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直接土地利用変化等に関する詳細な運用手順案の策定

ドキュメント内 Microsoft Word - H24バイオ燃料最終報告.docx (ページ 93-100)

4. 我が国における持続可能性基準の運用等の検討

4.1 直接土地利用変化等に関する詳細な運用手順案の策定

4.1.1 論点

直接土地利用変化の確認において、事業者が立証すべき事項は以下のとおり整理される。

 自らが調達したエタノール量の製造に必要な、サトウキビ農地の特定

 マスバランスによる立証が認められているため、実際に当該農地で栽培されたサ トウキビと調達したエタノールについて物理的な結びつきがなくともよい。

 当該農地の土地利用変化状況

図 4-1 マスバランス適用のイメージ

具体的に確認すべき項目は以下のとおり。

表 4-1 具体的に確認すべき項目

確認項目 活用方法

エタノール工場におけるサトウキビ あたりエタノール生産量

事業者が調達したエタノール量の製造に必要なサト ウキビ量の把握

エタノール工場における特定農地か らのサトウキビ調達量

上記必要サトウキビ量以上のサトウキビが調達され ていることの確認

当 該 農 地 の 土 地 利 用 変 化 起 算 日

(2012年4月1日)以前の土地利用 状況、及び最新の状況

土地利用変化起算日からの土地利用変化の有無(有 る場合は元の土地利用状況)の確認

上記に係る論点として想定されるものを以下に示す。

 根拠書類において示されるべき内容

 事業者が利用可能な根拠書類(公的書類、衛星写真、エタノール数量関連書類等)

において、どこまでの情報が確認できることが必要か。

 根拠書類の信頼性

 認証書や公的書類であれば書類自体の信頼性は担保されるが、衛星写真の場合、

一般的に民間事業者による分析が行われるため、分析結果の信頼性をどのように 確保するか。

 土地利用変化の起算日との整合

 土地利用変化の起算日(2012年4月1日)以前の状況の把握において、いつ時 点の情報を把握出来ることが必要か(1年以内 等)。

 確認の頻度

 同一工場からエタノールを継続的に調達する場合において、土地利用変化の有無 の確認頻度をどのように設定すべきか(毎年/数年に一度 等)。

 数年に一度の確認とした場合、単収やエタノール収率の変動に対してどのように 対処すべきか。

4.1.2 欧米制度やブラジルにおける土地利用変化確認の実態

(1) EU

EU指令では土地利用に関する持続可能性基準として、生物多様性の高い土地、炭素スト ックの高い土地、泥炭地における原料調達を禁じており、土地利用変化の起算日は2008年 1月としている。

欧州委員会は、バイオ燃料の持続可能性基準を確認する手段として13件の自主的基準を 認定しているが、そのうちブラジルで最も普及しているBonsucroでの実態について以下に 紹介する。

Bonsucroではエタノール工場に対する認証(Production Standard)とサプライチェー ンに対する認証(CoC Standard)が存在し、前者の認証件数は28件、後者の認証件数は 10件である。ブラジル全体のエタノール工場は約400件であるため、工場の認証取得比率

は7%程度に過ぎないが、今後の普及拡大が期待されている。

Bonsucro基準への適合性は事務局が認定した審査機関によって確認される。土地利用変

化に関し、審査機関は下表に例示する書類等を確認するとともに、工場従業員等へのヒアリ ング結果等を踏まえて総合的に判断する。逆に言えば、複数書類から総合的に判断するため、

個別証憑に対する特定の要件は定められていない。なお、土地利用変化の起算日は2008年 1月であるが、それ以前の証憑を用いることも認められている。

表 4-2 Bonsucroにおいて審査機関が確認する証憑例

基準 審査機関が確認する証憑例

• 生物多様性の高い土地、炭素ストックの 高い土地等での原料栽培禁止。

• 2008年1月1日以降に土地利用変化が

• 土地登記簿

• 衛星写真、地図

• 環境影響評価報告書

生じた場合、土地利用変化に伴うGHG 排出量を算定する。

• 現地審査における農家や周辺住民に対 するインタビュー結果

Bonsucroのガイドラインでは、各工場の審査における農地のサンプリング方法を以下の

とおり定めている。Bonsucro認証は3年間有効であるが、最初の認証時点で上記サンプル 数を確保することが求められる。2年目、3年目の定期審査において、認証機関は上記サン プル外の農地について審査することが推奨される(必須ではない)。なお、定期審査におい てはサンプリング方法の規定はない(審査件数は任意)。

表 4-3 Bonsucroにおけるサンプリング基準 サトウキビ調達量が全調達量の 25%以上を

占める農場:全数抽出

同1~5%を占める農場:10%

同10~25%を占める農場:50%抽出 同0.5~1%を占める農場:5%

同5~10%を占める農場:25%抽出 全ての農場が0.5%以下の場合:最低20件

なお、認証された工場で生産されたエタノールはマスバランスを適用した上で「認証済エ タノール」として販売可能。マスバランスの適合性は毎年の定期審査で確認され、誤りが確 認された場合、過剰に「認証済エタノール」と販売された分については翌年に割り引かれる

(遡及した認証取消は行わない)。また、マスバランスの管理は月単位で行われることが必 要である。

(2) 米国

米国 RFS2 ではバイオ燃料は定義された「再生可能なバイオマス」から製造される必要 があり、その定義は以下のとおりである。このため、原料の特定に加え、原料が農産物・農 業残渣・植林樹・林業残渣の場合はその資源を得た土地とその2007年12月19日現在の状 況の確認が必要である。

