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蒸気養生過程における乾燥が細孔構造に及ぼす影響

第 2 章 既往の研究

4.6 蒸気養生過程における乾燥が細孔構造に及ぼす影響

既往の研究より,蒸気養生コンクリートの細孔構造は同一配合の現場打ちのコ ンクリートと比較して粗大になることが明らかとなっている 2).また,それに伴 い強度,耐久性が低下することもわかっている.これは,蒸気養生中のコンクリ ート表層部の乾燥が影響していると考えられる.細孔構造が粗になる原因は乾燥 にあるという知見もあり 3),特に若材齢時の乾燥がコンクリートの細孔構造に顕 著な影響を及ぼすと報告されている4)

そこで,本検討では,コンクリート表層部(0-20mm)における細孔構造が内部に 比べて乾燥の影響が顕著であること,また,中性化進行に支配的な影響を及ぼす のは 40nm 以上の細孔量であることから,コンクリート表層部における総細孔量 と40nm以上の細孔量を各測定面からの深さごとに示した.

図-4.7 に細孔径分布測定面を示す.コンクリートカッターの刃厚 5mm を考慮 し,打込み面から深さ方向に30mm間隔で側面上,側面中,側面下に3等分した 型枠側面の3面の表層部(0-20mm)から試料を採取し,5mm間隔で測定を行った.

図-4.7 細孔径分布測定面

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4.6.1 小型供試体の型枠側面全体の細孔構造

(1) 総細孔量および40nm以上の粗大な細孔量

材齢14,28日における型枠側面全体(図-4.8)の総細孔量および 40nm以上の細 孔量を示す.なお,実際に耐久性が求められるのは,蒸気養生コンクリートでは 出荷時の材齢14日で,現場打ち模擬コンクリートでは材齢28日時点であるため,

材齢14,28日の細孔量に着目した.

材齢14日において(図-4.9),総細孔量,40nm以上の細孔量ともに,表層からの

深さ 0-5mm の部分の細孔量が最も多く,表層部から深さが増していくにつれて

細孔量が減少していく結果となった.表層からの深さ10-20mmは40nm以上の粗 大な細孔量が少ないことから,蒸気養生中の乾燥による細孔構造への影響は,コ ンクリート表層部で顕著であり,コンクリート表層部の0-10mmの部分に大きく 影響すると言える.

材齢28日において(図-4.10),材齢14日同様に,総細孔量,40nm以上の細孔量 ともに,表層からの深さ0-5mmの部分の細孔量が最も多く,表層部から深さが増 していくにつれて細孔量が減少していく結果となった.

また,表層からの深さ15-20mmは,材齢進行に伴い,細孔構造が緻密化し,総 細孔量,40nm以上の粗大な細孔量ともに減少しているが,表層から0-15mmに関 しては,細孔量の減少量が比較的少ない結果となった.これは,表層部 0-15mm は若材齢時の乾燥による影響が大きく,材齢進行に伴う水和反応が停滞したため と考えられる.

図-4.8 型枠側面全体細孔径分布測定面

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図-4.9 打込み面からの深さ別細孔量(材齢14日)

0.00 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.10

0-5 5-10 10-15 15-20

細孔量(ml/g)

表層からの深さ(㎜)

総細孔量 40nm以上の細孔量

0.00 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.10

0-5 5-10 10-15 15-20

細孔量(ml/g)

表層からの深さ(㎜)

総細孔量 40nm以上の細孔量

図-4.10 打込み面からの深さ別細孔量(材齢28日)

81 (2) 表層からの深さごとの細孔構造

材齢 14,28 日における表層からの深さ方向別の細孔構造を示す.なお,実際

に耐久性が求められるのは,蒸気養生コンクリートでは出荷時の材齢14日で,現 場打ち模擬コンクリートでは材齢28日時点であるため,材齢14,28日の細孔量 に着目した.

材齢14 日において(図-4.11),総細孔量は表層 0-5mmが最も多く,深さが増し ていくにつれて細孔量は若干減少する傾向を示しているが,表層からの深さ別の 細孔構造にはばらつきは少ない結果となった.

材齢28日において(図-4.12),総細孔量は表層0-5mmが最も多く,深さが増し ていくにつれて細孔量が減少する傾向を示している.表層からの深さ別の細孔構

造は,0-5mmにおいて 100nm以上の粗大な細孔量が多く,5-20nmにかけて粗大

な細孔量は減少していき,5-100nm の小さい細孔量が増加していく傾向となって いる.すなわち,表層0-5mmは蒸気養生中の乾燥による影響で材齢進行に伴う水 和反応が停滞し,細孔構造に変化が見られなかったが,5-20mm は乾燥の影響が 少なく,水和反応が停滞することなく,組織が緻密化していったと考えられる.

