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各国の持続可能性基準に関する最新動向

ドキュメント内 Microsoft Word - H24バイオ燃料最終報告.docx (ページ 41-67)

3. 諸外国におけるバイオ燃料を取り巻く動向の基礎調査

3.1 各国の持続可能性基準に関する最新動向

世界主要国のバイオ燃料(バイオエタノール、バイオディーゼル)政策と、導入量・導入 割合を示す。

3.1.1 EU

(1) バイオ燃料政策概要

欧州委員会は2007年1月、「再生可能エネルギーロードマップ」を発表した。同ロード マップは、欧州が長期的にエネルギー安全供給の強化とGHG排出削減という2つの目標を 達成するために策定されたものであり、同ロードマップの中で、2020年までにエネルギー 消費量全体の20%を再生可能燃料とすることが掲げられた。このうち、輸送燃料に関して は、2020年までに10%をバイオ燃料由来とするという目標が設定された。

これを受けて、2007~2008年に開催された欧州閣僚理事会において、バイオ燃料導入目 標達成に際して、バイオ燃料の持続可能性基準の必要性と、第二世代バイオ燃料の商業化の 必要性とが提言された。

2009年6月、「再生可能エネルギー導入促進指令」(2009/28/EC)が発行し、本指令にお いては、2010年までに輸送燃料の5.75%、2020年までに10%をバイオ燃料由来とすると いう目標に加え、当該目標達成に使用することができるバイオ燃料の持続可能性基準を定め ている。加盟国は EU 指令に適合するよう、持続可能性基準を満たすバイオ燃料の導入を 担保するための法整備を行っている。

(2) バイオ燃料導入量

欧州における輸送用バイオ燃料消費量は増加傾向にあり、2010 年が1,360 万石油換算t であったのが、2011年には1,400万石油換算tとなっている。ただし、輸送用バイオ燃料 の前年比増加率は減少傾向にあり、2009年から2010年にかけての消費量が13.8%増加し たのに比べ、2010年から2011年にかけては3.1%増にとどまっている。増加率減少の要因 として、EU加盟各国がバイオ燃料導入目標を増加させるより、EU再生可能エネルギー指 令で定められたバイ燃料持続可能性基準に適合するバイオ燃料を認定し導入する体制を整 備することを優先していること、中央ヨーロッパ諸国を中心に金融危機の影響から回復途上 にあることが指摘される。各国の2010年及び2011年の導入量は、下表のとおりである。

表 3-1 欧州各国のバイオ燃料消費量(単位:石油換算トン)

2010年 2011年

バイオエタ ノール

バイオディ ーゼル

バイオ燃料 合計

バイオエタ ノール

バイオディ ーゼル

バイオ燃料 合計 ドイツ 751,920 2,234,954 3,040,151※ 795,142 2,143,929 2,956,746※

フランス 394,200 2,023,400 2,417,600 392,200 2,034,500 2,426,700 イタリア 156,062 1,297,316 1,453,378 229,579 1,443,131 1,672,710 スペイン 233,448 1,186,850 1,420,298 145,744 1,286,711 1,432,455

英国 316,495 826,813 1,143,308 327,028 729,077 1,056,105

ポーランド 153,482 789,259 977,384※ 153,676 858,986 1,047,269※

オーストリア 68,487 408,315 489,826※ 200,673 229,808 494,853※

スウェーデン 191,117 175,010 411,924※ 68,912 349,074 431,660※

ベルギー 49,902 277,170 327,072 48,121 273,308 321,429

ポルトガル 0 325,254 325,254 147,344 163,371 310,715 チェコ共和国 61,262 172,494 233,756 0 306,894 306,894

オランダ 134,088 94,655 228,743 59,282 240,566 299,847

ルーマニア 71,518 125,871 197,388 71,582 126,373 197,956 ハンガリー 57,395 116,652 174,047 79,487 92,345 172,100 スロバキア 39,338 121,071 160,409 54,123 110,003 164,126

ギリシャ 0 124,606 124,606 39,983 123,722 163,705

フィンランド 71,532 52,914 124,536※ 135,426 4,419 139,844※

アイルランド 30,730 59,687 92,744※ 0 103,396 103,396※

リトアニア 10,412 34,731 45,144 29,628 67,704 97,332 スロベニア 2,904 41,724 44,628 9,204 35,372 44,577 ルクセンブルグ 720 40,043 40,763 5,131 38,425 43,556