 2007年12月19日以前に開墾され、当日付において利用中・休耕中の農業用地(農 地、草地など)で生産された農産物・農業残渣。

 2007年12月19日以前に開墾され、当日付において管理中の植林地で生産された植 林樹・林業残渣。

 畜産廃棄物・副産物。

 原生林・州自然遺産指定以外の非連邦所有林の林地残材・間伐材。

 森林火災予防のために伐採された植物。

 藻。

 一般廃棄物から分離された庭ごみ、食品ごみ。

RFS2制度ではバイオ燃料の持続可能性遵守の立証義務はバイオ燃料の製造者(輸入者含

む)にあり、バイオ燃料製造者は、事前に第三者の有資格者によるエンジニアリングレビュ ーをEPAに提出して設備登録を行い、バイオ燃料生産量や原料調達量等について定期報告 を行うことで RFS2 におけるクレジット(RIN)の発行を受ける。また、証憑保持の義務 がある。石油会社は、自身のバイオ燃料供給量に応じたRINを調達することで、持続可能 性を担保する。

エンジニアリングレビューの内容は以下のとおり。

 バイオ燃料生産者(国内、海外とも)は、 独立第三者の有資格者による報告書(エ ンジニアリングレビュー)をEPAに提出し、設備の登録を行わなければならない。

 エンジニアリングレビューにおいては、当該設備が製造できるバイオ燃料の種類を証 明する必要がある。具体的には以下の資料の提供が必要。

 使用可能な原料リスト、バイオ燃料製造プロセスの説明、副産物の種類、熱供給 の方法、設備容量など。

 土地利用変化に関する確認は不要。

 生産設備に変更があったとき、または初回登録から 3 年毎に更新のためのエンジニ アリングレビュー提出が必要。

また、定期報告に関する要件は以下のとおり。

 バイオ燃料製造者は、RIN発生・移転等に関して、EPAへの4半期毎の報告書提出 が必要。

 定期報告において、原料について下記の情報を提出する必要がある。

 使用した原料の種類・量の概要

 原料生産地の座標を特定するための地図などの電子データ

 過去に同一農地の電子データを提出しており情報に変化が場合、その旨につ いて報告することで再提出は不要

 定期報告においては第三者による検証は不要。ただし、審査機関へのヒアリングによ ると、自主的に第三者検証を受けるケースは存在するとのこと。

更に、以下の証憑を5年間保持し、EPAの要請に応じて提出する必要がある。なお、GHG 削減基準の適用免除設備(制度開始以前に運転開始していた設備)については、設備概要、

地方政府の建設許認可、建設契約書等を2022年まで保持する必要がある。

 取引等に関する証憑

 製品の取引記録、EPAへの提出した書類のコピー、RIN発生に関する設備ごと の記録、RINの取引記録等。

 輸入バイオ燃料については追加で以下が必要。

 原料生産地を示す地図、原料取引記録 (一部の原料では国産でも必要)

 2007年12月19日時点の土地利用に関する証憑

 土地利用変化に関する書類(以下の一つ以上を原料生産者から取得)

- 農作物等の販売記録、肥料・除草剤・種子等の購入記録

- 農地管理計画書、地域政府の農業プログラムへの参加を示す書類 - 農産物認証プログラムに従った土地管理を示す書類

 原料の栽培農地を示す書類(以下両方)

- 農地の位置を示す地図

- その土地との取引を示す商品受領書、納品書等の伝票

ブラジルの事業者が実際にEPAに提出している書類の例としては、農地の衛星写真及び 当該農地からのサトウキビ調達実績に関する情報を生産したエタノールのバッチ毎にとり まとめた資料がある。なお、衛星写真については外部機関に分析を委託することで、分析結 果の信頼性を担保している。

(3) ブラジル

ブラジルではLandsat、CBERS及びResourcesat-Iの衛星写真を活用した観測プロジェ クトであるCanasatのデータが無料で公開されている。

 Landsat:米国 NASA 等が打ち上げている地球観測衛星。複数の波長における光学

観測により、地球環境を観測することを目的としている。

 CBERS:中国、ブラジル共同の資源探査衛星・地球観測衛星。中国空間技術研究院

(CAST)とブラジル国立宇宙研究所(INPE)が共同で開発。

 Resourcesat-I:インド宇宙研究機関が開発。可視光と近赤外線で観測する光学地球

観測衛星。

各地域、年におけるサトウキビ農地の分布については、INPEのホームページよりダウン ロード可能である(http://www.dsr.inpe.br/laf/canasat/en/)。過去の直接的土地利用変化に ついては、同一地点・複数時点の衛星写真を比較することで確認可能である。

Goiás州、Minas Gerais州、Mato Grosso州、Mato Grosso do Sul州、Paraná州及び São Paulo州については2003年より、Espírito Santo州及びRio de Janeiro州については 2010年から観測されている。これら中西部の州におけるエタノール生産量は、ブラジル全

土の88%に上る。

Canasat の観測結果のイメージを以下に示す。サトウキビの作付け状況について色分け

されており、前年から拡張された農地を確認することが可能である。ただし、HPで公開さ れている情報では拡張された農地の従来の利用形態については確認不能である。また、位置 情報は緯度、経度でのみ確認可能なため、どこまでが特定の農場に含まれるかを確認するた めには、別途当該農場に関する情報が必要となる。

ドキュメント内 Microsoft Word - H24バイオ燃料最終報告.docx (ページ 93-100)