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胴体の回転に対する移動能力の確保

ドキュメント内 錦織, 慎治 (ページ 70-76)

第 4 章 脚式ローバの移動形態

4.3 歩行

4.3.1 胴体の回転に対する移動能力の確保

ローバが移動能力を確保するためには,天体表面に対して胴体がいかなる姿勢をとろうとも,支 持脚の脚先が天体表面上に接触できなければならない.加えて,ローバの静安定性が確保されてい たとしても,土壌の崩壊などの天体表面の状態変化によって,いつ転倒するかわからない.そのた め,胴体の姿勢に応じて脚の動きを変えることが必要である.また,ある姿勢で歩行している最中 にも,転倒による胴体姿勢の変化に伴って,支持脚が入れ替わることになるため,ある瞬間に歩行 に直接関与しない脚(非支持脚)も,支持脚の入れ替わりに備えた「転倒待機姿勢」なるものをと ることが求められる.ここでは,そのための姿勢制御を転倒待機制御と呼ぶことにする.

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-Fig.4.4に転倒待機制御を行わない場合の転倒のシミュレーション例を示す.この図から,転倒の

前後で支持脚と天体表面との幾何学的関係が変わっていることがわかる.そのため,転倒後,移動 を続けるためには姿勢調整作業が最初に必要となり,スムーズに歩行を続けることができない.さ らに,転倒状態から歩行に適した姿勢に移行させるためには,ローバの重心運動とともに,天体表 面に対するローバ各部位の位置関係を計算しなければ,いつまでも起き上がることができない.も ちろん,足場が不安定であれば起き上がり動作の最中にも再び転倒する可能性もある.また,Fig.4.4 を見ると,転倒の最中や転倒終了時に脚先以外の部分が天体表面に接触していることがわかる.し かし,レゴリスがアクチュエータに侵入するのを防いだり,脚のリンク部分が砂礫や小石などによ って傷つけられることを防ぐためにも,脚先以外の部分が天体表面と接触するリスクはなるべく低 くするべきである.そこで,転倒時にダメージを受けるリスクを極力なくし,転倒後もスムーズに 次の歩行姿勢に移行できるようにするため,非支持脚の転倒待機のための姿勢制御について検討す る.

Fig.4.4 Screenshots of an overturn simulation without control.

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-脚の姿勢制御を行うにあたって,胴体に対して脚がどのような姿勢をとっているかについて数学 的な関係式を導出する.なお,ローバの脚先の自由度は3であるため,その位置・姿勢を独立に指 定することができないことに注意する.さらに特異姿勢の場合には,位置自由度 1,姿勢自由度 1 の計2自由度に縮退するため,脚先の運動はさらに制限される.

各関節の角度が であるとき,胴体座標系に対する各リンク座標系の姿勢回転行列 は,式(3-7)および(3-9)をもとにすると下記のように計算される.

( 1 ~ 3)

i i

 

B Link i

R

 

1 4 2 2 1

B

Link z z x z

    

     

         

R R R R R(4-1)

 

2 1 2

B B

Link Link y z

2

 

   

R R R R (4-2)

 

3 2

B B

LinkLinkz3

R R R (4-3)

B Link i

R の第1列からなるベクトル[Bax i,, Bay i,, Baz i,]T

, ,

[B , B

は第iリンク固定座標系のx軸方向を表す単 位ベクトルであり,第3列からなるベクトル bx i byi, Bbz i,]Tは第iリンク固定座標系のz軸方向 すなわち第i関節の回転軸方向を表す単位ベクトルを表している.ちなみに,第2列は第iリンク 固定座標系のy軸方向を表す単位ベクトルであるが,これは前述のx軸方向単位ベクトルとz軸方 向単位ベクトルの外積から得られるので,ここでは特に明記しない.ただし,これらのベクトルは それぞれ胴体固定座標系における表記である.式(4-1)~(4-3)を計算し,[Bax i,, Bay i,, Baz i,]T

, ,, B ,]

[Bbx i, Bby i bz i Tをとり出したものをTable 4.1にまとめる.表中,  ˆ  4と定義されるパラ メータを使用していることに注意されたい.これらのベクトルから,胴体に対してそれぞれの脚が どのような姿勢をとっているかを知ることができる.