ラトビア 8,419 18,698 27,117 7,649 34,020 41,669

デンマーク 22,041 725 22,766 3,744 31,620 35,363 ブルガリア 0 15,907 15,907 0 15,899 15,899

キプロス 0 14,944 14,944 0 0 0

エストニア 0 0 0 0 0 0

マルタ 0 0 0 0 0 0

合計 2,824,843 10,579,063 13,553,693 3,003,658 1,0842,655 13,976,908

※バイオ燃料として、バイオエタノールとバイオディーゼル以外に、植物油が含まれる。

出典)EurObserver(2012) Biofuels Barometer

(3) EU指令改正

1)指令改正の概要

2012年10月17日、欧州委員会は燃料品質指令と再生可能エネルギー指令の改正指令案 を発表した。同改正案では、従来型食用原料由来バイオ燃料使用の制限、次世代バイオ燃料 に対する優遇措置の導入、間接土地利用変化(ILUC)の影響評価など、重要な改正提案が なされている。同改正案は今後、欧州議会及び欧州閣僚理事会で検討される予定である。

主要な改正点及び改正を行う背景は以下のとおりである。

【従来型食用原料由来バイオ燃料使用の制限】

 加盟国政府は、2020年バイオ燃料の輸送用燃料最終消費量に占めるバイオ燃料の割

合を 10%にするという導入目標を負っているが、従来型の食用作物を原料とするバ

イオ燃料(穀物、でんぷんが豊富な作物、砂糖、油糧作物)の割合は5%までとする

 制限する目的は、2020年までの間に先進的バイオ燃料への移行を進め、また ILUC の影響を最小化させることである。

【セルロース系バイオ燃料の優遇措置】

 以下のセルロース系燃料について、各国のバイオ燃料導入目標達成に際して、エネル ギー含量を2倍、4倍としてカウントする優遇措置を導入する。

表 3-2 セルロース系バイオ燃料の優遇措置 4 倍にカウン

トされるもの

(a)藻類 (h)粗製グリセリン

(b)混合都市廃棄物中のバイオマ ス成分(リサイクルが義務付けら れている廃棄物を除く)

(i)バガス

(j)ブドウ絞りかす、酒かす (k)ナッツ殻

(c)産業廃棄物中のバイオマス成分 (l)殻(Husks)

(d)わら (m)穂軸(Cobs)

(e)動物堆肥、下水汚泥 (n)樹皮、枝、葉、おが/削りくず

(f)パームオイル廃液、ヤシ空房 (g)トールピッチ

2 倍にカウン トされるもの

(a)廃食油 (c)非食用セルロース系原料

(b)動物性油脂 (d)丸太を除くリグノセルロース系原料

 これらの燃料は、以下のような理由から優遇対象と位置づけられている。

 廃棄物、藻類等から製造される先進的バイオ燃料は、ILUCを引き起こすリスク が低く、従ってGHG削減効果が高い。また、食料・飼料用原料と直接的には競 合しない。

 先進的バイオ燃料は、現状では政府の補助の対象となっている従来型の食用作物 由来のバイオ燃料と競合しているせいもあり、大規模には商業化されておらず、

更なる支援が必要。

 欧州のバイオ関連の産業の長期的な競争力を維持するためにも、燃料用以外には 高い経済的価値をもたないバイオマス原料の使用の優先的推進が必要。

【GHG削減水準の見直し】

 GHG削減水準を下図のとおりに改正する。新規施設については、2014年7月1日 以降に操業を開始する新規施設に対して、60%の削減水準を求めるとして、従来より 削減水準が前倒する。一方、既存施設については、削減水準を 50%に引き上げるタ イミングを1年間後ろ倒しして2018年以降とする。

