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5.5 実験 I の結果

5.5.3 視線分析

ここでは,視線検出装置の映像情報から記録した5人の被験者(KN,KJ,FS,MM,MK)

が各サブタスクを3回ずつ(計15分/サブタスク)行ったときの視線を使用し,

1) 視線が少し乱れた回数:視線が一瞬半径2マス~4マス以内に動いたときに1とカ

ウントする.

2)視線が大きく乱れた回数:視線が半径4マス以上動いたとき,または,図5.10のよ うに不規則に動いたときに1とカウントする.

3) 実際に動的メディアを見た回数:視線が動的メディアの方に移り,その時,視線が 動いた方向の左右20度に動的メディアが入ったときに1とカウントする.

を集計し,被験者の主タスクにおける動的メディアの影響を 3 つのレベルで分析する.

図5.10は,上記の3パラメータの条件を示す.また,図5.11は,被験者の視線が実際に 動的メディアの方に移った時のシーンを示す.

図5.10 視線分析のパラメータの条件

まず,タスク中に被験者の視線が全体的に乱れた回数を集計し,動的メディアが表示さ れるときと表示されないときの差を分析する.分析の結果は図5.12に示す.分析した結果,

動的メディアが表示されない場合と比較したら,動的メディアが表示されたときの方が被 験者の視線の乱れが全体的に42.3%も多かったと分かった.t検定を用いて調べた結果,

この差は有意水準1%で有意差が認められた(t(14)=-3.872 p <0.01).また,動的メディア が 表示さ れた サブタ スク では, 視線 の乱れ が小 さいパ ラメ ータに 関し ては 29.5%

(t(14)=-2.971, p <0.05),視線の乱れが大きいパラメータに関した68.4%(t(14)=-7.136,

p <0.05)も動的メディアが表示されないサブタスクより多いという結果が得られた.

左目 の視線

右目の視線

視線 が動的メディア の方に移る 動的メディア

左目 の視線

右目の視線

視線 が動的メディア の方に移る 動的メディア

図5.11 視線検出装置からの画像情報のサンプル

(視線が実際に動的メディアの方に移った時のシーン)

図5.12 タスク中に視線が乱れた平均回数-2レベル

最後に,動的メディアが表示されたときに(31 回),被験者が実際に動的メディアを見 た回数,及び動的メディアの方に視線が移らないが,小さく・大きく乱れた回数を集計し,

動的メディアが被験者の注意・集中を影響する回数を分析した結果を図5.13に示す.

0%

20%

40%

60%

80%

100%

平均 KN KJ FS MM MK

視線が乱れない 視線が小+大乱れ 動的メディアの方に視線が移る

ィア視線た比 ( 動的メィア30 個×被験者5 名×)

図5.13 動的メディアが表示されたときに実際に影響を受けた割合

(影響:視線が乱れた+引きずられた)

図5.13より,平均的にタスク中に表示される31個の動的メディアの内,60%程度(18.5 個)の動的メディアが被験者の集中・注意に影響することが分かった.また,タスク中に 表示される31個の動的メディアの内,18.5%程度で実際に被験者が視線を動かして動的メ ディアを見てしまうという結果も得られた.

5.5.3.1 アンケートの結果について

視線分析に関わった被験者が実験後に行ったインタビューの分析を行った結果,被験者 を以下の2種類に分類できる.

<グループ1動的メディアが苦手なタイプ(被験者KN, KJ, MK)> このグループの 被験者は,動的メディアが表示されると,物体の動きにどうしても気になってしまい,目 がいきそうになる.そのため,計算作業へ注意が散漫して集中力が落ちてしまい,一瞬計 算ができなくなるときが何回もあると答える被験者が多かった.被験者毎の平均正答数・

エラー数などを分析と,確かに動的メディアが表示されるときのサブタスクでは,動的メ ディアが表示されないときのサブタスクより全員の評価が低かったということが分かった

(p.99-図5.7とp.100-図5.9).

3)

<慣れてしまうと問題ないと感じるタイプ(被験者FK, MM)> このグループの被験 者によると,最初は確かに動的メディアの動きが気になって物体を見ないように努力した が,時間が経つに連れ動的メディアの存在に慣れてしまい,計算作業の方に集中できるよ うになると二人とも同じ回答をした.しかし,被験者毎の平均正答数・エラー数などを分 析すると,逆に動的メディアが表示されるサブタスクの方が,動的メディアが表示されな いサブタスクよりも平均正答数・エラー数などの評価が低くかったということが分かった

(p.99-図5.7とp.100-図5.9).このように,客観的な評価と主観的な評価が逆になり,

本人が動的メディアの影響に気付かないまま作業を行っていたため,結果としてタスクへ の集中が減少して作業効率も下がり,最終的に思ったほどの作業評価が上がらなかったと いえる.

また,被験者FKによると,タスクの後半になると,集中力と体力が落ちてしまうため,

動的メディアの存在に気が取られやすくなり,主タスクに集中してコントロールするのは 非常に難しいと答えた.そこで,被験者FKの証言を確かめるために,疲労度と動的メデ ィアの影響を分析することにした.ここでは,15人の被験者が0秒から5分までの経過時 間を30秒毎に分け,各30秒間の平均回答数について分析した.図5.14に示すように,0 秒から4分までの動的メディア表示ありと表示なしの間に,平均解答数の差がさほど大き くないことが分かった.しかし,タスク実行経過時間が4分を超えると,急激にその差が 大きくなる傾向が見られ,この時点から動的メディアが表示されるサブタスクでは疲労が 出始めるといえる.

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0

30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 タスクの経過時間[秒]

“動的メの値” “動的メりの値”

図5.14 30秒毎の平均解答数の差

(”動的メディア表示なしの値” - ”動的メディア表示ありの値”)

このように,視線の分析から,動的メディアがユーザの視線を引きつける力があると分 かった.そのため,被験者がタスクに集中することが難しくなり,結果としては作業効率

(正解率やエラー率)の評価が低下してしまう原因になりえるといえる.