Table 4.1 Elements of rotation matrix of rover’s three links

i 1 2 3

, B

ax i 1

1

cos sin ˆ sin sin cosˆ

 

  

 

2 1 1

2

ˆ ˆ

sin sin sin cos sin cos cos cos cos ˆ

     

  

 

 

 

2 3 1 1

2 3

ˆ ˆ

sin sin sin cos sin cos

cos cos cosˆ

      

   

, B

ay i 1 1

cos cosˆ sin sin sin ˆ

 

  

 

2 1 1

2

ˆ ˆ

sin sin cos cos sin sin cos cos sin ˆ

     

  

 

 

 

2 3 1 1

2 3

ˆ ˆ

sin sin cos cos sin sin

cos cos sin ˆ

     

   

, B

az i sin cos1  cos2sincos sin12cos cos23sincos sin123cos

, B

bx i cos cos ˆ cos sin1ˆsin sin cos1  ˆ cos sin1ˆsin sin cos1  ˆ

, B

by i cos sin ˆ cos cos1ˆsin sin sin1  ˆ cos cos1ˆsin sin sin1  ˆ

, B

bz i sin sin cos1  sin cos1

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-以上を踏まえて,転倒待機制御について述べていく.

第2・第3リンクの回転軸ベクトルは,

2 3 cos sin1 ˆ sin sin cos ,1 ˆ cos cos1 ˆ sin sin sin ,1 ˆ sin cos1 T

B B

zz              

e e (4-4)

である.これを任意のベクトルBez2Bez3 cx, cy, czTにするには,第1関節角度を

 

1 atan 2 cz, cos cxsin ˆ cycos ˆ

      (4-5)

とすればよい.

転倒後も次の歩行をスムーズに続けるためには,胴体が天体表面に対してどのような姿勢をとろ うとも,脚先が天体表面上に接触していることが求められる.このとき,Fig.4.4に示したシミュレ ーション例のように,脚先以外の部位が天体表面上に接触するような状況も起こりうる.しかし,

歩行型ロボットは通常,脚先を移動対象面に接触させて移動することを意図して,脚運動が計画さ れる.このような要求とともに,天体表面に接触する際に脚にかかる衝撃力に対して,関節トルク に よ る 抗 力 を 最 大 限 発 揮 で き る よ う に す る た め , 回 転 軸 ベ ク ト ル が 重 力 方 向 ベ ク ト ル と直交するように,非支持脚の転倒待機制御を行うことにする.このとき,

が成り立つ.この数式に式(4-4)を代入して

1, 2, 3 T

B B B B

g   e e e

e

2 0

B B

zg

e e



1について解くと,

1 1 2

1

1 2 3

ˆ ˆ

sin cos

tan sin cos ˆ sin sin ˆ cos

B B

B B B

e e

e e e

 

    

  

     (4-6)

という,第1関節の角度制御則を得る.ここで,天体固定座標系に対する胴体の姿勢角がジャイロ センサや加速度計,傾斜計などにより検出されたとすると,

1 2 3

sin

cos sin

cos cos

B

body B

body body

B

body body

e P

e P R

e P R

 

  



  

(4-7)

が成り立つ.ただし,PbodyRbodyはそれぞれ胴体のピッチ角およびロール角を表している.

一方,胴体中心と脚先の距離を定める役割を果たす第2・第3関節については,転倒開始時のま ま制御しないものとする.さらに,脚が特異姿勢にあるときには,第1関節の角度制御のみ行った 場合,胴体に対する脚先の位置関係が変化しないため,転倒待機制御によって生じる脚運動の動的 効果がローバ全体の運動に与える影響を少なくできる.よって,非支持脚については,転倒待機の 際に特異姿勢をとらせておく.

