第2章 家族の介護負担感及び介護規範意識に関する日韓比較研究
3 介護負担感及び介護規範意識に関する枠組み
目的変数である家族の介護負担感については、身体的・精神的・社会的負担感に関する 具体的な内容を設定し、また介護規範意識については「誰が世話をすべきであるか」とい う意識に関する質問を設定し、それによって把握する方法をとった。
まず、身体的負担感は、「蓄積的疲労徴候調査(CFSI)」(越河六郎、藤井亀、1987)を参 考にした14項目の身体症状に「はい(ある)」「いいえ(ない)」で回答してもらい、「ある
(はい)」に1点、「ない(いいえ)」には0点を与え、それらの合計を得点化して把握する ことにした(表2―3))。得点が高いほど、負担感が大きくなることを意味している。
表2-3 身体的負担感の項目
(1) 全身がだるい 1 ある 2 ない (2) しばしばめまいがする 1 ある 2 ない (3) 目が疲れる 1 ある 2 ない (4) 腰がいたい 1 ある 2 ない (5) よく肩がこる 1 ある 2 ない (6) 眠りが浅く、夢ばかりみる 1 ある 2 ない (7) からだのふしぶしが痛い 1 ある 2 ない (8) 足がだるい 1 ある 2 ない (9) 目がかすむことがある 1 ある 2 ない
(10) 全身の力が抜けたようになることがある 1 ある 2 ない
(11) 動作がぎこちなく、よく物を落としたりする 1 ある 2 ない
(12) 頭が重い 1 ある 2 ない
(13) 胃腸の調子が悪い 1 ある 2 ない
(14) 胸が悪くなったり、吐き気がする 1 ある 2 ない
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精神的負担感については、いわゆる「燃え尽き症候群」を測定するスケール(MBI)を家 族介護者用に改訂したもの(中谷、1992)を参考にして、14項目を設定し、その中から7 項目を選び、「非常にあてはまる」「かなりあてはまる」「まあまああてはまる」「あまりあ てはまらない」「まったくあてはまらない」の5段階の回答(0点~4点)を用意し、その 合計を得点化することにより、把握する方法をとった(表2-4)。
表2-4 精神的負担感の項目
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ)
あ ては まる 非 常に
あ ては まる かな り
あ ては まる まあ まあ
あ ては まら ない あま り
あ ては まら ない まっ たく
(1) お世話をすることで、充実感を感じる 1 2 3 4 5 (2) 一日のお世話が終わると、疲れ果てたと感じる 1 2 3 4 5
(3) お世話をうまくしてきていると思う 1 2 3 4 5
(4) お世話で○○さんと一緒に過ごすのは気を使うし、
骨がおれると感じる 1 2 3 4 5
(5) 朝起きて、また今日も一日お世話かと思うと、疲れを 感じる
1 2 3 4 5
(6) ○○さんはお世話していることを感謝していると思う 1 2 3 4 5 (7) お世話で燃え尽きてしまったと感じる 1 2 3 4 5
(8) お世話することで○○さんと気持ちが通じ合うように 感じる
1 2 3 4 5
(9) お世話をしていてイライラを感じる 1 2 3 4 5
(10) 自分でお世話できる限界まできたと感じる 1 2 3 4 5
(11) ○○さんが気持ちがいいときには、うれしい気持ちに
なる
1 2 3 4 5
(12) お世話に精をだしすぎていると感じる 1 2 3 4 5
(13) ○○さんを「もの」を扱うように世話していると 感じる
1 2 3 4 5
(14) ○○さんに変わったことがあっても、あまり気に
ならないことがある
1 2 3 4 5
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社会的負担感については、東京都老人総合研究所(1996)の用いた負担感スケールを参 考に、6項目の質問文による4段階で回答する方法によって測定した(表2-5)。すなわ ち、選択肢は、精神的負担感と同様に「非常にあてはまる」「すこしあてはまる」「あまり あてはまらない」「まったくあてはまらない」の4段階である。
表2-5 社会的負担感の項目
(ア)
非常に あてはまる
(イ)
少し あてはまる
(ウ)
あまり あてはまら
ない
(エ)
まったく あてはまら
ない
(1)お世話のために(あなたが)仕事に出られない/
よい仕事につけない/家業が思うようにやれない 1 2 3 4
(2) お世話のために(あなたが)育児や家族の世話
に思うように手がまわらない 1 2 3 4
(3) ○○さんのことが気になって、昼間(あなたが)
思うように外出できない 1 2 3 4
(4) お世話のために、昼間(あなたが)趣味や学習
活動などをする「自由な時間」を思うようにとれない 1 2 3 4
(5) お世話のことで、家族・親戚と意見があわない 1 2 3 4
(6) お世話のために経済的負担が大きい 1 2 3 4
介護規範意識については、「一般的に親が寝たきりになった場合、親の日常生活の世話に ついてどのように考えますか」という質問に対する回答で把握することにした。選択肢は、
「すべて社会(例えばホームヘルパーの派遣)が世話をする」「主として社会(例えばホー ムヘルパーの派遣)が世話をし、社会の力が及ばないところを子どもが世話をするのが適 当である」「子どもと社会(例えばホームヘルパーの派遣)の両者で世話をするのが適当で ある」「主として子どもが世話をするが、子どもの力の及ばないときは社会(例えばホーム ヘルパーの派遣)が世話をするのが適当である」「子どもが世話をするのが当然」の5つで ある。
なお、ここで用いている介護規範意識に関する選択肢は定性的変数である。本来、変数 の分布を表すのに、平均値や分散、標準偏差を算出することができるのは、定量的変数に ついてのみであるが、「人間の精神や行動、社会現象を扱う実証研究では、数学的な厳密さ のみを追求するわけにはいかず、実際には、順序尺度で表された定性変数であっても、1 つのカテゴリーに 50%以上が集中するといった著しい分布の隔たりがなければ、1、2、
3、などの得点を与え、定量的変数として扱い、相関係数を算出しても構わない」(古谷野 亘、長田久雄、1992)といわれている。したがって、ここでも、順序変数である「介護規 範意識」をそれに準じて定量的変数として扱うことにする。
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