導 材
7.4.1 総論
1) 目的
本節は、河川における浚渫工事の施工上、必要となる技術的事項について記述したもので あり、本編を適用した適切な施工によって、良質な河川整備に資することを目的とする。
(解説)
河川工事の目的は、①「洪水、高潮等による災害の発生の防止又は軽減」、②「河川の適 正な利用及び流水の正常な機能の維持」、③「河川環境の整備と保全」である。浚渫工事で は、以下に記述するように、①、②の洪水災害対策として河積の拡大・確保を目的として河 道の土砂を浚渫するものと、③の河川環境の整備と保全を目的に堆積した川底の底泥を浚渫 するものがある。
(1) 洪水対策を目的とした浚渫工事
洪水対策として実施される河川の浚渫には、改修計画に基づいて河積を拡大する工事と して行われる場合と、所要の通水断面積を回復する工事として行われる場合がある。
本節は、以下に洪水対策として河道の拡大を目的として行われている浚渫工事について 必要となる技術的事項について記述しており、本編を適用して河川における浚渫工事が適 切に実施され、良質な河川整備に資することを目的としている。
(2) 環境対策を目的とした浚渫工事
一方、河川において行われている環境対策を目的とした浚渫には、主に底泥を除去して 水質を改善するものがある。
近年、上記のいずれの浚渫工事においても、工事中の水辺環境の保全、水質汚濁の防止、
排土される土砂の処分などに対する多様な要望等があり、各種の規制などが厳しくなって きている。
こうした多様な要望や工事に対する規制の下で行われる浚渫工事を効率的、かつ円滑に 推進するためには、工事に関係する技術者が浚渫工事に係わる河川土工の基本的事項を良 く理解し、施工現場の諸条件を把握して、施工の各段階において的確な判断と対応策を講 じて施工していくことが大切である。
2) 適用範囲
本節は、主として直轄河川において実施される、浚渫工事の施工について適用する。
(解説)
一般に、河川の浚渫工事では、浚渫の規模、工期、排土の処分方法などによって工事の対 応が大きく異なる。また、浚渫を行う河川の規模、流況、河道の線形、河床勾配、さらには 浚渫する河床及び河岸状況なども各河川の特性によって大きく異なっており、各浚渫工事の 現場では、こうした施工現場の状況に応じた多様な対応が求められる。
本節は、上記のような多様な現場の条件を網羅して記述いるものではなく、主として直轄 河川において実施されている標準的な浚渫工事を対象として、施工上必要となる技術的事項 について記述したものである。
3) 対象工種
(解説)
河川の浚渫工事には、ポンプ船による浚渫、台船によるバックホウ浚渫やグラブ浚渫など がある。
本編においては、以下に河川工事で施工事例の多いポンプ浚渫とグラブ・バックホウ浚渫 の2つの方式による浚渫を対象として、工事の施工上必要となる技術的事項を記述するもの とする。
4) 現地調査
(解説)
河川の浚渫工事に際しては、適切な施工計画作成のために、事前に現場の調査を実施して、
必要に応じて工事前、および工事中に諸対策の検討を行い、必要となる対策を適切に実施す るものとする。浚渫工事の施工に先立って、必要に応じて以下のような事項について事前調 査するものとする。
本節においては、以下の2つの浚渫方式を対象とする。
① ポンプ浚渫
② グラブ・バックホウ浚渫
河川における浚渫工事では、適切な施工計画の作成のために、現場における事前調査を行 うものとする。
(1) 河川利用状況調査
河川の浚渫工事においては、河川域を生活の場としている人々やレクリエーションの場 として利用している人々に、工事の影響が及ぶ可能性がある場合は、事前に現場周辺の河 川利用状況を調査しておくものとする。
また過去の履歴を調査し、浚渫箇所に不発爆弾が埋没している可能性があって、不発弾 の磁気探査を行い、確認された爆弾を処理して浚渫した事例もあり、土地利用履歴につい ても必要に応じた調査が必要である。
(2) 生活環境調査
河川の浚渫工事にあたっては、必要に応じて工事現場周辺の生活環境への影響を調査し ておくものとする。
河川の浚渫工事は、浚渫土砂の除去に起因した濁水や、水中の底質を大気に表出するこ とによる悪臭、浚渫土を処理する際の騒音等の発生により、周辺の生活環境に直接影響が 及ぶ可能性がある場合は、工事に先立って、必要に応じて以下に記述するような事項につ いて周辺の生活環境等を把握するとともに、工事着工前、施工中において監視、注視すべ き事項を決めておくことが望ましい。
