1) 対象とする耐浸透機能強化工法の種類と効果
本節では、以下に記述する耐浸透機能強化対策工法を対象とする。
■堤体を対象とした強化対策工法 (1)断面拡大工法(断面拡大工法)
(2)表のり面被覆工法(遮水シート工法)
()裏のり尻における浸潤面の低下工法(ドレーン工法)
■基礎地盤を対象とした強化対策工法 (1)川表遮水工法(鋼矢板工法)
(2)高水敷における浸透防止工法(ブランケット工法)
(解説)
既設河川堤防の耐浸透機能強化対策工事における工学上の効果の基本的な考え方は以下の とりである。
① 堤体には、せん断強さの大きい材料を使用する(堤体のせん断強さを増す)
② 堤体内に浸透した水(降雨および河川水)を速やかに排水する
③ 堤体および基礎地盤内に浸透させた水流の動水勾配を小さくする(特に裏のり尻近 傍)
④ 堤体内に降雨および河川水を浸透させない(降雨および河川水の浸透を抑制、防止す る)
浸透に関する代表的な対策工の概念図と対策工の効果を表7.2.1に示した。表7.2.1に示す 対策工の中で、遮水シート工法、鋼矢板工法およびブランケット工法は、上記の③④に、ド レーン工法は②③に相当する。
また、断面拡大工法において、表のり面部分を透水性の小さい材料で施工した場合には④ の効果が、裏のり面部を透水性の大きな材料で施工した場合には②③の効果が期待できる構 造となる。
表 7.2.1 耐浸透性機能強化対策化工法とその効果
代表的な工法の概念図 対策工の効果・現場条件の留意点
断面拡大工法 ・ 堤防断面を拡大することにより浸透路長の延長 を図り、平均動水勾配を減じて堤体の安全性を 増加させる。
・ のり勾配を緩くすることによりすべり破壊に対す る安全性を増加させる。
・ 川裏のり尻近傍の基礎地盤のパイピングを防止 する押え盛土としての機能も兼ねる。
・ 川表側および川裏に用地を必要とする。
・ 築堤材料が容易に入手できることが望ましい。
表のり面被覆工法 ・ 表のり面を難透水性材料(土質材料あるいは人 工材料)で被覆することにより、高水位時の河川 水の表のりからの浸透を抑制する。
・ 透水性の大きい礫質土や砂質土の堤体で効果 が期待される。
・ 難透水性地盤の場合は排水対策を要する。
※本マニュアルでは「遮水シート工法」を記述す る。
裏のり尻における浸潤面の低下工法
堤体を対象とした強化対策工法
・ 堤体の川裏のり尻を透水性の大きい材料で置き 換え、堤体に浸透した水を速やかに排水する。
・ 堤体内浸潤面の上昇を抑制し、堤体のせん断 抵抗力の低下を抑制する。
・ のり尻部をせん断強度の大きいドレーン材料で 置き換えるため安定性が増加する。
・堤脚水路が必要である(用地の確保が必要)。
・堤体の透水係数が 10-~10-4cm/sec のオーダー の場合に有効である。
※本マニュアルでは「ドレーン工法」を記述する。
川表遮水工法 ・ 川表のり尻に止水矢板等により遮水壁を設置す ることにより、基礎地盤への浸透水量を低減す る。
・地下水流を遮断するので、周辺への影響を検討 する必要がある。
・透水層の礫径が大きい場合は鋼矢板の挿入が 困難となる場合がある。
※本マニュアルでは「鋼矢板工法」を記述する。
高水敷における浸透防止工法
基礎地盤を対象とした強化対策工法
・ 高水敷を難透水性材料(主として土質材料)で 被覆することにより、浸透路長を延伸させ、裏の り尻近傍の浸透圧を低減する。
・高水敷が礫質土や砂質土の場合に効果が期待 される。
※本マニュアルでは「ブランケット工法」を記述す る。
2) 各種強化工法の施工
(1)堤体を対象とした耐浸透機能強化対策工法 (a)断面拡大工法
