前立腺肥大症(BPH)
C. 外科的治療
外科療法は、以下のような患者に推奨されます:
薬物療法の効果が不十分で、中等度から重度の症状を認め る。
急性尿閉。
反復性尿路感染。
頻回または持続的血尿。
BPH による腎不全。
BPH の併存する膀胱結石。
増加または著明な排尿後の膀胱内残尿。外科的治療は、2 つの群、すなわち外科的療法と低侵襲治 療に分けられます。最も頻度が高いおよび標準外科療法は、
経尿道的前立腺切除術(TURP)です。現在、いくつかの、
より新しい治療が、低~中等度大の腺に対する外科的治療 において開発されており、それらはより低侵襲、低コスト で TURP と同等の結果が期待されます。
外科的治療
一般に使われる特殊な外科処置は、経尿道的前立腺切除術
(TURP)、経尿道的前立腺切開術(TUIP)、被膜下前立腺 腺種核出術です。
1. 経尿道的前立腺切除術(TURP)
TURP は前立腺手術の最も一般的な標準治療であり、薬物治 療より有効です。TURP は少なくとも 85%~90%の患者で尿 路通過障害を改善し、通常長期間にわたり効果は持続しま 前立腺の手術の中で最も効果的で一般的な標準治療が
TURP である
TURP は無意識化でなく、脊髄麻酔で行なわれるが、短期 間の入院が必要である
186. 腎臓を守るために 第 20 章 前立腺肥大症(BPH) 187.
す。TURP は低侵襲で、泌尿器科専門医により排尿を困難に している前立腺の一部を取り出す手術です。TURP は、開腹 を必要としませんが、入院を必要とします。
術前
術前に、適応症例を確認する。
喫煙は治癒回復を遅延させ、胸部と創傷感染のリスク を増加させるため、患者は禁煙を求められる。
患者は、抗血小板や抗凝固薬(ワルファリン、アスピ リンやクロピドグレル)を中止するよう指示される。手術中
TURP は一般に約 60~90 分程度がかかる。
TURP は、通常、脊髄麻酔で行う。感染防止に抗生剤を 使用する。
TURP では 、前立腺 を摘出 するために 切除用内視鏡 (resectoscope)を陰茎の先端から尿道に挿入する。
切除用内視鏡は、視野確保のための光源とカメラや組 織を切除し止血する高周波電流を有し、膀胱に環流液 を流すことが可能である。
術中に除去される前立腺の組織は、前立腺癌を除外す るために、組織病理学教室に送られる。術後
TURP 後の入院期間は 2~3 日である。
術後、大きめのトリプルルーメンカテーテルを、陰茎 尿道を通して)を介して膀胱に挿入する。
膀胱洗浄溶液がカテーテルに取り付けられ、膀胱に約 12~24 時間持続的に潅流排液を行う。
膀胱洗浄により、手術により生じる血液または血塊を 除去する。
尿に明らかな出血または血塊を含まなくなったら、カ テーテルを抜去する。術後のアドバイス
早期回復のため以下は TURP 後に有効です
膀胱を洗浄するために、より多くの飲水を心がける。
便秘と排便時の力みを回避する。力むと出血量が増加 する。便秘の場合、数日の間、緩下剤を使用する。
医師の指示なく、抗血小板薬や抗凝固薬を使用しない。
4-6 週間は重いものの運搬や、重労働を回避する。
手術後 4-6 週間は性行為を避ける。
アルコール、カフェイン等、香辛料を含んだ食品を避 ける。膀胱への精液の射精は TURP において不妊を引き起こす最も 一般的な合併症である。(子を授かることができない)
TUIP はより軽症な前立腺腫大を持つ男性や TURP が不適切な ハイリスクの患者に対し行われる TURP の代替手術である
188. 腎臓を守るために 第 20 章 前立腺肥大症(BPH) 189.