支持脚を含めたすべての脚をつねに , (特異姿勢)に固定した場 合の転倒待機制御シミュレーションの結果をFig.4.5およびFig.4.6に示す.このシミュレーション では,ローバをある高さから落下させ,下側にある脚2本だけが障害物(段差)に接触して姿勢が 変化する.この場合,Leg 1とLeg 4が段差に接触した後,ローバ全体にピッチ角運動が生じる.す べての脚の第2・第3関節角度が同じであるから,転倒の開始時と終了時における天体表面に対す るローバ姿勢が一致することになる.そして,転倒後も脚先が天体表面に接触できていることが確 認できる.

2 30.0 [deg]

  3 104.6 [deg]

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-0 1.0 2.0 3.0 -180

-90 0 90 180

Time [s]

Joint angle [deg]

Leg 1 Leg 2 Leg 3 Leg 4

0 1.0 2.0 3.0

-180 -90 0 90 180

Time [s]

Joint angle [deg]

Leg 5 Leg 6 Leg 7 Leg 8

(a) History of the 1st joint angle for Leg 1 ~ 4 (b) History of the 1st joint angle for Leg 5 ~ 8

0 1.0 2.0 3.0

-180 -90 0 90 180

Time [s]

Attitude angle [deg] Roll angle Pitch angle Yaw angle

(c) History of the attitude angle of the rover

Fig.4.5 Leg’s attitude control when the all legs are in their singular configurations.

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-Fig.4.6 Screenshots of an overturn simulation with a leg’s attitude control when the all legs are in their singular configurations.

一方,転倒開始時の支持脚が特異姿勢でない場合に,同様の転倒待機制御を適用した結果をFig.4.7

およびFig.4.8に示す.ただし,非支持脚は , (特異姿勢)に固定し

ている.この場合,Leg 4 の脚先が障害物に衝突した後,ローバ全体がロール・ピッチ・ヨーとい う3軸に関する回転運動を行うことになる.このような複雑な姿勢変動を経た場合でも,転倒終了 時には転倒開始時とは姿勢は異なるものの,支持脚の脚先が天体表面上への確実な接触が達成され ている.上記のような単純な転倒待機制御によって,万が一の転倒が起こった後でも,入れ替わっ た支持脚を使った歩行にスムーズに移行できる姿勢が保たれることが示された.

2 30.0 [deg]

  3 104.6 [deg]

なお,非支持脚の脚先に観測用のカメラや,サンプル採取用のマニピュレータを取り付けたりし て作業を行わせるような場合には,脚先の位置制御以外にも,脚自体の姿勢制御が重要になること がある.特に脚先に直接つながる第3リンクの姿勢は作業の成否にも関わるため,式(4-1)~(4-5)

とTable 4.1をもとにした適切な姿勢制御を行うことが必要である.

0 1.0 2.0 3.0

-180 -90 0 90 180

Time [s]

Joint angle [deg]

Leg 1 Leg 2 Leg 3 Leg 4

0 1.0 2.0 3.0

-180 -90 0 90 180

Time [s]

Joint angle [deg]

Leg 5 Leg 6 Leg 7 Leg 8

(a) History of the 1st joint angle for Leg 1 ~ 4 (b) History of the 1st joint angle for Leg 5 ~ 8

0 1.0 2.0 3.0

-180 -90 0 90 180

Time [s]

Attitude angle [deg]

Roll angle Pitch angle Yaw angle

(c) History of the attitude angle of the rover

Fig.4.7 Leg’s attitude control when the lower-side four legs are not in their singular configurations.

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-Fig.4.8 Screenshots of an overturn simulation with leg’s attitude control when the lower-side four legs are not in their singular configurations.

ドキュメント内 錦織, 慎治 (ページ 70-76)