既設河川堤防の耐浸透機能強化対策を断面拡大工法によって行う場合は、堤防強化対策の 基本的考え方、および工事の設計内容を理解するとともに、既設堤防の堤体、基礎地盤およ び周辺状況などの諸条件を把握して、新旧堤体が一体となって所定の耐浸透性機能が確保で きるよう適切に施工するものとする。
(解説)
断面拡大工法は、基本断面形状を有していても所要の耐浸透性機能が確保できない堤防 において、これに表腹付け、裏腹付けあるいは表裏両腹付け盛土を施工することにより、
浸透路長の延伸を図り、平均動水勾配を低減させるとともに、のり勾配を基本断面形状よ り緩くすることにより、すべり破壊に対する安全性を向上させる工法である。
(断面拡大工法の種類)
断面拡大工法には以下に示す種のタイプがある。
a) 表腹付けタイプ b) 裏腹付けタイプ c) 表・裏腹付けタイプ
腹付けする位置による確保すべき腹付け部の透水性の概要を図7.2.1に示す。
(施工計画の立案にあたっての留意事項)
上記タイプの施工にあたっては、以下のような事項を念頭において施工計画・仮設計画 等を考えることが必要である。なお、拡幅に用いる堤体材料等については「3.4.3 拡築 材料の選定」に記述している。
a) 表腹付けタイプ・・・・・施工断面付近における河積阻害の回避 b) 裏腹付けタイプ・・・・・必要な用地の確保
c) 表・裏腹付けタイプ・・・上記の両面に関する配慮
図 7.2.1 断面拡大工の種類
(b) 表のり面被覆工法(以下 遮水シート工法という)
① 遮水シート工法の施工
既設河川堤防の耐浸透機能強化対策を遮水シート工法によって行う場合は、堤防強化対策の 基本的考え方、および工事の設計内容を理解するとともに、既設堤防の堤体、基礎地盤および 周辺状況などの諸条件を把握して、全体として所定の耐浸透性機能が確保できるよう適切に施 工するものとする。
(解説)
表のり面被覆工法は、図7.2.2に示すように高水時に表のり面から堤体内へ河川水が浸 透するのを抑制することを目的として、表のり面に難透水性材料(遮水シートあるいは土 質材料)を設置する。本節では、表のり面被覆工法のうち施工事例が多い表のり面に遮水 シートを用いた遮水シート工法について記述する。
なお、難透水性材料に土質材料を用いる場合の施工上の主要な事項は、(a)断面拡大工 法に記述した。
表のり面の覆工の範囲は、原則として表のり尻から天端のり肩までの範囲とする必要が ある。
また、施工にあたっては難透水性材料(以下 遮水シートという)で被覆したのり面が、
降雨や河川水位の急低下時にすべり破壊を生じないように留意しなければならない。
難透水性材料
強化対策実施前の湿潤面
強化対策実施後の湿潤面
図 7.2.2 表のり面被覆工法の基本的な断面形状
② 材料の選定
遮水シート工法に用いる遮水シートは、設計された耐浸透機能が確保されているものを適切 に選定するものとする。
(解説)
遮水シート工法に用いる遮水シートは、設計された条件を満足するよう以下の点に配慮 して選定しなければならない。
a) 所定の遮水性を有する
b) 施工時および施工後とも十分な強度を有する c) のり面の変状に追従できる屈撓性を有する d) 堤体土や覆土に対して十分な摩擦抵抗を有する
e) 風雪、日射等による劣化に対して適度な耐久性を有する
一般に、国内の施工現場においては、遮水シートとして純ポリ塩化ビニールのシボ(突 起:標準菱形)付きのものと、シボがついていない平滑なシートの2種類が使用されてい る。また、シートは被覆材(補強布付繊維性フェルト、厚さ10mmなど)と一体となってい る。
③ 材料の保管
現場に搬入された遮水シートは、劣化防止の観点から直射日光にさらされないよう、シ ートがけ等を行って保管する。