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変更基準を選ぶことができたが、ACFTAでは、代替品目に指定された特定品目だけが、付 加価値基準との選択が可能である。

ACFTA では、物品貿易協定第 2 修正議定書の「原産地規則の運用上の認証手続き

(Operational Certification Procedures、OCP) 」において、日本企業の関心が高い仲介貿 易を認める条項が盛り込まれた。

これは、ACFTAにおいてはリインボイス(Re-invoice)と呼ばれ、AFTAではバック・

ツー・バック(Back to Back)とされ、商流・物流ともにシンガポールなどの第3国経由で 行われる取引形態を示すものだ。

例えば、中国からタイにACFTAを使って輸出する場合、当該製品が一旦シンガポールの 物流倉庫に保管され、タイ側の発注に応じて発送されるとする。その際に、原産地証明書も 中国政府発行のオリジナルを基に、シンガポール政府が分割して発行することにより、タイ での特恵関税を受けられるシステムのことを指している。

ACFTAにおいても、AFTA同様に、日本企業にとって一般的な流通システムが、原産地

認定に盛り込まれた意義は大きい。

ST税率が10%以下の場合、MFN税率を超えない範囲で、輸入国のNT/EHP税率かあるい は輸出国のST税率かの、いずれか高い方を課税することができる。

つまり、インドネシアに進出している日系企業が、インドネシアによりST品目に指定さ れている品目を中国に輸出しようとした時、中国ではNT品目 に指定されているので関税

は0%と思っていたところ、中国税関で互恵関税率(RTR)を課税される場合がありうるの

だ。

したがって、日本企業が ACFTA を利用する時は、互恵関税率の規則を十分に理解し、

RTR の税率を事前に把握するとともに、輸入国で適用されているかどうかを確認する必要 がある。

(2) ACFTA5カ国及び日米の貿易の流れと特徴

① 需要段階別・用途別の財別輸出入の推移

中国、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムから成るACFTA5カ国と日米の需要 段階別・用途別の財別輸出入の推移を見て、ACFTA域内と日米の貿易構造の変化を探るこ とにしたい。

ここでの財の分類は国連のBEC分類を基にしている。この分類のよいところは素材、中 間財、最終財に分類できることである。中間財はアジア域内での企業間のサプライチェーン の中核をなし、日本企業の競争力の源泉でもあるので、ACFTA域内等の貿易構造を分析す るには適している分類であると考えられる。

これらの素材、中間財、最終財の3つの分類は大分類として定義される。素材はさらに食 料・飲料(原料)、産業用資材(原料)、燃料・潤滑油(原料)の3つの中分類、中間財は加 工品と部品の2つの中分類、最終財は資本財と消費財の 2つの中分類に分けることができ る。

さらに、加工品は食料・飲料(加工品、産業用)と産業用資材(加工品)と燃料・潤滑剤

(加工品)、部品は資本財部品(輸送機器用除く)と輸送機器用部品の小分類に分けられる。

また、資本財は資本財(輸送機器除く)と産業用輸送機器、消費財は食料・飲料(原料、

家庭用)、食料・飲料(加工品、家庭用)、乗用車、その他の非産業用輸送機器、耐久消費財、

半耐久消費財、非耐久消費財、などの小分類に分けられる。したがって、全体では14の小 分類に分けられる。

本稿では、素材、中間財、最終財の大分類を基本に説明する。これに、素材では産業用資 材を取り上げるし、中間財では加工品と部品、最終財は資本財と消費財に分けて解説する。

また、部品の中でも、輸送機器用部品の動向を取り上げる。

表2-3:財の品目分類

国連 BEC 分類の概要(3 大分類、7 中分 類、14 小分類、その他極小分類)

素材

食料・飲料(原料、産業用)

産業用資材(原料)

燃料・潤滑剤(原料)

中間財 加工品

食料・飲料(加工品、産業用)

産業用資材(加工品)

食料 鉱物性燃料 化学品

ゴム・プラスチックス 繊維

鉄鋼 その他金属 電気機械 精密機械 雑製品 その他

燃料・潤滑剤(加工品)

部品

資本財部品(輸送機器用除く)

ゴム・プラスチックス 繊維

その他金属 一般機械 電気機械 輸送機械 精密機械 雑製品 その他

(部品 続き)

輸送機器用部品 ゴム・プラスチックス 鉄鋼

その他金属 一般機械 電気機械 輸送機械 精密機械 雑製品 最終財

資本財

資本財(輸送機器除く)

産業用輸送機器 消費財

食料・飲料(原料、家庭用)

食料・飲料(加工品、家庭用)

乗用車

その他の非産業用輸送機器 耐久消費財

半耐久消費財 非耐久消費財

図2-1はACFTA5カ国(中国、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム)及び日米 の財別輸出の推移を、1999 年~2013 年まで描いたものである。この図からもわかるよう に、中国の輸出総額はASEAN4カ国と比べて圧倒的に大きく、各国の10倍程度の規模に なる。

2013年の場合、中国の輸出額は2.2兆ドルに達している。一方、インドネシア、マレー シア、タイはいずれも2,000億ドル前後の輸出額となっている。ベトナムについては、2013 年の輸出入のデータを得ることができないため、本報告書での説明は2012年までの動向に なる。日本は0.7兆ドル、米国は1.6兆ドルであった。

2013年の財別の動向を見てみると、図2-2のように、中国とベトナムは最終財の輸出割 合が高く、ともに輸出総額の6割弱に達する。これに対して、インドネシア、マレーシア、

