第4章 介護保険制度下における農村の高齢者介護
3 調査対象地域と調査
本 研 究 で は 、 山 形 県 の 北 東 部 に 位 置 す る 最 上 町 を 調 査 対 象 地 域 と し て 選 定 し た 。 ま た 、 そ の 地 域 の 特 徴 を 引 き 出 す た め に 、 福 岡 県 の 南 部 に 位 置 す る 朝 倉 町 を 比 較 対 照 地 域 とし て と り あ げ た 。
山 形 県 最 上町 を 選 定 し た 主 な 理 由は 次 の 三 点 で あ る 。
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第 1 に 、 山 形 県 の 農 村 は 、 全 国 的 に み て 三 世 代 世 帯 ( 祖 父 母 、 親 、 子 ど も ) の 割 合 が も っ と も 高 い と こ ろ で あ り 、 東 日 本 型 農 村 家 族 の 典 型 と し て 位 置 づ け ら れ る
( 奥 山 、 前 掲 書 ) 。 第 2 に 、 最 上 町 は 中 山 間 地 帯 に 位 置 し 、 介 護 保 険 制 度 が 想 定 し た 都 市 的 地 域 に 対 し て 対 極 に 位 置 し て い る 農 村 で あ る 。 そ し て 、 第 3 に 、 中 山 間 地 帯 の 農 村 自 治 体 と し て 、 東 北 農 村 で は 秋 田 県 鷹 巣 町 と 同 様 、 町 行 政 が 積 極 的 に 農 村 福 祉 を 展 開 ( 複 合 的 な 医 療 ・ 福 祉 ・ 介 護 施 設 の 整 備 ) し て い る と こ ろ で あ る ( 岡 本 祐三 他 、1998) 。
2002年 現 在 、 最 上 町 の 人 口 は 、12,016人 で 、 世 帯 数 は3,042戸 で あ る 。2000年 の 農 林 業 セ ン サ ス に よ れ ば 、 農 家 人 口 は 6,636人 、 農 家 戸 数 は 1,609戸 ( 専 業 農 家 38戸 ) 、 農 家 の 平 均 耕 地 面 積 は1.85haで あ り 、 人 口 な い し 世 帯 構 成 に お い て 農 業 的 色 彩 を 有 す る 者 が 約 半 分 程 度 を 占 め て い る 。 高 齢 化 お よ び 介 護 状 況 を み る と 、 町 全 体 で の 高 齢 者 数 ( 比 率 ) は3,023人 (25.2% ) で あ る 。 介 護 認 定 予 定 者 は 320
~350人 程 度 で あ り 、 現 在 の ね た き り 高 齢 者 は 67人 ( 男23人 、 女44人 ) 、 一 人 暮 ら し 高 齢 者 は148人 ( 男27人 、 女121人 ) 、 高 齢 者 夫 婦 の み の 世 帯 は173世 帯 で あ る 。
農 業 形 態 は 水 田 の 単 作 地 帯 で あ り 、 5 月 末 の 田 植 え 期 と 9 月 末 の 収 穫 期 が 農 繁 期 で あ り 、 典 型 的 な 集 約 型 農 業 地 域 で あ る 。 冬 季 は 例 年 1 メ ー ト ル を 超 え る 積 雪 量 が あ り 、 豪 雪 地 帯 で あ る 。 冬 期 間 、 高 度 成 長 期 は 出 稼 ぎ が 多 か っ た が 、 近 年 は 通 勤 兼 業 に傾 斜 し て い る 。
一 方 、 朝 倉 町 は 、 人 口 は10,690人 、 世 帯 数 は2,680戸 で あ り 、 町 全 体 で の 高 齢 化 率 は25.3% で あ り 、 農 家 に お け る 高 齢 化 率 は 19.7% (1,423人 ) で あ る 。 町 全 体 で の 介 護 認定 者 は 233人 で あ り 、そ の う ち 施 設 へ 入 所 して い る 者 は105人 で あ る。
