第5章 大都市における家族の保健・福祉的支援機能と社会的要因
3 家族の保健・福祉的支援機能の地域的差異と高齢者扶養
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もとより、保健及び福祉という概念は、高齢者扶養という観点からとらえると、複合多 面的であり両者は分かちがたく、しかも情緒的側面も含まれるが、ここでは便宜上分けて とらえることにした。また、その場合の支援提供源の有無については、後述するように12 項目のうち、「いない」と×のついている項目(表5―3)を除いたすべてによって把握し た。
表5―3 保健福祉的支援機構としての教授とその提供源(地域別)
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第2の保健福祉的支援の提供源別に、提供源があっても保健福祉的支援を受けることが できない高齢者がどの程度いるのかを、支援の享受可能性という面から明らかにすること については、以下のように評価した。つまり、一般的保健支援については、「日頃から、
あなたの健康に気を配ってくれたり、心配してくれる人」(RS1)がいるか否か、また、福祉 的支援については、「寝たきりのような状態になったとき、身の回りの世話や介助、家事 を頼める人」(RS4)がいるか否かを質問することによって把握することにした。また、そ の場合の支援提供源があるか否かについての判断は、「配偶者」「同居子(含嫁)」につい ては、その存在の有無によって、また「別居子」「親族」「近隣・友人・知人」について は、訪問、電話、手紙などによる交流がある者という条件をつけて、このような条件を満 たす関係にある者がいるか否かによって評価することにした。
これらの課題を明らかにするために、東京都老人総合研究所保健社会学研究室の研究プ ロジェクトチームは、大都市地域として東京都練馬区、農村的性格を有した地域として宮 城県志田郡鹿島台町を選定し、1992年に調査を行った。以下の研究結果は、その際に、私 が共同研究者の許可を得たうえでSPSSを利用してまとめたものである。
まず、二つの地域の地域特性を述べることにする。練馬区は、東京都23区の北西部に 位置し、北東から南にかけては板橋区、豊島区、中野区、杉並区に接し、西から南西にか けては西東京市、武蔵野市との境ももち、北は埼玉県の新座市、朝霞市、和光市に接して いる。住民基本台帳によると、人口は、昭和30(1955)年代から昭和40(1965)年代半ば にかけての高度経済成長期に応じて著しく増加し、また1986(昭和61)年、光が丘地区等 の開発に伴い、約1万1千人が増加し、都内でも際立って大きい伸びを示している。1990
(平成2)年には、618,663人、2012(平成24)年1月1日現在では694,886人、世帯数が335,465 世帯となっており、人口は東京都23区の中では世田谷区に次いで2番目の大きさである。
一方、鹿島台町は宮城県のほぼ中央にあって志田郡に属し、仙台市と旧古川市の中間に 位置している純農村である。JR東北本線の鹿島台駅を通じて仙台市への通勤の便が良い ために、戦後はベッドタウン化が進行した。一方、南部から東北部の平地は水田地帯であ り、ササニシキ、ひとめぼれなどの良質米を産する地域である。旧鹿島台町の人口は、1995 年では1万4206人であった。現在は、古川市を中心とした周辺地域が合併し、鹿島台町も 大崎市に編入されている。
鹿島台町史によると、県内で市制に最も近いのは鹿島台か利府かとさえいわれていた時 期があったという。しかし、古川市を中心とする広域大崎圏に組み入れられ、仙台との断 絶感が強まり、広域圏を基準とした学区制により以前は通えた仙台地区の公立高校への進 学ができなくなると、鹿島台町の住宅地としての魅力は急激に色あせたと言われている。
昭和40年代から増加を始めた鹿島台町の人口も、広域圏行政が浸透する50年代半ば以降は
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こうした地域の特性を持っている二地域であるが、調査対象者は、保健福祉的支援の享 受可能性を把握するという目的に即して60歳以上の男女とし、二地域それぞれから600名、
合計1,200名(有効回収数は練馬423、鹿島台町443)を住民基本台帳から層化二段抽出法に より抽出した。
①保健福祉的支援の提供源
家族を中心とした保健福祉的支援の多寡は、高齢者の性、年齢、居住形態、地域差など が反映していることは、いうまでもないが、ここでは、高齢者が「一般的保健」「日常生 活動作(ADL)低下時」「疾病時の保健」の各2項目計6項目の質問状況において、どのよう な相手(提供源)から享受する可能性があるのかを、大都市と農村に別けて検討してみよ う(表5-3)。高齢者の保健福祉的支援の提供源としては、全体的には、大都市におい ても農村においても、基本的には、「配偶者」が最も多く、他は「同居子」や「別居子」
に集中していることに変わりはない。しかし、大都市・農村という地域を基軸にした視点 からみていくと、相対的には、大都市では「配偶者」及び「別居子」が、一方の農村では
「同居子」に傾斜している傾向がみられる。また、「一般的保健支援」(RS2)については、
農村では相対的に「近隣」からの支援可能性が高いのに対し、大都市では、おしなべて「医 師・看護師」など公的な支援提供源が多い。
また、保健福祉的支援の提供源としての延べ回答比率数をみると、その割合は「一般的 保健」(RS1,RS2)の場合には農村的色彩の強い鹿島台町より大都市である練馬区におい てやや高いのに対し、「日常生活動作(ADL)低下時」(RS3,RS4)や「疾病時の保健」(RS5,
RS6)の場合には、むしろ、農村に高い傾向がみられる。つまり、それは、大都市よりも農 村の方が、高齢者がリスクを背負ったときには、その受け皿が用意されており、しかもト ータルとしての保健福祉的支援として機能する提供源(社会資源)が大きいことを意味し ている。
②支援の享受可能性のない者の状況とその要因
高齢者の保健福祉的支援の可能性のなさは、支援の提供源によって異なっているものの、
全体的にみて両地域とも、保健福祉的支援のない者が少なからずみられることに由来して いる。たとえば、配偶者がいる者のうち、支援可能性のない者は約1割、また同居子がいる 者でも、同居子からの支援可能性のない者が約3割あった。近隣・友人の場合には、一定 の交流があっても支援可能性がない者は特に高く、8割程存在していた。このことは、高 齢者をとりまく家族や近隣、友人が社会的な関わりをもっていても社会的支援の提供源と してストレートには機能していない可能性が大きいことを示唆している。
一方、高齢者に対する支援の提供源は、保健的支援機能の面からみると、補完的、階層
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的な関係にあることが示唆された。すなわち、同居子からの支援可能性は、配偶者がいる 場合に低く、別居子からの支援可能性については、配偶者や同居子がいる場合に低いとい う傾向がみられた。また、親族からの支援可能性に関しては、配偶者、同居子及び別居子 がいる場合に低いことが示された。すなわちそれは、最も近い家族・親族の支援がなけれ ば、より外延的な親族の支援可能性を期待するという補完的・階層的な関係にある。
また、保健福祉的支援の享受の可能性については、性差がみられた。すなわち、配偶者 からの支援可能性については、男性より女性に、同居子及び別居子、友人・近隣からの支 援可能性に関しては、女性より男性の方に低いという傾向がみられた。地域差については 配偶者及び別居子からの支援可能性は農村部の方が大都市よりも低く、逆に親族からの支 援可能性はそれぞれ大都市の方が農村部よりも低いという傾向がみられた。