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5.6 実験 II:集中力とペン入力の関係に関する検証実験

5.6.1 実験 II の結果

実験Iと同様,被験者は研究室内の22~24歳の大学院生15名,全員が右利きである.

以下は,それぞれのサブタスク(動的メディアあり及びなし)を音声入力で3回,5分間 ずつ実行したときにログしたデータの分析から得られた結果を述べる.

5.6.1.1 エラー率

15人の被験者が入力した解答を分析し,音声入力のエラー数の結果とペン入力のエラー 数の結果を並べて比較する(図 5.15).まず,音声入力のエラー数における動的メディア 表示あり・なしの差について分析する.

ペン入力と同様,平均的に動的メディアが表示されたときの方が動的メディアが表示さ れないときより,エラー数が多いと分かった.次に,それぞれの入力手法の差について分 析すると,音声入力では,動的メディア表示あり・なしのエラー数の差は約90%多かった

(t(14)=-6.499, p <0.01)に対し,ペン入力は60%程度(t(14)=-8.315, p <0.001)に抑え ることができた.また,動的メディアが表示されたときのエラー数は,音声入力のエラー 数はペン入力のエラー数のおよそ3倍にも及んだことが分かった.

この結果により,タスク中に動的メディアが表示されるにもかかわらず,音声入力より ペン入力の方が集中力を高く維持することができると考えられる.その結果,タスクに十 分な集中力を与えることができるため,エラー数を抑えることもできる.以上のことをま とめると,集中力を維持し,エラー数を減らすためには,手書き入力の方が有効であるこ とが確認できた.

1.8 0.7

4.7

0 0.5 2 4 6 8

ORAL:Without Animation

ORAL:With Animation

PEN:Without Animation

PEN:With Animation

平均エー数 ( 被験者15名 × 3回 )

差: 90%

p < 0.01

差: 59%

p < 0.01 3倍程度

p < 0.05

音声:動的

メディアなし 音声:動的 メディアあり

ペン:動的 メディアあり ペン:動的

メディアなし

図5.15 音声・ペン入力による平均エラー数

5.6.1.2 正答数

正答数についてもエラー率と同様の方法で分析した.音声入力に関しては,動的メディ アが表示されない方が,正答数が10%程度(t(14)=-6.068, p <0.01)多いと分かった(図 5.16).一方,ペン入力の結果と比較すると,確かにペン入力の方がより多く正答数を入力 することができるが,実際は両方の入力方法が全く異なるため,このパラメータをそのま ま比較することができない.そこで,それぞれの入力手法の動的メディア表示あり・なし の差について分析すると,音声入力もペン入力も,正答数の差がほぼ同じであり,10%程 度であることが分かった.

この結果より,正答数に関しては,動的メディアの影響を抑えるために,ペン入力が有 効ではないと分かった.しかし,今回のタスクでは,被験者が限界に近い速度で解答を行 ったことと,両方の入力方法の認知的負荷が小さく差があまりないため,結果に差があま り生じないのは当然ではないかと考えられる.一方,両方の入力手法においては動的メデ ィアが表示されたサブタスクの方が,動的メディアが表示されないサブタスクよりほぼ同 じ程度で正答数が少ないため,入力手法を問わず,常に動的メディアが被験者のタスクへ の集中力を阻害しているといえる.

平均エラー数(被験者15名×3回)

5.6.1.3 視線分析

今回の分析では,実験Iと同様の被験者(5名)で,彼らがタスクを実行する際に記録 した視線について,1)視線が少し乱れた回数,2)視線が大きく乱れた回数,及び視線が 乱れた総回数(小乱れ+大乱れ)を分析する.分析の結果を図5.17に示す.

図5.17 タスク中に視線が乱れた平均回数―2レベル

(ペンと音声入力の違い)

254.8

229.4

297.0

266.8

200 250 300 350 400

ORAL:Without Animation

ORAL:With Animation

PEN:Without Animation

PEN:With Animation 差: 10.1%

p < 0.01

差: 10.2%

p < 0.01

( 被験15 × 3)

音声:動的

メディアなし 音声:動的 メディアあり

ペン:動的 メディアあり ペン:動的

メディアなし

図5.16 音声・ペン入力による平均正答数

平均正答数(被験者15名×3回)

図5.17から分かるように,動的メディアの有無を問わず,全体的に音声で入力したとき の方が視線の乱れが多かったという結果が得られた.そこで,動的メディアが表示される ときの視線の乱れについて分析すると,最も差がはっきりしたのは,視線が大きく乱れた ときの差であり,有意水準 1%で有意差が認められた.また,視線の乱れが小さい場合,

ペンと音声の間に差が認められなかったが,視線の乱れの総合計を見ると,音声の方が約 20%多かったということが分かった.

このように,手書き入力よりも音声入力の方が動的メディアにおける影響を大きく受け ており,タスクへの集中力が阻害されたため,視線の乱れが多く起こっている.一方動的 メディアが表示されたサブタスクでは,全体的に手書き入力の方が音声入力より,ほぼ 20%程度集中力を高く維持することができるといえる.