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導 材

7.3.1 総論

1) 目的

(解説)

河川堤防における耐震対策工事は、大別して以下の3つの形態で実施されてきている。

① 新設の堤防における対策

② 既設堤防における事前対策

③ 既設堤防が地震によって被災したものに対する復旧工事として実施される対 策

本節では、上記対策工事のうち設計・施工事例の多い「②既設堤防における事前対策」

として実施されている耐震対策工事を対象に記述している。

既設河川堤防の耐震対策工事は、地震によって沈下・変形した堤防から外水が堤内地 側に流出するなどして2次的な災害が発生するおそれがあると考えられるゼロメート ル地帯などに設置されている堤防のうち、所要の耐震性能が確保されていないとされた 堤防において実施されてきている。

一般に既設の河川堤防は、過去の長い治水工事の歴史の中で築造された構造物であり、

部分的には以下のように耐震評価上も課題があるものも存在している。

・ 耐震上必ずしも良質でない現地発生土を堤体材料として使用しているもの

・ 堤体の締め固めが十分とは言えないもの

・ 高水敷がなく、堤体が常時外水に接しているもの

・ 地震で液状化しやすい緩い砂地盤上に築堤されているもの

耐震対策が必要とされる既設堤防には、上述のような条件を単独、または複数包含し ているものがある。

また、各現場において選定される耐震対策工法は、対策の目的、対策を講じる部位、

経済性および施工現場の各種制約条件等を考慮して行われる。

本節では、既設堤防の耐震対策工事を適切に実施していくために必要となる技術的事 本節は、既設河川堤防の耐震対策工事の現場において、施工にたずさわる技術者が耐震 対策の基本的考え方、および工事の設計内容を理解するとともに、既設堤防の堤体、基礎 地盤および周辺状況などの諸条件を把握して、工事を円滑に施工するために必要な技術的 事項について記述したものであり、本編を適用した適切な施工によって、所要の設計事項 が担保され、良質な河川堤防の整備に資することを目的とする。

項として、地震による既設堤防の被害、対策工法の原理、対策工法の選定、土工の基本 的事項、耐震対策工事の設計内容、施工現場の諸条件の把握、さらには施工上の留意事 項などについて記述している。

本節は、「改訂新版 建設省河川砂防技術基準(案) 設計編[Ⅰ]」(平成9年10月) および「河川堤防設計指針」(平成19年3月改訂)、「河川堤防質的整備技術ガイドライ ン(案)」(平成16年6月)の河川土工に係る部分を補完し、既設の河川堤防の耐震強化 対策工事において、設計された技術的事項が担保され、良質な河川堤防の整備に資する ことを目的として作成されたものである。

2) 適用範囲

(解説)

一般に、既設堤防の構造は、河川ごとに、あるいは同一河川であっても場所ごとに条 件が大きく異なっており、耐震対策工事の施工においては、現場の状況に応じた多様な 対応がとられている。本節は、このような、あらゆる状況での既設堤防の耐震対策工事 における施工面に関する技術的事項を網羅しているものではなく、主として直轄河川に おいて実施されている標準的な工事を対象として記述したものである。

河川堤防の材料および構造には、土で築造される土堤のほか、その全部、若しくは主 要な部分がコンクリート、鋼矢板若しくはこれに準ずるものによる構造の、いわゆる自 立式構造の特殊堤がある。本編は、既設の河川堤防のうち、土で築造された堤防の耐震 強化対策工事の施工について適用する。

なお、既設堤防の耐震対策工事で取り扱う堤体そのものの施工に関する主要な事項は、

「第7.1節 既設堤防の拡幅・嵩上げ」に記述した。

高規格堤防については、「高規格堤防盛土設計・施工マニュアル」((財)リバーフ ロント整備センター、平成12年)がある。

3) 堤防の地震被害と主な耐震対策工法

本節は、主として直轄河川において実施される、土で築造された既設堤防の耐震対 策工事の施工について適用する。

既設堤防における耐震対策工事に携わる技術者は、地震による河川堤防の被災形態 と耐震対策 の基本的な原理について理解しておくことが望ましい。

また、既設堤防の耐浸透性機能強化対策として適用される工法には副次的に耐震対 策効果も期 待できるものもあり、こうした基本的な技術事項も併せて理解しておくこ とが望ましい。

(解説)

地震による河川堤防の被災形態、主な耐震対策工法とその原理、および耐震対策工法 と他の対策工との関連性について概要を以下に記述する。

(1) 地震による河川堤防の被災形態

地震発生直後に、地震によって沈下した河川堤防から外水が堤内地側に浸水するなど の二次災害が発生するおそれのある区間にある堤防については、これを防止するため に耐震対策工事が実施されてきていることは既述のとおりであるが、施工現場の技術 者は、地震による河川堤防の被災形態、対策工法とその原理を理解しておくことが望 ましい。

地震による河川堤防の被災事例には、大別して以下のようなものがある。

(被災箇所の特性)

