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自ら GHG 排出量を算定する際の具体的な運用方法案の検討

ドキュメント内 Microsoft Word - H24バイオ燃料最終報告.docx (ページ 100-104)

4. 我が国における持続可能性基準の運用等の検討

4.2 自ら GHG 排出量を算定する際の具体的な運用方法案の検討

4.2.1 論点

GHG算定で用いられるデータは、「インプット量」と「排出係数」に分類される。

インプット量はプロセスで用いる物質やエネルギーの量であり、排出係数は物質やエネル ギーの単位量の使用に伴うライフサイクルでのGHG排出量である。

図 4-4 GHG排出量算定のイメージ

これらについて、自らGHG排出量を算定する際の下記の論点について、海外類似精度の 動向を元に、検討を行った。

1. 用いるデータの種類: 統計値等を認めるか、実際の値しか認めないか。

2. データの根拠の提出有無: 根拠資料として、どこまでの資料の提示を求めるか。

インプット量 × 排出係数

エネルギー使用量 エネルギー・電力の単位量の使用に伴う ライフサイクルでのGHG排出量

GHG排出量 =

化学物質等使用量 化学物質等の単位量の使用に伴う ライフサイクルでのGHG排出量

輸送トンキロ 単位トンキロの輸送に伴う

ライフサイクルでのGHG排出量

4.2.2 海外類似制度の動向 (1) Bonsucro

1)Bonsucroの概要

Bonsucroは、ブラジル産サトウキビ由来バイオエタノールを主眼に、欧州指令への適用

を目指して作られた指標である。詳細は「3.1.1 EU」「4.1.2 欧米制度やブラジルにおけ る土地利用変化確認の実態」で述べたとおりである。

2)用いるデータの種類

下記の項目について、直接計測データ(一次データ)が利用不可能もしくは不適切な場合 に、既定値(default value)の利用を認めている。これらはいずれも、「排出係数」に相当 する項目である。

なお、2011 年時点では、EU 指令への対応としての GHG排出量算定においては、まだ 自らのデータを用いた算定は許可されていないが、類似のものとして、原料栽培の間接使用 を含めたエネルギー使用量や工場のエネルギー効率、サトウキビ生産時のGHG排出に関す る基準が設けられている。

表 4-4 Bunscro制度で既定値の利用が認められている項目

・ 地球温暖化係数(GWP)

・ 電気の排出係数

・ 肥料1kgあたりのエネルギー使用量

・ 除草剤・防虫剤1kgあたりのエネルギー使用量

・ 燃料1Lあたりの排出量

・ 廃棄物1kgあたりの排出量

・ バガス燃焼時のN2O、CH4排出量

・ サトウキビ茎燃焼時のN2O、CH4排出量

・ プロセスで使用する化学物質のエネルギー使用量、排出量

・ 直接土地利用変化

・ 農耕に伴う土壌からの排出量

出所)Bonsucro, “ Bonsucro Production Standard Including Bonsucro EU Bonsucro Production Standard”

既定値は、カリフォルニア大学バークレー校によるバイオ燃料ライフサイクル評価モデル

EBAMM での設定値や、ブラジルのサトウキビ・バイオ燃料ライフサイクル評価の第一人

者であるMacedo氏の文献を元に設定されている。

3)データの根拠の提出有無

Bonsucro基準への適合性は、土地利用変化と同様、事務局が認定した審査機関によって

確認される。審査機関が収集すべきデータのリストは審査ガイドライン15によって示されて いるが、具体的な証憑については特定の要件は定められていない。

(2) BioGrace

1)BioGraceの概要

「欧州におけるバイオマス燃料GHG排出計算」(BioGrace)プロジェクトは、EUの資 金援助を受け、EU指令に即したGHG算定ツールの開発を行っており、EUの持続可能性 制度における自主的基準としても申請されている。同プロジェクトは、オランダ・フランス・

