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調査研究の対象と方法

第2章 家族の介護負担感及び介護規範意識に関する日韓比較研究

2 調査研究の対象と方法

(1)東京都

調査対象は、東京都N区の65歳以上の在宅高齢者(1998年現在)から次の2種類の方 法で選んだ。

まず第一に、在宅サービス台帳記載者のうち 65歳以上の 3,636人の約2分の1である

1,863 人を訪問面接により調査し、1,285 人から有効回答を得た。このうち、厚生省が介

護保険事業計画のために示した基準に該当した1,148人を要介護・要支援高齢者とみなし た。

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第二に、上記の台帳記載者を除く在宅高齢者の3分の1に当たる 14,670 人を郵送法に よりスクリーニング調査し、同じ基準に該当した229人の要介護・要支援高齢者を選んだ。

なお、回答者は、いずれの調査も原則として高齢者を介護している家族介護者とした。

ところで、上記の2種類のサンプルを母集団から抽出率を等しくするため、第二の有効 回答を4.7倍して合計2,224人のウェイト付けサンプルを得た。なお、後述するソウル市 のサンプルが重度の障害の方に偏っているため、日本側研究チーム(東京都老人総合研究 所、1996)が開発した身体障害の総合変数P類型及び精神的障害の総合変数M類型を基 準に適用し、より重度の「要介護高齢者」1,673 人を分析対象とした。そのうちの家族介 護者1588人が有効回収数である。

調査対象を抽出することに、こうした複雑な方法をとえらざるを得なかったのは、以下 の理由による。介護保険制度が開始される直前に、全国の市区町村では、要介護高齢者の 数を把握するための調査が義務付けされ、実際にも行っていた。この調査はその後に企画 され、要介護高齢者の選定に厳密性を求めたためである。

(2)ソウル市

1997年『ソウル市社会福祉基礎需要調査』において把握された65歳以上の要介護高齢 者のいる世帯(24,545世帯)のうち、19988月時点で追跡が可能であった19,566世帯 を母集団とした。その中から3,000世帯を無作為に抽出し、電話でスクリーニング調査を 実施し、上記の日本と同じ基準によって本比較調査における「要介護高齢者」がいる2,254 世帯が選ばれた。さらに、その中から 25 地区別の層化抽出を行い、600 世帯を選んで面 接調査を実施した結果、最終的に568世帯から有効回答を得た。

2)調査対象者のプロフィール

(1)要介護高齢者

集計対象とする有効回答ケース(東京1,588票、ソウル568票)の要介護高齢者の年齢 階層、配偶者の有無、居住形態、別居子どもとの関係、身体的・精神的状態、経済的状態 についての両都市別の集計結果を次の表2-1に示した。

要介護高齢者の性別についてみると、両都市とも女性の占める割合が高い。特に、東京 の方がソウルより1割強高いのが特徴的である。

年齢階級についてみると、東京は 80 歳以上の占める割合がソウルより高く、特に、90 歳以上の要介護高齢者の占める割合が高い。これに対し、ソウルは 80 歳未満の占める割 合が東京より高い。これらの傾向は、日本と韓国の平均寿命の違いに求めることができる。

配偶者の有無については、東京の方がソウルより無配偶者の割合が高い。

子どもとの居住形態(living arrangment、老親が子と同居するか否か) については、

両都市ともに同居する割合が高い。

別居子との距離については、両都市ともに片道 30 分以内に居住している割合が最も高 い。

要介護高齢者の健康状態についてみると、視力及び聴力については、両都市ともに普通

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である者の割合が最も高いが、聴力については、ソウルが東京都より1割強高く、身体的 障害の程度についても、同様に重度の身体的障害を持っている割合が高い。

精神的障害については、両都市ともに痴呆の疑いがない者の割合が最も高い。

持ち家の有無についてみると、両都市ともに対象高齢者の持ち家率は高い割合を示して いるが、東京がソウルより2割ほど高い傾向を示している。

主観的にみた、暮らしの向きについては、東京は、普通である者の割合が7割弱を示し ており最も高いのに対し、ソウルはかなり苦しいの者の割合が4割弱を示しており、暮ら し向きに困難を伴っている者の割合が高い傾向を示している。

介護費用の心配についてみると、ほとんどないと答えた割合は、東京では約9割を示し ているのに対し、ソウルでは1割に過ぎず、むしろ、頻度の差はあれ、9割の者が心配し ている。これらの状況についても、相対的には日韓の福祉サービスや社会保障の充実の差 を反映していると考えられるが、結果的には子どもからの経済的支援に依存するかたちと して具現化している。

表2-1 要介護高齢者のプロフィール(東京=1673、ソウル=568) (単位:%)