• 旧河道、沼沢地上などに築堤された堤防

• 堤防を横断する構造物に接した堤防

• 堤防の川表側に高水敷がなく、常時外水に接している堤防

• 堤防の川裏側に支川や排水路が流れていて常時外水に接している堤防

(被災の主要因・被災部位の特性)

• 主として基礎地盤が液状化したことによって堤体が変形したもの

• 主として堤体そのものの一部が液状化して変形したもの

• 基礎地盤および堤体の両者にすべりや液状化が発生して変形したもの

(堤防断面における発生亀裂の種類)

• 縦断亀裂

• 横断亀裂

• 斜め亀裂

地震による既設堤防の被災形態は多様であるが、過去の地震によって被災した河川堤 防のうち、大規模な沈下・変形を伴う被災事例には基礎地盤の液状化が主要因と考え られるものが多い。

(2) 既設堤防における耐震対策工法

既設堤防の耐震強化対策には、主に基礎地盤の液状化を防止、または抑制する以下の ような工法が採用されてきている。 (基礎地盤の液状化防止工法)

堤防の基礎地盤が緩い砂層で構成され、地下水位が高い、いわゆる液状化層に対して 液状化防止を目的として以下のような工法が適用されている。

• 締め固めにより密度を増大させる

• 固結させて液状化を防止する

• 液状化しにくい材料で置換する

(基礎地盤の液状化の抑制、流動化の抑制、または堤体変形抑制工法)

基礎地盤の液状化は防止できないものの、以下のような工法により堤体変形量を抑制 する対策がとられている。

• 地震時に発生する過剰間隙水圧を低減して土粒子間の有効せん断応力の低下 を抑制

• 鋼矢板などの剛性により液状化に伴う側方への流動を抑制

• 堤体の緩傾斜化により、変形量を抑制できる形状にする

表7.3.1に、既設堤防に対して適用されてきている主な耐震対策工法と原理の概要を 示した。

表 7.3.1 既設堤防における主な耐震対策工法と原理

工 法 工法の原理の概要 留意事項 置換工 ・堤防のり尻付近の液状化層を、液状

化の発生しにくい材料で置換

・地下水位以下の施工では、締 め切りや地下水位低下工法を 併用

サンドコンパクション パイル工法 (動的締固め工法)

・先端閉塞の鋼管ケーシングを地中に 貫入

・所定の深さに達したところでケーシ ングを通じて砂を圧入しながらケ ーシングを引き抜き、締固められた 砂杭を構築

・周辺地盤の側方圧縮と振動締固めに より密度増大を図る。補給材は砂、

砕石、再生砕石など。

・対象地盤に細粒分が多い と改良によるN値上昇が小

・周辺地盤の変位、振動・騒音 が大

・広い施工ヤードが必要

締 固 め

工 サンドコンパクション パイル工法

(静的締固め工法)

・強制昇降装置、回転駆動装置などを 用いて、

鋼管ケーシングを先端閉塞の状態 で地中に貫入

・所定の深さに達した後に材料(砂)

を排出しながら引き抜き、打ち戻し を細かく繰り返して地中に締った 砂杭を構築。周辺地盤も側方圧縮に より密度を増大。

・補給材は砂、砕石、再生砕石など。

・対象地盤に細粒分が多いと効 果が低い

・近接施工の際には地盤の変位 に留意する必要がある

深層混合処理工法

・セメントを主体とした固化材と原地 盤を撹拌混合し、液状化層を固化

・周辺地盤の変位監視が必要

・大礫があれば不適

・地下水汚染に注意

浅層混合処理工法

・表層部にセメント系固化材を添加混 合して改良層を造成する工法であ

・土質に適した固化を選定する 必要がある

・固化の散布に伴う粉塵に注意 を要する

基礎地盤の液状化防止 固結工

高圧噴射撹拌工法

・特殊なロッドヘッドからセメントグ ラウト等を高圧で噴射し、液状化層 を固化する

・大礫があれば不適

・地下水汚染に注意

押 え 盛 土 工

(高水敷造成・緩傾斜化を含む)

・粘性土で表層に非液状化層を構築、

上載土荷重を増大して液状化を抑

・緩傾斜化により堤体変形量を抑制

・効果は浅層の範囲

グラベルドレーン工 法

・ケーシングオーガーを所定の位置に 回転貫入

後、砕石を土中に排出してケーシン グを引き上げ、土中に砕石杭を構築

・地震時に砕石杭から過剰間隙水圧を 消散

・地震後に、ある程度の沈下が 生じる可能性

排水工

裏のり尻ドレーン 工法

・堤体裏のり尻部にドレーン工を設 置、堤体内の地下水位を低下。

・ドレーン部が基礎地盤の液状化層に 接してい

れば地震時の過剰間隙水圧を低減

・堤外側への設置は不可

液状化の発生・拡大の抑制

変 形 抑 制 工

鋼 矢 板 ( 鋼 管 矢 板 ) 工 法

・鋼矢板等の剛性で液状化層の側方流 動を抑制

・鋼矢板単独の場合の効果は浅 層の範囲

ドキュメント内 Microsoft Word - 71_第7章_嵩上げ拡幅.doc (ページ 69-77)