<改正前のGHG削減水準>

<改正後のGHG削減水準>

図 3-1 GHG削減水準の変更

 新規設備で製造されるバイオ燃料のGHG排出水準引き上げの前倒しの理由として、

バイオ燃料全体のGHGバランスを改善させ、またGHG削減効果の低い設備への更 なる投資を抑制することが挙げられる。

 欧州委員会によると、既存施設の排出水準引き上げの後倒しは、ルールの単純化のた めの措置である。

【デフォルト値の適用範囲の改正】

 現行指令では、欧州域内で原料が栽培されるバイオ燃料については、加盟国政府が原 料栽培に伴うGHG排出がデフォルト値以下であると特定した地域を除き、デフォル ト値の使用が認められず、実測値を算定することとなっていた。これを、欧州域内外 で原料栽培されたバイオ燃料について、等しくデフォルト値を使用可能とする。

 改正の背景は、加盟国政府による原料栽培に伴うGHG排出がデフォルト値以下とな る地域の特定が遅れていることがあり、今後は欧州域内外の生産者を等しく取り扱う こととしている。

【ILUCによる推定排出量の報告】

 再生可能エネルギー指令において、加盟国政府は2011年12月31日まで、またその 後 2 年ごとに欧州委員会に対して、再生可能エネルギー利用の進捗報告書を提出す 50%

60%

50%

35% 50%

60%

2013/4/1 2017/1/1 2018/1/1

2009 2013/4/1 2017/1/1 2018/1/1

2009 2013/4/1 2017/1/1 2018/1/1

2009

~2008/1/23に操業

2008/1/24~

2016/12/31に操業

2017/1/1~に操業

35%

2014/7/2

60%

35% 50%

2018/1/1

~2014/7/1に操業

2014/7/2~に操業

2009

るよう義務付けられている。同報告書では、「再生可能エネルギーの使用によるGHG ネット削減推定量」を報告するように義務付けられており、ここに ILUC 由来の排 出量も算定に含めなければならない。

 燃料品質指令を改正し、燃料供給事業者に対して毎年3月31日までに加盟国政府が 任命する省庁に対して、バイオ燃料製造方法、製造量、ILUCデフォルト値を含むエ ネルギー単位あたりのライフサイクルGHG排出量を報告する義務を導入する。

 すなわち、再生可能エネルギー指令では加盟国政府に、燃料品質指令では事業者に対 して、ILUC排出量の報告を求めている。

 改正指令では、穀物、でんぷんが豊富な作物、砂糖、油糧作物について、ILUCデフ ォルト値が示されている。また、これ以外の燃料は ILUC 排出量をゼロとみなすこ とも併せて定められている。

表 3-3 ILUC排出量想定値 原料グループ gCO2/MJ 穀物、でんぷんが豊富な作物 12

糖類 13

油糧作物 55

 直接的土地利用変化を引き起こした原料については、ILUCをゼロとみなし、直接的 土地利用変化に伴うGHG排出量を算定するように求められている。ILUCによる排 出量を算定する以上、直接土地利用変化に伴う排出量は理論的には ILUC に内包さ れているものである。しかし、欧州委員会によると、ILUCを導入する以前から直接 土地利用変化によるGHG排出量算定が行われていたため、直接土地利用変化の算定 方法を見直すことは検討されなかったとのことである。

 デフォルト値については、科学的・技術的進展を踏まえて、欧州委員会が見直す(原 料レベルなど更に細かいレベルでの ILUC デフォルト値の設定、新たな原料種類の バイオ燃料が市場に導入された場合に当該原料についての ILUC デフォルト値の設 定等)権限を有する。

 ILUC 由来の排出を 2021 年以降に持続可能性基準の中に入れるかどうかについて、

欧州委員会が検討を行う。

 回復された荒廃地で製造されたバイオ燃料に対して与えられていた「荒廃地ボーナス」

を廃止する。荒廃地ボーナスは ILUC 由来の排出量を抑制するための暫定的な措置 であったため、今回のILUCデフォルト値の導入に伴い、廃止される。

 ILUC由来の排出を評価する背景には、以下のようなものがある。

 食料・飼料用に使われていた牧草地や農業用地をバイオ燃料用に転換させると、

燃料以外の目的の生産への需要は従来どおりあるため、現行の生産を集約化させ るか、農業用地以外の土地を農業用地に転換させるかが必要となる。後者が ILUCのケースにあてはまり、炭素ストック量の大きい土地が転用される場合に

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