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図8-1~図8-4は、中国、インドネシア、タイにおけるりんごの主要国からの輸入のFTA

税率と輸入単価を比較したものである。2013年の日本のりんごの輸入はほとんどニュージ ーランドからのものであるため、本章の輸入単価分析の対象から外した。

中国の世界からのりんごの輸入単価はキログラム当たり2ドルであるが、インドネシア、

タイともりんごの輸入単価はキログラム当たり1ドル前後となる。その中で、3カ国とも日 本からのりんごの輸入単価は高く、4ドル~8ドルのレンジであった。

中国の日本からのりんごの輸入単価は7.7ドルで、MFN税率は10%であった。したがっ て、MFN税率の税込輸入単価は8.5ドルとなる。中国と日本はFTAを結んでいないため、

活用するFTA税率の税込輸入単価も8.5ドルとなる。このため、輸入単価削減額(MFN税 率の税込輸入単価8.5ドル-FTA税率の税込輸入単価8.5ドル)は0ドル、輸入単価削減 率(輸入単価削減額0ドル÷輸入単価7.7ドル)は0%となる。

また、中国のニュージーランドからのりんごの輸入単価はキログラム当たり2.1ドルで、

日本と同じMFN税率は10%であるので、MFN税率の税込輸入単価は2.3ドルとなる。中 国とニュージーランドとはFTA(China-NZFTA)が締結されているので、FTA税率は0%

になり、FTA 税率の税込輸入単価は2.1 ドルである。中国のニュージーランドからのりん ごに輸入においては、日本と違い輸入単価削減額は 0.2 ドル、輸入単価削減率は 10%にな る。

つまり、日本はニュージーランドと違い中国とFTAを結んでいないので、中国市場での りんごの販売においては、やや競争力を低下させている。ニュージーランドは中国と FTA を締結しているだけでなく、中国のニュージーランドからのりんごの輸入単価は日本の約4 分の1の水準であり、相対的に高い価格競争力に結び付いている。このため、2013年の中 国の日本からのりんごの輸入額は144万ドルであるが、ニュージーランドからは 2,707 万 ドルに達している。

一方、タイの日本からのりんごの輸入単価は、キログラム当たり5.3ドルで、MFN税率 の輸入単価はその10%高の5.9ドルとなる。しかし、日本とタイとのEPA(JTEPA)によ り、タイにおける日本からのりんごの輸入にかかる関税は0%となる。その結果、タイの日 本からのりんごの輸入においては、活用するEPA税率の税込輸入単価は5.3ドルと変わら ない。この場合のタイの日本からのりんごの輸入単価削減額は0.6ドルであり、輸入単価削 減率は10%となる。

タイは米国とはFTAを締結していないし、韓国とはASEAN韓国FTA(AKFTA)を締 結しているが、ともにMFN税率とFTAを活用するFTA税率は10%である。つまり、タ イは韓国からの輸入では、2014年時点でまだりんごの関税を削減しておらず、FTAの関税 削減メリットを享受できないのだ。

このため、タイの米国からのりんごの輸入単価 1.2 ドルと韓国からの輸入単価 1.9 ドル は、MFN税率および活用するFTA税率の税込輸入単価において、それぞれ1.3ドルと2.1 ドルになる。輸入単価削減額も輸入単価削減率は、両国とも0となる。

タイのりんごの輸入においては、日本は日タイEPAを活用することにより、米国・韓国

よりも 10%も競争力を高めている。なお、インドネシアのりんごの輸入においては、タイ

と同じ理由から、日本は米韓よりも5%ほど高い競争力がある。

しかしながら、タイでもインドネシアにおいても、日本産リンゴの輸入はタイで 156 万 ドル、インドネシアで32万ドルにとどまっている。これに対して、タイの中国産リンゴの 輸入は1億1,500万ドル、インドネシアの中国産リンゴの輸入は1億2,200万ドルと桁違 いの輸入規模となっている。

これは、1つには、インドネシアとタイはACFTAを活用し中国産りんごの関税率を0%

に引き下げることが可能であるためだ。また、中国産リンゴの輸入単価がキログラム当たり 1ドルであるため、日本産の5分の1から4分の1の輸入単価となり、日本産よりも圧倒 的な価格競争力を持っているためと考えられる。

図8-1:中国のりんごのFTA税率・輸入単価

図8-2:インドネシアのりんごのFTA税率・輸入単価

図8-3:タイのりんごのFTA税率・輸入単価

図8-4:日本のりんごのFTA税率・輸入単価