朝 倉 町 は 、 西 日 本 型 ( 九 州 ) の 家 族 の 典 型 と し て 、 平 場 の 農 業 地 帯 と し て 、 J A と 行 政 の 連 携 に よ る 農 村 福 祉 を 展 開 し て お り 、 相 対 的 に 専 業 的 な 農 家 が 多 い 地 域 で あ る 。2000年 の 農 林 業 セ ン サ ス に よ れ ば 、 農 家 人 口 は 7,236人 、 農 家 戸 数 は 1265戸 ( 専 業 農 家262戸 )、 農 家 の 平 均 耕 地 面 積 は1.13haで あ る 。 農 業 形 態 は 、 水 田 を は じ め 、 博 多 万 能 ね ぎ 、 ハ ウ ス 胡 瓜 、 紅 た で 等 の 施 設 園 芸 、 植 木 苗 木 な ど 多 様 な 農 業 が 展 開 さ れ て い る 。 特 に 、 ハ ウ ス 栽 培 の ネ ギ は 、 東 京 や 大 阪 に 空 輸 さ れ て 、「 博 多 万 能 ね ぎ 」( 青 ネ ギ ) の ブ ラ ン ド で 一 躍 有 名 に な っ た 発 祥 の 地 で あ る 。 ま た 、 ネ ギ を 中 心 と し た 野 菜 の 粗 生 産 額 が 米 を 抜 い て 常 に ト ッ プ を 維 持 し て い る 。 博 多 万 能 ネ ギ は 、 年3回 ~4回 の サ イ ク ル で 収 穫 し 、 出 荷 す る た め 、 家 族 総 動 員 で 夜 遅 く ま で 働 く こ と が 多 く 、 高 齢 者 も 機 械 で ネ ギ を 撰 か す る と き の 補 助 労 働 者 と し て 重 要 な役 割 を 果 た し て い る 。
介 護 サ ー ビ ス 面 で は 、1999( 平 成11) 年7月 か ら 福 岡 県 下72市 町 村 を 糾 合 し て 発 足 し た 全 国 一 の 巨 大 広 域 連 合 「 福 岡 県 介 護 保 険 広 域 連 合 」( 朝 倉 町 も 加 入 ) が 介 護 保 険 に か か わ る 主 要 な 業 務 を 担 当 し 、 朝 倉 町 は 介 護 保 険 対 象 外 の 「 保 健 福 祉 サ ー ビ ス 」 を 分担 し て 行 っ て い る と いう 体 制 を 維 持 し て い る。
59 2 ) 調 査 方法
本 研 究 で は 、 後 述 す る 事 例 調 査 を 含 め た 数 種 類 の 量 的 調 査 及 び 質 的 調 査 を 実 施 し 、 農 村 にお け る 高 齢 者 介 護 の 実態 に 接 近 す る 方 法 を 試み た 。
(1)2000年 1 月 : 最 上 町 で は 、 町 役 場 が 把 握 し て い る 要 介 護 世 帯 の リ ス ト を 基 に し て 、 調 査 可 能 な 世 帯 (169戸 ) を サ ン プ リ ン グ し た 。 つ ぎ に 、 要 介 護 高 齢 者 世 帯 の 主 介 護 者 を 対 象 に 、 要 介 護 者 の 状 況 、 介 護 実 態 、 介 護 サ ー ビ ス の 利 用 状 況 、 介 護 発 生 に よ る 農 業 経 営 へ の 影 響 な ど に つ い て 、 配 票 ( ア ン ケ ー ト ) 調 査 を 実 施 し た 。
(2)②2000年 6 月 ~ 9 月 : ア ン ケ ー ト 調 査 結 果 を 踏 ま え て 、 特 徴 的 な 要 介 護 世 帯
(20世 帯 ) へ の 訪 問 調 査 ( 事 例 調 査 ) を 行 っ た 。 主 な 聞 き 取 り 内 容 は 、 次 の よ う な 項 目 で あ る 。 家 族 の 特 徴 ( 家 族 構 成 や 就 業 状 況 な ど ) お よ び 農 業 経 営 の 概 要 、 要 介 護 高 齢 者 の 生 活 状 況 、 介 護 生 活 に 至 る 経 緯 、 現 在 の 介 護 サ ー ビ ス の 利 用 状 況 、 介 護 負 担 、地 域 づ き あ い 等 で あ る。
