導 材
7.3.2 耐震対策工
以下に既設堤防における耐震対策工事の施工上で必要となる技術的留意事項を対策工 法ごとに記述する。
1) 締固めによる工法
既設堤防の耐震対策工事に採用されている代表的な締固めによる工法には、サンドコ ンパクションパイル工法(動的締固め工法)及びサンドコンパクションパイル工法(静的 締固め工法)」の2工法がある。
(1) 動的締固め工法
(解説)
動的締固め工法は、振動荷重により改良する地盤中に砂を圧入して砂ぐいを構築し、
地盤の密度を増大させて、基礎地盤が液状化に抵抗する強度を増大させるものである。
動的締固め工法の施工方法は図7.3.1に示すような方式がある。動的締固め工法の施 工状況は写真7.3.1に示したとおりであり、振動する振動機を上端に備えたケーシング パイプを地中に貫入し、下端より中詰め材を振動・圧入しながら砂ぐいを構築すると ともに、砂ぐい構築時の側方圧力により周辺地盤の密度も増大させるものである。
図 7.3.1 動的締固め工法の施工方式
動的締固め工法による施工は、改良する地盤の液状化を防止できるよう振動・騒音・地盤 の変形などの周辺環境に留意し、適切に実施するものとする。
写真 7.3.1 動的締固め工法の施工状況
(a) 現場条件の照合・確認
(解説)
振動締め固めによる動的締固め工法は、以下のような現場条件を備えた工事に適用 される。
• 広い施工ヤードが確保できる
• 住宅・市街地などから、ある程度離れている
• 大量の材料搬入路、粒度調整などの作業環境が確保される
動的締固め工法では、経済性、効率性などの観点に加えて、上述のような現場環境 を考慮して工法が選定されていると考えられるが、施工に先立って、施工中の砂塵、
振動・騒音などによる周辺の居住環境、自然環境への影響などについては、設計図 書類、施工計画書の内容と現場条件の照合・確認を適切に実施しておくことが必要 である。
(b) 基礎地盤の地質確認
(解説)
動的締固め工法の施工に先立って、既存の治水・地形分類図、周辺地質情報および 施工前のボーリング等によって基礎地盤の地質、地層分布を確認し、改良対象とさ 動的締固め工法の施工においては、改良する基礎地盤の地質確認を適切に行うものとする。
動的締固め固法による地盤改良においては、施工に先立ち、工法選定の経緯、堤体と基礎 地盤条件、周辺の環境など現場条件の照合・確認を適切に行うものとする。
れている液状化層を適切に特定することが必要である。
ボーリングを行なう場合は、同時に標準貫入試験を行いN値の確認をする。
こうして得られた諸データから、必要に応じて改良深度、改良幅、改良率、すりつ け区間などの施工仕様を決定する。
堤防の特性として、改良区間の始点および終点付近においては、地盤改良区間と無 処理区間との間に地盤剛性の極端な相違が生じ、施工後の堤防に亀裂や段差等が発 生しやすい条件が生まれる。
このような境界部付近では、上述のような条件の急変を緩和するために、必要に応 じて図7.3.2に示すような「すりつけ区間」を設定する場合がある。
図 7.3.2 すりつけ区間の設定方法(例)
無処理範囲 すりつけ区間 地盤改良範囲
L/2
( 改良体) 改良深さ
最小必要改良深さ
L: 堤防敷幅 (めり込み堤体厚)
緩和区間で段階 的に減じる 泥炭層
砂層
めり込み堤体厚
(c) 材料選定
(解説)
動的締固め工法に用いる材料は、必要に応じて試験などを行ない適正な材料である ことを確認しておかなければならない。
動的締固め工法の材料には以下のものが使用されている。
• 砂
• 砕石
• 再生砕石
以下に使用する材料選定にあたっての留意事項を記述する。
(砂を使用する場合)
• 締め固め効果が発現しにくい細粒分の含有率が少ないこと
• 粒度分布が偏らないこと
• 施工時に土粒子が細粒化しないものであること (砕石、再生砕石を使用する場合)
• 堤体と基礎地盤が一体となって発揮している堤防本来の必要な止水効果に影 響がない範囲のものであること
• 再生砕石は、特に環境面での安全性が確認されていること
表7.3.4に、施工事例の中から粒度試験(JIS A1204)による材料の品質管理基準の 例を示した。
図7.3.3に、動的締固め工法における使用材料の実績範囲、および砕石を用いた場 合の実績範囲を整理して示した。
表 7.3.4 材料(再生砂)の品質基準(施工計画書の例)
