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現代家族の機能と高齢者扶養

第5章 大都市における家族の保健・福祉的支援機能と社会的要因

2 現代家族の機能と高齢者扶養

1)人口学的な世代間扶養の過去・現在・未来

従来から高齢化社会の指標のひとつとして、人口構成を年齢によって3つに区分した生 産年齢人口(労働力人口、15歳から64歳人口)、年少人口(15歳未満人口)、老年人口(65歳以 上人口)(総人口に占める割合)やそれらを生産年齢人口に対比させた年少人口指数、老年人 口指数、従属人口指数などがよく活用されてきている。人生80年時代に入った今日に至っ ては、65歳以上であった老年人口を「70歳以上」とし、他の年齢区分についてもそれぞれ

「20歳未満」「20歳以上70歳未満」とし、新しい発想で、人口の年齢構造割合の変化をと らえているのもみられるようになってきた(『厚生白書』平成11年版)。それは、それで一 定の意味合いがあるが、かつて、中鉢正美や森岡清美が指摘したように(中鉢正美、1976、

森岡清美、1976)、家族機能を高齢者福祉や世代間扶養という観点から捉えようとする場 合には、老年人口指数という大枠な試みよりは、親子の世代間隔に相当する30年を隔てた

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年齢階層の人口比をもちいることによって、21世紀の課題となっているこれらの問題をよ りクリアに指摘することができると考えられる。表5-1は、そうした意図によって、筆 者が作成したものである。表中、1960(昭和35)年から1970(昭和45)年の3時点については、

「65~69歳」を老親世代(A世代)、「35~39歳」を子世代(B世代)、「5~9歳」を孫 世代(C世代)、1995(平成7)年については、「75~79歳」を老親世代(A世代)、「45

~49歳」を子世代(B世代)、「15~19歳」を孫世代(C世代)とした。1970年以前の年 代と1995年の年代との間で、各世代の年齢のとりかたが異なっており、1995年の年代の方 をそれ以前の年代より10歳ほど高くしているのは、いうまでもなく、この間における65歳 以上の老齢人口が7%前後から14%を越え、かつ平均寿命が男女とも75歳を越えるに至った という事情(高齢社会の到来)を反映している。上段のA/Bは、B世代のA世代に対する 老親の負担係数であり、B/Cは、30年後のC世代のB世代に対する負担係数である。

表5-1 人口学的視点からみた世代間扶養

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それによれば、A/Bの負担係数は、1960年から1970年にかけては、0.36、0.34、0.36 と推移しているが、1995年にはむしろ、0.31%と低下している。1970年の 0.36という数字 は、100人の子世代が36人の老親を負担するという係数であり、また老親世代1人当りに換 算すると子世代2.78人が対応する(1÷0.36)という係数でもある。それが、1995年に0.31 に低下しているということは、B世代が戦後のベビーブーム時代に出生した団塊の世代で あり、したがって、老親世代であるA世代に対するB世代の負担係数は相対的に軽くなっ ているということでもある(老親1人に対して子世代3.22人となる。なお、年齢のとりあ つかいが異なっている1990(平成2)年から2000(平成12)年のB/Cについては、0.46から 0.50に推移している)。

しかるに、仮にB世代が30年後にC世代に扶養されるという2025年のB/Cの負担係数は、

1.24となる(もちろん、この間における死亡率は世代間によって異なるので、実際にはこ の数値より若干低くなるであろう)。すなわち、それは、子世代100人に対して老親世代124 人が存在するということであり、その負担係数は、老親世代1人に対して子世代が0.8人し か存在しないということでもある。近年、世帯構造別にみた高齢期家族の変化にもみられ るように、「単独世帯」や「夫婦のみの世帯」が増加し、「三世代世帯」が減少している ということは、上記の世代間扶養の不十分さに加えて、子による扶養からはみ出す老親が 著しく増加することは疑う余地が無いことを示すものである。それは、一方では、老親子 の同居率が低下していることを意味しており、しかも、その「同居率の低下は高齢者扶養 の低下とかなりの精度をもってむすびついている」(森岡、1993)といえる。

2)高齢者の身体的・社会的環境からみた家族機能の変化

ここでは、まず、高齢者の健康状態や疾病状態、もしくは高齢者の死亡場所など高齢者を とりまく社会的環境の変化などを素描し、高齢者の置かれている位置を確認しておきたい。

高齢者の健康状態や疾病状態を「自覚症状」「日常生活に影響」「通院」の有無によって 8つに分類している「国民生活基礎調査」(平成4年)によれば、健康状態が良好であると 考えられる「生活影響なし・自覚症状なし・通院なし」の高齢者は約3割である。この割 合は、高齢者以外の者(6歳~64歳)の7割強が良好な状態であるのと比較するとかなり低 率であり、むしろ何らかの自覚症状をもっており、通院などをしている者が多い。特に、

「生活影響あり・自覚症状あり・通院あり」の高齢者は17%に及んでおり、高齢者以外の 2.6%と比較すると極めて多い(図5-1)。特に65歳以上の要介護老人数をみると、何ら かの介護を必要とする高齢者は、1992(平成4)年現在、83万6,000人(総務庁推計による平成 4年の65歳以上人口1,624万人の5.1%)に達し、全部介助である者の割合はそのうちの約4 割にも及んでいる(図5-2)。なお、ここでいう要介護者とは、在宅で、洗面、歯磨き、

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着替え、食事、排泄、入浴、歩行の日常生活活動(6項目)のいずれかひとつでも何らか の介助を必要とする者をさしている。その意味では、高齢者の介護負担はきわめて大きい と考えられる。また、要介護老人のうち、「全く寝たきり」と「ほとんど寝たきり」を合 わせた「寝たきり老人」の数は、同じく「国民生活基礎調査」によれば、1992年現在、全 国で約30万人に及んでいる。しかも、その介護者の多くは、「妻」や「嫁」及び「娘」(全 体の約9割が女性)で占められており、寝たきり老人の高齢化とともに介護者の年齢も年々 高齢化してきているのが現代的な特徴となっている。

図5-1 高齢者の健康状態(単位:%)

図5-1 要介護老人の介護の程度(単位:%):出所は上と同じ

高齢者の健康状態や介護状態が以上のような状況にあるなかで、終末ケアと関連する高 齢者の死亡場所はどのように変化しているのであろうか。『人口動態統計』によれば、1960

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年から全年齢と高齢者にわけて、その変化をみることができる(図5-3)。1960年当時、

高齢者は、もちろん、全年齢においても「病院」で亡くなるより「自宅」で死亡する割合 がきわめて高かった。その意味では、高齢者が終末ケアを自宅でむかえることが多く、家 族に守られて死亡するケースが多かったと考えることができる。ところが、高齢者の死亡 場所は、年々病院での死亡割合が高まり、1985(昭和60)年には「自宅」と「病院」での割 合が逆転し、1997(平成9)年現在では、高齢者の死亡者が約56万人のうち「病院」での死亡 割合が8割を越え、「全年齢」の推移に近似した傾向を辿るようになってきている。その背 景として、医療の高度化、家族介護の外部化などが強く影響していることに疑いないが、

次の項目で述べる農村地域の宮城県と大都市である東京都を比較してみると、そこにはか なりの開きがみられることもまた事実である。

図5-3 高齢者(70歳以上)の死亡場所別死亡割合の年次推移

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