(3)2001年11月 : そ の 後 、 要 介 護 高 齢 者 世 帯 と 町 役 場 へ の 補 足 調 査 ( 訪 問 調 査 ) を 行 っ た 。
(4)こ の 他 、 数 回 に わ た っ て 、 「 要 高 齢 者 介 護 の 家 族 介 護 と 介 護 サ ー ビ ス 」 に 関 し て 、 町 役 場 、 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム 、 町 立 病 院 、 保 健 師 な ど に も ヒ ヤ リ ン グ を し 、 検 討 を 行 った 。 ま た 、 朝 倉 町 に つい て も 、 同 年 に ほ ぼ 同様 の 調 査 を 行 っ て い る。
3 ) 最 上 町に お け る 地 域 包 括 的 ケア シ ス テ ム
最 上 町 に お け る 「 地 域 包 括 ケ ア シ ス テ ム 」 は 、 向 町 地 区 内 に あ る 、 健 康 セ ン タ ー 、 福 祉 セ ン タ ー ・ 健 康 ク ラ ブ 、 最 上 病 院 、 老 人 保 健 施 設 「 や す ら ぎ 」 を 含 む 総 合 的 施 設 「 最 上 町 ウ エ ル ネ ス プ ラ ザ 」 が 拠 点 と な っ て お り 、 ① ハ ー ド 面 、 ② ソ フ ト 面 、 ③ 地 域 の ニ ー ズ に 応 え る こ と が で き る よ う に 3 つ の 側 面 で 捉 え て い る 。 よ り 具 体 的 に は 、 ① は 拠 点 を 中 心 と す る 保 健 ・ 医 療 ・ 福 祉 総 合 施 設 、 を 指 し 、 ② は 在 宅 ケ ア 、 健 康 づ く り 運 動 、 福 祉 ・ 介 護 と の 連 携 、 住 民 参 加 を 指 し て い る ( 図 4
- 2 ) 。 こ の 図 か ら 、 シ ス テ ム の コ ン ト ロ ー ル 機 能 は ウ エ ル ネ ス プ ラ ザ 内 の 在 宅 介 護 支 援 セ ン タ ー が 担 っ て お り 、 プ ラ ザ 内 の 他 の 施 設 ( 病 院 、 健 康 セ ン タ ー 、 老 健 施 設 ) だ け で は な く 、 地 域 内 全 体 の 統 括 を 行 う 頭 脳 ・ 窓 口 的 機 関 と な っ て い る こ と が わ か る 。 お お ま か に そ の 関 係 に つ い て 述 べ る と 、 プ ラ ザ 内 の 施 設 は 在 宅 ケ ア 、 入 所 ケ ア そ れ ぞ れ の 福 祉 組 織 と の 連 携 関 係 に あ る 。 ま た さ ら に 、 プ ラ ザ は 、 高 機 能 病 院 ・ 開 業 医 ・ 歯 科 診 療 等 、 町 外 各 サ ー ビ ス 施 設 、 高 齢 者 生 活 福 祉 セ ン タ ー 「 陽 だ ま り の 家 」 等 福 祉 ・ 健 康 関 連 施 設 、 そ し て 関 係 団 体 と し て 社 会 福 祉 協 議 会 や 民 生 児童 委 員 、 各 種 ボ ラ ン ティ ア 団 体 と 連 携 関 係 を結 ん で い る 。
こ の よ う な シ ス テ ム の 推 進 に 大 き な 影 響 を 及 ぼ す ウ エ ル ネ ス プ ラ ザ 関 連 の 連 携 組 織 と し て は 、 「 ウ エ ル ネ ス プ ラ ザ 推 進 協 議 会 」 ( 公 聴 組 織 ) が あ り 、 こ れ に は