管理項目 管理基準 試験方法 試験頻度 材料 0.074mm 以下の含有率
5%以内 JIS A-1204 2000m3毎
動的締固め工法によって地盤改良を行う際に用いる材料は、試験等を行って適切に選定 しなければならない。
図 7.3.3 使用材料の粒径加積曲線(施工事例資料から)
(d) 試験施工
(解説)
動的締固め工法では、改良効果と施工仕様の確認・決定のために、必要に応じて試 験施工を実施する。
動的締固め工法の施工では、所定の改良効果が確保されるように施工仕様を作成す るが、作成された施工仕様で所定の改良効果が得られることを確認し、施工仕様を 決定するために、必要に応じて試験施工を行なう場合がある。試験施工は、改良す る基礎地盤に砂ぐいを構築し、改良効果の確認としてパイル打設前後における杭間 及び杭芯の標準貫入試験結果を整理して、その結果をもとに改良効果を確認する。
また、一般に改良層の表層部付近においては、施工時の側方圧力が上方、または斜 め上方に逸散して側方地盤への締め固め効果が発現しにくい傾向がある。この点に ついて表層部付近の改良効果の確保のために、必要と考えられる場合は、改良すべ き地盤の上に、一定の土被り層を置いて、砂ぐいを構築し、その後に土被り層を撤 去する。
以下は、この表層の土被り層の厚さを決定するために実施された試験施工の事例で ある。この事例では、表7.3.5及び図7.3.4に示すように試験施工を行った。ここで は、施工天端を変化させてパイルを打設し、杭間及び杭芯における打設前後の標準 動的締固め工法による地盤改良においては、改良効果と施工仕様の確認・決定のために、
必要に応じて適切な試験施工を行うものとする。
貫入試験値から改良効果を判定した。その結果、「計画開削面まで堤体を撤去し、
施工マットを1m敷設後パイルを打設し、ブルドーザで静的に転圧」する施工法(施 工ケース①-2)を採用した。
表 7.3.5 試験施工の内容 例
ケース 試験施工内容
① 計画開削面まで堤体を撤去し、施工マット1m敷設後にパイルを打設する
①-1 ①の施工後にタンパを施工する
①-2 ①の施工後にブルドーザによって静的に転圧する
② 既設堤体を1m残し、施工マット0.5m敷設後にパイルを打設する
③ 既設堤体を2m残し、施工マット0.5m敷設後にパイルを打設する
図 7.3.4 試験施工の方法 例
(e) 施工の管理
(解説)
動的締固め工法の施工においては、所定の改良効果が得られるように適切な施工管 理を実施しなければならない。施工中の主な管理項目には、以下の事項が挙げられ る。
動的締固め工法の施工においては、所定の改良効果が得られるよう深度・砂量管 理等に配慮して施工中の管理を適切に行なわなければならない。
計画開削面 マット 1.0m
0.5m 1.0m
0.5m
2.0m
SCP SCP SCP
マット
マット
①、①-1、①-2 ② ③
• 砂ぐいの平面位置
• 現場状況に応じた適切な打設順序
• 支持層への着底確認
• 深度・砂量確認
• 周辺の変状観測
上記事項について、以下に施工時における留意事項を記述する。
(砂ぐいの平面位置)
打設する各砂ぐいの平面位置は、基準点から測量して設置した引照点から、光波測 量及びテープ測量によって杭心の位置を求め、杭心に目杭を打込んで位置出しを行 う。杭心の位置測量は施工時の施工機械機の位置、打設の順序や進捗度、材料の仮 置など、施工状況に応じて必要分を1~2回毎に行う。
図7.3.5に砂ぐいの平面位置を設定する場合の模式図の事例を示した。
図 7.3.5 砂ぐいの杭心位置の平面測量模式図 例
(砂ぐいの打設順序)
砂ぐいの打設は、一般的に3列を1ブロックとして施工する。
この場合の打設順序は、図7.3.6に示すように堤防側から低水路側に向かって進め るような順序で計画する。これは、一般に、河川の低水路側には変位に厳しく対処 しなければならない構造物が少ないことと、これと反対側の堤防、堤内地側の各種 構造物や埋設物などに対する打設時の側方圧力による影響を回避するための方策で ある。
しかしながら、既設堤防の耐震対策工事では、各工事箇所には、それぞれに異なっ た状況が存在し、必ずしも一般的な打設順序が適切でないことが考えられる。した がって、施工時の打設順序は、上記のような一般的な配慮事項に加えて現場の風向 き、気象状況等による作業上の都合で随時変更することとなる。
引照点
引照点
目 杭
目杭 カラーテープ
釘