 個の性質をみようとする写像であるとも考えられる.

特性乗数の積

基本行列の行列式は特性乗数の積であり,正数となることをみておこう.リュービル(Liouville) の 公式より,

det Φ(L) = det Φ(0)eR0LtraceA(τ)dτ =eR0LtraceA(τ)dτ (4.68) ここに,行列A(t) = [aij(t)]のトレース(trace)

traceA(t) = Xn

i=1

aij(t) (4.69)

である.他方,特性方程式(4.56)と式 (4.68)より

det Φ(L) =µ1µ2· · ·µn=eR0LtraceA(τ)dτ >0 (4.70)

更に,上で述べた特性乗数が1 となる乗数をµ1= 1 とすれば,

µ2· · ·µn=eR0LtraceA(τ)dτ >0 (4.71) これはまた,ポアンカレ写像が向きを保つ写像となることを意味している.

【例 4.52 次元自律系の周期解の安定性 2 次元自律系:

˙

x = f(x, y)

˙

y = g(x, y) (4.72)

が周期 Lの周期解:

x(t) =φ(t), y(t) =ψ(t) (4.73)

を持っていたとして,この周期解の安定性を調べてみよう.

変分方程式は次式となる.

ξ˙ = a(t)ξ+b(t)η

˙

η = c(t)ξ+d(t)η (4.74)

ここに

a(t) = ∂f

∂x(φ(t), ψ(t)), b(t) = ∂f

∂y(φ(t), ψ(t)) c(t) = ∂g

∂x(φ(t), ψ(t)), d(t) = ∂g

∂y(φ(t), ψ(t))

(4.75)

とおいた.式(4.74)の特性乗数の1つは 1となるので,もう1つの特性乗数をµとすれば,式(4.71) より次式を得る.

µ= exp ÃZ L

0

(a(τ) +d(τ))

!

(4.76) したがって,安定性の条件µ <1は次式となる.

Z L

0

(a(τ) +d(τ)) = Z L

0

n∂f

∂x(φ(τ), ψ(τ)) +∂g

∂y(φ(τ), ψ(τ)) o

dτ <0 (4.77)