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図-4.11 材齢14日における細孔構造

図-4.12 材齢28日における細孔構造

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4.6.2 小型供試体の打込み面からの深さ別の細孔構造

蒸気養生過程におけるコンクリートの水分逸散機構を明らかにするため,型枠 側面をさらに細分化し,打込み面から底面にかけて30mm間隔で側面を3等分し たものを,表層からの深さ方向5mm間隔で細孔径分布測定を行った.(図-4.13)

(1) 表層からの深さ方向別の細孔構造

材齢14日における表層からの深さ方向別の細孔構造を図-4.14に示す.いずれ の深さの場合でも,打込み面付近である側面上の細孔量が多く,100nm以上の粗 大な細孔が多い細孔構造となっており,底面に近づくにつれて細孔量,100nm以 上の粗大な細孔量ともに減少していき,100nm以下の小さな細孔量が増加してい く傾向にある.

即ち,型枠側面表層部0-20mmは,打込み面付近がより蒸気養生過程における乾 燥の影響を受けやすいと推察される.

材齢28日における表層からの深さ方向別の細孔構造を図-4.15に示す.全体の 傾向として,いずれの深さの場合でも,打込み面付近である側面上の細孔量が多 く,100n以上の粗大な細孔が多い細孔構造となっており,底面に近づくにつれて 細孔量,100nm以上の粗大な細孔量ともに減少していき,100nm以下の小さな細 孔量が増加していく傾向にある.材齢14日と比較して,側面上から側面下にかけ てすなわち,打込み面から底面にかけての細孔構造の差が小さくなっているが,

これは材齢進行に伴う水和反応により,全体として組織が緻密化していったため であると推察される.

図-4.13 型枠側面を細分化した細孔径分布測定面

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図-4.14 材齢14日における細孔構造

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図-4.15 材齢28日における細孔構造

86 (2) 打込み面からの深さ別の細孔構造

材齢28日における型枠側面(側面上,側面中,側面下)の表層(0-20mm)の細孔径 分布測定の結果を図-4.16に示す.側面上,側面中の細孔構造は同程度で,表層部 の細孔量が多く,深さ方向に細孔量が減少する.側面下の細孔構造も表層0-5mm の細孔量が内部に比べて多いが,深さ方向にばらつきが生じている.即ち,打込 み面から深さ60mmまでの型枠側面は,表層からの深さ方向に組織が緻密化して いくことから,蒸気養生過程の水分逸散による乾燥の影響を受けやすいと言える.

また,側面上の一部表層(10-20mm)よりも側面下の表層(0-5mm)の細孔量が多いこ とから,ブリーディングの影響よりも,蒸気養生過程において型枠側面からも水 分の逸散が細孔構造に与える影響が大きいと考えられる.

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図-4.16 材齢28日における打込み面からの深さ別細孔構造

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4.7 まとめ

(1) 蒸気養生中の温度履歴

蒸気養生コンクリートは,蒸気養生中にコンクリート表層部と養生槽内の温度 差から生じる蒸気圧勾配によってコンクリート中の水分が逸散し,乾燥する.ま た,蒸気圧比の推移から,通常の蒸気養生コンクリートは,最高温度保持工程以 降に蒸気圧比が 100%を下回り,養生槽の蒸気圧よりもコンクリート表層部の蒸 気圧が大きくなることでコンクリートが乾燥すると考えられる.

(2) 細孔構造

蒸気養生コンクリートの細孔構造は,型枠側面の打込み面付近と底面付近で細 孔構造が異なる.打込み面付近は底面付近と比較して,100nm以上の粗大な細孔 が多く,疎な細孔構造になることから,蒸気養生過程における型枠側面からの水 分逸散の影響が示唆された.

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参考文献

1) 鳥海秋,原洋介,宇治公隆,上野敦,蒸気養生中の散水がコンクリート表層部 の品質および強度特性に及ぼす影響,コンクリート工学年次論文集,vol.40,

No.2,pp.493-498,2018.6

2) 伊代田岳史,魚本健人:若材齢時の乾燥がセメント硬化体の内部組織形成と物 理特性に与える影響,コンクリート工学年次論文集,Vol.25,No.1,pp.551-556,

2003.

3) 高羅信彦,伊代田岳史,足立一郎,魚本健人:乾燥が自由水量の変化と細孔構 造の形成に与える影響,土木学会第55回年次学術講演会,V−257,pp.514-515,

2000.

4) 郭度連,宇治公隆,國府勝郎,上野敦:乾燥によるコンクリート組織の不均質 化,コンクリート工学年次論文集,Vol.24,No.1,pp.711-716,2002.

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第 5 章

供試体寸法の違いが蒸気養生コンクリートの

乾燥に及ぼす影響

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5.1 はじめに

前述したように,蒸気養生コンクリートは蒸気養生中の最高温度保持工程およ び降温工程において,コンクリートと蒸気養生槽内の温度差が大きくなり,この 間に通常の蒸気養生コンクリートは乾燥し,コンクリート表層部から内部にかけ て細孔構造が不均質となり,それに伴い,長期強度および耐久性が低下すること が明らかとなっている1).第5章では,蒸気養生中のコンクリート温度は,断面 厚などの形状寸法によっても異なることから,供試体寸法の違いが蒸気養生コン クリートの乾燥に及ぼす影響についても検討した.具体的には,第4章の養生方 法を用いて,部材厚さの大きい供試体(500×500×500mm)に対し同様の実験を行い,

第4章で対象とした100×100×400mmの小型供試体と比較検討した.