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こうしたFTAを活用した価格競争力で中国の乗用車市場で優位に立つASEANと韓国で あるが、実際の輸入額においてはドイツや米国、日本よりもそのシェアは低い。高額で贅沢 な商品である輸入乗用車においては、ASEANや韓国のFTAのメリットは薄まってしまう と考えられる。

もしも、将来において、日中韓FTAが発効すれば、日本と韓国は乗用自動車の中国市場 への輸出において、米独に対して価格競争力で優位に立つことになる。中国が日中韓 FTA で、現在の乗用車のMFN税率の25%をどれくらい削減するのかが注目される。

一方、タイのインドネシアからの乗用自動車の輸入単価は14,793 ドルで、MFN税率は

70.1%であった。したがって、MFN 税率の税込輸入単価は25,168 ドルとなる。タイはイ

ンドネシアとはAFTAを結んでいるので、AFTA税率は0%である。AFTA税率の税込輸入

単価は14,793ドルとなり、元々の輸入単価と変わらない。この結果、輸入単価の削減額は

10,375ドル、輸入単価の削減率は70.1%となる。

タイの日本からの乗用自動車の輸入においては、ASEAN日本FTA(AJCEP)か日タイ EPA を活用できる。このため、2014 年時点においては、MFN 税率の約 70.1%から

AJCEP/EPA の活用で 49.1%に関税が減少する。タイの日本からの乗用自動車の輸入単価

である22,890ドルは、MFN税率の税込輸入単価で38,945ドル、AJCEP/EPA活用の税込 輸入単価で 34,139 ドルに上昇する。輸入単価削減額は 4,805 ドル、輸入単価削減率は約 21%であった。

日本はタイとの貿易でEPAを活用できるが、AFTAよりも関税削減率が低いため、イン ドネシアよりも乗用自動車1 台当たりの輸入単価削減額で5,570 ドルも EPA/FTA効果が 低いことになる。

タイの米国からの輸入単価は10,115ドル、韓国からは8,424ドル、ドイツからは33,885 ドルであった。米国とドイツはタイとFTAを結んでいないので、輸入単価削減額と輸入単 価削減率は0であった。韓国はASEAN韓国FTA(AKFTA)を使えるので、輸入単価削減

額で1,726ドルと日本の半分弱、輸入単価削減率で20.5%と日本と同様であった。

日韓は、タイの乗用自動車市場で、米国とドイツよりもFTA活用により、1台当たりの 輸入単価の 20%程度の競争力を高めている。しかしながら、米独がタイで乗用自動車を生 産・販売し、他のASEANで生産したものをタイに輸出すれば、この日韓とのFTA活用に よる競争力の低下は解消されることになる。

図8-13:中国の乗用自動車のFTA税率・輸入単価

図8-14:タイの乗用自動車のFTA税率・輸入単価

図8-15:日本の乗用自動車のFTA税率・輸入単価