• 検索結果がありません。

脚配置の特殊性利用 ―効率的な歩行姿勢

ドキュメント内 錦織, 慎治 (ページ 85-92)

第 4 章 脚式ローバの移動形態

4.3 歩行

4.3.3 脚配置の特殊性利用 ―効率的な歩行姿勢

-それぞれの歩行姿勢の移動性能を比較する.

各姿勢について,支持点によってそれぞれの評価指標がどう変化するか計算した結果を Fig.4.20 にまとめる.ただし,ここではR1.0,l10,l2  l3 1.0,hJ2 1.0RM 1.0, ,

としている.各図は天体表面の接触可能な領域内において,各点に接触したときに 各評価指標の値の良し悪しを白黒の濃淡図によって表している.原点は第2関節の天体表面におけ る垂直投影点である.姿勢1は天体表面の接触可能領域内に特異点をもっている.そのため,特異 点周辺において各性能指標の値が急激に変化しているのがわかる.この特異点は,ローバの重心位 置を高くすること( )によって,接触可能領域から排除することができる(Fig.4.21). しかし,重心位置が高くなると,ローバの静安定性は悪くなる上に,接触可能領域が狭まってしま うため,歩幅が小さくなってしまう.さらに,可操作性のよい接触可能領域と関節負担が小さい接 触可能領域がまったく異なる位置になっている.

1 2 3 0.05

mmm  1.67 [m/ s ]2

g

2 1.5

hJR

一方,Fig.4.20において,姿勢2と姿勢3は姿勢1とは異なり,接触可能領域内に特異点をもた ない.さらに,可操作性のよい接触可能領域と関節負担が小さい接触可能領域がある点の周辺に広 がっている.この点は,第 2 リンクの中点の投影点に一致するような接触点で,このとき

1 2 3

max | |, | |, | |

の値は最小となる.この点を「最小負荷点」と呼ぶことにする.重心位置が高

くなったFig.4.21においても,最小負荷点周辺で可操作性のよい接触可能領域と関節負担が小さい

接触可能領域が広がっているのが確認できる.Table 4.2およびTable 4.3に最小負荷点における各指 標の値を示す.

ここで,角度によって,天体表面における可操作性が変化することを,第1関節が脚先運動に 与える影響から検討してみる.第1関節の回転軸まわりに沿った脚先の速度は,脚先と回転軸の距 離を とすればd v1d1である.ただし, は, d

   

B T B J2 sin B T B J2 cos

2

 

B T 2

dxx  zz   y (4-24)

これをの関数とみなすと

2 2

  

   の範囲において,

1 2

0

2

tan

B B

T J

B B

T J

x x

z z

    

(4-25)

のときに最大値

    

2 2

max B B 2 B B B 2

T J T T J

dxxyzz 2

J J

(4-26)

をとる.支持脚の場合,BzTBz 2であるから,BxTBx 2のときには00,BxTBxJ2のとき には となる.通常は胴体と脚がぶつかる可能性をできるだけなくすため,股を大きく開いた 姿勢がとられる.このとき

0 0

 

2

B B

T J

xx が成り立つ.したがって,v1を最大にする,すなわち第1関 節の運動が脚先の運動に最大限に生かされるのは,0のときであり,姿勢 1よりも姿勢2ある いは姿勢3の場合の方が,可操作性がよくなることを裏付ける.

式(3-47)によって実際に移動エネルギを計算したものをFig.4.23に示す.支持脚軌道は,Fig.4.22 に示すように,最小負荷点を中点とする歩幅 の直線軌道とする.脚先への負荷は式(3-43)のよ うに与える.なお,姿勢3は進行方向に対して左右両側の支持脚軌道の対称性が保たれるような進 行方向が2種類存在するので,これらをFig.4.21 (a) のように姿勢3-aと3-bのように区別して計算 している.それぞれの姿勢の進行方向角度

S

は次の通りである.

姿勢1および姿勢2:  45 [deg]

姿勢3-a:  35.3[deg]

姿勢3-b: 125.3 [deg]

Fig.4.23より,胴体の直径ほどの歩幅までであれば,姿勢1より姿勢2,姿勢3の場合の方が消費エ

77

-ネルギが低減されることがわかる.

以上の議論を考慮すると,もう1つの等方脚配置型ローバである6脚式ローバにおいて, 0と なるような歩行姿勢としてFig.4.24に図示する歩行姿勢をとることができれば, Fig.3.4に示した歩 行姿勢よりもエネルギ効率がよくなる可能性がある.このような歩行姿勢ならば,すべての支持脚 が天体表面に対して等価な幾何学的関係が保たれるので,Fig.3.4の歩行姿勢で問題であった可操作 性の方向依存性や支持脚による制御の場合分けが不要となる.ここで,6脚式ローバと8脚式ロー バについて,支持脚が0となるような歩行姿勢をとるときの支持4脚の脚番号(Fig.3.4とFig.3.5 を参照)の組み合わせを書き出すと,6 脚式ローバの場合,

1, 3, 4, 5

2, 3, 4, 6

1, 2, 3, 6

3

種類,8脚式ローバの場合,

1, 3, 5, 7

1, 2, 7, 8

1, 4, 6, 7

2, 3, 5, 8

2, 4, 6, 8

3, 4, 5, 6

の6種類となる.支持4脚によって胴体の姿勢が決まるので,この組み合わせの種類が多いほど,

転倒しても多くの胴体姿勢をとることができる.そのため,組み合わせの種類が少ない6脚式ロー バでは,転倒が起こった場合,支持脚が 0となるような歩行姿勢になるまで 8 脚式ローバに比 べて姿勢変動が大きくなる.これにより,天体表面への接触の際に関節負担が大きくなることが懸 念される.