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町 民 の 代 表 者 ( 約15名 ) が 集 ま り 、 年 に 4 回 開 催 さ れ て い る 。 ま た 、 ウ エ ル ネ ス プ ラ ザ 内 部 の 会 議 と し て は 、 ま ず 「 ウ エ ル ネ ス プ ラ ザ 管 理 職 会 議 」 が あ り 、 こ れ に は 病 院 側 か ら 院 長 、 総 婦 長 、 副 総 婦 長 、 薬 局 長 、 病 院 事 務 長 が 、 健 康 セ ン タ ー 側 か ら は 健 康 福 祉 課 長 、 社 会 福 祉 協 議 会 事 務 局 長 が 、 老 人 保 健 施 設 側 か ら は 老 健 事 務 長 が それ ぞ れ 出 席 し 、 奇 数 月の 第4木 曜 日 に 開 催 さ れる 。
図 4 - 2 最 上町 に お け る 地 域 包 括 ケア シ ス テ ム
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(U) (K)
ま た 、 「 ウ エ ル ネ ス プ ラ ザ 連 絡 推 進 会 議 」 が 定 例 及 び 随 時 開 催 さ れ 、 こ れ に は 病 院 、 健 康 セ ン タ ー 、 福 祉 セ ン タ ー 、 健 康 ク ラ ブ 、 老 人 保 健 施 設 、 国 保 担 当 者 、 保 育 所 、 生 涯 学 習 課 、 紅 梅 荘 ( 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム ) 、 社 会 福 祉 協 議 会 な ど の 各 部 所 代 表 者 が 集 ま る 。 さ ら に 、 「 介 護 支 援 等 連 絡 調 整 会 議 」 も 開 催 さ れ て い る 。 ま た 、 各 関係 部 所 の 横 断 的 な 関 係会 議 や 打 ち 合 わ せ な どは 随 時 行 わ れ て い る 。
以 上 の よ う に 、 最 上 町 で は 地 域 内 外 の 広 範 囲 に わ た っ て ネ ッ ト ワ ー ク シ ス テ ム を 形 成 し て お り 、 シ ス テ ム の 管 理 ・ 運 営 に あ た っ て も 、 管 理 職 か ら 正 に サ ー ビ ス を 直 接 的 に 担 う レ ベ ル の 人 員 間 で の 情 報 伝 達 や 、 そ れ に 伴 う サ ー ビ ス 調 整 が 行 わ れ う る 構 造を 有 し て い る 。
4 事 例 調査 の 結 果
1)農家の高齢者介護と介護ニーズ
事例1:3世代世帯で要介護高齢者(父親)の介護をその妻が担うケース [家族構成・就業状況など](3世代5人同居)
要介護者(U) :75歳 主介護者(K) :67歳
世帯主 :50歳
世帯主の配偶者 :(韓国からの外国人花嫁)
世帯主の子 :小学校2年生
現在の主介護者であるKさんが、結婚したときに要介護者の両親は亡くなっていた(母は 65歳、父は75歳で死亡)。世帯主(Uさんの長男)は町内の建設会社に勤務している。世帯 主には現在T市に在住している弟と愛知県N市に居住している妹がいる。他に姉が県内S市 にいたが、平成6年(1994年)に肺癌で亡くなっている。当農家は、本家であり、分家には介 護等の援助は頼まないという。
① 農業に関して
当農家は第一種兼業農家である。青色申告はしていない。水田は5haあるが実際に耕作して いるのは4haである。去年までは主介護者が田の四隅を手刈りしていた。世帯主は会社勤務 であるが、稲刈りや田植えの時期は仕事を休んで農作業を行なっている。また、2人程友人 に頼んで農作業を手伝ってもらってもいる。
この家の米の品種は、秋田こまち、はえぬき、ひとめぼれである。畑は10a少しあり、さま ざまな種類の野菜をその作物が収穫後枯れていく後に順番に作っている。収穫したものを売 ったりはしていないが、スイカなどを作ると一つずつ親戚に贈り、家族でも食べる。「作っ