起こりうる合併症
急性期によく見られる合併症は、出血と尿路感染であ るが、一方、まれにみられる合併症は TUR 症候群と手 術自体の問題である。
TURP 後の合併症は、尿道狭小化、逆行性射精、失調症 とインポテンツである。
膀胱への精液の射精(逆行性射精)は TURP において最 も一般的であり、約 70%の事例で発症する。これは性機 能や満足度に影響を及ぼさないが、不妊を引き起こす。
合併症リスクを増加させる因子として、肥満、喫煙、アルコール多飲、栄養失調症と糖尿病がある。
退院後、患者が以下を認める場合は、医師に連絡をとるべ きでしょう
排尿困難、または排尿できない。
薬物投与後も持続する激痛。
カテーテルを閉塞する大きな血塊、または血栓を伴う 出血。
熱または悪寒などの感染の徴候。2. 経尿道的前立腺切開術(TUIP)
経尿道的前立腺切開術(TUIP)は小さな前立腺または状態 の悪い、それゆえ TURP が不適切な男性に対し行われる TURP
の代替手術です。
TUIP は TURP と類似の手術ですが、前立腺組織を除去する というよりは、2 つ、もしくはそれ以上の深い縦の切り傷
(切開)を前立腺に入れます。切開は尿道通路を拡張し、
尿道への圧迫を軽減し、尿流を改善します。
TUIP の利点は、TURP と比較し出血が少ない、手術合併症 が少ない、入院期間が短く、回復が早いこと、そして、逆 行性射精や尿失禁が少ないことが挙げられます。
TUIP の限界は効果が出ない(不十分な症状の改善または、
一部の患者で時間とともに再発する)ことであり、そのた め TURP 治療を追加する必要があるかもしれません。TUIP は、増大した前立腺に対しては有効ではありません。
3. 被膜下前立腺腺腫核出術
被膜下前立腺腺腫核出術とは前立腺を切除するために開 腹下で行われる手術です。有効でかつ低侵襲的な多数の治 療法が行われるため、被膜下前立腺腺腫核出術が BPH 治療 で行われることはめったにありません。
被膜下前立腺腺腫核出術は、高度に肥大した前立腺をもつ 極少数の男性や、手術の間に同時他の治療を必要とする患 者においてのみ施行されます。
MIT の利点:低リスクと入院期間短縮。懸念点:費用と 長期的な安全性
前立腺ステントは内服治療の効果が乏しい時や、外科的 治療が適応外である場合に安全で有効な治療法である
190. 腎臓を守るために 第 20 章 前立腺肥大症(BPH) 191.
低侵襲治療(MITs)
低侵襲治療は、最も(TUNA)、水誘発性温熱療法(WIT)、
前立腺ステントや経尿道的レーザー治療などです。
1. 経尿道的マイクロ波高温熱治療術(TUMT):
この手法では、マイクロ波熱を使用して、尿流を妨げてい る過剰な前立腺の組織を焼却します。
2. 経尿道的針焼灼術 (TUNA):
この手法は、高周波エネルギーを使用して、尿流を妨げて いる過剰な前立腺組織を凝固し壊死させます。
3. 水誘発性温熱療法(WIT):
この技術は、温水が過剰 0 な前立腺の組織に熱由来の凝固 と壊死を引き起こすものです。
4. 前立腺ステント:
この技術により、ステントは前立腺尿道の狭くなる領域に 配置されます。ステントは尿道を開放し、排尿を容易にし ます。ステントは小さなスプリングやコイルのように形づ くられる、柔軟であり、自動開放式チタン製ワイヤーです。
5. 経尿道的レーザー治療:
この技術において、レーザー・エネルギーは加熱により前 立腺の閉塞部分を破壊します。
BPH を有する患者は、いつ医師に連絡すべきでしょうか?
BPH を有する患者は、以下の場合には医師に連絡すべきで しょう:
完全に排尿できない。
排尿時の痛み灼熱感、悪臭尿、または悪寒を伴う発熱 を認めるとき。
血尿。
下着をぬらす尿漏れを認める排尿機能不全。192. 腎臓を守るために 第 20 章 前立腺肥大症(BPH) 193.