腹膜透析(Peritoneal dialysis(PD))は、末期腎不全の患 者さんに対する透析療法の一種で、広く受け入れられた効 果的な方法です。在宅透析の方法として最も普及していま す。
腹膜透析とは何ですか?
腹膜とは、胃や腸などの腹部臓器が収まっている腹腔と いうスペースを覆って、それらの臓器を支えている膜の ことである。
腹膜は、自然の半透膜で、血液中の老廃物や毒素を通す ことができる。
腹膜透析は腹膜を通して血液をきれいにする過程こと である。腹膜透析にはどのような種類がありますか?
腹膜透析の種類:
1. 間 欠 的 腹 膜 透 析 (Intermittent Peritoneal Dialysis(IPD))
2. 連 続 携 行 式 腹 膜 透 析 (Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis(CAPD))
3. 連続周期的腹膜透析(Continuous Cycling Peritoneal Dialysis(CCPD))
1. 間 欠 的 腹 膜 透 析 (Intermittent Peritoneal Dialysis(IPD))
間欠的腹膜透析は、入院中に短期間行う透析に有効です。
急性腎不全や、小児、末期腎不全における緊急時によく用 いられます。
樹脂製の、複数の穴が開いた特殊な細い管の先をお腹の 中に入れて、そこに透析液とよばれる特殊な液体を出し 入れして透析が行われる。
IPD では 24~36 時間で透析液を 30~40L 用いる。
IPD は必要に応じて、1~3 日という短い間隔を置いて繰 り返す。慢性腎臓病は治癒しないが、早期治療によってもっとも 効果が見込める
慢性腎臓病において、原因疾患の治療は慢性腎臓病の進 行を遅らせる
96. 腎臓を守るために 第 13 章透析 97.
98. 腎臓を守るために 第 13 章透析 99.
1. 連 続 携 行 式 腹 膜 透 析 (Continuous Ambulatory CAPD の実際の手順:
Peritoneal Dialysis(CAPD)) CAPD とは何でしょうか?
CAPD とは以下の頭文字をとったものです。
A(Ambulatory 携行式):歩き回ったり、日常生活を行いな C(Continuous 連続):毎日 24 時間連続して、
P(Peritoneal membrane 腹膜):腹膜をフィルターとして、
がら、
CAPD の実際の手順は次の 3 段階からなります:腹膜透析液 の注入、貯留、排液
注入:2L の透析液をバックから腹腔に留置したカテーテル を通じてお腹の中に入れます。お腹の中に入った透析液は
D(Dyalysis 透析):血液を浄化する方法
CAPD は機械を用いずに自宅で行える透析療法です。便利で 自分で行えるため、先進国で好まれています。
腹膜と接します。お腹の中に透析液が入れば空のバックは ます。
次の治療までぐるぐる巻きにして下着の中に入れておき 腹膜と接します。お腹の中に透析液が入れば空のバックは CAPD の過程
ントと同様、カテーテルは腹膜透析患者にとって命綱です。
~14 日前に埋め込み術が行われます。血液透析での内シャ へその横から約 2.5cm ほど下になります。治療開始の約 10 膜透析に用います。通常、カテーテルのお腹への入り口は、
このカテーテルを手術でお腹の中に埋め込み、長期的に腹 孔を持つシリコン樹脂製の柔らかいチューブを用います。
CAPD カテーテル:CAPD カテーテルと呼ばれる、多数の側
次の治療までぐるぐる巻きにして下着の中に入れておき ます。
貯留:日中は平均 4~6 時間、夜間は 6~8 時間透析液をお 腹の中に貯留しておきます。透析液をお腹の中に貯留して おく時間を貯留時間とよびます。貯留時間の間に透析が行 われます。腹膜はフィルターとして働き余分な老廃物や水 分が血中から透析液側に移動します。貯留中は患者さんは 自由に動き回ることは可能です。
排液:貯留時間が終了すると老廃物を含んだ透析液は (ぐ るぐる巻きにして患者さんの下着の中に入れておいた) 空のバックにカテーテルを通じて排液します。排液した透 析液をためたバックは重さを量ったあとに捨てます。排液 した透析液の色は通常であれば透明です。
腹腔から透析液を排液した後、新しい透析液を腹腔内に入 れますがこの一連の操作には約 30~40 分かかります。こ の透析液を排液し注液する過程は交換と呼ばれます。透析 液の交換は 1 日 3~5 回程度行われそのうち 1 回は夜間に 行います。夜間の交換は就寝前に行い透析液は一晩中腹腔 内に貯留されます。CAPD の交換の過程では菌が入らないよ うに気をつけて行う必要があります。
2. APD・CCPD
APD(Automated peritoneal dialysis:自動腹膜透析)や CCPD(continuous cycling peritoneal dialysis:持続性 周期的腹膜透析)は自宅で連日 APD サイクラー(自動腹膜還 流装置)を使用して行われる持続的透析療法です。APD の間 はサイクラーが腹膜透析液をお腹に自動的に注排液しま す。各サイクルは通常は 1~2 時間程度で 4~5 回の交換が 行われます。APD は患者が睡眠中に(通常は夜間に)8~10 時間かけて行われます。通常は腹腔内に 2~3L 腹膜透析液 が残った状態で朝サイクラーを外します。透析液は日中は 腹腔内に貯留しており夕方や夜間にサイクラーを接続す る際に排液されます。APD のメリットは日中に透析液の交 換をしないですむことで自由で快適であることと 24 時間 で 1 回しかサイクラーとの接続や切り離しの過程がないこ とで腹膜炎のリスクが減ることです。APD のデメリットは 高価であることと複雑であることです。
CAPD で使用する腹膜透析液とは?腹膜透析液とは腹膜透析で使用する透析液です。ブドウ 糖・ミネラルが豊富に含まれており、無菌状態になってい ます。日本ではブドウ糖の濃度が違う 3 種類(1.5%、2.5%、
4.0%)があります。腹膜透析液中のブドウ糖の作用により 体から水分が除去されます。ブドウ糖濃度が高いほど除去
100. 腎臓を守るために 第 13 章透析 101.