タイでは中間財の輸出割合が高い。日本と米国は中間財の割合が高く、ともに産業用資材

(加工品)や部品の比重が大きい。日本の産業用資材(加工品)の輸出割合はASEANより もやや高い26%、米国は25%であった。また、日本は米国と比べて最終財の輸出割合もや や高いのが特徴である。

特にマレーシアの中間財の輸出割合は 69.5%という高水準であり、インドネシアとタイ は5割近い水準である。これに対して、中国の中間財の輸出割合は43%とASEAN主要国 よりも少し低く、ベトナムは2012年のシェアであるが28%であった。日本の中間財の輸出 割合は56%、米国は50%であった。

2013年において、素材の輸出割合が高いのはインドネシアであり、その割合は32%であ る。これは、インドネシアが産油国でもあり、天然ガスなどの資源を輸出しているためでも ある。同様に、石油などの資源国であるベトナムも素材の輸出割合が高く、2012年で15%

であった。ちなみに、中国の素材の輸出割合は1%以下にすぎない。

素材の中でも炭素繊維などの産業用資材(原料)は中間製品に組み込まれる品目であるが、

中国の総輸出に占めるシェアは 0.5%であった。図 2-3 のように、輸出金額では他の

ASEAN4カ国とそう変わりはないのであるが、比率で見ると大きく下がってしまう。

産業用資材(原料)の ASEAN 各国の輸出シェアは、2013 年にはインドネシアは9%、

マレーシアでも2%、タイでは5%に達した。ベトナムは2012年には4%であった。これら のシェアは、中国を除いて各国とも2005年よりもいずれも上昇傾向にある。日本の産業用 資材(原料)の輸出割合は1%、米国は4%であった。

図2-1:ACFTA5カ国及び日米の財別輸出の推移(2013年、BEC分類)

() ベトナムは2013年のデータがないため、2012年までしか表示していない。(以下の図表同様) (資料) Global Trade Atlas(GTA)、GTIより作成(2章の以下の図表、同様)

図2-2:ACFTA5カ国及び日米の財別輸出構成比(2013年、BEC分類)

(注) 素材、中間財、最終財の分類で、細かな品目で重複している場合があるので、これらの財のシェアを 足し上げても、必ずしも100%にはならない(2章の以下の図表、同様)。

0 500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 2,500,000

中国 インドネシ マレーシ タイ ベトナム 日本 米国 中国 インドネシ マレーシ タイ ベトナム 日本 米国 中国 インドネシ マレーシ タイ ベトナム 日本 米国 中国 インドネシ マレーシ タイ ベトナム 日本 米国

総額 素材 中間財 最終財

(100万ドル) 1999

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2011 2012 2013

0 10 20 30 40 50 60 70 80

中国 インドシア マレーシ タイ ベトナム 日本 米国 中国 インドシア マレーシ タイ ベトナム 日本 米国 中国 インドシア マレーシ タイ ベトナム 日本 米国

素材 中間財 最終財

(%) 1999

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2011 2012 2013

図2-3:ACFTA5カ国及び日米の輸出(2013年、産業用資材(原料))

一方、ACFTA5カ国及び日米の財別輸入の推移を見ると、図2-4のように、中国の2013 年の輸入額は1.95兆ドルであった。輸出同様に、他のASEAN3カ国の10倍弱の規模であ った。日本の輸入は0.8兆ドル、米国は2.3兆ドルであった。

2013年の中国の輸入においては、図2-5のように、中間財の割合は低下傾向にあるが、

47%と半分近い水準である。中国の中間財の輸入割合が低下傾向にあるのは、素材の輸入割 合が毎年増加しているためである。1999年の中国の素材の輸入割合は9%であったが、2013

年には 27%に急増している。最終財の輸入割合は輸出とは大きく異なり、2 割強にすぎな

く、やや減少傾向にある。

この結果、中国の輸出では最終財の割合が最も高かったが、逆に輸入では最も低いという 結果になった。これは、素材の輸入額が大きく上昇しているためで、1999年~2013年の年 平均成長率は29%であった。ちなみに、中間財の年平均成長率は同期間で16%、最終財は 18%であった。

2013年の中国の産業用資材(原料)の輸入シェアは12%と素材の半分弱を占めるが、図 2-6のように、1999年から大きく増加している。中国の産業用資材(原料)の輸入が急激に 上昇しているが、これは中国の加工組立の製造において、原料の段階から輸入し、製造の川 上の初めのところから川下までの一連の製造工程を展開していることを示している。これ により、製造工程で付け加えられる付加価値をより高めていると思われる。

インドネシア、マレーシア、タイにおいては、中国以上に2013年の中間財の輸入割合が 高い。2013年には、タイの中間財の輸入割合だけが56%で、インドネシアは64%、マレー

シアは 66%に達する。ただし、マレーシアでは中間財の輸入割合はやや低下傾向にあり、

その分だけ最終財の割合が高まっている。ベトナムでは、2012年の中間財の輸入シェアは

71%で、他の4カ国と比較して最も高い。

2013年のインドネシア、タイ及びマレーシアの中間財の輸入では、加工品の輸入額の方 が部品よりも大きい。タイでは、部品の中でも輸送機械用部品の輸入が拡大している。タイ

0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000

中国 インドネシア マレーシア タイ ベトナム 日本 米国

(100万ドル)

1999 2005 2012 2013