(a)水質の調査
既存の水質調査結果、河川の流況、工事中の水質監視項目・注意項目
(b)悪臭の調査
既存の底質調査結果、周辺の家屋状況、浚渫土の排出による悪臭発生の可能性など
(c)振動・騒音の調査
浚渫工事で次のような工事を行う場合は、騒音・振動の発生が予想されることから、振 動・騒音に留意すること。
① 濁水処理施設や脱水処理施設等のプラントを昼夜連続運転する場合
② 仮設ヤ-ドなどで鋼矢板等を打設・引き抜きする場合
③ その他、排土先でバックホウやブルド-ザ等を運転する場合の振動・騒音
(d)砂塵の調査
浚渫工事における資材運搬用車輌、土砂運搬車輌等による砂利道の砂塵
(e)土砂運搬路沿道への影響調査
浚渫土砂を場外に運搬する場合の運搬路の沿道における運搬車輌による影響
(f)その他、履歴などの情報調査
浚渫箇所及び周辺に不発弾が埋没している可能性などの情報などがある場合は、必要に 応じて、磁気探査などを行い、調査結果によっては必要となる対策を実施していくものと する。こうした場合においては、通常の施工計画作成のほか、不発弾処理などに係わる特 別の体制や安全対策などが必要となる場合もある。
(3) 生物環境調査
河川の浚渫工事においては、事前に工事区域周辺における生物環境調査を適切に行うも のとする。
河川における浚渫工事によって、現場周辺の河川域に生息する生物群などに工事の影響 がおよぶ可能性がある場合は、工事着工前に、必要に応じて生物環境調査を行い、そのデ
-タを整理、保管するとともに、必要に応じて事前または施工中の対策を検討・実施する ものとする。
河川の浚渫工事においては、施工現場周辺の既存生態調査結果のほかに、必要がある場 合は、以下のような事項について現状を把握するものとする。
(a)植物の調査項目
植物調査では、特定種等の有無、水域およびその周辺の状況など
(b)動・植物プランクトンの調査項目
動・植物プランクトンの出現時期、富栄養化・貧酸素化現象、用水・内水面漁業等への 影響、
(c)魚類の調査項目
回遊魚の遡上、降下時期、魚類の繁殖状況、禁漁水域(区間)・時期、特定種の分布状 況、産卵地点・産卵時期、漁獲状況等
(d)昆虫類の調査項目 特定種の有無等
(e)鳥類の調査項目
渡りおよび繁殖等の時期、特定種等の生息の有無、水域およびその周辺の状況など河川 の浚渫工事では、上記の河川利用状況調査、生活環境調査、生物環境調査によって得られ た資料に基づいて、必要がある場合には、工事前、工事中における影響回避・軽減対策を 実施するものとする。また、工事中に諸条件が変化した場合にも事前の状況と比較できる ようなデータの整理・保管をしておくことが望ましい。
特に、漁獲が行われている地区では、調査結果をもとに河川利用者(漁協等)との協議 も必要となる。
5) 仮設の共通事項
河川の浚渫工事における施工計画を作成するために必要となる全体の仮設は、浚渫方式、現 場の条件等を考慮して適切に行うものとする。
(解説)
河川の浚渫工事でもっとも主要な仮設には、河床土の浚渫から土砂の最終処分までの浚渫 全体のシステム(以下 浚渫システムという)に係わる仮設がある。
これは、図7.4.1に示すように浚渫の方式と排土の最終処分方法までの作業をどのような浚 渫システムで行うのかによって異なるが、主な作業と必要となる仮設には以下のようなもの がある。
Yes
No.
Yes
No
③脱水等の加工を行い有効利用
(要:中間処理方法の検討)
(要:有効利用方法の検討)
水面埋立地がある または確保できる
仮置き・乾燥ヤードの確保
陸上土捨場がある
①陸上輸送(又は、水上運搬)→水中埋立
②脱水等を行い陸上埋立
(要:中間処理方法の検討)
図 7.4.1 河床土の浚渫から土砂の最終処分までの概念
• 浚渫から排土先までの排砂管や仮敷鉄板等の仮設
• 土砂の含水状況の改良に係わる仮置き、乾燥ヤード、水切り設備等の仮設
• 土砂の埋め立てに係わる粉塵防止柵や濁水処理設備等の仮設
• 他工事への有効利用のための運搬などの仮設
浚渫工事においては、上述のような仮設が必要となるが、これらの仮設は、経済性、効率 性、現場条件等を考慮し、あくまでも仮設であることから過大なものとならないよう適切に 実施するものとする。
また、浚渫工事区域一帯での、一般船舶等の通航、河川使用の調整、生活環境への影響の 軽減、河川環境への影響の軽減・保全等などについて必要となる仮設も必要に応じて実施す るものとする。