できる水分の量が多く、使用する患者さんの状態に応じて 適したものが選ばれます。
近年においてはブドウ糖の代わりにイコデキストリンが 含まれた新たな腹膜透析液が使用できるようになってお り、これは長時間にわたり除水が可能となっています。糖 尿病の方や、肥満の強い方で 1 日 1 度しか使えない場合に は、この新しい腹膜透析液を使用することが推奨されてい ます。
腹膜透析液の容量に関しては 1000ml から 2500ml までの物 が用意されています。
CAPD の合併症とは?CAPD の主な合併症は次の通りです。
感染症:
CAPD を行っている方で最も一般的で、深刻な問題は腹膜炎 です。腹膜炎は腹膜の感染症で、腹痛・発熱・悪寒・腹膜 透析排液の混濁といった症状を引き起こします。腹膜炎を 予防するためには、しっかりとした清潔操作を行うことや、
便秘を避けることが大切です。
腹膜炎の治療方法としては、多くの細菌に効果のある抗生 剤を投与すること、原因となった細菌を調べるために腹膜
透析排液の培養検査を行うことが必要です。また、一部の 患者さんでは腹膜透析カテーテルを除去しなければなら ない場合もあります。また、感染症はカテーテルが入って いる出口部分から進行してくる場合もあります。
その他の問題点:
腹部膨張、腹筋の脆弱性にともなうヘルニア、体液量の過 剰、陰嚢水腫、便秘、
背部痛、腹膜透析液の排液不良、液漏れ、体重の増加など があります。
CAPD の利点
食事制限、飲水制限が多少緩和されます。
腹膜透析は自宅、職場、旅行先を問わずに行えます。ま た、腹膜透析を行っている間も、普段行っていることは 普段通りに行えるので自由を制限されません。さらに、腹膜透析は自身で行え、機械や、病院スタッフ、家族の 手助けが要りません。
血液透析と異なり週 3 回の通院や、痛い穿刺は必要あり ません。
高血圧、貧血の管理がよりよくなります。
持続的な透析のため体内環境の変化が穏やかで、浮き沈 みや、不快感がありません。102. 腎臓を守るために 第 13 章透析 103.
CAPD の欠点
腹膜炎や出口部の感染の危険性があります。
CAPD 患者は 365 日毎日 3~5 回、注意深くバッグ交換を する必要があります。
腹膜透析カテーテルが体外へ出ていることやおなかに 液体を入れることが不便に感じられます。一部の患者は 見た目が受け入れがたいかもしれません。
重い透析液のバッグを自宅に保存し扱わないといけま せん。CAPD 患者の食事はどう変えるべきか?
CAPD 患者の食事指導は重要ですが、血液透析患者とは少し 異なります。
腹膜透析では持続的にタンパク質を喪失することによ るタンパク質不足を避けるため、高蛋白食を摂る必要が あります。
太るのをさけるため、カロリー制限が必要です。透析液 にはブドウ糖が含まれており、CAPD 患者は持続的に炭 水化物を摂取することになります。
血液透析患者と比較すると塩分・水分制限は緩いです。
カリウムやリンが豊富な食事は避けないといけません。
便秘にならないよう食物繊維は多く摂る必要がありま す。CAPD 患者が医師・看護師に連絡しないといけない時とは?
CAPD 患者は次のような場合速やかに医師・看護師に連絡し ないといけません:
腹痛、発熱、悪寒
腹膜透析排液が濁っている時や血が混じっている時
腹膜透析カテーテル出口部の痛み、膿汁、赤み、腫脹、熱感がある時
排液も注液もできなくなってしまった時
思わぬ体重増加、ひどいむくみ、息苦しさ、著明な高血 圧の時
血圧が低い、体重減少、こむら返り、倦怠感がある時(透 析ができていない可能性があります。)104. 腎臓を守るために 第 13 章透析 105.