なお,ナナフシの運動の模擬を試みた研究 [47] によると,ナナフシの脚の付け根は 3軸方向に回 転軸をもつ複雑な構造であるが,そのうち2軸の回転については歩行中ほぼ一定とみなすことがで きるという.この研究結果に基づいて,文献[46],[47]では,一般的な歩行型ロボットとは異なり,

Fig.4.25に示すように0となるように第1関節の取り付け角を設定したものを解析モデルや実機

(Fig.2.4)として採用している.自然界に存在する生物が長い進化を経て,エネルギ効率のよい脚 構造という最適化がなされたのだとすれば,上記の検討結果の妥当性が示される.

本節では,まず特異点が移動対象面に対する接触可能領域から排除されるような歩行姿勢をとる ことによって,可操作性と操作力がともに保証できることを示した.そして,等方脚配置型ローバ について,低速なモータでもなるべく高速な移動ができ,エネルギ効率のよさも確保されるような 歩行姿勢を示した.Fig.4.23によると,8脚式ローバの場合,姿勢2が最もエネルギ効率がよい.し かし,この歩行姿勢では天体表面から離れた位置にある脚を接触させるために胴体を天体表面に近 づけるか,十分な長さの脚にすることが必要となる.胴体を天体表面に近づければ,またぎ越すこ とのできる岩石などの障害物の大きさが限られることになる.また,脚を長くすると歩行に使わな い脚が歩脚の運動を妨げる可能性が高くなる.一方で姿勢1の場合,エネルギ効率は低いものの,

胴体と天体表面の距離を3 種類の歩行姿勢の中で最も離して歩行できる(Fig.4.26 を参照のこと)

ので,大きな障害物も避けることなくまたぎ越すことができる.また,姿勢3は,3種類の姿勢の 中で天体表面に接触している脚先同士の距離を最も広くとることができるので,静安定性が保たれ やすい.ゆえに,8 脚式ローバの特性を最大限に生かすためには,天体表面の状況やミッション要 求に応じて3種類の姿勢を適宜使い分けながら歩行することが求められる.

78

-(a) Attitude 1 (b) Attitude 2

(c) Attitude 3

Fig.4.18 Three attitudes of the 8-legged rover considered in this study.

79

-Fig.4.19 Coordinate systems for the discussion in this section.

(a) Top view of the body

(a-2) Attitude 3

direction-a direction-b

J2y

J2x

(a-1) Attitude 1 & 2

J2y

2 J x

2

hJ

l1 l2

l3

2 J z

J2x

(b) Side view of the leg coordinate (J2x-J2y-J2z)

80

-Fig.4.20 Contours of the estimation indices for each attitude (hJ2 1.0R).

Table 4.2 Performance indices at the minimum torque point for hJ2 1.0R index Attitude 1 Attitude 2 Attitude 3

J2x R/ , J2y R/

0.62, 0

1

wG 0.93 0.48 0.65

3

wG 0.48 1.16 1.00

w1 0.45 1.09 0.95

1 2 3

max  , , 1.44

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

●:Minimum torque point, ×:Singular point

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

Attitude 3

(worse) (better) Attitude 2

Attitude 1

1

wG wG3 w1 max

 1, 2 ,3

2 /

Jx R J2x R/ J2x R/ J2x R/

2 /

Jx R J2x R/ J2x R/ J2x R/

2/

Jx R J2x R/ J2x R/ J2x R/

J2y / RJ2y / RJ2y / R J2y / RJ2y / RJ2y / R J2y / R J2y / RJ2y / R

J2y / RJ2y / R J2y / R

81

-Fig.4.21 Contours of the estimation indices for each attitude (hJ2 1.5R).

Table 4.3 Performance indices at the minimum torque point for hJ2 1.5R index Attitude 1 Attitude 2 Attitude 3

J2x R/ , J2y R/

0.48, 0

1

wG 0.82 0.41 0.41

3

wG 0.95 1.50 1.50

w1 0.92 1.46 1.46

1 2 3

max  , , 1.15

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

0x 0y

●:Minimum torque point, ×:Singular point Attitude 3

(worse) (better) Attitude 2

Attitude 1

1

wG wG3 w1 max

 1, 2 ,3

2/

Jx R J2x R/ J2x R/ J2x R/

2 /

Jx R J2x R/ J2x R/ J2x R/

2 /

Jx R J2x R/ J2x R/ J2x R/

J2y / R J2y / RJ2y / R

J2y / RJ2y / R J2y / R J2y / R J2y / RJ2y / R

J2y / RJ2y / R J2y / R

J2y Traveling direction Body center

82

-Fig.4.22 Trajectory of supporting legs on the planet surface.

Fig.4.23 Energy consumption of the three walking attitudes.

Fig.4.24 Reasonable attitude for walking with the 6-legged isotropic rover.

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0

Stride S

Rotatinal energy of the joints E

Attitude 1

Attitude 3-a

Attitude 2

Attitude 3-b

Energy consumption, W

Stride, S / R

Joint 2 The minimum load point along J2x-axis Trajectory of the leg tip (Stride: S)

2

J

x

Limit of reachable workspace of the leg tip

1 5 2

6

3 4

Fig.4.25 Schematic model [93] of the leg of a stick insect.

(a) Attitude 1 (b) Attitude 2 (c) Attitude 3 Fig.4.26 Three-dimensional images of the walking attitudes.

ドキュメント内 錦織, 慎治 (ページ 85-92)