東京 ソウル 性 別:男性

女性

28.7 41.2 71.3 58.8 年齢階層:65-69歳

70-74 75-79 80-84 85-89 90歳以上

4.6 22.4 6.5 22.7 12.5 21.1 22.3 16.5 26.5 10.6 27.6 6.7 配偶者の有無:いる

いない

39.1 51.8 60.9 48.2 子どもとの同居の有無:

同居 別居

68.7 70.1 31.3 29.9 別居子の有無:いる

いない

75.7 89.3 24.3 10.7 別居子との距離:

30分未満

30‐1時間未満 1-2時間未満 2時間以上

35.9 31.2 23.3 21.7 27.8 30.4 13.0 16.7

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東京 ソウル 視力:

普通(日常生活に支障なし)

1メートル程度の距離は見える ほとんど見えない

66.3 66.0 28.4 20.8

5.3 13.2 聴力:

普通(日常生活に支障なし)

かなり大きな声なら何とか聞き取れる ほとんど聞こえない

60.5 78.3 33.9 17.3 5.6 4.4 精神的障害の程度:痴呆の疑いなし

軽度の痴呆 中度の痴呆 重度の痴呆

40.4 51.4 24.0 13.1 23.6 16.6 12.0 18.9

持ち家の有無:あり なし

85.5 63.6 14.5 36.4 暮らしの向き:かなり苦しい

やや苦しい 普 通 やや余裕がある

3.0 37.1 13.2 12.3 67.1 29.4 16.7 5.5 介護費用の心配:よくある

時々ある たまにある ほとんどない

1.0 32.4 4.0 31.5 5.6 26.1 89.4 10.0 注:DK、NAは除く。

(2)家族介護者

有効回答ケース(東京1,673票、ソウル568票)の家族介護者の性別、年齢階層、居住 形態、健康状態、介護機関、介護程度、健康状態、副介護者の有無、外出の程度について の両都市別の集計結果を次の表2-2に示した。

家族介護者の性別についてみると、両都市ともに女性の占める割合が高いが、ソウルの 方が東京より若干高いのがわかる。

年齢階級についてみると、東京は、50-59 歳の占める割合が3割弱で最も高いが、ソウ ルは1割強である。一方、ソウルは、50歳未満の占める割合が3割で最も高いが、東京は 1割強に過ぎない。80歳以上をみると、東京は1割強であるのに対し、ソウルは約4%と きわめて少ない。このような傾向は、日韓の平均寿命の差が家族介護者にも影響を与えて

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主介護者の要介護高齢者との続柄については、配偶者である比率が両都市とも、最も高 いが、ソウルでは東京より1割強高い傾向を示していた。また、東京では、娘が2番目に 高くなっているが,ソウルでは息子の妻(嫁としての立場)が高くなっている。すなわち、

介護の主な担い手は、東京では配偶者・娘・息子の妻の順となっており、家父長制のかげ りが見え隠れしているが、ソウルでは配偶者・息子の妻が圧倒的に高い。娘が主介護者の 担い手になる比率がきわめて低く、依然、家父長制の影を落としているといえる。

要介護高齢者との同居の有無については、両都市とも大部分の介護者が要介護高齢者と 同居していることがわかる。これは、介護者が要介護高齢者と同居をしないで介護すると いうことが、事実上、困難であるということを如実に反映している結果でもあろう。

次に、家族介護者の健康状態についてみると、東京では健康であるものの比率が6割弱 を占め、最も高くなっているが、ソウルでは3割強である。一方、健康がすぐれず、世話 をするのに差し障りがあると答えた者は、東京では1割弱であるのに対し、ソウルでは2 割を占めており、ソウルの介護者が東京の介護者より身体的に何らかな障害を持ちながら 介護していることがわかる。

介護期間については、東京よりソウルにおける介護期間の方が長期にわたっていること が示唆されている。これは、日本では要介護高齢者が入院したり、特別養護老人ホームや 老人保健施設等の施設に入所することが比較的高いのに対し、韓国では要介護高齢者の施 設入所が低所得者層に限定され、社会福祉の選別主義がいまだ根強く働いている結果であ ると考えられる。

介護の程度をみると、東京は、「かかりっきりではないが毎日」が4割強であるのに対し、

ソウルでは4割弱である。むしろ、在宅における介護者への負担が重い「毎日かかりっき り」は、東京が2割強であるのに対し、ソウルでは4割を占めている。

副介護者の有無についてみると、両都市ともに「いる」者の比率は「いない」者より高 い割合を示しているが、東京がソウルよりいる者の比率が若干高い傾向を示している。

外出の程度については、両都市ともに「全くない」と答えた者の比率が最も高いが、東 京がソウルより2割程度高いことがわかる。一方、「1ヶ月に1回以上」の者はソウルが東 京よりより高い傾向を示していた。

表2-2 主介護者のプロフィール (単位:%、カッコ内は実数)

2-2-1 主介護者との同・別居

性 別 男性 女性 合 計 東 京

ソウル

24.7 75.3 100.0(1673)

21.1 78.9 100.0( 568)