オーストリア・ギリシャ・ドイツ・スペイン・スイスの政府機関や民間シンクタンクが共同 して実施している。なお、液体バイオ燃料の他、バイオマス発電や熱利用についての評価も 行われている。

2)用いるデータの種類

BioGraceでは、算定に用いる排出係数の標準値(Standard Value)のデータベース化を

行っている。

なお、EU指令では、原料栽培、燃料転換、輸送の3区分のうち、区分ごとに自ら算定す るか既定値を用いるかを選択することが可能であり、BioGraceもそれに準じている。関連 する複数項目のうちの一部のみを自らのデータに置換することはできない(例えば、肥料消 費量をそのままに収率のみを置換することはできない)。

表 4-5 BioGraceで標準値が提供されている項目

・ 地球温暖化係数(GWP)

・ GHG排出係数(農業用投入物、残渣、燃料、電力、蒸気発生時のCH4・N2O発生、

転換用投入物)

・ エネルギー使用量(農業用投入物、残渣、燃料、電力、転換用投入物)

・ 燃料の密度

・ 低位発熱量

・ 輸送トンキロあたりエネルギー使用量、CH4・N2O発生量 出所)BioGrace, “ Complete list of standard values, version 4 - Public”

標準値は、下記データをもとに整理されている。

・ JEC-EUCAR-CONCAWE, “Well-to-Wheels Analysis of Future Automotive Fuels

15 Bonsucro,”Audit Guidance for the Production Standard Including Bonsucro EU Audit Guidance for the Production Standard Version 3.0 March 2011”

and Powertrains in the European Context”

欧州共同研究センター、EUCAR(欧州自動車メーカの研究共同組織)、CONCAWE(欧 州石油環境保全連盟)等の共同研究で、EU指令におけるデフォルト値のベースにもな っている。現在も継続してデータの更新やパスウェイの追加が行われており、最新は 2011年10月のVersion 3cである。

・ Ludwig Bölkow Systemtehnik, E3-database

ドイツの民間シンクタンクが整備したLCA評価用データベースであり、上記の補完と して利用されている。

3)データの根拠の提出有無

具体的な手順については明記されていないが、BioGrace Calculation Rulesによれば、

計算に対して監査可能なように、信頼可能な情報を使用することとされている。

標準値を用いる場合にも、なぜその標準値を選択したかの根拠が必要である。例えば、N 肥料の種類を選択したときには、その肥料の種類を購入したときの領収書や、農業団体から の肥料配送の契約書等を示せるようにする必要がある。

4.2.3 自らGHG排出量を算定する際の方法・根拠資料(案)

以上を踏まえ、国内で事業者が自らGHG排出量を算定する際の方法・根拠資料案を以下 のとおりとする。

インプット量は、原則実測値を使用するものとする。データ精度は最低でも年間平均とす る。この値が使用できない場合、十分に保守的な統計値等を使用する。これらの値の保管・

根拠資料の提出は求めないが、妥当な値で計算したことを約束する契約書・誓約書等を別途 提出するものとする。

排出係数は、既定値を用いることとするが、具体的には、我が国のデフォルト値の算定に 用いられている排出係数とし、該当する値がない場合は、公開されている排出係数データベ ースから取得し、その出典を明記するものとする。

以上のデータを用いたGHG排出量の算定について、その内容を記した算定書(様式任意)

を提出するものとする。

表 4-6 自らGHG排出量を算定する際の方法・根拠資料(案)

インプット量 排出係数

用いる データ の種類

プロセスの実測値を使用する。データ 精度は最低でも年間平均とする。

上記の値が使用できない場合、十分に 保守的な統計値等を使用する。

統計値の利用とする。

我が国のデフォルト値の算定に用い られている値を優先して適用し、該当 する値がない場合は、公開されている 排出係数データベースから取得する。

データ の根拠

妥当な値で計算したことを約束する 契約書・誓約書等を別途提出する。

出典を算定書内に明記する。

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